非正規雇用とは?【なぜ増えた?】正規雇用メリデメ比較

非正規雇用とは正規雇用者以外の労働者のことで、契約社員やアルバイトといった雇用形態を指します。

  • 非正規雇用が増え続ける要因
  • 非正規雇用の種類
  • それぞれのメリットとデメリット
  • 2018年問題と呼ばれる労働契約法の改正をめぐる課題
  • 非正規雇用者の待遇改善に関する世の中の動き

などさまざまな観点から非正規雇用を紐解きます。

1.非正規雇用とは?

非正規雇用とは正規の雇用契約を結ばない雇用形態全般のことで、臨時社員や派遣社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトといった正規雇用者以外の労働者が非正規雇用者にあたります。多くの場合、短期間で雇用契約を結ぶことが多く、また、労働時間や一週間当たりの労働日数など、働き方も一人ひとり異なります。

非正規雇用を英語でいうと

非正規雇用を英語でいうと「irregular(不規則な) employment(雇用)」という意味合いになります。

非正規雇用は正規雇用と違って短期間での雇用が多いため、労働時間などの労働環境を自ら選ぶ働き方も可能です

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2.非正規雇用の割合、増加する要因、問題

続いて、非正規雇用の割合や増加する要因、抱える課題について見ていきましょう。

非正規雇用は増えている

総務省統計局が2019年8月に発表した「労働力調査」によると、就業者6731万人のうち非正規雇用者は2174万人にのぼり、働く人の3割以上を非正規雇用者が占める計算になることが分かりました。

2018年同月の調査と比べると、非正規雇用者は70万人以上増加しており、年々その数を増やしています。また、女性の雇用には特にその傾向が顕著に表れており、女性就業者の63%が非正規雇用であるということも調査の結果で明らかになりました。

こうしたことから、労働現場における非正規雇用者のニーズが高まっていることが読み取れます。また非正規雇用者と一口にいってもパート、アルバイト、派遣社員、契約社員など、雇用形態はさまざまだだということも分かります。

なぜ非正規雇用は増加しているのか

厚生労働省が行った「就業形態の多様化に関する総合実態調査」の結果から非正規雇用を選んだ理由を追ってみましょう。

最も多い理由は「自分の都合のよい時間に働ける」で42.0%、続いて「家計の補助、学費等を得たいから」が34.8%となっており、働き方が多様化している現代日本を背景に、個人がさまざまな事情から非正規雇用を選択していることが窺えます。

一方、「正規雇用として働ける会社がない」と答えた人は18.9%にのぼり、正規雇用を希望しているものの就職がうまくいかずに非正規雇用を選択している労働者も少なくないという実態も浮かび上がりました。

非正規雇用は職業選択の自由があり、多様化する働き方のニーズに合っていることが分かります。しかし一方で、正社員になりたくてもなれない人がいる実情も浮かび上がっているのです

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3.非正規雇用の種類

非正規雇用の中には、さまざまな呼び名や働き方があります。それぞれの名称と特徴を解説しましょう。

派遣労働者

いわゆる「派遣」と呼ばれる働き方です。人材派遣会社と労働者が契約を締結し、人材派遣会社が派遣先企業に労働者を派遣、労働者は派遣先企業の指揮命令を受けて働く形になります。

2つの企業が関与する複雑な労働形態となっていることから、派遣労働者のためのルールが「労働者派遣法」において定められているのです。

たとえば事故やトラブルが起きた際、派遣労働者の雇い主である人材派遣会社が負うべき責任、指揮命令を出す派遣先企業が分担すべき責任なども法律において定められています。

契約社員

契約社員は正社員と違い、労働契約時に雇用期間をあらかじめ労働者と企業間の合意によって取り決めてから働きます。期間は労働者や業務内容によって異なりますが、1回の契約期間の上限は、ほとんどの場合において3年です。

