1on1ミーティング、何を準備する? 効果的な進め方4ステップ

1on1とは上司と部下が1対1で行うミーティングのこと。タレントマネジメントでは必須ともいえる手法です。今回は1on1について解説します。

1.1on1とは?

1on1とは、上司と部下が1対1で向き合って行われる対話のこと。1on1ミーティングと呼ばれることもあります。

アメリカのシリコンバレー企業で始まり、日本でも有名企業が積極的に取り入れていることで注目されています。

1on1ミーティングとは? 目的や効果、やり方、話すことを簡単に
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1on1の目的

1on1の最終的な目的は、人材育成と組織活性化の両面から、企業の生産性を高めていくことです。

個々の社員の強みに着目し、成長を促すことでそれぞれの能力やモチベーションを高めます。そのため1on1では、対話で社員一人ひとりと良好な関係を築くことを重視するのです。

①人材育成

1on1の目的のひとつは人材育成です。部下の悩みや問題を一緒に明確化し、解決策や行動案を自ら考えてもらうことで、部下は納得感とともに結果を受け入れます。部下は、上司からの結果や進捗に対するフィードバックを受けて経験と自信を積み重ねていくのです。

一方上司はチームビルディングやチームマネジメント能力が鍛えられます。このように、1on1は上司と部下の双方にとって成長機会となるのです。

②上司・部下のコミュニケーション円滑化

上司が部下の話をうまく引き出し、考えや価値観などを理解することで、両者のコミュニケーションを活性化させることも目的のひとつです。組織目標達成のためには必須のプロセスだといえるでしょう。

③社員のモチベーションアップ

1on1で上司や所属チームとの信頼関係が築かれると、社員は企業への愛着や貢献意欲などが高まっていきます。これらは仕事に対するモチベーションにつながるのです。

少子高齢化による労働人口の減少や、キャリア観の変化などにより、日本の多くの企業が人材確保を課題としています。採用した優秀な人材の離職を防ぎ、社員の成長と長期的な貢献を実現するには、社員のモチベーション向上が非常に重要なのです。

1on1ミーティングの目的とは? 企業が1on1を導入する効果
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2.1on1を効果的に実施するための準備

効果的に1on1を実施するためには、丁寧な事前準備が必要です。貴重な時間を共有するのですから、お互いに前向きな気持ちで終えられるよう準備しましょう。

充実した1on1のために、人事担当者と上司それぞれが押さえるべき点と、オンラインで行う場合のポイントを説明します。

①人事担当者の行う準備

1on1を実施する際、人事担当者が行うべき準備があります。社員への説明とともに、1on1を実施する上司と部下が必要とするサポートを行いましょう。

目的を明確にする

1on1の目的を確認し、上司と部下の共通認識をつくります。「1on1とは何か」「なぜ行うのか」など、この時間をどのように過ごして欲しいか明確に伝えましょう。

とくに重要なポイントは、部下の成長をさらに促すための時間であることを伝えることです。報告や評価など、部下の業務進捗を上司が管理するための時間ではないことも周知しておく必要があります。

上司のマネジメントスキルレベルを確認する

各上司のマネジメント経験やスキルレベルを把握し、必要に応じてサポートします。人事担当者は経験の少ない上司に対して、メンター制度、研修や勉強会などを設けましょう。上司側の不安や懸念を取り除きながら経験を積ませる工夫が必要です。

事前に社員の理解を得る

1on1導入に先がけ、社員にとってのメリット、上層部の考えや思いを理解してもらうことが大切です。社員の納得感を得られれば積極的かつ前向きな姿勢につながり、期待する効果も出やすくなります。

多忙な現場であればあるほど、導入時にネガティブな意見が出るかもしれません。それらの意見も丁寧に吸い上げて真摯に対応し、社員の理解と納得を深めていきましょう。

②面談を担当する上司が行う準備

実際に1on1を担当する上司も事前準備が必要です。前もって部下と目的や意図を共有し、話したいことをまとめてから当日に臨みましょう。

部下との目的の共有

事前に部下と1on1の目的を確認しておきましょう。1on1は部下を成長させるための場ですが、上司が答えを教える場ではありません。あくまで自力で答えにたどり着くため、上司にサポートを求める時間だという認識を、上司と部下がお互いにもつことが大切です。ただの雑談で終わらせないよう、上司から部下に共有しておきましょう。

事前にアジェンダを準備

アジェンダの取りまとめも上司の準備のひとつです。1on1は部下の内省の場でもあり、効果的なミーティングにしなければなりません。そのため事前に日程を周知しておき、部下には話したいことをアジェンダにまとめてもらいましょう。

上司も当日話すことをアジェンダにまとめておきますが、細かい質問項目は必要ありません。「この1週間どうだった?」「最近困っていることはない?」といった、部下の話を促すオープンな質問を用意しておくと便利です。

