1on1での質問は、ミーティングを効果的なものにするうえで欠かせません。ここでは1on1の質問例や質問のポイント、うまく質問するために必要なスキルなどについて解説します。
目次
1.1on1は質問内容が重要
1on1は部下の自発的な発言を尊重する対話型のコミュニケーションであるため、部下の発言を促してモチベーション向上や成長につなげる質問が重要になるのです。
そもそも1on1とは、上司と部下が定期的に行う1対1のミーティングのこと。目的は部下に内省を促したり成長をサポートしたりすることです。
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2.1on1の質問例
1on1の質問として主に挙げられるのが、以下7つです。なかでも「プライベート」「心身の健康」「モチベーション」は、互いに信頼関係を築き、理解を深めるためにも毎回確認するとよいでしょう。
- プライベートに関する質問
- 心身の健康を確認する質問
- モチベーションをアップさせる質問
- 信頼関係を深める質問
- 業務や会社に関する質問
- 目標設定や評価の改善につながる質問
- キャリアプランを確認する質問
①プライベートに関する質問
プライベートに関する質問は、本題に入る前の雑談として有効です。次のような質問を投げかけ、仕事以外の情報を共有します。
- 最近どのようなニュースが気になっているか
- 次の連休はどのように過ごしたいか
部下が話しやすいよう、上司が自分の考えをかんたんに述べるのも重要です。緊張しがちな1on1の雰囲気を和ませるだけでなく、部下の性格や心身の健康状態を把握するのにも役立ちます。
②心身の健康を確認する質問
部下の体調やメンタル状態は、仕事のモチベーションやエンゲージメント、離職防止にもつながる重要な要素です。次のような質問を投げかけ、部下の心身の健康を確認します。
- 最近体調に変化はないか
- 夜はきちんと眠れているか
- 仕事で悩んでいることはないか
- 人間関係でトラブルはないか
- 仕事で悩んでいることについて誰かに相談できるか
- 業務が不規則になったり業務量が過多になっていたりしないか
③モチベーションをアップさせる質問
部下の意欲を引き出す質問も重要です。部下のモチベーション向上を意識して、次のような質問を投げかけてみましょう。
- 今チャレンジしたいことはなにか
- 今まで取り組んできたなかで一番やりがいを感じたのはどんな仕事か
その質問によって部下のやる気が削がれる課題を解決していけば、離職防止を図れるうえ、組織の活性化も望めます。
④信頼関係を深める質問
入社したばかりの新入社員や中途採用者などは、お互いを理解することからはじめます。次のような質問を投げかけ、相互の信頼関係を深めましょう。
- (食べ物やスポーツ、テレビ番組など)どんなものが好きか
- 最近買ってよかったと思ったものはなにか
ただしいきなり深い部分に踏み込んで部下に警戒心を与えないよう注意が必要です。
⑤業務や会社に関する質問
はじめて1on1を実施する際はやはり、業務に関する質問をしましょう。部下によっては上司と1対1の状況に苦手意識を持つ人も。そのような人は突然プライベートの話題や将来のキャリアについて質問されても、どのように返せばよいのかわかりません。
具体的な仕事内容や組織に関する質問であれば、仕事の延長線として考え、話すことへの心理的障壁が低くなります。そのため次のような質問が効果的です。
- 得意な仕事、苦手な仕事はなにか
- モチベーションが上がる仕事はなにか
⑥目標設定や評価の改善につながる質問
組織やチームの方向性を改めて共有しながら、部下の目標について深掘りしていく質問も効果的です。次のような質問を投げかけ、部下の組織の目標をすり合わせましょう。
- 目標を達成するうえで障害はないか
- いまの課題をクリアしたらどんなこと取り組みたいか
- 自己評価と他己評価のギャップについてどう考えているか
お互いに納得のいく目標設定が実現できるほか、部下のモチベーションアップも期待できます。
⑦キャリアプランを確認する質問