このような期間の定めのある労働契約は有期労働契約とも呼ばれます。また、契約期間が満了になれば労働契約は終了となるのです。そのほか、労働組合への参加を認められないケースや、退職金の有無、給与体系などが正規雇用者とは異なる場合があります。

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パートタイム労働者

一週間における所定労働時間が短い労働者のことを指します。アルバイトやパートなど呼び方は変わっても、条件を満たしていればパートタイム労働者となります。

「パートタイム労働法」では、パートタイム労働者に対して、雇用主が公正な待遇の確保や正社員になるための機会を与えることなどが義務付けられているのです。

また、雇い主が労働者を雇い入れる際、パートタイム労働法では通常の雇用ルールに加え、昇給や退職手当、賞与の有無についても、文書などで明示することを義務付けています。

業務委託や請負

業務委託や請負は、個人が企業から仕事を受けて報酬を受け取る形の働き方です。

正社員や上記の派遣労働者や契約労働者、パートタイム労働者などは労働者として労働法の保護を受けることができますが、業務委託や請負の場合は事業主として扱われます。そのため、労働法で「労働者」としての保護を受けることはできません。

ただし、働き方の実態から労働者であると判断されれば、業務委託や請負といった形態で働いていても労働法の保護を受けることが可能です。それぞれのケースをしっかりと理解しておくことが必要でしょう。

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家内労働者

メーカーや問屋などの委託者から部品や原材料の提供を受けて物品の製造や加工を行い、その労働に対して賃金を受け取るのが家内労働者です。

家内労働者は業務委託と同様、事業主として扱われる働き方ですが、委託者との関係が使用者と労働者に似ていることから「家内労働法」が定められています。

これにより、委託者は家内労働者に仕事を委託する際、家内労働手帳の交付や最低工賃の遵守など、家内労働法に従った対応をしなければなりません。

在宅ワーカー

在宅ワーカーも個人事業主と扱われる働き方で、個人が委託を受け、パソコンなどの端末を用いてリモートワークで業務を行うのです。ただし、法人形態により行っている場合や、従業員を雇っている場合などは除きます。

労働者として法律で守られている働き方ではありませんが、在宅ワーカーに仕事を注文する人と、在宅ワーカーが契約上最低限守るべきルールとして「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」(厚生労働省)が定められています。

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非正規雇用にはさまざまな形式があり、中には法律やガイドラインで働き方を定めたものもあります。個人の環境や適性に応じて雇用形態を選択すれば、労働の幅は広がるでしょう

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4.非正規雇用のメリット

非正規雇用の形式を理解したところで、次は非正規雇用のメリットとはどんなものかを追っていきましょう。

働く時間や職場を選べる

非正規雇用のメリットのひとつは、自分の都合や適性に応じて働き方を選べる点。

時給や報酬で働くことが多いため、残業や休日出勤もなく、働く時間を選択できます。また勤務地や職種についても、企業から異動や転勤を言い渡される可能性のある正規雇用とは異なり、自分の都合のいいエリアや希望職種を選んで応募できるのです。

働き始めるまでに時間がかかりにくい

内定まで何度も企業に赴き、面接や難しい試験を受けなければならない正規雇用の選考と違い、非正規雇用の場合は一度の面接などでその日のうちに採用の合否が出ることも少なくありません。

契約満了や職場環境が合わず早期に仕事を失うことになっても、正規雇用に比べれば、次の職場を見つけるのは容易といえます。

非正規雇用のメリットは2つ。環境に合わせて働き方が選べることと、就職や転職がしやすいことです

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5.非正規雇用のデメリット、問題点、課題

では非正規雇用のデメリットや、課題はどういった点なのでしょうか。

正規雇用との賃金格差

大きなデメリットのひとつとして、正規雇用との賃金格差が挙げられます。正規雇用の場合、ほとんどが月給もしくは年俸制で賞与や交通費などの手当が支給されるのです。

しかし、時給かつ勤務期間があらかじめ決められている非正規雇用は定期的な昇給が困難です。年齢が上がるほど正規雇用との収入差は開き、安定した生活が築きにくいといえるでしょう。

