経営理念とは?【わかりやすく解説】有名企業の例(事例)

現在、ビジネスシーンでは企業それぞれの活動方針として経営理念がどのように示されているのかが問われています。経営理念は企業内の従業員やスタッフの行動指針であると同時に、社会に対しての企業のイメージを文化の面から広く伝える役割を持ちます。

ここでは、経営理念の効果やメリットをはじめ、企業倫理やミッションステートメントとの違いなどを説明していきます。

1.経営理念とは?

企業の経営者が経営上で必要な基本的な考え方のことであり、経営戦略としての行動指針となる思想ともいえます。

  • 一般的に企業内の管理・運営についての考え方を指した言葉であり、「企業理念」「経営信条」「経営哲学」などといわれることもある
  • 経営理念は多くの場合、企業の創始者によって作られており、創始者や経営者の価値観が反映されている
  • 企業を経営していく中で、社会に対して企業がどのような役割を果たすのか、一般的な文化的影響も含まれる

など、業務を遂行するに当たって従業員やスタッフの指針としての役割になるだけではなく、社会に生きる人間としての自尊心を高める効果を持ち、結果的に企業全体の活力の底上げにもつながります。

経営とは?【何をするのか簡単に】理念、方針、計画、戦略
経営とは、事業を営んだり組織を運営したりする仕組みのこと。企業の継続的な成長・発展には経営の質が大きく関係し、経営がうまくいかなければ破綻(失敗)の末、倒産に追い込まれてしまいます。 今回は経営とは何...

企業理念との違い

  • 企業内で働く全従業員・スタッフが共有して、「意思の決定」や「行動の基準」となる基本的方針
  • 「経営理念」はあくまで経営者の価値観であり、「企業理念」は企業全体の価値観と認識されている
  • 「企業理念」と「経営理念」は同じ意味合いで扱われることも多く、厳密にこの2つを区別できない場合もある

日本の企業の多くでは、「企業理念」を崇高な使命として掲げて、社訓に協力・献身・勤勉・礼節などを取り上げ、「人としての誠実な態度」「人間関係の調和」の大切さを説いています。

企業理念とは? 経営理念との違い、作り方、浸透させる方法
良い企業理念は、組織の統率力を高め、経営判断の質とスピードを向上させます。今回は、企業理念と経営理念の違いや企業理念の作り方、また浸透させる方法を解説します。 1.企業理念とは? 企業理念とは、企業...

ミッションステートメントとの違い

ミッションステートメントとは、抽象的な経営理念を行動指針として落とし込んだものを指します。従業員やスタッフたちが共有する価値観や社会的な使命を具体化して、企業活動を行う上で戦略立案の基本的な判断基準となります。

  • 常に変化していくビジネスシーンにおいて、柔軟に対応していくためにも明確な行動指針を提示する必要がある
  • 従業員やスタッフたちのモチベーションを保つ精神的支柱にもなり、現場の離職率を抑えて、優秀な人材の確保にもつながる
  • 現代は企業による社会貢献活動も重要視されており、どのような行動指針が掲げられているのかが問われている
  • 株主に対して、企業の事業計画や目標を明確に提示でき、企業の存在意義をアピールできる

ミッションステートメントとは?経営理念との違いや作り方を紹介
ミッションステートメントは、企業や従業員が共有するべき価値観、行動指針などを文章化したもので、日本の企業が昔から掲げていた「社是」「社訓」「経営理念」に似ています。 ミッションステートメントと経営理念...

経営戦略との違い

経営理念は経営者の価値観を反映させたものであり、現実との間にギャップが生まれてしまう場合があります。経営戦略とは、そのギャップをなくし、具体的に方法論を示すためのものです。

経営戦略は、大きく分けて以下のような3つのレベルで策定されています。

  • 「全社戦略」:企業全体としての視点で、どの分野の事業を手がけて、経営資源を各事業にどのように配分するのかを決定する
  • 「事業戦略」:分析結果をもとに、より具体的な事業展開を計画して実施していく
  • 「機能戦略」:営業戦略・財務戦略・人事戦略というように、それぞれの部署ごとの視点から戦略を考えていく

経営戦略とは? 必要な理由、種類、策定の流れ、手法を簡単に
昨今のビジネス書でも頻出するワード「経営戦略」。新聞やニュースでも目にする言葉ですが本質的な意味はどのようなものなのでしょうか? 経営戦術や経営計画との違い 経営戦略の目的 経営戦略の立案方法 経営...

経営理念とは経営戦略としての行動指針となる基本的な考え方であり、多くは企業の創始者や経営者の価値観が反映されています

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは?