キャリアプランに関する質問も欠かせません。日常業務をとおして部下に気付きを促し、自身の能力開発や今後のキャリアを考えるきっかけを作ります。そこで有効なのが、次のような質問です。
- ライフプランやキャリアをどう描いているか
- ビジネス面ではどのような成長を描きたいか
本人のなかに明確なビジョンや具体的なキャリアイメージがない場合、仕事で力を入れていることや大切にしていることなどを再確認させる質問を投げかけます。そしてキャリアプランの設定をサポートしましょう。
3.1on1でうまく質問するポイント
1on1の成功に必要なのは、ミーティング前の準備と相手への気づかい。ここでは1on1でうまく質問するためのポイントについて説明します。
- 信頼関係を醸成する
- 部下の話に耳を傾ける
- 気軽に話せる雰囲気を作る
- 目的を共有する
- 話す内容をあらかじめ考えておく
- 定期的に実施する
①信頼関係を醸成する
「この人になら話しても大丈夫」と思われている上司と「この人に話すのは不安だ」と思われている上司。部下がどちらに本音を話したいと思うかは一目瞭然でしょう。
日頃から信頼関係を築ける風土を作っておくと、部下にとっては安心感が、上司にとっては部下に対する理解度が向上します。状況によっては上司への指導を行ったり、企業風土づくりの施策を全社的に打ち出したりするのも必要です。
②部下の話に耳を傾ける
1on1では「部下の話を聞く時間の割合は8割以上」ともいわれています。しかし1on1の主役は部下であり、上司の考えや自慢話を聞かせる時間ではないのです。
慣れないうちは上司が正解の方法を一方的に話したり、部下の話をさえぎって否定したりするかもしれません。また高圧的で一方的な態度を取る上司に、部下は本音を話したいとは思わないでしょう。
③気軽に話せる雰囲気を作る
はじめのうちは何かを聞き出そうとするより、何でも話せる環境作りを意識します。雑談を中心にコミュニケーションをとって関係性を深めたり、話に相槌を打ったりして「この人は自分の話を聞いてくれる」「自分の話に関心を持ってくれる」と思わせることが重要です。
相手の緊張を和らげるには、対面ではなく斜めに座ったほうがよいとする統計データもあります。
④目的を共有する
1on1を実施する前に目的を共有しておくのも重要です。目的が不明瞭なまま進めても、評価面談と変わらず終わったり、部下が不満を述べるだけの場になったりするおそれがあるでしょう。
1on1は部下の成長を促進するための時間だと、上司はもちろん部下も認識する必要があります。部下にとっては上司からの伝達や評価叱責を受ける場ではなく、自分の成長のために本音で話せる場なのだと理解してもらう必要があるのです。
⑤話す内容をあらかじめ考えておく
1on1がうまくいかなかった理由として多いのが、「何を話せばよいのか分からないまま時間が過ぎてしまった」。雑談だけで終わったり、無言の時間が続いたりしないよう、話す内容をあらかじめ考えておきましょう。
質問や話題を事前に準備しておけば、部下の成長やモチベーションアップに必要な話を計画的に引き出せます。ただしここでも1on1の主役は上司ではなく部下であることを忘れてはいけません。
⑥定期的に実施する
1on1は一度で完璧を目指す取り組みではありません。定期的な開催と継続がお互いの距離を縮め、密な情報共有を可能にするのです。
基本、1週間に1回や隔週に1回などの短い頻度で行いましょう。これによりPDCAのスピードや部下の成長スピードも早まります。もし不安を感じやすい・テレワークで孤立しがちな部下がいる場合、高い頻度で実施するとよいでしょう。
4.1on1でうまく質問するためのスキル
1on1でうまく質問するにはどうしたらよいのでしょう。ビジネスパーソンに必須のスキルについて説明します。
- 傾聴力
- 質問力
- 要望力
- フィードバック力
①傾聴力
1on1にもっとも必要といわれているのが部下が気兼ねなく本音を話せるように導き、内容を理解するための「傾聴力」。しかし単に部下の意見や考えに同意するわけではありません。「部下が大切にしているものを理解して話を聞く」ことです。
