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「MBO」というビジネス用語を聞いたことはありますか?世界的に有名な経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した理論で、日本でも多くの企業が取り入れている目標管理の手法です。
MBOは企業の業績向上にとても有効なツールですが、一歩間違えると全く意味をなさないものになってしまいます。このMBOの目的や、その分類、メリットとデメリットについて学び、有効活用しましょう。
目次
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1.MBOとは?
MBO(Management by Objectives)とは、組織と従業員の目標を擦り合わせ、効率的な目標達成を実現するためのマネジメント手法です。従業員自ら目標の設定から達成までを管理する点で従来の手法と異なり、この違いが一人ひとりの能力やモチベーション、企業の業績向上につながります。
日本語では「目標管理制度」と表現され、多くの企業で導入されています。
目標の達成度合いが評価につながることからMBO=人事評価と考えられがちですが、これは誤りでMBOは目標達成を効率化するためのマネジメント手法です。
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P.F.ドラッカーが『現代の経営』内で提唱
MBOを提唱したのは、経営学者であるピーター・ドラッカー。
彼は、著書『現代の経営』の中で、「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに置き換えることにある」と述べています。また、これによって各人に「ベストを尽くしたい」という強い動機がもたらされると分析したのです。
ここでドラッカーが言及しているのは、マネジメント層の人材について。管理者の地位にある人たちこそ、経営者から一方的にコントロールされるのではなく、自分の目標を持つことが重要だと説いているのです。
「目標管理」の理論的根拠(マグレガーのX理論・Y理論)
ドラッカーの理論に根拠を与えたのは、心理学者・経営学者であるダグラス・マクレガーの著書『企業の人間的側面』に登場する「X理論・Y理論」。
マクレガーは、経営手法の理論として、
- X理論:「人間は元来怠け者なので、命令したり強制したりすることが必要だ」という立場から、従業員を隷属的な立場に置いてコントロールする
- Y理論:「人間は本来仕事が好きで、自らの目標のために進んで問題解決に当たろうとする」という立場から、一人ひとりの自主性を活用しようとする
2つを述べています。そして、Y理論に基づいて従業員を管理すると生産性向上・企業全体の業績アップに効果的、と説明しています。
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2.MBOとOKRの違い
OKR(Objectives and Key Results)とは、FacebookやAirbnbなど、名だたるシリコンバレー企業の多くが採用している目標管理制度です。なかでもGoogleが1999年創業期に採用し、当時40人だった従業員が今日では60,000人を超えるまでに急成長したことは、有名な話でしょう。
ともに目標管理制度であるMBOとOKR、それぞれの特徴と違いについて確認します。
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ポイント①評価の頻度
MBOでは基本的に、年次評価が想定されています。通常、従業員は年始に、年度を通じた目標が与えられます。そして年度末に近付くと、目標に対する達成度やそのプロセスが評価されます。
ところが、レビュー頻度の高いOKRでは、一般的には四半期に一度、より高頻度の企業では毎月といったペースで、細かく評価が実施されます。たとえばIT業界など、ビジネスにおけるスピードが比較的速い業界では、MBOではなくOKRが採用されやすい傾向にあります。
ポイント②SMARTな目標設定
OKRでは、SMARTの法則に基づき目標を設定することが一般的です。
- Specific:具体的に
- Measurable:測定可能な
- Achievable:達成可能な
- Related=経営目標に関連した
- Time-bound=時間制約がある
一方、MBOには決まった手法がなく、定量・定性の配分などは、組織の状況に応じてそれぞれ決められます。最近ではMBOにおいても、SMARTな目標設定が意識されるケースが多くなってきました。
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ポイント③目標管理する目的
「社員の報酬決定」をおもな目的として、MBOでは目標管理が行われます。年度の業績に基づき、社員に対して効率よく評価を実施するべく、そのパフォーマンスが計測されます。