・1on1の進め方がわかる
・部下と何を話せばいいのかわかる
・質の高いフィードバックのコツがわかる

効果的に行うための1on1シート付き解説資料をダウンロード⇒こちらから


【評価業務の「めんどうくさい」「時間がかかる」を一気に解決!】

評価システム「カオナビ」を使って評価業務の時間を1/10以下にした実績多数!!

●評価シートが自在につくれる
●相手によって見えてはいけないところは隠せる
●誰がどこまで進んだか一覧で見れる
●一度流れをつくれば半自動で運用できる
●全体のバランスを見て甘辛調整も可能

カオナビの資料を見てみたい

2.経営理念の効果とメリット

経営理念を持つ、浸透させる効果・メリットとして、

  • 経営戦略の方向性や判断基準が明確になる
  • 企業としてのイメージをアピールできる
  • 従業員やスタッフたちのモチベーションを向上させる

といった点が挙げられます。

従業員の意識が一つにまとまる

経営理念は、従業員やスタッフたちの考え方や方向性をまとめることができます。

  • 企業の将来像を示して共有することで、従業員たちは経営理念に基づいて業務を遂行しやすくなる
  • 長期的な目標を具体的に提示することで、従業員たちは今後の展望を見据えて行動を起こしやすくなり、チームワークなどの組織力も向上する
  • 企業内で経営理念を浸透させることで、従業員たちは「何が求められているのか」がより具体的に理解できて、経営陣と強固な信頼関係が築ける
  • 「常に新しいことに取り組んでいこう」という高いモチベーションにもつながる

企業文化の構築

企業文化とは創立時からの伝統や経営陣の考え方で形成されて、企業内で共有されている価値観や行動様式のことを指します。経営理念によって従業員やスタッフたちの考えや方向性がまとまると、企業文化も自然に構築されていきます。また下記のような効果が考えられます。

  • 企業文化は、従業員たちが仕事に対して高い意識を持つことができ、事業の効率化・現場のパフォーマンスを向上させる
  • 優れた企業文化は、優秀な人材の確保にもつながり、企業間の競争において優位に立つことができる
  • 企業文化は、社会における企業のイメージアップに結び付き、企業のブランドイメージを高めて、イメージ戦略にも役立つ

企業文化とは? 意味や重要性、醸成の方法、企業事例10選を紹介
企業文化とは、企業と社員の間で共有される企業規範や行動様式のこと。企業文化の重要性やメリット・デメリット、企業文化の醸成や浸透方法について解説します。 1.企業文化とは? 企業文化とは、経営方針や行...

従業員のモチベーション向上

多くの企業では、経営理念において以下のような項目を打ち出しています。

  • 顧客に対して、新しい価値と高い品質の製品とサービスを提供する
  • 「新しい技術を開発」または「独自の製品を供給する」ことで、文化の発展に貢献していく
  • 企業で働くことで、働きがいと公正な機会を得る
  • 社会の一員として責任を果たして、社会人としての信頼を構築する

上記の理念を打ち立てることで、従業員やスタッフたちは何のために仕事に携わるのかが明確になり、より業務に打ち込むようになります。企業内に浸透させることで従業員やスタッフたちのモチベーションは向上し、人としての成長にもつながります。

モチベーションとは? 意味や下がる原因、上げる方法を簡単に
従業員のモチベーションの可視化と分析ができる「カオナビ」 ⇒人材管理システム「カオナビ」の資料はこちらから ビジネスの現場では「モチベーション」という言葉がよく使われます。本記事では、意味やビジネスで...

人材採用

経営理念は企業がどのような考えでどのような方向性で活動しているのかを外部に対してもアピールできるため、「企業が求めている人材」を理解してもらいやすくなり、以下の3つの効果が期待できます。

  1. 経営理念で企業文化を構築して、企業のブランドイメージを打ち立てることで、その経営理念に共感した優秀な人材を獲得することができる
  2. 経営理念に共感した人材は、企業の方向性を理解して、高い意識と幅広い視点で行動できる人材だと考えられる
  3. 社会的に優秀な人材が集まる経営理念が認知されることは、企業にとってイメージアップにもつながり、企業間の競争でも強い武器となる

