営業部門における売上目標を達成させるには、売上目標をブレイクダウン(細分化)してKPIを管理することが大切です。
目標値が大きいほど実感が湧きにくくなりますが、目標を分解して作業レベルにまで落とし込むことで、達成すべき数字を捉えやすくなります。具体的に売上目標をブレイクダウンする際の手順やKPIの事例を見ていきましょう。
目次
1.売上をKPIに設定する方法
売上高は「売上高=年間顧客数×平均客単価×年間平均購入頻度」の計算式で算出でき、売上高をKGI(成果KPI)とすると、「顧客数」「客単価」「平均購入頻度」はKGIを目指すのに必要なKPIとなります。このいずれかが向上すれば売上高も上昇するでしょう。
「平均客単価」の分解
平均客単価は「平均客単価=商品単価×購入1回当たりの平均購入個数」の計算式で算出できます。平均客単価のKPIは「商品単価」と「平均購入個数」です。基本的には商品価値を高めるなど平均購入個数を増やすための施策を検討しましょう。
「顧客数」の分解
顧客数を求める計算式は「新規顧客数+リピート顧客数」です。顧客数を増やすには「新規顧客数」と「リピート顧客数」をKPIに定め、新規顧客獲得のための施策とリピーター顧客を増加させるための施策をそれぞれ打ち出す必要があります。
「新規顧客数」の分解
新規顧客数は「新規顧客数=新規に購入意向を持った人の数×購入率」の計算式で算出できます。
「新規に購入意向を持った人の数」と「購入率」は新規顧客数のKPIであると同時に、前者はブランド力を、後者はセールス力を表す代替指標でもあります。新規顧客数を増やすには、ブランディングとセールス活動が必要です。
「新規購入意向者数」の分解
「新規に購入意向を持った人の数」は「ブランド認知者数×知覚品質(品質評価度)×ブランド連想(好感度)」で算出できます。新規顧客数を増やすには各要素をKPIとして、それぞれを高める施策を検討することが重要です。
新規顧客の獲得数が伸び悩んでいる場合は、KPIを見直してみましょう。
2.営業・セールス向けKPI
営業部門で検討されるKPIには以下のようなものがあります。
- 問い合わせ獲得数
- 面談各回の満足度
- トータル受注金額
- RFP(提案依頼書)獲得数
- 顧客への訪問件数
それぞれの項目がKPIとしてふさわしいかどうか確認しましょう。
①問い合わせ獲得数をKPIに設定した場合
「問い合わせ」は具体性に欠けるため、基本、KPIには不適切です。企業にはさまざまな問い合わせが入りますが、商品の使い方やサービスの確認のためも多いため、必ずしも売上に直結するというわけではありません。
また、その問い合わせがどのチャネルを通してもたらされたものか、評価しにくい面もありるのです。会社の口コミなのか、集客戦略によるものなのか、情報経路が分からなければ成果を正しく測ることはできないでしょう。
問い合わせをKPIに設定するなら、たとえば「営業先から連絡をもらい面談の約束を取り付けた数」など、具体的に定義することが大事です。
②面談各回の満足度をKPIに設定した場合
ビジネスの場で、営業担当者に対する評価を毎回顧客に確認するのは現実的ではありません。営業担当者の目前でアンケートをお願いすればバイアスがかかりやすくなりますし、商談の成立・不成立によって満足度が変化することも考えられます。
このように「面談各回の満足度」によって営業担当者に対する評価を正しく測ることは困難なため、KPIとしては適切ではありません。
どうしても顧客から直接評価を得たい場合は、商談やプロジェクトの経過途中ではなく、すべてが終了した後に総括として総合的な評価を聞くとよいでしょう。
③トータル受注金額をKPIに設定した場合
「トータル受注金額」はKGI(成果KPI)に設定すべき要素であり、中間指標(プロセスKPI)としては不十分です。
たとえば、トータル受注金額を中間指標に設定することで、「受注金額が大きければ良い」と大きな案件ばかりに目が向き、将来的に成長しそうな小さな案件が軽視されることも考えられます。
つまりトータル受注金額からは必要な行動が見えにくいため、より細かく分解してKPIを設定しなければならないのです。目標達成の重要なカギとなるKPIには、曖昧なものではなく具体的な行動や施策を見つけて設定しましょう。
④RFP(提案依頼書)獲得数をKPIに設定した場合
RFP(Request For Proposal)とは、発注企業が受託企業に対する要望をまとめた提案依頼書のこと。発注する意思があるときに作成されるものなので、「RFPの獲得数」は営業の成果を把握するためのKPIとして適しています。
営業担当者にとっては、日頃の営業活動にて尽力すべきポイントが明確になるため、営業の質を高めることができる指標となるでしょう。
ただし、この指標はすべての営業担当者に有効なわけではなく、どちらかというと実力のある営業担当者に対して設定すべき指標となります。また受注率が高いのに営業件数が少ない担当者に対しても有効といえるでしょう。
⑤顧客への訪問件数をKPIに設定した場合
顧客への訪問件数は、新人営業担当者の新規顧客獲得においては有効かもしれませんが、ベテラン営業担当者のKPIには不適切といえるでしょう。なぜならすでに関係を構築できている既存顧客をただ訪問するだけでは、大きな成果を挙げることができないからです。
また新規顧客を開拓する上でも、確度の不明な新規顧客を闇雲に回るのは非効率といえます。
知恵と経験を兼ね備えた営業担当者に対しては、訪問件数を重ねることを促すより、たとえばRFPの獲得数や受注単価など、次のステップに注力できるようなKPIを設定したほうがよいでしょう。