一方でOKRによる目標管理にて目指されるのは「生産性の向上」です。組織目標を達成するべく従業員の労働生産性を高める目的で、目標が管理されます。目標の達成については従業員の報酬に影響がないことが一般的です。
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3.MBOとKPIとの違い
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、「重要業績評価指標」を意味します。目標設定や目標管理をするときに使われる言葉なので、MBOと混同して使う人もいるかもしれません。
MBOは人事評価や報酬に直結するものですが、KPIはそれ自体が直接人事評価や報酬を決めることはあまりありません。KPIは最終的な目標を達成するために細分化された指標だからです。
また、MBOは上司と部下の間で限定的に共有されることが多いですが、KPIは業務やプロジェクトに関わるメンバーに広く共有されることが多い点も両者の違いです。
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4.MBOのメリット
具体的なメリットを知ることで、MBO実施に対する姿勢やモチベーションが変わります。組織や個人にとってのメリットを深掘りしてみましょう。
①自己管理によるマネジメントが可能になる
ドラッカーは、「目標管理の最大の利点は、支配によるマネジメントを自己管理によるマネジメントに換えることを可能にするところ」と語っています。
上司の操り人形のように働いたり、与えられた業務を機械的にこなしたりするのではなく、従業員個人が自分で自分の仕事を管理・コントロールできる点は、大きなメリットといえるでしょう。
②従業員のモチベーションが向上する
経営者層や管理者層に管理されながらの仕事は、従業員個人の意思が反映されにくいもの。ときに就労意欲も減退するでしょう。
しかしMBOは自分で自分の仕事を管理します。そのため、強い責任感と、「ベストを尽くしたい」という動機付けが期待できるのです。
③全社目標やチーム目標を共有し、ベクトルを合わせられる
前述の通り、特に課題達成型のMBOでは、企業の目標とチームの目標、そして個人の目標が直結しています。個々がバラバラに設定した目標をすり合わせることは難しいですが、課題達成型のMBOによって、すべての従業員のベクトルは合致するのです。
④会社としての目標達成の実現性が高まる
課題達成型のMBOは、個々の従業員の目標が企業としての目標と直結しています。そのため、一人ひとりが目標に基づいて日々の業務をこなすことで、自然と企業全体の目標の達成へつながるのです。
⑤目標達成するための具体的施策を作りやすい
個人が自分のアイデアで設定する目標は抽象的になってしまうことも多々。達成に向けたプロセスが曖昧になることもあるでしょう。
しかし、課題達成型のMBOでは、現状に基づいて設定した目標をさらに細分化したものを目標として掲げます。そのため、達成に向けた具体的な施策を練りやすくなるのです。
⑥人材育成にもつながる
個人に自分の目標達成度を管理させることで、業務を「やらされる」だけの受け身な人材から、自ら考えて行動する能動的な人材に変わります。人材育成になるのです。
⑦リフレクションしやすい
MBOで個別に目標を管理すると、従業員は自分の仕事ぶりや能力を客観的に見つめることができるため、振り返り(リフレクション)がしやすくなります。個人だけでなく、チーム、部門、企業全体のリフレクションにも有効です。
5.MBOのデメリット
日本の多くの企業で採用されていることからMBOのメリットは大きいと推し量ることができますが、一方でデメリットもあります。デメリットを知ることは、その問題や課題解決につながります。それぞれしっかり確認していきましょう。
①個人任せの目標では、全社目標やチーム目標を達成しづらい
「組織活性型」や「人事評価型」において、従業員一人ひとりの目標設定を個人に任せきりにすると、組織全体のベクトルはそろいません。また、個々の目標達成がチーム目標・企業目標の達成とかけ離れたものになる可能性も高いです。
これは上司などが個々の目標について一緒に設定することで防止できます。
②個人の意思にかかわらずブレイクダウンした目標が下ろされる
「課題達成型」のMBOでは、上位組織で決まった目標が一人ひとりの目標へとブレイクダウンします。企業目標は個々の従業員の意思を完全に踏まえたものではありません。
そのため、
- なぜこの目標を達成しなければならないのか
- 達成するとどのような利点があるのか
などに対する説得力のある説明が必要になるでしょう。
③従業員の不公平感や不満が増す恐れがある
②でも触れましたが、上位組織が設定した目標は、個々の従業員の意思を考慮していません。その点を理解せずにノルマを割り振ると、不満が増す可能性があります。
上司は、部下のノルマが自分のノルマでもあることを自覚して、きちんと説明責任を果たしましょう。また、必要に応じて指導・フォローすることで従業員のケアが可能です。
④目標管理と人事評価を連動させる必要がある
MBOのゴールは、企業の目標を達成することで、人事評価ではありません。