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③1on1をオンラインで実施する場合の事前準備

オンラインで1on1を実施する場合は、対面で行うときの注意点に加えてオンラインならではの準備が必要です。

ハード面の環境整備

オンラインの場合、音声と映像の良し悪しが対話の質に影響します。1on1当日と同じ環境で事前テストをしておき、懸念点や問題点があれば早めに対処しておきましょう。

以下の項目をチェックしておくことが大切です。

チェックリスト

・インターネット回線
・マイク
・イヤホン、スピーカー
・カメラ
・接続環境のセットアップ
・使用ツールの準備と操作確認

事前にルールを設定

オンラインでのコミュニケーションに関する共通の基本ルールがあるとよいでしょう。不慣れな人も多く、対面と比べて制限も多いためです。

人事部が下記のような全社共通ガイドラインを設定、共有しておくと、現場の混乱を最小限に抑えられます。

ガイドラインの例

・静かな環境で参加する
・定刻5分前までに入室し、マイクとカメラのテストを済ませる
・1on1中はカメラをつけ、ミュートをはずす
・相手が話し終わってから話す
・うなずきや相槌などで積極的に反応を示す

オンラインツールの選定

1on1で使用するオンラインツールは、音声と映像が利用できるものを選びましょう。安定した接続はもちろん、会話内容の漏洩を防止するセキュリティーも重要なポイントです。

続々と新しいツールや機能が登場していますが、

  • 必要な機能が揃っているか
  • 操作はしやすいか
  • 自社で使用しているOSやセキュリティソフトと相性がよいか
  • アプリ以外にブラウザ接続もできるか

など、自社に合ったツール選定を進めましょう。

テレワーク(リモートワーク)での1on1のやり方
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3.1on1の進め方とそのコツ

せっかく1on1を導入しても、通常の評価面談や上司の独演会、ただの雑談になってしまっては意味がありません。上司と部下、双方にとって有意義な1on1の進め方、効果を上げるうえで大事なコツについて説明します。

1on1の進め方を4つのステップで解説

1on1を進める流れは、大まかに分けると

  1.  事前準備
  2.  実施
  3.  振り返り
  4.  記録

の4ステップです。効果的な1on1を実現するために、それぞれのステップで注意すべき内容や、重要なポイントを説明していきます。

①部下と1on1の目的や効果を共有

1on1の実施前に

  • 1on1とは何か
  • なぜ行うのか
  • どんな効果が期待されるか

など、部下に1on1の内容や目的を共有します。ミーティングの目的を把握していないと、お互いに話がかみ合わずムダな時間になってしまうでしょう。

また部下の緊張を取り除き、少しでも前向きな気持ちで1on1に臨めるように配慮することが重要です。あくまでも成長するために悩みや不安を解消する場であることを念入りに説明し、人事評価には影響しないと明言して安心感を与えましょう。

②1on1の実施

当日はアジェンダに沿って上司が部下に質問し、ときにフィードバックをしながら1on1を実施します。部下が主役の場なので、可能な限りアジェンダは部下が準備することが望ましいでしょう。

部下が1on1に慣れていない場合や消極的な場合は、上司が簡易的なアジェンダを用意しておくと双方の時間を有意義に使えます。2回目以降の1on1であれば、必ず前回の記録を持参して反映することも重要です。

③課題の振り返り

1on1では課題や目標の確認と、行動の振り返りが大切です。常に目標と現状のギャップを計測し、次の行動計画を練ることで部下の成長につなげます。部下の強みや苦手な部分についても触れ、部下のモチベーションや向上心がよい形で刺激されるように工夫しましょう。

  • 目標の高さや行動期間に無理はないか
  • 調整や軌道修正の必要はないか

といった点も定期的なチェックが必要です。

④面談シート記入

1on1の内容は面談シートに記録し、上司と部下がお互いに確認できるようにします。どのような話をし、次回までの行動計画として何を設定したのか記録しておくことで、日常での見直しや次回の振り返りで活用できるでしょう。

部下の変化や成長の記録でもあるため、あとから見返したときに、部下の自信や自己肯定感を養えることも大きなメリットです。

効果的な1on1を実施するためのコツ

効果的な1on1を実現するために、上司が知っておきたいコツや気をつけたい点を説明します。

上司の経験が少なかったり、1on1に苦手意識があったりする場合は、下記のポイントをおさえましょう。そのうえでメンターをつけたり研修や勉強会を開催するなど、人事部が積極的にフォローすることが重要です。

フィードバックを充実させる

1on1でのフィードバックは部下が客観的に現状把握し、自ら課題と改善策にたどり着くためのサポートを意味します。

上司の目から見た評価を伝えるうえで、部下の人格否定や単なる指摘で終わらないよう、言いまわしや話し方には十分な注意が必要です。適切なフィードバックは上司と部下の信頼関係を築き、部下の自己肯定感も高めるでしょう。

対等の立場で1on1を実施する

明確な上下関係がある指導や指示とは異なり、1on1は対等な立場で行うことが重要となります。

最低限の信頼関係が土台になければ、上司がその場で部下に自己開示を求めることはほぼ不可能です。上司は普段のコミュニケーションで部下の心理的安全性を担保しておきましょう。部下に寄り添い傾聴することで、部下の本音や率直な発言を引き出し、自主性を養います。

