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日本では企業や組織に所属すると、多くの場合「人事評価」というかたちでフィードバックを受けたり、それによって給与を決められたりします。ところがアメリカでは今、人事評価を廃止する動きが出てきているのです。
従来型の評価制度を変えることには、いったいどんな理由があるのか、それによって何が変わるのか、日本の企業に取り入れる場合の問題点や導入方法を説明します。
目次
ノーレイティングは「人事評価をやめること」ではなく、「社員のランク付けをやめる」制度のため、評価をしなくていいというのは誤解です。人事評価の負担がかかることに変わりはありません。
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1.人事評価を廃止する米国企業が続々登場
アメリカにおけるこれまでの人事制度は、個人の成果を正当に評価し、その評価を報酬に結び付けるという形式のものでした。
ところがアメリカのフォーチュン誌が毎年発表する「フォーチュン500」にランクインしている企業に、人材に点数を付ける人事評価を廃止する動きが広まっているのです。
この動きは「ノーレイティング(No Rating)」と呼ばれ、GEやGoogle、GAP、Microsoft、アクセンチュアといった企業で採用されています。
GEは自ら生み出した「9ブロック」を2016年に廃止すると発表し、全世界に衝撃を与えました。9ブロックは国や企業規模を問わず、現在でも多くの企業が人材評価のツールとして利用しています。
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具体的に何をやめたのか?
人材および企業の成長に、人事評価は欠かせません。ですから、「人事評価を廃止する」といっても上記のような企業が実際にやめたことは、「人材の評価」ではなく「人材に点数を付けたりランク付けしたりすること」なのです。
人事評価は本来、企業がより発展するため、企業内にいる人材の成長を促す目的で行われるものでした。
しかし、人に点数を付けることや、ランクを用いて人に評価を下すというやり方自体が目的化してしまうケースも増えたのです。
また、低評価を下された人材はモチベーションが下がり、本来の目的である成長意欲の上昇や企業への貢献といった意識が薄れてしまう結果となりました。
人事評価でやる気をなくした社員への対処法は?
「人事評価は、仕事に対してどれだけ応えたかをデータ化したものであり人格を判断しているものではない」と伝えましょう。
そうすることで社員に、
なぜ評価が低かったのか
どうすればよくなるか
と根拠をも...
人事評価と同様に、各企業で見直しが検討され始めたのが「MBO(目標管理制度)」。こちらも本来の実施目的は、上司と部下が目標を共に設定・共有し、達成のため上司が部下を支援して、部下の能力発揮を促すものでした。
しかし、人事評価制度と同じく、目標達成度を評価するというランク付け自体が目的化してしまうケースが多発。肝心の上司・部下間のコミュニケーション量が不足するなど、さまざまな問題が起こるようになったのです。
No Rating、No Curve、No Calibration
ノーレイティングのトレンドが広まるまでは、「人事評価制度による点数」が、給与の決定の基盤とされてきました。昇給・減給・賞与額は、上司が部下をランク付けした結果によるというわけです。
アメリカでは”No Rating”以外に”No Curve”、”No Calibration”と呼ばれる取り組みも見られています。
- “No Rating”:評価制度による給与決定を廃止する動き
- “No Curve”:評価結果を正規分布になるように調整しない(たとえば、S評価は全体の何%まで、といった調整をしない)
- “No Calibration”:評価結果の部門間での相対的な調整を行わない
企業によっては”No Rating”の中に”No Curve”や”No Calibration”の意図も含めて言及していることもあります。
ノーレイティングが広まる背景には?
多くの企業で一般的に採用されている人事評価制度は時代に合わないものとなっている、といっても過言ではないでしょう。
たとえば一昔前、工場ラインで流れ作業が行われていた時代であれば、その生産個数から目標達成度合いを出すことは容易でした。
しかし現代の知識労働は、目標達成率の正当な測定は難しいです。偶然による成功が生まれても、それに対して適切に評価を下すことは困難でしょう。
また、ビジネスのアジャイル(俊敏)化により、過去の時代よりも経営によりスピード感が求められるようになりました。社員を評価するためだけにミーティングを開いて、そのプロセスに時間と労力を使っていては、ビジネスチャンスを喪失しかねません。
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2.人事評価を廃止する会社が増加するアメリカの歴史と今
アメリカでは成果主義の思想が根強くあり、「高い成果を出したのはどの人材か」という点が一貫して注視されていました。
その思想をもとに導入されたのが「MBO(目標管理制度)」です。多くの日本企業がこの考えに強く影響を受け、1990年代には続々とMBOを導入し始め、現代でも広く使用されています。
日本の企業では主に人事評価ツールとして採用されているMBOですが、アメリカでは業績向上と人材管理のためのマネジメントツールとして始まっています。
しかし1990年代以降、アメリカにおいて、個人が担う業務内容が大きく変化を見せました。
それまで業務の役割や責任が固定された評価制度だったものは、あらゆる業務において成果を上げることのできる「コンピテンシー」を評価基準に組み入れるようになったのです。
加えて、会社の業績に直接つながらない仕事も評価基準の一つとして注目されるようになりました。アメリカ企業は時代を追うごとに、成果中心の評価から人物に寄った評価へと、評価制度に変化を見せているのです。
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3.日本企業も人事評価を廃止するべきなのか?