しかし、目標の達成度や達成に向けた努力の部分を評価しないと、従業員のモチベーションが下がる可能性があります。企業目標の達成というゴールを見失わず、人事評価へと結び付ける工夫が求められるでしょう。
目標管理=人事評価という誤解
人事評価にMBOを活用している企業は多く存在しますし、決して間違いではありません。
しかし、前述の通り、MBOで最も評価すべき点は「企業の目標が達成されたか」というところ。人事評価は個人の評価となるため、無理に結び付けると、うまく機能しなくなる可能性があります。また個々の従業員の取り組みが人事的な評価を得るための表面的な努力にならないよう、注意しなければなりません。
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6.MBOのやり方・進め方
こちらではMBOの進め方と各ステップにおけるポイントを確認していきましょう。MBOは主に次の4つのステップに沿って運用されます。
- 目標設定
- 目標達成に向けたアクションの実施
- 進捗確認
- 評価と振り返り
①目標設定
MBOの運用は目標設定から始まります。成果や一人ひとりの成長のためには適切な目標設定が重要です。
目標設定を行う際にはいきなり個人の目標を設定するのではなく、まず企業や部署、チームといった組織単位の目標を従業員に周知します。なぜなら、個人の目標は最終的に組織の目標(利益)につながっている必要があるためです。
また個人目標を設定する際は、従業員本人が自主的に目標設定します。目標管理制度という名前から誤解されがちですが、MBOとは組織として目標を管理するだけでなく、個人が目標を管理する手法でもあります。自己管理能力を伸ばすためにも、また評価への納得度を高めるという観点からも、自主的な目標設定が重要なのです。
一方で、従業員が設定した目標をそのまま使用するわけにもいきません。上長は企業としての利益や部下の成長の観点から、目標の方向修正を行わなければなりません。具体的には次のようなポイントに注意して、目標を確認していきます。
- 組織の目標(利益につながる)内容か?
- 部下の能力に対して適切な難易度の目標になっているか?
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目標設定は、経営目標達成や個人のレベルアップのために重要なもの。適切な目標設定ができないと、最終的なゴールが達成されないだけでなく、達成のためにやるべきことも洗い出せなくなってしまうでしょう。
今回は...
②目標達成に向けたアクションの特定と実施
従業員とその上長ですり合わせを行い決定した目標の達成に向けて行動を開始します。
具体的には、まず目標達成の期日から逆算し、必要なアクションを洗い出します。その後優先順位の高いアクションから実行に移していくのです。アクションに移した後は、改善点がないかを振り返り、学び経験したことを次のアクションに活かしていきます。
③1on1などによる進捗確認
目標達成に向けたアクションが開始されたら、定期的に上長による進捗確認を行います。具体的には、部下に日報や週報を作成してもらったり、1on1ミーティングを実施するといった方法で確認していきます。
単なる進捗状況だけでなく、良い点・悪い点、問題や課題等について問いかけ、自己の振り返りを促します。時には問題解決に向けたアドバイスを行ったり、目標や行動計画の修正を提言する必要も出てくるでしょう。
ここで注意したい点は、上司が一方的に方向性を定めないようにすること。本人主体で目標や行動を検討してこそ、目標管理能力や問題解決能力の向上につながります。組織の利害に大きく関わることでなければ、上司は部下のサポートに注力しましょう。
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④評価と振り返り
期末など目標の期日ごとに個人目標の達成度を評価します。各従業員が自己評価をした後、上長が客観的な評価を行います。
ここで重要なのは、努力度ではなく、目標の達成度に対して客観的な評価を下すことです。その上で目標達成した理由、できなかった場合はその原因や問題、次はどうすべきかを部下に振り返ってもらい、これをサポートすることで部下の成長を促せます。
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7.MBOで重要な目標設定のポイント
MBOにおいて目標設定は非常に重要です。目標設定はMBOの起点であり、不適切な目標を設定してしまうと、後の工程や成果にも影響が出てくるためです。こちらでは、MBOの最初の一歩で失敗しないためのポイントについてご紹介します。
組織の目標に紐く内容にする
組織の目標を達成するために個人の目標を設定します。そのため個人の成長等のメリットがあっても、組織にとって意味がない目標を設定するわけにはいきません。必ず個人の目標や成長が組織の成長につながる内容にしましょう。
従業員個人の自主性を尊重する
MBOは組織だけでなく、個人の目標管理を効率化する手法でもあります。個人における目標管理能力や問題解決能力向上のためにも、自主的な目標設定が重要なのです。
