4Rとは女性比率の高い4つの部署のことです。ここでは4Rの内容と配属のメリット、4Rが抱える課題などについて解説します。
目次
1.4R(配属)とは?
4R(よんあーる)とは、企業組織のなかで比較的女性の比率が高い4つの部署や職種のこと。代表的な4つの部署を英語で表記すると次のようになり、すべての単語に「R」が入っているため4Rと呼ばれるようになりました。
- 人事:Human resources
- 広告宣伝:Public relations
- 経理財務:Investor relations
- お客様相談室:Customer relations
2.4Rと6Rの部署
4Rはすべて内勤で危険な作業はなく、転勤も少ないです。ここでは4Rを構成する部署の詳細と6Rについて説明します。
人事(HR)
「Human Resources」を略したもので、直訳すると人的資源という意味になります。一般的には人事部のこと。
しかし人事部は採用活動や労務管理などの業務を行う部署と定義されているのに対し、HRには、従業員を単なる労働力ではなく会社の資源としてとらえているという意味が含まれています。
業務内容
人事(HR)の業務内容は次の4つです。
- 人事、労務:企業全体の賃金管理を行う労務管理や、人事制度の企画立案
- 人材育成、研修:従業員の研修制度を構築して人材を育成し「能力開発」を行う
- 採用:新卒採用やキャリア採用などを管理し、人材を有効活用する
- システム、業務ツール:人事管理を一元管理できるシステムや職務適性の検査、評価など
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PR(Public Relations)
企業や商品の情報を消費者に伝える活動のこと。自社というブランドや商品、サービスの魅力を訴えかけて存在を認知させ、消費者と企業を結び付ける広告、宣伝活動の全般を指してPRといいます。
自社が利益を得るのはもちろん、買い手にも利益を出す点に重きを置いているのです。また相互の活動によって成り立つ「関係づくり」を重視しています。
業務内容
広告宣伝(PR)のおもな役割は、各ステークホルダーに企業や商品を知ってもらったうえで、良好な関係をつくるためのコミュニケーションを行うこと。具体的には次のような業務が挙げられます。
- 社外活動:取材対応やプレスリリースの作成、配信、会社説明会などのイベント運営など
- 社内活動:社内報の作成や活動報告、事業戦略の通達など
経理財務(IR:Investor Relations)
経理財務の目的は、株主や投資家などに対して経営判断に必要な情報を随時提供し、相互に良好な関係を築くこと。
従来、機関投資家が多かったためIRも一般的にはなじみの薄い財務内容でした。しかし個人投資家か増えた近年、一般的な内容が増え、広報と近い内容になってきています。
業務内容
経理財務(IR)の業務のなかで代表的なのが、経営状況や財務状況などの情報開示。一般的には四半期報告書を3カ月ごと、決算報告書(アニュアルレポート)を1年ごとに作成して公開します。
株主総会や決算説明会などで一方的に情報を伝えるだけでなく、質疑応答への対応や意見交換会の実施なども、経理財務(IR)に含まれます。
IRとは? 業務、PRとの関係、事例
IRとは、企業が投資家や株主に向けて行う広報活動全般のこと。ここではIRにおける具体的な業務内容やPRとの関係、積極的なIR活動を行っている企業の実例などについて解説します。
1.IRとは?
IRと...
