働き方改革が叫ばれている昨今、SOHO(ソーホー)という働き方が注目されています。SOHOというワードを耳にする人は多いかもしれません。しかし、具体的な働き方についての認知度は低いようです。
ここでは、
- SOHOの定義から具体例
- SOHO利用のメリット・デメリット
- 準備の方法
- 心構え
- 類似の働き方の違い
- SOHOに向いている仕事、向いていない仕事
などについてお伝えしましょう。
目次
1.SOHO(ソーホー)とは?
SOHOとはパソコンなどの情報通信機器を利用して、小さなオフィスや自宅で、受託した委託業務を行う働き方、またはその仕事場や物件のこと。個人事業主の増加などに伴い、SOHO利用者の数は増加傾向にあります。
2.定義①小さなオフィスや自宅でビジネスをする事業形態
今のところSOHOの正式な定義は存在せず、日本SOHO協会では「ITを活用して事業活動を行っている従業員10名以下程度の規模の事業者」としていますが、官公庁や各種団体によってその定義付けは異なります。
テレワークや在宅勤務との違い
テレワークとは、会社との雇用関係を維持しながら在宅勤務すること。月に数回打ち合わせなどでの出勤もあります。対して在宅勤務は、内職や副業といった意味で使われることも多い働き方です。
マイクロビジネスとは、個人または少人数で行う小さなビジネスのことで、SOHOは、仕事の内容よりも、小スペースで行うビジネスという点が着目されています。
ベンチャーやスタートアップとの違い
- ベンチャー:大企業が着手しにくいサービスやビジネス、事業を展開する新しくかつ成長過程にある企業
- スタートアップ:短期間でイノベーションや新ビジネスモデルの構築、新市場の開拓を目指す企業
ベンチャーとスタートアップともに法人を設立することも多いですが、SOHOは必ずしも法人化が前提ではありません。
フリーランスとの違い
フリーランスとSOHOの違いは、オフィスを設けているか設けていないかという点です。フリーランスは、働く場所を特定していないことが多く、自宅で作業をすることもあればカフェやワーキングスペースで仕事をすることもあります。
一方SOHOは、オフィスを構えて仕事をするため、基本的には同じ場所で業務を行うのです。
2.定義②住宅兼事務所
小規模な事業を立ち上げる際、家賃としての経費を捻出できないなどの理由から、個人事業主は住宅をオフィスとして利用することが多いようです。これらは通常の賃貸住宅とどのように違うのでしょうか?
賃貸におけるSOHOの意味とは?
賃貸においては、SOHOという形態で働く人が利用できる小規模事務所や物件自体をSOHOと呼ぶことが多いです。この場合、営業可能な業務と不可能な業務が発生するので借りる際に必ず確認してください。
SOHOと事務所(オフィス)の違い
SOHOが賃貸住宅をオフィスとして契約する際、事務所契約になります。住宅としての契約の場合は会社の表札や看板を出すことは許可されておらず、法人登記もできません。
一方、事務所契約では表札や看板の掲出は可能ですし、法人登記も認められています。ただし、事務所として使用する場合、家賃は消費税の課税対象になるのです。このあたりの兼ね合いを考えた上でどちらの物件にするか決めるとよいでしょう。
3.SOHOにて営業可能な業務の種類
SOHOという働き方に向く職業は、
- エンジニアやプログラマー
- デザイナー
- 編集・ライター
といったパソコンがあれば成り立つ仕事です。逆に、パソコンを使わず不特定多数の人の出入りがなければ成り立たないような仕事はデメリットのほうが多く、不向きといえます。
SOHO賃貸物件で営業不可能な仕事
物販店や飲食店など、不特定多数の人が出入りをしなければ成り立たない仕事はSOHOに不向きです。住居兼事務所の場合、自身以外の人は普通の生活を送っているため、不特定多数の人が部屋を出入りすることで迷惑をかけてしまいます。
SOHOという働き方は基本、パソコンを通してやりとりをする仕事が向いていることを念頭に置いておきましょう。
4.SOHOしやすい業界・職種の具体例
SOHOという働き方を実践しやすいのは、
- エンジニアやプログラマー
- デザイナー
- 編集・ライター
など。また、最近は副業を許可する企業も増えてきたので、そうした人にも適した働き方といえるでしょう。これらの具体的な職業について説明します。
①エンジニア・プログラマー
エンジニアやプログラマーは、仕様書や指示内容に基づいてパソコンで作業を行うため、パソコンが使える環境であればどんな場所でも対応できるのです。