客観的に評価できる内容にする
客観的に評価できる目標でないと、目標達成に向けてどのような行動をすべきかがクリアになりませんし、評価もしづらくなります。数字を使い定量的に表せることがベターですが、職種によっては数値で目標を表せないこともあるため、必ずしも定量的である必要はありません。
また、バリューの発揮のように、数字では表せないものの、企業の利益や成長に重要な評価項目もあるため、大切なのは客観的に評価できる目標とすることなのです。
ストレッチ目標を設定する
現状の力で達成できる目標を設定しても、個人の成長にはあまり寄与しません。背伸びをしないと達成が難しい目標を設定し、その達成のために努力や工夫を行ってこそ成長ができるのです。ただし、難しすぎる目標設定はモチベーションを下げる恐れがあるため、適切な難易度調整が重要です。
ストレッチ目標とは? ビジネス上の意味、目的や書き方、事例
ストレッチ目標とは、背伸びしないと手が届かない難易度に設定された目標のことです。ここではストレッチ目標の目的や設定する際のポイント、ストレッチ目標を設定するメリット、デメリットについて解説します。
...
8.目標管理の3種類の方法
MBOと一口に言っても、企業によってその形態はさまざまですが、導入の「目的」に着目すると、3つのタイプに分類できます。
- 組織活性型
- 人事評価型
- 課題達成型
それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
①組織活性型
「組織活性型」は、日本における最もオーソドックスなタイプのMBOです。Y理論を根拠に、従業員に自らの目標を設定させて、個人個人の自主性を引き出します。原則個々の従業員の意思が強く反映されるボトムアップ形式となっており、企業・チームの活性化を重視します。
しかし、目標を掲げることに重点を置くあまり、その達成のために何をするか、という実行計画や、目標の達成度を確認する評価の部分が不明瞭という欠点もあるのです。
②人事評価型
「人事評価型」は、MBOを人事的な評価基準として取り入れるタイプの方法です。バブル崩壊後、それまで普及していた年功序列制度がもたらす不具合を解消するため取り入れられました。
「人事評価型」では、個々の従業員の課題を年度目標として設定します。そして目標達成度と業務の評価を行いながら、個人の能力アップを狙うのです。組織活性型と同様、原則、目標は従業員本人が設定するボトムアップ形式となっています。
難点は、従業員の努力が人事評価のためのものになり、企業全体の業績アップに必ずしも直結しないという点です。
③課題達成型
「課題達成型」は、上記2つと異なり、トップダウン形式を原則としたMBO。企業の目的達成を第一に考え、それに応じて個人の目標を設定します。
たとえば、年間売上といった全社目標を部門目標に分け、さらにチーム目標へと細分化、一人ひとりの目標へと落とし込むのです。
つまり、個々の従業員が自分の目標を達成すると、チーム目標、部門目標も達成。そして全社目標が達成されるというメカニズムです。
目標管理のタイプ別の特徴
(表引用『図解入門ビジネス 最新目標管理(MBO)の課題と解決がよ〜くわかる本(山田谷勝善、 杉浦祐子、 木村善昭著)』)
組織活性型 | 人事評価型 | 課題達成型 | |
重点 | 動機づけ | 人事評価 | 企業目的の達成 |
目標の主体 | 個人目標が主体 | 集団目標が主体 | |
人事異動があった場合 | その人の目標は自動的に消滅する | 後任者が継承する | |
実施主体 | 個人中心的に実施する | 集団(部署)中心的に実施する |
「目標の連鎖性」の必要性
ドラッカーは著書『現代の経営』で、「目標は、上位部門(経営者・管理者)の目標をもとに設定しなければならない」と述べています。ドラッカーは、個々の従業員が掲げる目標は、個人の好みによるものではなく、企業の客観的なニーズを反映する必要があると考えました。
個人の好みによる目標設定はあくまでプラスアルファ。基本は、集団目標を前提としたものとする、ということです。
それぞれの目標が上位部門の目標をもとに設定されるトップダウン型のMBOでは、上位部門から下位部門までの目標に一貫性が生まれます。従業員をモチベートした結果として企業全体の業績向上を得るには、この「目標の連鎖性」が肝要となるでしょう。
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9.「課題達成型」のMBOが理想とされている根拠
ドラッカーの考え方を踏まえると、最も理想的なMBOは「課題達成型」といえます。
企業内のトップ層と個々の従業員の目標に一貫性がある課題達成型のMBOは、一人ひとりの目標の達成が企業全体の目標達成に直結するからです。
企業が業績を上げながら存続するには、従業員一人ひとりがノルマを達成しなくてはなりません。前述の通り、課題達成型で個々の従業員が設定する目標は、企業全体の目標を細分化したものですから、「ノルマ」と呼ぶことが可能です。
課題達成型の特徴とは?
