ワーカーズコープとは? 原則、理念、事業内容、労働者協同組合法、関連団体

ワーカーズコープとは、協同により地域貢献を行う組合のことです。ここでは、ワーカーズコープについて解説します。

1.ワーカーズコープとは?

働く人どうしが共同で出資し、主体的に経営を担って、地域社会に貢献する事業を行う協同組合のこと。日本におけるワーカーズコープは、戦後の失業者対策事業や中高年雇用福祉事業団の設立などをきっかけとして全国に広まりました。

ワーカーズコープは非営利法人に分類されています。そのため営利を目的とした事業は行えません。また事業で得た余剰金は、事業に従事した割合に応じてメンバーに分配します。

ワーカーズコレクティブとの違い

ワーカーズコレクティブとは地域住民が共同出資し、参加者全員が対等な立場で経営に参加して、地域社会へ貢献する事業体のこと。

ワーカーズコープとワーカーズコレクティブ、どちらも営利団体ではなく、地域社会に貢献する事業を展開しているため、同類語として用いられる場合があります。

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2.ワーカーズコープの概要

ワーカーズコープの概要について解説しましょう。

原則

日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会によるワーカーズコープの原則は、下記のとおりです。

「協同労働の協同組合は、共に生き、共に働く社会をめざして、市民が協同・連帯して、人と地域に 必要な仕事をおこし、よい仕事をし、地域社会の主体者になる働き方をめざします。尊厳あるいのち、 人間らしい仕事とくらしを最高の価値とします」

理念

理念は、社会連帯経営です。社会連帯経営とは「地域に暮らすすべての人が、それぞれの地域課題にかかわりを持ち、相互に協同・連帯して地域を再生、発展させる」といった目標を持つ経営のこと。

社会連帯経営は、子育てや介護、第一次産業や若者・困窮者支援など、さまざまな分野で営まれています。

組合員が出資

ワーカーズコープは、下記のような指針のもと運営されています。

  • 銀行といった金融機関から融資を受けない
  • 事業に必要とされる運転資金を組合員の出資金でまかなう
  • 組合員が2口目以降の増資運動に取り組む

ワーカーズコープの歴史

ワーカーズコープの歴史は、下記のとおりです。

  • 1971年、兵庫県西宮市で高齢者事業団が誕生
  • 1992年、労働者協同組合としての「新原則」を確立
  • 1999年、介護保険制度開始に先駆け、全国的なヘルパー養成講座への取り組み
  • 2017年、超党派の「協同組合振興研究議員連盟」により、与党法制化ワーキングチームが協同労働法制化への議論を開始

ワーカーズコープの現状

現在ワーカーズコープは、全国に事業本部を設置しています。そして約400の事業所で約10,000人の組合員が就労し、事業高約224億円の規模で運営されているのです。

個々の事業所における自立した運営ならびに、全国組織としても力が発揮できる体制づくりを実現して、地域に根ざした地域に求められる活動を行っています。

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3.ワーカーズコープの事業内容

ワーカーズコープには、いくつかの事業内容があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 高齢者介護
  2. 公共施設の管理・運営
  3. 子育て支援
  4. 就労支援

①高齢者介護

ヘルパー講座を実施し、地域の介護福祉の担い手を自らの手で育てて、高齢者を介護していくこと。

現在、全国で150カ所の高齢者・障がい者に関わる拠点が整備されています。制度でカバーできない高齢者の生活全般を、自治体とも連携してサポートすることを目指しているのです。

②公共施設の管理・運営

公共施設は下記のような施設です。現在、全国200カ所を超える公共施設の運営・管理を担っています。

  • 高齢者福祉センター
  • コミュニティセンター
  • 市民活動センター
  • 地区センター
  • 障がい者支援
  • 保育園・学童・児童館・親子ひろば

③子育て支援

保育園の運営、子どもへのアンケートや子ども会議の実施、子どもまつりの企画などのこと。こうした取組をとおして、子どもが豊かに育つ環境を整備し、子どもの人権を保護して子どもの自主性が発揮できるようにしているのです。

④就労支援

国や自治体の制度を活用しながら、さまざまな人が活躍できるコミュニティづくりにつなげる支援事業のこと。

一人親家庭や生活保護受給者、刑余者や障がいのある人、アルコールや薬物依存症者などと一緒に就労し、みんなが活躍できる職場づくりを目指しています。

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4.2020年「労働者協同組合法」成立

2020年に成立した、労働者協同組合法について、解説しましょう。

目的

目的は、下記のとおりです。

「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とすること」

労働者協同組合法が制定された理由

なぜ労働者協同組合法が制定されたのでしょう。その理由は下記のとおりです。

  • 労働者協同組合のさまざまな活動が全国に広がった
  • 「協同労働」という社会的有用性が社会に広く理解してもらえるようになった
  • 地域や社会が直面している課題解決に労働者協同組合が必要であると時代が求めた

