21世紀型スキルとは、ダイバーシティが叫ばれる現代で生きていくために必要とされるスキルのことで、次代を担う人材には欠かせません。
ここでは、
- 21世紀型スキルとは?
- ATC21s
- 社会人基礎力
- 教育現場について
などの切り口から、21世紀型スキルについて掘り下げて見ていきます。
目次
1.21世紀型スキルとは?
21世紀型スキルとは創造性やコミュニケーション能力、情報リテラシーなど働くためのツール活用術のことで、次代を担う人材が身に付けるべきスキルです。
21世紀型スキルとATC21s
21世紀型スキルを提唱したのはATC21s(Assessment and Teaching of 21st Century Skills=21世紀型スキル効果測定プロジェクト)という国際団体です。この団体には、アメリカなどの政府や大学、Microsoftなどの企業も参画しています。
2.21世紀型スキルが注目される理由
2011年、アメリカデューク大学のデビッドソン教授は「将来、子どもたちの65%が今はない職業に就くだろう」と発言しました。つまり、未来になればなるほど現在からはとうてい考えられないような仕事が生まれていると予測されているのです。
このように変化する世界に対応するために必要とされているのが21世紀型スキル。今はまだ存在しない職業への準備であり、情報化によって生まれる新しい職業に適した新しい教育だといわれています。
3.21世紀型スキルを構成する4つのカテゴリ
21世紀型スキルは、4つのカテゴリで構成されています。その詳細を見ていきましょう。
- 思考の方法
- 仕事の方法
- 仕事のツール
- 社会生活
①思考の方法
思考の方法には、
- 創造性とイノベーション
- クリティカルシンキング(批判的思考)、問題解決、意思決定
- 学び方の学習、メタ認知(認知プロセスについての知識)
などが挙げられます。
②仕事の方法
仕事の方法には、
- コミュニケーション
- コラボレーション(チームワーク)
などが挙げられます。求められるのは、自らを律しつつも、他人と共に協調する能力などです。
③仕事のツール
仕事のツールには、
- 情報リテラシー
- ICTリテラシー
などが挙げられます。新しい知識をつくり出すために、テクノロジーの力を利用する(集結させたり、拡張させたりする)ことが求められます。
④社会生活
社会生活には、
- 市民性(ローカルとグローバル)
- キャリア設計
- 個人的、社会的責任(文化についての理解と適応)
などが挙げられます。変化の激しい世界の中で生きていくための適正や理解、適応が問われるのです。
4.21世紀型スキルと社会人基礎力
社会人に必要な能力として知られているものの中に、経済産業省が2006年に定めた社会人基礎力があります。
「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」で構成されており、21世紀型スキルとは少し異なった視点から必要なスキルを提唱しているのです。
前に踏み出す力(アクション)
社会人基礎力を構成する「前に踏み出す力」(アクション)には、主体性、働きかけ力、実行力の3要素があります。
主体性
主体性とは、物事に自発的に取り組む力のことであり、自らの意思で動くこと。自らの意思がベースとなるため、目的は判断をする上で大切な要素になります。主体的に動くためには、自らがしっかりと目的を持っていることが必要不可欠です。
働きかけ力
働きかけ力とは、相手に訴えかける力のことで、「他人に働きかけ巻き込む力」と定義されており、周囲の人びとに行動を呼びかけ、人びとを動かしていくことを指します。チームやプロジェクトなどをまとめる立場の人に求められる能力です。
実行力
実行力とは、実際に行動していく力のこと。「目的を設定し確実に実行していく力」と定義されており、自ら目標を設定し、失敗を恐れずに行動に移し、粘り強く取り組む行動を指します。失敗を恐れずに、という部分は新入社員などに求められる能力でしょう。
考え抜く力(シンキング)
社会人基礎力を構成する「考え抜く力」(シンキング)には、課題発見力、計画力、創造力の3要素があります。
課題発見力
課題発見力とは、課題は何かを見出す力のこと。
「現状を分析し、目的や課題を明らかにする力」と定義されており、自ら問題を見つけ、解決の必要性を提案する行動を指します。働く上で必要不可欠ですが、その先にあるのは問題解決のため、レベルの高い能力といえるでしょう。