課題達成型MBOの特徴とは何でしょうか。
第一に「企業」、個々の従業員はそれに続くものという考え方に基づく目標設定です。原則はトップダウン形式ですが、従業員自身に(あくまで企業目標に則った)目標を設定させるため、ボトムアップを併用しているともいえます。
課題達成型では、個々の従業員の価値観をすり合わせたり、組織全体のベクトルを合わせたりするために、面談を重視します。
また、課題達成型MBOにおける個人の目標は、そのままチームの目標に。たとえ担当者が異動しても、前任者の目標は後任者に引き継がれます。これも、課題達成型MBOの大きな特徴でしょう。
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10.日本におけるMBOの現状と課題とは?
MBOは、日本の従業員数300人以上の企業の9割前後が取り入れています。それほど、MBOは日本のビジネスに密接しているのです。
日本企業にMBOの導入が始まったのは、1960年代初頭のこと。不況を克服するための対策として注目を集め、80年代~90年代にかけて急増しました。
しかし日本企業のMBOはY理論の影響が強すぎるあまり、組織の活性化や従業員のモチベーションアップが目的になってしまっているケースも多々あります。
MBOの本来の目的とは、企業の目標を達成すること。完全に個人に任せてしまうやり方では、企業目標の達成は困難になるでしょう。
この問題を解決するには、X理論的な要素を取り入れながら、個々の人材が高い成績を出せるよう、マネジメント職の人材がリードしていくことが必要です。
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11.M&AにおけるMBO(マネジメントバイアウト)の意味
目標管理制度についてご紹介しましたが、最後に、経済関連用語としての「MBO」の意味を解説します。
マネジメントバイアウトと呼ばれるMBOは、大企業の事業拡大や、中小企業の事業承継を目的に行われます。具体的には、企業の経営陣が、既存株主から自社の株式や事業を買収して、オーナーとなる行為のことを指します。
EBO(Employee Buyout)
経営陣ではなく従業員が株式を譲り受ける場合を「EBO」と呼び、
MEBO(Management and Employee Buyout)
経営陣と従業員が共同で株式を譲り受ける場合を「MEBO」と呼びます。
経済産業省「経営者による企業買収(MBO)に関する指針」について
いま日本では、経営者によるMBOが増加傾向にあります。メディアでもM&Aの取引は注目されており、経営に関する専門家たちの間でも、議論が活発化しています。
そこで経済産業省では、平成19年に「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」を発表し、MBOに関する公正なルールのあり方を提示しました。
MBOの成功事例①Francfranc
「Francfranc(フランフラン)」を運営する旧株式会社バルスは2011年にMBOの実施を決定。同社代表取締役社長の髙島郁夫氏が設立したTM コーポレーションによる公開買付け(1株10万円/総額約157億円)を実施しました。
MBOの成功事例②すかいらーくグループ
ガストやジョナサンなどのファミリーレストランブランドを抱えるすかいらーくグループは、2000年代より主幹事業であったファミリーレストランの業績が悪化したことから、抜本的改革を断行するべく、2006年9月にMBOおよび上場廃止を実施。
MBOで上場廃止となったすかいらーくは、2014年に再び上場が承認され、同年10月に約8年ぶりの市場復帰を果たしました。