経営理念は「従業員たちの意識を一つにまとめて、モチベーションを向上させて、企業文化を構築できる」というメリットがあり、「人材採用」の際にも効果を発揮します

部下を育成し、目標を達成させる「1on1」とは? 効果的に行うための1on1シート付き解説資料をプレゼント⇒こちらから

3.経営理念の作り方、作成方法のポイント

経営理念を作成する際、以下のようなポイントが重要となってきます。

  • 企業理念を読み解く
  • 将来像を考える
  • どんな人にでも伝わりやすいものにする
  • 出来上がるまで何度でも試す

また出来上がってからも定期的に見直す必要があります。

企業理念を読み解く

経営理念の作成には、まず企業理念を読み解くことが重要です。

経営理念は、

  • Mission(使命)
  • Vision(志)
  • Value(価値観)
  • Way(行動指針)

と、4つの要素で構成されています。

企業そのものの理念をよく理解して、その上で「どんな企業にしていきたいのか」を明文化して、経営理念として4つの要素に落とし込んでいきます。

Mission(使命)

経営者の目的を明確にして、従業員が使命として受け止めるようにする

Vision(志)

企業の将来像を具体的に描き、どこに向かっていけば実現できるのか。その方向性を定める

Value(価値観)

企業活動においての判断基準と価値観を決める

Way(行動指針)

実現に向けて、具体的な行動を示す

将来像を考える

「どのような企業になりたいのか」「どのような事業内容にしていきたいのか」と、将来像をしっかりと考えなければなりません。「数年後にはこんな企業になっていたい」と長期的な期間で目指すべき姿を具体的にイメージして、それに向かって目標と目指す方向性を設定することが重要になります。

  • どのような分野で、どのような事業で企業を展開していきたいのか
  • 従業員やスタッフたちはどのようなスキル・技術を持った人材になってほしいのか
  • 社会に対して、企業はどのような活動で貢献していきたいのか

といったことを具体的に言語化していくことで、従業員や顧客、取引先などの関係者に対して、企業の目的と目指していく姿を分かりやすく示すことができます。

どんな人にでも伝わりやすいものにする

経営理念は、企業内で働く全従業員で共有する価値観です。経営理念を求心力として、従業員たちを同じ方向に向かせるために、分かりやすく伝えて浸透させる必要があります。

  • 経営理念の内容を深く理解することで、従業員の仕事に対してのやりがいを見出し、高い意識で事業に取り組むきっかけになる
  • 経営理念を実践するに当たって、多くの人たちに対して「企業のあるべき姿」と「目的を実現させるための行動基準」を示していくことで、社会的価値を得る
  • 経営理念はそのまま企業のイメージにもつながるため、どんな人にでも伝わりやすい言葉を用いることで、企業全体のイメージアップになる

以上のようなことから、キャッチコピーのように簡潔にまとめることが重要になってきます。

出来上がるまで何度でも試す

経営理念は企業を経営していく上で、最大の判断基準・価値観となります。

「まあ、これでいいだろう」と中途半端な形で掲げてしまっては、いくら経営戦略を立案しても軸がぶれているため、最終的な見通しが立たなくなります。またあやふやな理念を掲げていては、いつまでたっても社会的信頼も得られません。

  • 見聞を広めて知識を深め、価値観を練磨していくことで、自分だけの視点を持つことが重要
  • 試行錯誤を繰り返して「自分が成し遂げるべき使命や役割」に気付くことで、オリジナリティを獲得する

という点に気を付けて「これだ!」と、誰が見ても納得できるものが出来上がるまで、何度も根気よく熟考を重ねることが大切です。

定期的に見直す

熟考を重ねて出来上がった経営理念ですが、時流や状況によっては合わなくなってしまうことも多々あります。幾度となく経営理念が変わってしまうと、現場の従業員やスタッフたちは混乱してしまいますが、社会や経済の状況に応じて変えていくことも重要です。

社会的状況だけではなく、自社の規模が大きくなり、より広範囲にわたって事業を展開していく場合は、今までの経営理念のままで進めていいのかと、再度検討します。

「一度決めたから、絶対に経営理念を変えてはいけない」と固持していては、今後の発展の妨げになってしまう恐れがあるので、定期的に見直して、より自社に適した経営理念として修正を加えることで、さらなる飛躍につなげることが重要です。

経営理念を作成するに当たって、企業理念をしっかりと読み解き、しっかりと伝えるために出来上がるまで何度も試すことが重要です。また定期的に見直す必要があります

Excel、紙の評価シートを豊富なテンプレートで楽々クラウド化。
人事評価システム「カオナビ」で時間が掛かっていた人事業務を解決!
【公式】https://www.kaonavi.jp にアクセスしてPDFを無料ダウンロード