ただし、企業における社外秘の資料や個人情報を含むテストデータへのアクセスといったような業務上の制限がかかる場合、何らかの対策を講じる必要があります。
②デザイナー
お客様の理念やコンセプトを理解したうえで、それをデザインで表現することを生業としているデザイナーも、ソフトや通信環境が整ったパソコンさえあれば、どこでも作業を進めることが可能です。
また、自分が最も気分よく作業できる環境をセレクトすることも重要となります。
③編集・ライター
編集作業や記事執筆といった仕事を行う編集・ライターも、場所や時間を選びません。以前は打ち合わせなどに出向いて決めていた企画も、メールやチャットの普及によって、ますますSOHO向きの仕事になったといえそうです。
打ち合わせ場所までの移動時間で記事を1本執筆できたなど、仕事の効率化にもつながるでしょう。
5.SOHOワーカーのメリット
SOHOワーカーのメリットとは何でしょうか。以下3つのメリットについて紹介しましょう。
- 仕事環境を自由に選択できる
- 労働時間や時間帯に制限がない
- 仕事量や内容を調整しやすい
①仕事環境を自由に選択できる
今や、インターネット環境が整っている時代ですから、場所に縛られることなく作業が可能です。満員電車で就業時間に間に合うように通勤する必要もなく、状況や気分に応じてお気に入りのカフェやシェアオフィス、図書館など好きな場所を自由に選択できます。
②労働時間や時間帯に制限がない
労働時間が自由な点はとても魅力的でしょう。会社のように定時という概念がないため、提出する納期をオーバーしない限り決まった労働時間分きっちり働く必要もありません。始め・終わりの時間を自分で自由に選べるのです。
③仕事量や内容を調整しやすい
どんな仕事をどれだけ引き受けるかを決めるのも自分です。会社の場合、やりたい仕事だけ選んで行うことは難しいですが、SOHOでは選択の余地があります。私用で忙しいときは少し受注をセーブするというような選択肢があるというわけです。
・環境や労働時間
・どんな仕事をどれだけ引き受けるか
これらを自分で選べる点にあります
6.SOHOワーカーのデメリット
SOHOはメリットばかりのように見えますが、知っておいたほうがいいデメリットもあるのです。以下3つのデメリットについて紹介しましょう。
- 収入が不安定になりやすい
- 本業以外の庶務が多い
- 仕事とプライベートの境目が曖昧になる
①収入が不安定になりやすい
会社勤務とは異なり、いつも仕事があるとは限りませんので、定期の仕事がない限り、毎月の収入が安定しません。また、クライアントによって支払いのタイミングが異なるので、その点の調整も必要です。
②本業以外の庶務が多い
仕事を受注する必要があるため、自ら営業活動を行って契約を取る必要があります。さらに、支払いの調整や請求書の発行、経理業務といった、本業以外の仕事もすべて自分で行わなければなりません。
③仕事とプライベートの境目が曖昧になる
自己管理が苦手な人に、SOHOという働き方は向いていません。自宅をオフィスとして使っている場合、どうしても気が緩み、仕事とプライベートの境界線が曖昧になってしまうでしょう。
7.SOHOで働くための準備の方法・ステップ
SOHOとして働くと決めた時点で、SOHOワーカーを名乗ることができ、資格や許可などを取得する必要は特にありません。ただし、下準備をする必要性はあります。
①仕事内容を決める
どんな仕事でSOHOを始めるかは、これまで培ってきたスキルをもとにして決めていくとよいでしょう。業務内容によって必要な機材やソフトウェアは異なります。仕事を受けてから慌てることがないよう、事前に調べましょう。
②個人事業の開業届を提出する
仕事内容を決めたら、個人事業を開業したことを申告するために税務署へ「個人事業の開廃業届出書」を提出します。届けを出さずにフリーランスとして仕事することも可能ですが、届け出をしておけば屋号付きの銀行口座を開設できるのです。
また、青色申告の申請を同時にしておけば、確定申告の際、青色申告が利用できます。独立後はやることが多く大変な部分もありますが、スムーズな事務処理につながりますので、提出しておくとよいでしょう。
③クライアント向けの窓口を設定する
次に、サイトやブログなどを作成し、自己アピールやクライアントとの窓口、営業ツールとして活用しましょう。フェイスブックやツイッターにSOHO専用のアカウントを作成するのも効果的です。
仕事が入らなければ、収入がなくなり生活することが大変になります。使えるツールは積極的にどんどん使っていきましょう。
