求人倍率とは? 推移、計算方法、数値の注意点などを解説

求人倍率とは、求職者数と求人数を用いて算出される、統計経済指標のひとつです。新規求人倍率や推移、計算方法や注意点、企業への影響や関連ワードなどについて詳しく解説します。

1.求人倍率とは?

求人倍率とは、経済指標のひとつ。有効求人倍率は景気とほぼ一致して動くため、景気の状況を測る指標として重視されています。

有効求人倍率が1倍を上回ると求職者よりも求人数のほうが多く、1倍を下回ると求人数より求職者のほうが多いとなります。有効求人倍率が高いほど人手不足で、低いほど就職が困難であるという目安になるのです。

有効求人倍率

「求職者1人当たりにつき、何件の求人があるか」を表す指標のこと。ハローワークに登録している有効求職者数と有効求人数をもとに算出されています。たとえば求職者100人に対して求人が200件ある場合、有効求人倍率は2.0倍となります。

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2.新規求人倍率とは?

ハローワークに新たに登録された求職者数と、同じく新たに登録された求人数を用いて算出される統計です。

有効求人倍率は、前月から繰り越された求職者数と求人数をもとに算出されます。そのため新規求人倍率は、より直近の雇用状況や景気が反映されているのです。新規求人倍率は景気に先行して動くとされています。

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3.有効求人倍率の推移

厚生労働省ではハローワークの求人倍率といった指標を作成して、一般職業紹介状況として毎月公表しています。

全職種

2021年1月分の一般職業紹介状況の数値を見てみましょう。

  • 有効求人倍率(季節調整値)が1.10倍、前月を0.05ポイント上回る
  • 新規求人倍率(季節調整値)は2.03倍となり、前月を0.08ポイント下回る
  • 正社員有効求人倍率(季節調整値)は0.79倍となり、前月を0.02ポイント上回る

職業別

2020年3月以降、年間を通じて新規求人件数が前年同月よりも減少しています。初めて緊急事態宣言が出された2020年4~5月は、3割を超える下げ幅となりました。

産業別で見ると、「建設業」は前年同月を上回る月も見られます。しかし「宿泊業」「飲食サービス業・卸売業」「小売業・生活関連サービス業」「娯楽業」「運輸業・郵便業」などは、年間を通じて前年同月から数値が減少しているのです。

エリア別

全国・都道府県別の有効求人倍率を、2021年1月と2020年1月で比較したところ、すべての都道府県で有効求人倍率が減少しました。

なかでも東京都は最も減少し1.23倍。東京を除く首都圏(埼玉県・千葉県・神奈川県)はいずれも1倍を下回りました。最高は福井県1.57倍で岡山県1.41倍と続き、最低は沖縄県の0.71倍となっています。

コロナウイルスによる影響

厚生労働省が発表した2021年8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.13倍です。前月同月比は0.01ポイント下回りました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響が経済活動に影響し始めた2020年1月以降、有効求人倍率は低迷が続いています。2019年時点では1.5倍を超えていたものの、直近ではようやく1倍を超える程度です。

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4.有効求人倍率の計算方法

有効求人倍率の計算方法は、「企業の求人数÷求職者」の式で求められます。以下で詳しく解説しましょう。

計算式

有効求人倍率の統計対象はハローワークを通じた求人・求職に限られ、求人雑誌・サイトなどの情報は統計に含まれません。新規学卒者に関する求人、求職も統計対象外となります。計算式は「200(有効求人数)÷ 400(有効求職者数)= 0.5(有効求人倍率)」です。

計算する上での注意点

計算する際の注意点としてあげられるのは、「非正規雇用労働者数」「季節調整値」です。詳しく解説しましょう。

「非正規雇用労働者数」は公開される数値に含まれる

有効求人倍率の計算対象となる母数には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の数が数値に含まれます。同時に「正社員の有効求人数」と「パートタイムを除く常用の月間有効求職者数」を母数にして算出した有効求人倍率も発表されるのです。

しかし派遣社員や契約社員の求職者数も有効求人倍率の計算に含まれるため、正社員だけの有効求人倍率ではありません。

有効なデータ「季節調整値」

季節調整値とは、季節に左右される影響を除いた数値のこと。景気の動向を判断するには、有効求人倍率や完全失業率などの項目で毎月のデータを比較する必要があるのです。

しかし月によって稼働日数の違いや、農林業などでは季節の影響が大きいため単純には比較できません。そこで、景気動向指標になる数値では、これら季節的要因を除いた数値を算出します。