お客様相談室(CR:Customer Relations)
電話だけでなくメールやチャットなど複数のツールで、各ステークホルダーからの問い合わせに対応します。問い合わせ内容は、サービスの使い方やクレーム処理まで多岐にわたるのです。
カスタマーセンターやコールセンター、コンタクトセンターと呼ばれることもあります。コミュニケーション手段や消費者の価値観の多様化に対応するために欠かせない活動です。
業務内容
お客様相談室(CR)のおもな業務は次の3つです。
- 問い合わせ対応:電話やメール、チャットなどさまざまなツールを使い、企業の顔として問い合わせやクレームに対応する
- 顧客管理:問い合わせと顧客情報を連動して対応の重複化を防ぐとともに、スムーズな引継ぎを実現させる
- 業務ナレッジの共有:FAQやマニュアル、Wikiを作成して業務の属人化を防ぐ
6Rの関連部署
以上4つの業務に「秘書(Secretary)」と「受付(Reception)」の2つをくわえて「6R」という場合もあります。
秘書(Secretary)
業務は企業の経営陣や管理職の業務を総合的にサポートすること。社長職でも秘書のサポートを必要としない企業や、反対に専務職にも秘書がついてサポートする企業もあるため、すべての会社に秘書業務が発生するとはいえません。
一般的には特定の個人に関する業務内容やルーティンなどを理解したうえで、的確かつスピーディーにサポートします。
受付(Reception)
会社の顔として顧客を出迎えます。新規でコンタクトを取る社外の人が「はじめて会社を訪れた」「電話をかけてきた」際に接すると考えればわかりやすいでしょう。
代表電話の受電とその対応、来客案内や訪問者の情報登録および管理なども受付の仕事に含まれます。会社そのもののイメージにつながるため、高いコミュニケーションスキルとビジネスマナーが求められるのです。
3.4R配属のメリット
4Rに配属されると、どのようなメリットを得られるのでしょう。
- 身体的負担を軽減
- 社内外対応の円滑化
- 女性が働きやすい環境の構築
①身体的負担を軽減
4Rはいずれもデスクワーク中心の仕事。身体の構造上、どうしても身体を酷使する業務では男性が有利になり、女性が長く安心して働くのは難しいです。若いうちに身体を酷使した働き方ができたとしても、年齢とともに厳しくなってくるでしょう。
4Rは肉体労働がないため身体的・心理的負担も少なく、年齢を重ねても安心して続けられます。
②社内外対応の円滑化
一般的に、女性は男性に比べて細かい気遣いや共感力に長けているといわれています。この女性ながらのコミュニケーション能力を4Rに活用すると、社内外のさまざまな立場の人と良好な関係性を築けるのです。
事実、女性社員を新たに採用した技術部門で休憩時間の会話が活発になったり、難しい業務が発生した際に周囲を巻き込んで解決策を考えるようになったりした、という事例もあります。
③女性が働きやすい環境の構築
出産や育児、生理期間中など女性ならではの問題に理解が得やすいのも、女性社員が多い4Rのメリット。男性が多い職場では、どうしても男性レベルの体力、労働力と比較されます。
なかには妊娠時や生理期間中のトラブルに理解のない男性もいるでしょう。しかし同じ悩みを抱える女性が多い4Rなら、経験上のアドバイスや理解を示してくれる可能性も高まります。
4.4Rで女性の活躍が伸び悩む原因
4Rにはいくつかの課題も抱えているのです。
- ジョブローテーション不足
- 役割分担意識
- 上司のバイアス
- 長時間労働の恒常化
①ジョブローテーション不足
4Rと呼ばれる部署のなかには当然男性社員も所属しています。一般的に彼らは数年単位で他部署をローテーションし、さまざまな経験を重ねて昇進に進みますが、女性社員は4Rに固定されてしまうと現場の仕事内容や男性が多い業務の空気感などを経験できません。
社内のネットワークに乏しいまま他部署との意思疎通や調整が困難になり、結果として活躍に伸び悩むという課題があるのです。
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②役割分担意識
家事や育児、介護などの家庭責任は女性が多く担うもの、雇用慣行は男性が中心という文化が残っている結果男女間で実質的な機会の不平等が生じている可能性もあります。
事実、長時間労働者の割合は女性に比べて男性のほうが高く、1日あたりの家事育児時間も女性は4~6時間が最多なのに対して、男性の最多は1時間未満です。
③上司のバイアス
女性社員の育成を「組織のなかの他人事」と考える風潮はいまだ消えていません。また育児期の女性にチャレンジングな仕事を与えるのを避ける「過度な配慮」や、同期の男性より先に女性社員を昇進させることへの「罪悪感」などのジェンダーバイアスもあります。
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④長時間労働の恒常化
従来の日本企業における人材活用モデルでは、男性の長時間労働が常態化していました。男性と同様の長時間労働を女性に求めると、生活のバランスが崩れて就業が長続きしない、女性社員みずから正規雇用を避けるなどの事態につながります。