ある日突然仕事がなくなることも

不安定な雇用事情もデメリットのひとつとして数えられます。企業の経営業績が悪化した際に、人件費を抑えるために最初に雇用を打ち切られるのが契約社員や派遣社員です。希望する業界自体の景気が悪くなると、転職もままならない場合もあります。

一部の企業では契約期間の満了時に更新を行わず、契約を終了させる雇止めをするところもあり、正規雇用者に比べて弱い立場になりやすいといえるでしょう。

年齢とともに増す賃金格差と、企業の業績によって突然仕事がなくなってしまう可能性がある契約状況の不安定さが、非正規雇用の持つ大きなデメリットです

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6.非正規雇用と改正労働契約法

労働契約法と労働派遣法の改正を受けて、非正規雇用の雇用形態や契約期間をめぐった問題について説明します。

無期転換ルール

無期転換ルールとは2013年4月1日以降に有期雇用契約を締結・更新した派遣社員や契約社員は、5年後の2018年4月1日から有期雇用契約を無期雇用契約に転換するよう企業に要望を出すことができるというもの。

5年以上の契約となる有期契約労働者が申し込みを行った場合、使用者は拒絶できないためその申し込みを承諾したものと見なされます。そして、当該有期雇用契約の契約期間満了日の翌日から無期労働契約に転換されるのです。

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無期転換申込権

無期雇用への転換においては、有期雇用の契約が5年以上、契約更新を1回以上しているなどの一定の条件を満たしている必要があります。

また該当する労働者は、自分から無期雇用の申し込みをしなくてはならないのです。もし、期間中に申し込みをしなかったとしても、次の更新期間で申し込みをすれば問題ありません。これが無期転換申込権と呼ばれる権利です。

労働者を無期雇用にするには

では、企業として労働者を無期雇用にする場合、どう進めればよいのでしょうか。

有期雇用契約者の状況を確認

まずは現状を把握しましょう。今、社内に通算5年以上となる有期雇用契約者がどのくらいいるのか?どのくらいまで増える見込みなのか?また、無期転換申込権はいつ頃生じるかなどを調査するのです。

またそれに応じて、有期雇用契約者を無期雇用とした際、どのくらいの費用が発生するのかも計算します。さらに、調査の結果から現行制度を修正する必要もあるでしょう。

これらを加味して、有期雇用契約者を無期雇用あるいは正社員採用とするか否か、多角的な面から企業として判断するのです。

無期雇用後の待遇や条件を整頓

無期雇用になった労働者にどのような業務を任せ、今後どのように活躍してもらうのかを検討することも重要でしょう。

それには、効果的な結果を出せるよう、中長期的な視点で人事管理を行う必要があります。たとえば、現在の仕事内容の分類と無期雇用後の社内での役割をしっかりと整理した上で、無期転換後の労働条件の検討を行うのです。

これら待遇や条件面の整頓をおろそかにしてしまうと、無期雇用後のトラブルが発生する恐れもあります。労働条件の検討はこのような点でも非常に重要です。

支援策の確認

「キャリアアップ助成金」というものがあります。これは有期雇用労働者に関する助成金で、7つのコースが用意されています。

  1. 正社員化コース
  2. 賃金規定等改定コース
  3. 健康診断制度コース
  4. 賃金規定等共通化コース
  5. 諸手当制度共通化コース
  6. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  7. 短時間労働者労働時間延長コース

無期雇用転換を進める際、こうした助成金を利用することで費用面での負担を減らすことも可能です。支援策を確認し、必要に応じて申請を行いましょう。

就業規則の整備

待遇や業務面での役割変更を明確にして、支援策の確認も済んだら、今度はそれに従って就業規則の整備(既存の規則の改定、新規作成等)を行います。新たな社員区分の作成、正社員希望者の採用検討、賃金や賞与の見直しや評価方法の修正など、労務・人事面においてあらゆる方針を再考する必要が出てくるでしょう。