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5.求人倍率を参考にする際の注意点

有効求人倍率には、注意点があります。

  1. ハローワーク以外での求人・求職は含まれない
  2. 正社員の求人ではない場合がある
  3. 「業種別」「都道府県・地域別」の数値に注目

①ハローワーク以外での求人・求職は含まれない

有効求人倍率は、厚生労働省がハローワークに登録されている求人数と求職者数から算出しています。そのため民間企業の転職サイトや求人雑誌などに掲載されている求人数は、反映されていません。よって雇用状況を完璧に反映したものとはいえないのです。

②正社員の求人ではない場合がある

厚生労働省による有効求人倍率は正規と非正規の求人を区別していないため、すべての雇用形態の求人が含まれているのです。

パートやアルバイトを除いた有効求人倍率は別に計算されています。しかし派遣・契約社員が含まれているので、正社員だけの有効求人倍率ではありません。

③「業種別」「都道府県・地域別」の数値に注目

報道で取り上げられている有効求人倍率は、全体の平均値がほとんど。日本全体の景況感を判断する際の指標にはなるものの、求職活動の参考にする場合は注意しましょう。就職を希望している地域や希望業種の求人状況に注目した、確認が必要です。

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6.有効求人倍率がおよぼす企業への影響

求人倍率が高いときは「売り手市場」、低いときは「買い手市場」といわれます。有効求人倍率による企業への影響を紹介しましょう。

有効求人倍率が高いときは「売り手市場」

有効求人倍率が1.5倍の場合、1人の求職者を1.5社が取り合うような状況となり、これを「売り手市場」と呼びます。求職者が多くの企業から内定をもらいやすくなるため、企業は優秀な人材の採用が難しくなるのです。

バブル崩壊から続いた就職氷河期を経た、2006年から2008年は売り手市場の時期でした。

労働条件におけるメリットのアプローチ

労働条件のメリットを求職者にアプローチすると、応募者数増につながる可能性があります。基本給のほか営業手当や家族手当、住宅手当などの手当が充実している企業であれば、これらを具体的に表記すると求職者の目にとまるでしょう。

また交通費や社会保険、週休2日などの労働条件を詳しく伝えるのも重要です。

企業方針をしっかり伝える

企業理念やビジョン、社是といった企業の考え方や価値観など企業方針を伝えるのも大きなアピールになります。

組織の方向性には経営戦略や事業戦略も含まれています。しかし仕事にやりがいを感じ、一緒に働きたいと思わせるような明確なビジョンも必要です。特に新卒採用では企業理念を重視している学生が多くなっています。

有効求人倍率が低いときは「買い手市場」

有効求人倍率が低くなると、求職者は転職しにくくなります。有効求人倍率が0.5倍の場合、1人の求職者に対して採用したい企業は0.5社しかないのです。このような状況を「買い手市場」と呼びます。

求職者が転職活動に消極的になってしまうため、採用が難しくなる場合もあるのです。2008年のリーマンショック後は買い手市場になりました。

求人広告を積極的に出す

約9割の求職者が情報収集するときに利用するのが、企業サイト。次に口コミサイトや口コミ検索、企業サイト内の採用ページや企業が運営するSNSと続きます。

この点からも採用活動を行う際は、これらのツールを積極的に使うのが不可欠といえるでしょう。サイトへ企業広告を出すのも効果的です。

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7.有効求人倍率と関係するワード

有効求人倍率と関係するワードは、下記の2つです。詳しく解説しましょう。

  1. 完全失業率
  2. 景気動向指数

①完全失業率

労働力人口に占める完全失業者の割合を示すもの。有効求人倍率と同じで景気動向指数のひとつです。

景気が悪いと雇用数は減少し、それによって完全失業率が上昇すると、雇用数を減らすために有効求人倍率は低下します。景気が良いときは完全失業率が低下し、有効求人倍率は高くなるのです。有効求人倍率と完全失業率は、反比例しながら推移しています。

②景気動向指数

景気全体の現状把握や将来の予測に使われる経済指標のこと。産業や金融など、さまざまな経済に重要かつ景気に敏感な28項目の景気指標をもとに指数が算出されるのです。景気動向指数は、下記3つに大別されます。

  • 数カ月先の景気の動きを示す「先行指数」
  • 景気の現状を示す「一致指数」
  • 半年から1年遅れで反応する「遅行指数」