1on1の目的を常に意識する

1on1の最終的なゴールは部下の成長です。ゴールを互いに認識、共有したうえで常に意識し、準備から振り返りまでを上司と部下で一貫して行います。とくに上司は、一方的な価値観や評価の押しつけにならないよう注意しましょう。

傾聴を徹底する

部下の話を興味深く聞き、どのような意見や思いがあるのか、正しくつかむことが大切です。くれぐれも部下を途中でさえぎったり、否定したり、一方的にアドバイスしたりしないことを心がけてください。

とくに1on1をはじめてすぐは、お互い慣れない形式のため緊張するかもしれません。話しやすい雰囲気はリラックスした状態から生まれます。部下の緊張を和らげることはもちろん、自分の緊張も忘れずにほぐしましょう。

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4.1on1の効果を高めるスキル

コーチングフィードバックは、1on1を効果的に進めるための重要なスキルです。部下の話によく耳を傾け、質問や対話を通じて部下の気づきを促します。

コーチング

コーチングとは、相手の話をじっくりと聞き、本質的な質問を重ねることで納得感のある深い気づきや学びを支援するスキルです。

上司は

  • 傾聴
  • 質問
  • 対話

を通じて、現状確認から課題設定、行動計画に至るまで、部下本人から答えを引き出します。答えを教えるティーチングとは明確に区別し、アドバイスや指示出しと意識的に使い分ける必要があるでしょう。

フィードバック

ビジネスでのフィードバックとは、部下の実施した業務内容や成果に対して、上司が評価と根拠を客観的かつ具体的に伝えること。課題を明確化し、より実践的な行動計画を検討する際に重要なアクションです。

上司から見た部下の成長や変化を率直に届けることで、部下のモチベーション向上も期待できます。主要なフィードバックの型を3つ説明します。

SBI(SituationBehaviorImpact)型

SBI型とは

  • Situation(状況)
  • Behavior(行動)
  • Impact(影響)

の流れで実施するフィードバックです。なぜその事象が起きたか状況を整理し、部下がどんな行動をとって、その結果どのような影響があったかを上司が論理的に説明していきます。時系列で構造的に整理されるため、客観的に理解しやすいのが特徴です。

サンドイッチ型

サンドイッチ型とは、ネガティブな指摘をポジティブな評価ではさむ方法です。最初にほめることで部下の心理的ハードルを下げ、後に続く指摘を受け入れやすくします。最後はもう一度ポジティブな内容で終えましょう。部下のモチベーションを維持しながら、必要なフィードバック項目をすべて伝えられます。すぐに取り入れやすいこともメリットです。

ペンドルトンルール

ペンドルトンルールとは、心理学者のペンドルトン氏が開発したフィードバックの方法です。この方法では、フィードバックを受ける人に良かった点、改善すべき点を考えてもらうことがポイントとなります。

自ら評価点と改善点を探り、自発的に次の行動計画を設定できるようになることが狙いです。上司が答えを提示しないという点で、コーチングと類似したフィードバック方法です。

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5.【まとめ】1on1ミーティングの質と効果を上げるには?

1on1の質を高め、効果を最大化するためには

  • 事前準備を万全にする
  • 早期に丁寧なフィードバックをする
  • 仕組み化し継続的に行う
  • 企業文化として浸透させる

ことが不可欠です。また人事部の定期的なモニタリング、説明会や研修の実施など、根気強いサポートが重要です。

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徹底した事前準備

人事担当者として行うべき準備は、社員が取り組みやすい制度設計と社内への浸透だと言えるでしょう。実施目的の周知と理解を促進することは、事前に社員の不安を減らす点でも有効です。また話を聞き取る上司側のスキルの見極めや、該当部署の上司・部下の人間関係なども、制度を整える前に確認しておくとよいかもしれません。

現場で1on1を実施する上司の立場であれば、現場レベルの実施目的の浸透と具体的な質問項目の準備が必要です。以下の記事を参考にするなどして用意してみてください

1on1ミーティング質問項目集|具体例や質問のポイント、選び方
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早期に丁寧なフィードバックを実施

部下の業務についてこまめにフィードバックすることで、成果やモチベーションにつながります。早い段階で適切なフィードバックがあると、部下は成度と方向性の確認、不安や懸念を解消できます。同時に信頼関係が生まれていくでしょう。

1on1ミーティングの仕組化

1on1は継続が鍵です。上司と部下が共通目標について定期的に振り返ることで、学びや成長を実感しやすくなります。1on1の終了時には次回のスケジュールと、何にどう取り組むかアクションプランを設定しましょう。

1on1の内容をもとに、上司が日常的に小さな声掛けを意識することも有効です。前回たてた目標や行動計画を常に意識することで、部下は次の1on1までの期間を有意義に過ごせます。