基本原理と運営の原則

労働者協同組合法には、基本原理と運営の原則があります。

基本原理とは、「組合員が出資する」「の事業を行うにあたり組合員の意見が適切に反映される」「組合員が組合の行う事業に従事する」こと。

こうした基本原理に従った事業をとおして、持続可能な社会や活力ある地域社会を実現しています。

企業組合ではだめな理由

企業組合とは、4人以上の個人が組合員となり、資本や労働を持ち寄って働く場を創り出していく組織のこと。

「剰余処分は出資配当が最優先される」「総代会も連合会もない」「組合員の地位を財産と見なし、組合員死亡時は相続者が組合員となる」といった特徴を持つのです。

それに対して協同組合は、「原則、メンバー全員が当事者」「総代会や連合会など力を合わせた社会貢献」といった特徴を持つため、企業組合ではなしえない活動を行えます。

労働者協同組合法制定による波及効果

労働者協同組合法制定による波及効果は、下記の3点です。

  1. 自らで労働条件を決めて自分らしさを保ち、やりがいを感じながら社会貢献できる仕事を追求して、労務の苦しさから解放される
  2. 営利の追求のみに走る資本主義経済とは一線を画し、社会的経済・連帯経済のなかで利潤を追求し、現在の社会のあり方に一石を投じる
  3. 互いに対等な立場で民主的に議論を重ねて物事を決定していく民主主義のプロセスに、もう一度立ち戻る

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5.ワーカーズコープの関連団体

ワーカーズコープには関連団体があります。5個の関連団体について見ていきましょう。

  1. 日本労働者協同組合連合
  2. 日本高齢者生活協同連合会
  3. 協同総合研究所
  4. 日本フロンティアネットワーク
  5. 一般社団法人日本社会連帯機構

①日本労働者協同組合連合

人事担当者が労働者協同組合の情報を収集する際、積極的に活用したい情報を提供してくれる団体のこと。特徴は、下記のとおりです。

  • 日本全国の労働者協同組合が加盟
  • 全国集会や法制化などの提言
  • 日本の労働者協同組合の代表として国際連帯活動、各種情報発信

所在地や詳しい事業内容はホームページで確認できます。

②日本高齢者生活協同連合会

日本高齢者生活協同連合会のスローガンは、「寝たきりにならない、しない」「元気な高齢者が、もっと元気に」。活動の柱に仕事や福祉、生きがいをすえ、高齢者の社会参加や地域福祉の充実のため活動しています。

現在、21の高齢協が加盟し、加盟団体組合員数の合計約43,000人。事業高合計は約65億円
です。

③協同総合研究所

日本社会の「格差・貧困」「社会的排除」「分断」「地域の疲弊」「いのちの軽視」といった問題に対して、ともに生き働く社会づくりを目指し、調査・研究・政策提言などを行う団体のこと。

1991年に創立して以来、「市民による協同労働の実践」「研究者と協同労働を開拓」などを目指しているのです。

④日本フロンティアネットワーク

日本フロンティアネットワークの前身は、任意団体「東京労協クラブみちの会」にあります。「日本労働者協同組合と企業家による新しいセクターの構想」「協同の力で考え、研究・開発し、事業をおこす」ため、団体の力を集結しました。

10周年を契機に一般社団法人となり、2010年3月には一般社団法人日本フロンティアネットワークが設立されたのです。

⑤一般社団法人日本社会連帯機構

「連帯の輪を広げて共同労働により地域の再生につながる活動を創造する」を目的として、2004年に設立された団体のこと。

2011年には一般社団法人となり、市民どうしのつながりや安心して暮らせる社会の創造をとおして、仕事の範囲を超えて地域社会に広く貢献する活動を行っています。

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6.ワーカーズコープに関する本・書籍

ワーカーズコープに関する本・書籍があります。ワーカーズコープへの理解が進むおすすめの書籍を3冊、紹介しましょう。

  1. 『協同労働の挑戦 新たな社会の創造』
  2. 『協同で仕事をおこす 社会を変える生き方・働き方』
  3. 『 日本型ワーカーズ・コープの社会史 働くことの意味と組織の視点』

①『協同労働の挑戦 新たな社会の創造』

『協同労働の挑戦新たな社会の創造』は、日本労働者協同組合連合会編集の書籍です。

経済成長がすべてに優先されている現代社会のなか、地域や生活、人間のあり方を再度考え直しながら、協同労働という新しい働き方の可能について解説しています。

②『協同で仕事をおこす 社会を変える生き方・働き方』

『協同で仕事をおこす社会を変える生き方・働き方』は、協同労働の実践ルポです。

高齢者介護や子育て、若者や障がい者の就労支援などでのさまざまな活動事例が、わかりやすく解説されています。

③『 日本型ワーカーズ・コープの社会史 働くことの意味と組織の視点』

『 日本型ワーカーズ・コープの社会史働くことの意味と組織の視点』は、ワーカーズコープ第一人者による歴史や運動史、近未来の労働と社会の在り方の解説本です。

人間が労働に意味を見出し、ともに働く意味を改めて考えさせられる一冊といえます。