8.SOHOでの注意点・必要な心構え
SOHOワーカーとして働くようになって、その後順調に業務を進めるためにも知っておきたい心構えや注意点があります。これらを認識するかしないかで大きく今後が変わるといっても過言ではありません。
仕事と生活のリズムを整える
まず必要なのは、自分に合った生活のリズムをきちんとつくっていくこと。SOHOワーカーはいつでも自宅で仕事ができるためルーズな働き方になってしまい、結果として納期が遅れてしまいがちです。
会社勤務と同様に1日のスケジュールを決め、メリハリを付けて仕事しましょう。
休日を設定し、周知する
いつでも仕事ができるとはいえ、仕事をしない休日の設定も大切です。休日と納期が重なってしまう場合、クライアントと交渉するか、期限より前に納品するなどして、なるべくペースを崩さないようにしましょう。
仕事に責任を持つ
クライアントから請け負った仕事を納期までに仕上げるのは基本ですが、もし修正の依頼が来た場合、きちんと応えることが何より大切です。一つ一つ丁寧に対応することが次につながる、という意識を持ちましょう。
9.SOHO向け賃貸の探し方
SOHOとして働くために大切なのが、適した賃貸物件を探すこと。どんな物件があるのか、相場はどのくらいなのかをチェックするためにもまずはポータルサイトをチェックしましょう。
- トレンドを重視したオフィス物件が検索できる「SOHO東京」
- コンシェルジェサービスもある「the SOHO」
- 賃貸マンションを中心に検索できる「R-net」
このようなSOHO賃貸物件専門のサイトはお薦めです。自分のイメージに合った物件がより多く集まっているサイトを選びましょう。
10.居住専用物件内のSOHO可能物件のメリット・デメリット
自宅をオフィスとして利用する場合のメリット・デメリットを、居住専用物件内のSOHO可能物件とスモールオフィス専用のSOHO物件との違いとともに解説します。
どちらもプラス面とマイナス面が存在するので、自分の働き方に合っているのはどちらなのか、じっくり比較検討しましょう。
メリット①オフィス物件よりも賃料や初期費用が低い
居住専用物件でSOHOを始めると、オフィス物件よりもコストがかかりにくくなります。消費税が課税されず、さらにオフィス向け物件を借りる際に生じることもある保証金(初期費用として賃料の6~10カ月分)も必要なくなるのです。
メリット②寝泊まりができる
オフィス物件と異なり、部屋で寝泊りなど生活ができる造りになっています。納期や業務内容によっては激務が続くことも。泊まり込みで仕事ができるのはうれしいポイントでしょう。
デメリット①看板や表札の設置ができない
看板や表札が設置できないため、新規顧客獲得という観点から考えるとデメリットになります。ただし、個人名の下に小さく併記するのは許可されることもありますので、事前に相談してみましょう。
デメリット②間取りがビジネス向けではない
仕事によっては、不特定多数の人が出入りすることもありますが、その場合、居住専用物件は不向きです。また、ネット回線や電力の容量がビジネスユースには向かないことも。こちらも事前に確認しておきましょう。
11.スモールオフィス専用のSOHO物件のメリット・デメリット
スモールオフィス専用として用意された物件を自分のオフィスとして構える場合、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。ここでは、居住専用物件内のSOHO可能物件との比較を併せながら説明します。
メリット①オフィスビルに入居できる
オフィスビルの1フロアが細かく仕切られているのが、スモールオフィス専用物件の特徴です。打ち合わせなどで不特定多数の人の出入りがある仕事にも向いています。また、ネット回線や電力の容量などが十分に備わっている点もうれしいところでしょう。
メリット②共用スペースが充実している
接客用のスペースや会議室が数社との共用になっていることも多いため、新しいビジネスチャンスに巡り合う可能性は高いです。さらなる飛躍の可能性に期待できるともいえます。
デメリット①来客に対応しにくい
会議室は共有となるため、事前の予約が必要だったり時間制限があったりと、自分のペースでの利用が難しいケースも考えられます。利用上の注意点については、契約前に確認しておきましょう。
デメリット②スタッフを増やしにくい
一人で利用するには最適なサイズであっても、事業が拡大してスタッフが増えた際、手狭になってしまうことがあります。先を見越して行動し、事業を展開していくとよいでしょう。