4.各企業の経営理念の例

ここでは、「飲食品」「生活用品」「旅行」「ゲーム」など、さまざまな分野で活躍している代表的な各企業の経営理念をそれぞれ紹介していきます。

飲食品

コメダ

「珈琲を大切にする心から通して、お客様にくつろぐ、いちばんいいところを提供します」という経営理念の通りに、味わい深いコーヒーの提供だけではなく、喫茶店として居心地のいい空間づくりを目指しています。

グリコ

「おいしさと健康」という経営理念で、法令・社会規範を遵守し、安全な商品とサービスと有益な情報を提供することで、お客様の健康に貢献しています。また環境に優しい企業活動を推進して、環境保全にも取り組んでいます。

三幸製菓

お客・取引先・従業員と「三つの幸せの実現」を企業理念に掲げています。「食を通じての幸せ」にこだわり、「柿の種」や「雪の宿」など、世代を超えて人気のある菓子類を提供し続けています。

生活用品

ニトリ

「お値段以上ニトリ」というキャッチコピーで知られるニトリでは、「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という企業理念が掲げられ、社員一人ひとりが行動の原点として共有しています。

プロクター・アンド・ギャンブル

企業理念に「世界の人々の、よりよい暮らしのために」を掲げています。「常に正しいことを行う」という伝統と併せて、従業員たちの生き方そのものにも影響を与えています。

グンゼ

「人間尊重と優良品の生産」という創業の精神から、環境問題にも積極的に取り組み、企業活動を通じて社会に貢献していくことを目指しています。

TOTO

社是の「愛業至誠」は、「奉仕の精神でお客様の生活文化の向上に貢献し、一致協力して社会の発展に貢献する」という決意を表した言葉で、水回りから人々に豊かな生活を提供しています。

旅行

JAL

従業員が「JALで働いていてよかった」と思えるような企業を目指さなければ、最高のサービスを提供することもできないという考え方のもと、「全社員の物心両面の幸福を追求」を企業理念として掲げています。企業価値を高めることで社会貢献も果たしていきます。

ANA

お客様に安心を与えて信頼を得ることが何よりの企業責務という考え方から、「あんしん、あったか、あかるく元気!」という企業理念を掲げています。実現に向けて、より一層高い品質を追求し続けています。

H.I.S.

「自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する」という企業理念のもと、8原則からなる企業行動憲章を掲げています。国際ルールを遵守して、公正な職場秩序の維持を図り、堅実な経営を維持しています。

ゲーム

コナミ

「価値のある時間を提供」することが企業理念としてあり、浮き沈みの激しいゲーム業界において、常に時代の変化を敏感に捉えて柔軟に対応しています。

スクウェア・エニックス・ホールディングス

「最高の「物語」を提供することで、世界中の人々の幸福に貢献する」という企業理念を掲げています。近年では『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』などの有力なコンテンツを使って、ジャンルにとらわれない幅の広いゲームソフトを積極的に開発しています。

レベルファイブ

「世界一のエンターテインメントブランドを目指して」という企業理念のもと、ゲームだけにとどまらず、アニメ、映画、グッズ、イベントなどさまざまな形でメディアミックスを展開しています。

エンタメ

サンリオ

「ほんの小さな贈り物が大きな友情を育てます」という企業理念から、ハローキティなどのキャラクターを媒体に、人と人とのつながりとなる事業を目指しています。

松竹

老舗の映画会社である松竹では、「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献」を経営方針に掲げています。『男はつらいよ』など長年の間に築き上げた多様で豊かなコンテンツを、時代のニーズに合わせてあらゆる世代に提供しています。

東宝

創業者の「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」というポリシーのもとに、映画・演劇・不動産の事業において、常に新しい企画を立案しています。近年では、アニメやゴジラなどの映画コンテンツに力を入れています。

オリエンタルランド

企業理念の「自由でみずみずしい発想を原動力にすばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供します」という言葉の通り、常に探求と開拓を怠らず、ディズニーランドなどのテーマパーク事業を展開しています。

GAFA

Google

「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」をモットーに、使いやすく分かりやすい検索エンジンからメールアカウントなど、ユーザーのニーズに一致するさまざまな機能を提供しています。

Amazon

「地球上で最もお客様を大切にする企業を目指しています」という大胆な企業理念から、世界最大規模のECサイトにまで発展しました。近年では、Amazonプライム・ビデオなど動画配信にも力を入れています。

Apple

スティーブ・ジョブズが設立したAppleには、経営理念がありません。「クリエイティブ」というたった一つの言葉を原動力に、スティーブ・ジョブズの考え方そのままに、個々の「枠にとらわれない自由な発想」を尊重しています。

業界を代表する企業は、どんな分野であれ、それぞれ独自の判断基準と価値観を確立させて、確固たる経営理念を打ち立てています