上司と部下が1対1で会話をする1on1ミーティングは、アメリカのシリコンバレーでは日常的に行われているコミュニケーションの手法ですが、近年、日本の有名企業が続々と導入しているため話題となっているのです。
- 1on1ミーティングの意味
- 1on1ミーティングと人事評価の8つの違い
- 人事評価制度の活用方法
- 1on1ミーティングが人事評価と勘違いされるケースの対処法
などから、1on1ミーティングと人事評価面談の違いについて解説しましょう。
目次
1.1on1ミーティングの意味
1on1ミーティングとは、上司と部下の1対1の面談ながら部下が話したいことをメインに自由に会話するもので、1回約30分を週1回、月1回などの短期間で定期的に行うものです。
たとえば、
- 仕事やプライベートの悩み
- 仕事を通じて得た体験、失敗談
- キャリアアップの相談
- 上司にサポートしてほしいこと
- 会社が定める目標への疑問や意見
など。上司が業務報告を求めるなどの管理的な面談ではありません。部下を中心としたミーティングによって部下の現状を把握し、部下の成長を促していくのです。
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2.面談と評価の定義
日本の多くの企業では、上司と部下の1対1のミーティングを「面談」といいます。1年に2回ほど行われ、面談では一般的に、目標の設定、評価、キャリア開発、業務の進捗確認などについて話し合います。
上司からの評価は、今後の昇進や昇格、昇給やボーナスの査定に直接関わるためとても重要です。上司やマネージャーにとっても、部下の業績や業務能力の評価は、重責のある業務のひとつといえます。
また面談には、部下の能力をきちんと把握して、部下の育成、個人の能力に適した配置転換などを行って部下一人ひとりのモチベーションを高めるという目的もあるのです。
人事評価のために1on1ミーティングを実施する
人事評価で大切なことは、「部下を正しく評価する」ではなく、「評価される部下の納得感」。人事評価の基準に沿って評価結果を出したとしても、その評価内容に部下が納得せず不満が生じてしまっては、利益につながりません。
部下が人事評価に納得しない理由としては考えられるのは、
- 評価方法の説明がなされていない
- 何を基準に評価されているのか分からない
- 目標設定が曖昧
- そもそも目標に向けて上司からの指導が日頃から行われていない
などですが、普段から上司と部下がコミュケーションを取っていれば、それほど生まれないと考えられます。
そのためには、日頃から短いスパンで1on1ミーティングを行うことが重要です。会社の目標やビジョン、部下の具体的な目標設定と今後の行動を共有することで、目標へのフィードバックや承認を行うことができます。
3.1on1ミーティングと人事評価の8つの違い
これまで日本の企業が行ってきた半期に一度の面談による人事評価と、1on1ミーティングの違いを8つのポイントから説明しましょう。
- 頻度
- 時間
- 対象
- 目的
- テーマ
- 必要なスキル
- 反映先
- 公式制度
①頻度
日本の多くの企業は半期に一度、もしくは4半期に一度のスパンで、人事考課面談を行ってきました。しかし1on1ミーティングは、週に1回、隔週、月に1回など短いサイクルで定期的に実施します。
頻繁にミーティングすると、日々の小さな進捗などがしっかりと承認されるため、部下は評価内容に納得感を得やすくなるでしょう。
②時間
これまでの面談といえば、上司が部下の評価をして査定する人事考課面談が挙げられるでしょう。年に数回実施され、面談時間はわずか5分という場合もあれば、長時間かけて業務報告を求めたり、上司が一方的に指摘事項を伝えたりする場合もありました。
1on1ミーティングは、毎回30分から1時間程度ですし、そもそも短いスパンで実施しているので長い時間は必要ありません。無駄に長すぎると間延びして雑談が中心になってしまうこともあります。
③対象
人事評価の面談は、直属の上司が、主に1階層下の部下に対して行うもの。1on1ミーティングも同様に直属の上司と部下が1対1で面談を行います。部下が10人いる上司は、1人に30分から1時間程度のミーティングを定期的に10回実施することになるでしょう。
