リワークとは、うつ病などの精神疾患によって求職した人の復職を支援するプログラムで、社員の復職支援に活用する企業も増えてきました。ここではリワークについて詳しくご紹介します。
目次
1.リワークとは?
リワークとは、精神疾患など精神面の体調不良を理由として休職した人に対し、職場復帰に向けたリハビリを実施する機関のプログラムのこと。復職支援プログラムまたは、職場復帰支援プログラムとも呼ばれます。
主に医療機関や障がい者職業センターで実施されます。プログラムの内容にはストレスの処理方法やコミュニケーションの訓練などがあり、利用者に応じて組まれるのです。プログラムの種類や機関によっては休職中のみではなく復職後のフォローも合わせて行う場合もあります。
2.【主体者別】リワークの3つの特徴
リワークは3つに分類され、実施主体によってその種類が異なります。実施主体は、医療機関と地域障がい者職業センター、そして企業です。種類によって目的が異なるので、休職の理由や本人の意志をふまえてどの実施主体にすべきかを見極めましょう。
医療リワークとは?
医療機関で行われるリワークで、再休職の予防を目的としています。最大のメリットは、医学的リハビリテーションで、精神医療の専門家によるプログラムが行われること。
内容は精神疾患の回復や悪化の防止など、主に復職後に安定して働き続けるための治療です。プログラム期間は短いものなら数週間、長いものでは年単位にわたります。
費用
1日あたり8,000円ほどが目安です。病院といった医療機関が行っているプログラムなので健康保険制度が利用できます。健康保険や国民保険に加入している場合の自己負担は3割、自立支援医療制度の対象者であれば自己負担を1割程度まで抑えられるのです。
利用方法
医療リワークを利用する際はまず、主治医へ相談をして許可を得ましょう。許可を得られたら、医療リワークを実施している病院のスタッフと打ち合わせます。
主治医の病院でリワークプログラムや復職支援のデイケアを行っている場合、その病院で主治医を変更せず医療リワークを受けられるのです。
職リハリワークとは?
職リハリワークとは、地域障がい者職業センター(独立行政法人高齢・障害・休職支援機構によって各県に1か所以上設置されている)が実施しているリワークです。
対象は休職している本人とその雇用主で病状の改善ではなく、本人と雇用主に対する職場への適応を目指します。公務員はこのリワークを利用できません。
施設を利用する平均期間
障がい者職業センターの平均期間は約3カ月。なぜなら利用は基本3か月と上限が決まっていて、期間内でプログラムが組まれるからです。医師や企業との面談によって期間は前後するものの、上限まで利用する人が多く見られます。
費用
職リハリワークの費用は基本無料となっています。公的機関が実施している職リハリワークは、費用は労災保険でまかなわれているからです。センターの利用料は無料であるものの、交通費や昼食代などは自己負担となるので注意しましょう。
利用方法
職リハリワークを利用する際はまず、説明会に参加しましょう。説明会は隔週開催されます。説明会を受けたのち職リハリワークを利用するには、支援の申請が必要です。
その後は本人とその主治医、雇用主の三者で面談し、1カ月程度の体験コースを受けてから正式に利用開始となります。利用開始までの期間は、体験を含めて大体1か月半から2か月程度です。
職場リワークとは?
企業内で行う復職支援プログラムを「リワーク」と呼ぶ場合があります。目的は復職した後に安定して就業できるのか正確に見極めること。試し出勤制度など段階的な訓練を通して慣らしていき、正式な復職を目指します。
メリットは社内での調整や連絡が取りやすい点。ただし「導入している企業はまだ少ない」「ほかの社員の目が気になって焦りや不安を感じやすい」点に注意しましょう。なおこちらも実施する場合は、主治医から復職可能の許可を得る必要があります。
施設を利用する平均的期間
職場リワークの平均期間は4週間から8週間程度が目安。復職の訓練である試し出勤が4週間から8週間程度とされるためです。臨床心理士との面談も平行して行いながら試し出勤の時間を少しずつ長くしていき、安定して就業できるか判断します。
費用
職場リワークは企業の雇用保険で運用されているため、基本無料で利用できます。しかし企業が費用を負担しなくてはならないため、職場リワークをまだ導入していない企業も少なくありません。自社で導入していない場合は医療リワークを利用しましょう。
利用方法
自社に職場リワーク制度がある場合、上司や産業保健スタッフ、人事労務担当者などに利用を申し出ます。産業医がいれば職場リワークについて相談できるでしょう。
そのあと復職の段取りやその後のことなどの打合せを行い、試し出勤や短時間勤務などからスタートします。
3.リワークの充実プログラム
リワークの際に行われるプログラムを分けると5つです。なかでも特に代表的なものについて説明します。
- ストレス対処
- グループミーティング
- SST
- 作業課題
- キャリアデザイン
①ストレス対処
自身がどのような場面や原因でストレスを感じているかを分析し、対処する方法を学びます。目的は自身の思考パターンや考え方の癖などを見つけて分析し、ストレスのコントロール方法を考えること。
認知療法を用いて経験からストレスの原因を洗い出し、自身が無意識に抱いてしまう思考なども改善していきます。原因と傾向を解明し、ストレスへの対処方法を見つけるのです。
②グループミーティング