5.4Rの課題
4Rは女性の活躍停滞以外にもキャリア開発や長時間労働に関する問題、ロールモデルの不在などさまざまな課題を抱えています。
- キャリア開発
- 長時間労働の削減
- 人事評価
- ロールモデルの不在
①キャリア開発
女性社員のキャリア開発に向けて、育成研修や管理職に対する教育訓練などを実施する必要があります。具体的には次のような取り組みが有効です。
- 能力と意欲のある女性社員の積極的な発掘、また選抜した人材の集中的な育成
- 女性社員に向けたマネジメントスキルアップ研修の実施
- 女性社員に向けたキャリアデザイン研修を実施して自身のキャリア形成を考えてもらう
- 女性社員を教育する管理職に向けて教育訓練を実施する
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ワークライフバランスやダイバーシティなどの新しい考えが浸透するにつれ、働き方は大きく変わりました。またそれにより、働き方や将来について社員自身が見直すことも必要になっています。
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②長時間労働の削減
長時間労働の前提が女性の活躍、社会進出を阻んでいる可能性もあります。
- 育児休業から復帰して時短勤務で働いているが、重要な打ち合わせがいつも夕方以降に設定されていて参加できない
- 時短勤務では業務が変わらないので家に持ち帰っている
- 職場に残業して当たり前の空気がある
このような状況では女性の勤続年数や登用率を伸ばせません。
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昨今の日本で社会問題にもなっている「長時間労働」。過労死や過労自殺のリスクを高める過重労働が引き金となった大きな事件が多発し、社会全体に衝撃を与えています。
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③人事評価
昇進や昇格の基準、また人事評価についての見直しも有効です。「女性は管理職に向かない」という意識が会社に蔓延している場合、社員一人ひとりの公正な評価や処遇、透明性の高い人事評価制度が構築されていない可能性もあります。
社員の性別にかかわらず平等な人事評価が行えるよう、社員の能力や実績、勤務態度など見る「定性評価」と、設定した目標に対する達成度を見る「定量評価」を活用するとよいでしょう。
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④ロールモデルの不在
ロールモデルの不在も女性活躍を停滞させている要因のひとつです。ロールモデルとはお手本にしたい人物モデルのこと。
ロールモデルが身近にいると、「自分なりに行動する→成功あるいは失敗する→ロールモデルに倣って学ぶ→改善する」という成長サイクルを回せます。
たとえ社内にロールモデルがいなくても、企業が組織としての明確な指標を持ち、女性社員自身も主体的な行動で憧れの存在を見つけられれば、女性活躍はさらに推進されるでしょう。
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5.ほかの分野における4Rの意味
4Rという単語が使われるのはビジネスに限りません。ここでは環境活動やマーケティング活動で使用される4Rについて説明します。
- 環境活動
- マーケティング活動
①環境活動
環境活動では以下4つの活動をまとめて4Rと呼んでいます。
- Reduce(減らす):ごみの量を減らしたり、ごみをなるべく出さない生活をしたりする
- Reuse(繰り返し使う):リユース商品を使用したり、人に譲ったりする
- Recycle(資源として再利用する):リサイクル品を購入したり、ごみの分別を行ったりする
- Refuse(断る):マイバッグや水筒を持ち歩き、ペットボトル飲料の購入やレジ袋の利用を変える
②マーケティング活動
マーケティング活動においては「セグメンテーション」という施策で4Rを使います。セグメンテーションにおける4Rは以下の要素です。
- Rank(優先順位付け):属性ごとに分類した顧客グループに重要度をつけて順位付けする
- Realistic(規模の有効性):自社商品と顧客の属性がマッチするかを確認する
- Reach(マーケティング施策や製品到達が可能かを判断する):顧客に確実にアピールできる方法、確実に商品を届けられる方法を探す
- Response(顧客の反応を測る):顧客の購買力や特性、規模などを測って改善点を探す
セグメンテーションとは?
顧客や市場を細分化する手法のこと。ユーザーをカテゴライズしてどのユーザー層にマーケティング活動を行うかを判断する基準にします。セグメンテーションの目的は多様化したニーズに対応すること、そして企業の利益を最大化することです。
インターネットの普及により、顧客の価値観や購買行動は多様化。ニーズや市場を細分化し、それぞれに効果的なアプローチを行うためにセグメンテーションを活用します。