こうした非正規雇用者についての就業規則の作成を行うタイミングで、正社員の就業規則の見直しも併せて検討するとよいかもしれません。

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有期雇用契約者へ告知

上記の準備が整ったら、無期転換ルールおよび無期転換申込権などについて、有期雇用契約者に告知し、説明します。申込権のある有期雇用契約者が無期雇用を希望する場合、具体的にどのようなことを行えばいいのか、待遇面・業務面の変更点など、丁寧にしっかりと説明しましょう。

ここでこれまでの役割や無期雇用の役割、正社員の責任などを明確にしておくと、無期雇用後のトラブルやリスクを軽減しながら、スムーズな人事管理を実行できます。

無期転換の実施と改善

すべての準備が整い無期転換を実施することになったら、速やかに無期転換が実施されたかを確認して、必要に応じて改善策を考えます。

たとえば、無期労働契約への転換時には、勤務地の限定がなくなったり残業や休日出勤が発生したりするなど、有期雇用時とは異なる働き方になる場合もあります。このため、転換後も円滑に業務が行われているかを把握して、改善を行う必要があるのです。

制度の設計段階から労働者と使用者のコミュニケーションが密に行われるということは、無期転換を問題なくスムーズに実施する上で大変重要なことです。

無期転換を実施する際は、現状をしっかりと把握・整理し、労使間でコミュニケーションを取り合って進めましょう

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7.非正規雇用の待遇を改善する取り組み

「働き方を選べる」というメリットがあるものの、正規雇用と比べて不安定な雇用で、報酬面などの待遇も良くなりにくい非正規雇用。しかし最近では、非正規雇用の待遇改善に向けて取り組みを行う企業も増えてきています。

非正規雇用と給与アップ

2019年7月、株式会社マイナビは非正規雇用(アルバイト・派遣社員・契約社員)の採用業務担当者を対象に、非正規雇用の「給与に関する業種別企業調査」を実施しました。

それによると、非正規雇用の直近半年間の給与について、「アルバイトの給与をアップした」との回答が最も多く、46.7%にのぼったのです。

業種別に見ると、「警備・交通誘導(セキュリティ・設備工事等)」や「保育」の担当者の60%が給与を上げたと回答していました。一方、派遣社員や契約社員の給与は「変わらない」が5割を超える結果となっています。

理由は人手不足?

同調査によると、非正規雇用の給与を上げた理由の最多は「人材確保が難しくなったため(アルバイト:69.2%、派遣社員:64.9%、契約社員:64.8%)」。次いで「既存社員のモチベーションアップのため(アルバイト:36.9%、派遣社員:38.7%、契約社員:44.3%)」となりました。

また、派遣社員と契約社員の給与を上げる理由を見ると、「既存社員のモチベーションアップのため」や「正社員との不合理な待遇改善のため」の数値がアルバイトの数値よりも10ポイント以上高い結果となったのです。

ここから、既存社員の定着や正社員により近い働き方をしている有期雇用労働者の待遇改善を目的としていることがうかがえます。

IT大手Googleの改革

非正規雇用の待遇問題は、IT大手のGoogle本社にも及んでいます。

Googleは、非正規雇用者に適正な雇用待遇を保証するよう求める方針を派遣会社や業務委託契約を結ぶ企業に対して打ち出し、短期契約で雇用している労働者も正規雇用に切り替えるべく取り組みを進めているのです。

Googleでは、契約社員や派遣社員など非正規雇用で働く人の数は12万2,000人に上るともいわれており、これはGoogleの全スタッフの54%に相当するといいます。世界のトップ企業Googleの行動によって、非正規雇用の待遇を改善する取り組みは今後ますます注目を集めるでしょう。

さまざまな企業が非正規雇用の待遇改善に注目を寄せています。これにより、今後ますます動きが活発化するでしょう