自分と似た悩みや精神疾患を持つ人たちと話し合います。話し合うテーマは、復職に関する不安や悩み、自身の疾患の症状などさまざま。
同じような境遇の人と話すと、悩んでいるのは自分だけではないと安心できますし、自己理解を深めて新しい発見を得られます。これらの知識や体験は復職後の再発防止に役立つでしょう。
③SST
SSTとは「ソーシャル・スキル・トレーニング」の頭文字で、「社会生活技能訓練」や「生活技能訓練」などとも呼ばれます。参加者に同僚や部下、上司といった役を割り振り、職場の状況を再現するのです。
このロールプレイでは、自分では気づけなかった問題の解決や、対人スキルやコミュニケーション能力の向上などが見込めます。
④作業課題
オフィスワークとも呼ばれる、復職後を想定したトレーニングです。作業に対する集中力や達成感、疲労感の確認をし、集中力の回復を図ります。
資料作成やプレゼン、部品の組み立てなど、利用者は体調や元の仕事などをふまえて作業を選びます。まだ難しい場合は読書や資格の勉強など個人が集中できる行動から始めることになるでしょう。
⑤キャリアデザイン
自身の今までのキャリアを振り返るプログラムです。スタッフと1対1で行い、自身のスキルや今後のキャリア形成について考えていきます。
自身の長所と短所、スキルなどを再確認し、「自分はどのような仕事ができるのか」「その仕事を生かして今後はどのようなキャリアを想定して働くのか」などを明らかにするのが目的です。
4.リワークのメリットとデメリット
休職から復帰するためのリワークには、メリットとデメリットがあります。自社の社員が利用する前に押さえておきましょう。
リワークの実施で得られるメリット
リワークを利用するメリットのなかで、とくに大きいのは復職を円滑に行えること。リワークが成功すれば、再度の休職を防ぐ効果も期待できます。
円滑な職場復職の実現
リワークプログラムのなかでも試し出勤は、円滑な復職に欠かません。休職していた人は「急に以前と同じように働く」のは難しいもの。再び休職に陥ってしまうかもしれません。
週に2日程度の試し出勤を実施すれば、慣らしながら休職中に落ちてしまった体力や気力と相談して復職できます。リワークプログラムで社員が復職に対して自信を持てるようになれば、再度休職してしまうリスクも減るでしょう。
リワークを実施しないことによるデメリット
リワークを実施しない場合の最大のデメリットは復職後の再発です。再発の割合が高くなってしまうと結果として退職につながってしまいます。
復職後の再発
リワークを行わないと休職の原因を取り除けず、再発の原因となりえます。復職後しばらくは周囲の配慮もあり、以前よりも過ごしやすい環境で働けるでしょう。
しかし以前と同じ水準に近づくにつれ、再度同じ症状が出始める可能性もあります。そうなると再度休職しかねません。このような状況を防ぐには、休職中の自己分析や原因の対策などが必要でしょう。
5.リワークの事例から学ぶ、リワーク施設選びのポイント
リワークは復職にて効果的です。しかし誰もが同じプログラムを受けるわけではありません。社員の症状によってどの施設が適しているか、考えるとよいでしょう。施設選びの参考として、実際にリワークを活用した事例をご紹介します。
リワークを活用して職場復帰した事例
あるリワーク施設の訓練時間は9時から15時。午前中と午後で異なるプログラムを実施しています。たとえば月曜日の午前中は個人のオフィスワーク、午後は認知行動療法を行うのです。
ほかにもヨガのような軽い運動やマッサージなど、体力の向上やリフレッシュなどを目的としたプログラムを取り入れました。このプログラムをとおして規則正しい生活を送れるようになり、利用者は復職後を想定した生活リズムを作れました。
またリワークプログラムにはグループディスカッションやプレゼンもあり、のちに復職した際は以前よりコミュニケーション能力が向上。ある人は3月にスタートして6月に復職できました。
活用してよかったと思えるリワーク施設選びのポイント
よりよいリワークのために、リワーク施設選びのポイントを知っておきましょう。
通いやすさ
リワーク施設への交通アクセスは継続のしやすさに直結するポイント。遠いと通うのに体力を消耗しますし、通うこと自体が億劫になってしまうでしょう。
交通費が自己負担になる場合が多いので、家から遠い施設を選んでしまうと経済的な負担になってしまいます。できるだけ通いやすい場所にある施設を選びましょう。
プログラム内容
リワークのプログラムの内容はもっとも重要なポイント。医療機関のリワークは治療の一環としてのプログラムで、職リハリワークは体調管理やストレス対処を中心としたプログラムを提供しています。
また同じ機関でも施設によって、座学中心やコミュニケーション重視など特徴が異なるのです。利用者の目的や症状に合うプログラムを提供している施設を選びましょう。
スタッフとの相性
その施設のスタッフとの相性も重要です。リワークのスタッフの考えが利用者や主治医の考えと合わない場合、最適なプログラムが受けられないかもしれません。見学や体験プログラムなどを利用して、スタッフとの相性を直接確認しましょう。
施設の雰囲気
施設の雰囲気も継続や改善に影響するポイント。施設の雰囲気もスタッフのように直接確認しましょう。堅苦しく暗い雰囲気の施設では、復職に向けて前向きになれません。
その日の利用者や出勤しているスタッフ、時間帯やその時実施されているプログラムによって雰囲気が大きく変わるので、一度見学して決めるのではなく何度かその施設に足を運んでみましょう。