もちろん、10人それぞれで話題は異なります。目標設定や現業務の状況、前回のミーティングプラン内容の進捗状況などをもとに、10人それぞれと対話を進めていくのです。
④目的
人事評価の面談で扱われる主な内容は、目標の設定、人事考課結果のフィードバック、半期または4半期の達成度、進捗状況の確認と上司からのアドバイスなど。
1on1ミーティングは、上司と部下の自由な対話から、お互いの信頼を築き上げて、上司が部下の成長を支援し育成する場です。
実際のミーティングでは日々の心身の健康チェック、現場の安全性の確認、業務や組織の改善点、モチベーションアップ、キャリア支援などを目的にしています。
⑤テーマ
人事評価の面談は、半期または4半期に1度行われ、その際、で設定した目標の達成について話し合います。しかし1on1ミーティングでは、特別重要でもなく、緊急性はないけれど今、上司に伝えたいことをテーマする場合が多いです。
たとえば、
- 今、業務で困っていること
- プライベートの悩み
- 組織内での気付いたこと
- 現在取り組んでいること
- 今後のキャリアプラン
- 次にチャレンジしてみたいこと
- 日々の業務における成功体験や失敗体験から気付いたことや学び
- 上司のサポートを必要としていること
- 同僚や他の部署との人間関係の問題
- 経営の方向性や戦略に対する疑問や意見
- 組織の改善点
など。
⑥必要なスキル
1on1ミーティングは、人事評価の面談とは異なり、部下の成長を目的とします。そのため上司にはコーチングスキルやカウンセリングなどのスキルが必要になるのです。
- 部下の話にじっくりと耳を傾ける傾聴スキル
- 部下の本音を引き出す質問スキル
- 部下へ指示するのではなく適切な改善点を伝えるフィードバックスキル
- 部下のやる気を引き出す勇気づけ(承認)スキル
など。1on1ミーティングを導入する場合、上司に対して研修やセミナーなどを実施するとよいでしょう。
⑦反映先
人事評価の面談で生じた上司の評価は、部下一人ひとりの今後の昇進や昇格、昇給やボーナスの査定、人事異動などに反映されます。
1on1ミーティングは、人事評価面談と同じく上司と部下の1対1の面談となりますが、業績の直接的な評価は行いません。人材育成を目的とした、あくまでも部下が主役の、部下の成長のための面談なのです。
⑧公式制度
人事評価の面談を、人事部が所管となる公式な制度とする企業は多いです。
人事考課は、上司が部下を評価して、昇給やボーナス、昇進などを目的として会社への貢献度や業務能力などを査定したもの。社長などの経営者、人事部、部長や課長など、一部の社員だけが確認できるシークレットなものであることが多いです。
これに対して、1on1ミーティングは、人材育成を目的としている面談となります。人事部が所管となる公式な制度の場合もあれば、有志のみが実施するケースもあるのです。
4.人事評価制度の活用方法
人事評価制度は給与を決めるためだけに行われるものではありません。人事評価に力を入れているのに全く反映されない、業績が伸びないと嘆いている企業は、人事評価制度が本来果たすべき役割を見失っているのです。
部下を評価する立場の社員は、人事評価制度を活用すべきですり、そこに書かれている内容をただ理解するだけでは会社も人材も成長しません。人事評価に記載されている内容が、評価に関することすべてを網羅しているとは限らないからです。
人事評価を通して客観的に明らかになる事柄、知識やスキル、現状を把握することで、課題が明確になり目標達成へとつながります。
5.1on1ミーティングが人事評価と勘違いされるケースの対処法
1on1ミーティングが人事評価と勘違いされるケースがありますが、1on1ミーティングは部下の話を上司が積極的に聴く面談です。プライベートなことから業務での失敗談までありのままに心の内を話した部下が、その対話をもとに自分の評価が上げ下げされるのではないかと、不安を抱く場合もあります。
そうした誤解を招かないためにも、1on1ミーティングの目的は上司と部下のコミュニケーションの向上であり、部下の能力を引き出し部下の育成のための時間ということを事前に伝えましょう。
人事評価とは全く異なるミーティングだと社員に周知しておかなければ、1on1ミーティングで得られる成果はないに等しいといえます。