時代の変化に応じた対応は、時代を生き抜くために必要でしょう。
しかし、安易にアメリカの企業に追従しようとする姿勢にはリスクが伴います。そもそもアメリカと日本では、現在行われている人事評価が根本的に異なるのです。
アメリカの大企業がレイティングをやめている、というトレンドの表面だけを捉えることは避けましょう。
日本企業が、簡単には人事評価を廃止できない理由を、順を追って説明します。
日本の人事評価の変遷
1950年代の日本では、年齢に応じて給与を上げていく「年功制」による評価の原型がありました。それをもとに1970年代、高度経済成長時代が終わり、年功制に加えて人事評価に能力主義を導入する動きが見られます。
その後、1990年代バブル経済の崩壊後、業績の立て直しが必要だった日本企業は、「成果主義」を取り入れます。そのツールとして導入したのが、MBO(目標管理制度)でした。
MBOは、人事評価ツールとして日本に広く浸透したものの、「目標の達成度を評価する」という部分だけが独り歩きし、日本独自のシステムとなったのです。
結果、目標の達成度に応じて個人を評価し、処遇に差をつけるツールとして機能することになりました。さらに日本では、成果や業績に加えて、
- 職務遂行能力
- 態度
- 行動
なども評価対象となり、二段構えの評価が行われています。これが現在、多くの日本企業が採用している人事評価の在り方です。
日本の人事評価における最大の問題
日本では、アメリカに倣って評価制度に成果主義が取り入れられたものの、アメリカで利用されている手法とはまったく別の機能と目的を持つようになったのです。
本来、成果主義による評価は、自社の経営ビジョンに基づいて行われるもの。しかし日本企業は、導入の際に経営ビジョンとそれに合致した人材の評価要素を議論してこなかったために、評価軸が定まらない、という現状があります。
ノーレイティングを導入しても、人材評価は必要でしょう。そこには、社員の能力向上や、会社の業績を上げるという目的も存在し続けます。
日本企業は自社の成長と社員のためにも、自社の経営ビジョンを明確化し、それに伴った人材像をつくらなければならないのです。
なぜ日本で人事評価を廃止するのは難しいと言われるのか?
正直なところ、日本の企業には、人事評価の廃止は難しいといわざるを得ません。
ノーレイティングを導入するには、今まで人事担当者が行っていた評価や処遇を、現場マネージャーに移譲する作業が必要になります。
しかし、日本の現場マネージャーは、上層からの指示を聞き入れ、部下の指導や管理を行い、さらに自分自身の業務を遂行するという、多忙な立ち位置にいることが一般的。
現場マネージャーが感じる負担を考慮せず人材マネジメント業務を加えることは現実的ではない、という実状があるのです。
日本でノーレイティングを導入する方法
とはいえ、日本でも人事評価制度は見直されるべき段階にきています。そこで、日本企業でノーレイティングを導入する方法を考えてみましょう。
現場マネージャーだけに頼らず、各部門に給与や昇進決定を任せる方法
業務に必要な資質や能力は、部門ごとに異なるため、最も適切に判断できるのは同じ部門で働く人々でしょう。
部門ごとに現場マネージャーをはじめとした関係者を集め、対象社員の能力や成果・今後の成長性やキャリアプランなどについて話し合う「タレントレビュー」が有効です。タレントレビューで等級が決定すれば、基本給も決まります。
賞与は通常、短期的な業績と連動するため営業利益から社員に還元すべき率を決め、各部門の業績に応じて配分し、その後部門内で配分を決めるほうが、柔軟性があり納得感も生まれるでしょう。
社内の特定の事業部門や子会社に限定して、試験的に導入する方法
大企業で人事評価制度を変えることは容易ではありません。まず部分的に取り入れ、良い成果が得られれば、徐々に全社に広げていく方法を取るとよいでしょう。
この場合、対象部門だけ完全に異なる評価制度にするわけではなく、等級や賞与配分の基本ルールは全社統一としておけば、給与などに極端な差が出ることはありません。
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●管理:過去の結果も社員ごとにデータ化し、パッと検索できる
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