計画力
計画力とは、課題を解決する計画を立案する力のこと。
「課題に向けた解決プロセスを明らかにし、準備する力」と定義されています。課題解決のための複数のプロセスから最善の策を見出し、その準備をする行動を指します。
創造力
創造力とは、ひらめきといったアイデアを生み出す力のこと。
「新しい価値を生み出す力」と定義されており、既存の発想にとらわれず、新しい解決策を考案する行動を指します。情報や人脈をベースに新しい価値を生み出すことが求められるのです。
チームで働く力(チームワーク)
社会人基礎力を構成する「チームで働く力」(チームワーク)には、発信力、傾聴力、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力、柔軟性の6つがあります。
発信力
発信力とは、他人に意見を伝える力のこと。
「自分の意見を分かりやすく伝える力」と定義されており、自分の意見を整理した上で、相手が理解しやすいよう的確に伝える行動を指します。ポイントは、情報の受け取り手である相手が理解しやすいかどうかです。
傾聴力
傾聴力とは、人の話をじっくりと聴く力のこと。
「相手の意見を丁寧に聴く力」と定義されており、相手が話しやすい環境をつくり、適したタイミングで質問し、相手の意見を聞き出す行動を指します。ビジネスシーンでは、態度、質問、事前知識の3つを踏まえた傾聴力が求められます。
状況把握力
状況把握力とは、自分と相手の立場などを把握する力のこと。「自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力」と定義されており、チームなどで仕事をする際、自らの果たす役割を理解する行動を指します。つまり状況を理解した上で行動する必要があるのです。
規律性
規律性とは、状況に応じて、自らを律する力のこと。
「社会のルールや人との約束を守る力」と定義されており、臨機応変に、社会のルールに則って、自らの発言などを適切に律する行動を指します。社会で生きていく上で必要最低限の能力であり、実行によって他人からの信用を得られるでしょう。
ストレスコントロール力
ストレスコントロール力とは、ストレスとうまく付き合う力のこと。
「ストレス発生源に対応する力」と定義されており、ストレスフルな環境下でも、成長の機会と捉えポジティブに対応する行動を指します。大切なのは、ミスがあって落ち込んでも、そのミスから何かを学び、次に活かす能力です。
柔軟性
柔軟性とは、状況に応じて機転を利かせる力のこと。
「意見の違いや立場の違いを理解する力」と定義されており、自らのルールや考え方にこだわるのではなく、相手の立場などを尊重し理解する行動を指します。新たな考えを理解した上で受け入れることは、人としての成長にもつながるでしょう。
5.全ての人に求められる21世紀型スキル
2011年、文部科学省が発表した資料に「21世紀型スキル」という言葉は登場しました。
2015年に国立教育政策研究所が発表した「資質・能力を育成する教育課程の在り方に関する研究報告書1』では「21世紀型スキル」は「どの国でも一部のできる人にあてたものではなく、全ての人に求められるものだ」と説明しているのです。
21世紀型能力と基礎、思考、実践
最後に、21世紀型スキルを構成する、「基礎」「思考」「実践」の3つの観点とはどんなものなのかを見ていきましょう。
基礎
基礎とは情報や数値などを集めて活用する、目的に応じてそれらを使いこなす力のこと。
思考力を支えるものが基礎力です。「読み書き」「計算」などの基礎的な知識などはもちろん、情報化が急速に進む現代を乗り越える基礎力として、情報リテラシーやICTスキルは必要不可欠でしょう。
思考
思考とはひらめきや課題の発見、論理的に考える力のこと。
21世紀型スキルの中核となるのがこの思考力です。問題の発見や解決、新たなアイデアを考案する創造力、その過程で示される論理的かつ批判的な思考力や問題の解き方などを振り返るメタ認知、次に学習するべきことを探す適応的学習力などから構成されます。
実践
実践とは自ら生き方を組み立てて選ぶ、コミュニケーションなどの力のことで、基礎力、思考力の上に位置付けられます。
自らの行動を調整し、その生き方を主体的に選択するキャリア設計力、他者と円滑なコミュニケーションを図る力、協力的に社会づくりに参画する力、倫理や市民的責任を自覚して行動する力などが含まれます。