業務の状況や事実だけを淡々と聞くのではなく、部下の思いや願いを感じながら感情に触れるコミュニケーションスキルを指します。
②質問力
突然「さぁなんでも話してください」「最近どうですか」といわれても、部下は困惑してしまいます。そこで必要なのが、部下に気付きや自発性を促すためのスキル「質問力」。
YesかNoで答える「クローズクエスチョン」と、自由な回答ができる「オープンクエスチョン」があります。場の雰囲気や距離感、話題内容によってこれらを使いこなすとよいでしょう。
③要望力
部下に挑戦を促すスキルを「要望力」といいます。そっと背中を押して、上司が質問したことを実践につなげてもらうためのスキルです。
この要望が強すぎると、いつもの業務命令になってしまうため注意しましょう。また上司が描いたストーリーを部下に当てはめるのも要望と異なります。部下のモチベーションが高まった様子を見て、最初の一歩を踏み出すための後押しに留めておくのです。
④フィードバック力
効果的なフィードバックは部下の内省を深めるとともに、具体的なアクションや変化につながります。部下の話をじっくりと聞いて理解し、改善に向けた具体的なアクションをすり合わせるために必要なのが「フィードバック力」です。
ときには部下にとって耳の痛い話をしなければならないときも。その際にも部下の人格を否定せず、成長のきっかけとするための要望を伝えるフィードバック力が求められます。
5.1on1で質問する際の基本的な流れ
1on1は具体的にどのような流れで進められるのでしょうか。ここでは効果的な1on1を実施するための流れや重要なポイントについて説明します。
導入したばかりの時期、「実施するメリットがわからない」「部下が多いため長時間時間を割けない」などネガティブな意見が出てくると考えられるためです。1on1は部下の成長を促進するための時間であると、上司はもちろん部下にも理解してもらいましょう。
日時は上司が指定しても、部下が選択してもかまいません。ただし一度決めた日程で開催が難しくなった場合は、キャンセルではなく別の日時に開催しましょう。
部下が消極的だったり1on1に慣れていなかったりする場合、前述した質問例やポイントを参考に上司が簡易的な流れを用意しておきます。ただし上司ばかりが発言したり、部下への質問攻めになったりしないよう注意が必要です。
振り返りは目標と現状のギャップを計測し、次の行動計画を練るうえでも重要です。また聞ききれなかったことや聞き方がうまくなかったことなどを整理すれば、次回の1on1に活用できます。
6.1on1を導入している企業例
1on1を導入する企業は年々増加しています。ここでは1on1を導入して成果を出している大手企業3社について説明しましょう。
パナソニック
大手電気メーカーのパナソニックは、社内カンパニーの「コネクティッドソリューションズ社」にて1on1を導入しています。目的は事業やマネジメント変革のための土壌づくり。実施頻度は2週間に1回、最低15分のミーティングで部下から対話を行うスタイルです。
結果、部下からは「普段の仕事のなかでは相談しにくい悩みが相談できる」という声が、上司からは「部下の考えていることがよくわかり、仕事がスムーズになった」という声があがるようになりました。
日清食品
大手食品会社の日清食品では、さらなる年商や企業規模の拡大を目標として、月に1回、30分のミーティングを実施しています。同社では導入に先立って「1on1の質問スクリプト」を配布し、1on1がスムーズに浸透するよう工夫しました。
部下にとっては「1on1は部下の成長、自己アピールの場」である旨を、上司には「部下みずから発火し行動するよう1on1で仕向ける必要がある」と強く説き、社内に浸透させたのです。
グリー
ソーシャルメディア事業を展開するグリーでは、最低でも月に1回の1on1を実施しています。目的はMBO(目標による自己管理)の状況を確認し、部下が目指す姿と現状のギャップを認識させること。
同社では期初に設定した目標や達成基準、アクションプランに対して、進捗確認や目標見直しのきっかけとして1on1を活用しています。