地方創生とは? 企業のメリット、成功のポイント、活用できる制度、取り組み事例

地方創生とは、第二次安倍内閣によって2014年に開始された政策のこと。目的は地方活性化です。その重要性や目的、現状や企業が取り組むメリット、成功させるポイントについて詳しく解説しましょう。

1.地方創生とは?

地方創生とは、地方活性化を目的とした政策のこと。2014年、第二次安倍内閣によって始まりました。

少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけていきます。それとともに東京圏へ人口が過度に集中しないよう取り組み、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくのです。

「まち・ひと・しごと創生」とも呼ばれており、目的は「まち・ひと・しごと創生法」の目的規定である第一条に示されています。

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2.地方創生の重要性

地方から労働力の中心を担う若者がいなくなり、過疎化が進み、経済が縮小してしまうことを食い止めるため、地方創生が重要視されています。地方創生に取り組んで地方都市の経済を活性化し、そして雇用を生み出して人が集まる流れを作っていくのです。

出生率・出生数の推移

出生数・出生率は、1970年代半ばから長期的に減少傾向にあります。出生率は2006年以降、緩やかに増加しているものの近年は横ばいで推移。出生数は2016年以降100万人を下回り、毎年減少しています。

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3.地方創生の目的

内閣に設けられた「まち・ひと・しごと創生本部」が主体となって、地方創生に向けてのビジョンや段階ごとの目標が掲げられています。

都心部集中の是正

東京一極化の要因にあるとされているのは、修学や就職、利便性や自由度の高さなどを求める20代前後の東京流出。それと首都直下地震といった災害のリスクが切迫するなか、諸機能・施設が東京に集中している点です。

都市部集中化の推移

東京圏の人口は一貫して増加しています。その大半は進学や就職がきっかけとなっているのです。

名古屋圏うあ大阪圏の人口は2000年代前半から横ばい傾向です。国際的に見て、日本は首都圏人口の比率が高く、かつ上昇が続いています。

中枢中核都市の選定

政令指定都市の札幌や中核市の富山、施行時特例市の水戸、県庁所在地の津などの82市が地域経済の中心を担う中枢中核都市です。周辺自治体を含む地域を活性化させ、東京圏と地方の転入・転出の均衡を目標にしています。

産業強化

基本目標は「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」。具体的な政策は、下記のとおりです。

  • 生産性の高い活力にあふれた、地域経済実現に向けた総合的取り組み
  • 観光業を強化する地域における連携体制の構築
  • 農林水産業の成長産業化

地方財政の安定

地方経済の課題は次のとおりです。

  • 経営者の後継者不足により地域経済を支える企業が消滅して、地域経済が縮小
  • 地方経済や社会の持続可能性の低下により、地方の企業活動が一層停滞、基幹産業が衰退し、地域経済がさらに縮小した

地方財政の推移

各都道府県の財政力は以下のとおりです。

  • 財政力指数1.0以上の需要に十分な収入があるのは、東京都
  • 需要の7〜9割の収入は、神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府・静岡県
  • 半分以下〜7割未満の収入は、栃木県・群馬県など15府県
  • 半分未満の収入は岩手県・鳥取県・高知県など25道県

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4.地方創生の現状

第1期地方創生戦略では、2020年までに「東京圏の転入超過数をゼロにする」という目標を掲げ、移住促進に取り組みました。しかし東京圏の転入超過は増加傾向にあり、目標は達成できなかったのです。

好景気を受けた大企業の積極採用の影響もあって2018は、2014年に比べて29の府県で転出超過が拡大し、その間、東京圏の転入超過数は24.7%増加しました。

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5.企業が地方創生に取り組むメリット

恩恵の多さから、多くの企業が地方創生に参入しているのです。企業が地方創生に取り組むメリットを紹介しましょう。

  1. イメージアップ
  2. 優秀な人材の確保
  3. 緊急時の危機管理対策
  4. 助成金や補助金を活用できる

①イメージアップ

企業やブランドのイメージアップに向けて取り組む企業が増えています。国際社会では大企業ほど社会貢献への取り組みに熱心で、その活動はメディアでも取り上げられるのです。さらには国や地方自治体から表彰される場合もあります。

②優秀な人材の確保

中央と地方との人的交流が盛んになり、中央と地方それぞれの考え方を出し合いながら地域を活性化していくため、人材の成長が期待できます。また地場産業の課題とその解決方法を考えるため、新たなビジネスモデルが生まれる可能性もあるのです。

③緊急時の危機管理対策

企業のオフィスが1カ所に集約されていると、災害発生時、一気に身動きが取れなくなってしまうでしょう。危機管理対策として、中央と地方、さまざまなエリアにオフィスを分散させるのが重要です。

④助成金や補助金を活用できる

たとえば和歌山県には移住者のための起業補助金があり、10年以上定住する者に経費を最高100万円まで補助します。長野県では資本金が1,000万円以下の企業に対して、3年間、税を全額免除する制度があるのです。

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6.地方創生を成功させるポイント

地方創生に取り組んでいる自治体や企業は多くあるものの、成功している団体ばかりではないようです。成功のポイントを紹介しましょう。

  1. 資金を調達する
  2. 持続可能なモデル
  3. 地域の魅力をキャッチーに伝える
  4. 地方住民の協力
  5. 地域資源の活用
  6. SDGsとの関係性

①資金を調達する

資金調達の方法は、下記のとおりです。

  • 一般社団法人地方活性化センターや経済産業省公式HPなどで情報を収集し、助成金や補助金を利用する
  • クラウドファンディングを利用する
  • ファンドやエンジェル投資家に出資を要請する

②持続可能なモデル

地方創生の取り組みを一過性のものとして終わらせず、地域の活力を保ち続けられるモデルやシステム作りが重要です。一時的に流入人口や雇用が増えたとしても、長続きしなければその地域は結局廃れてしまいます。

③地域の魅力をキャッチーに伝える

住民の都市部への流出が進むなか、人を呼び込んで経済を活性化させるには、地域の資源や魅力をどう発信するか、考える必要があります。そのうえで地方創生に取り組むと成功しやすくなるでしょう。

④地方住民の協力

地元住民が魅力を感じる事業で、なおかつ地元が潤い、活性化につながる事業の展開が必要です。そのためにも現状や求められている事業について、住民に確認するとよいでしょう。

⑤地域資源の活用

地域にもとからある資源や産業を生かす取り組みも必要です。まったく新しい事業をするのは困難でリスクもともなうもの。地域の強みを活用できれば、これまでにない新たな発見につながるでしょう。

⑥SDGsとの関係性

地方創生と相性の良いSDGsの考え方を取り入れていく取り組みも重要です。2030年までに世界が取り組むべき持続可能な開発目標を示した、SDGsの手法を取り入れた活動で地域活性化、持続可能なまちづくりを行う地方自治体が増えています。

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7.地方創生について活用できる制度

地方創生に向けて支援する支援金や交付金などがあります。地方創生に活用できる制度を見ていきましょう詳しく解説します。

  1. 地方創生推進交付金
  2. 地方創生臨時交付金
  3. 地方創生テレワーク交付金
  4. 地方拠点強化税制

①地方創生推進交付金

地方創生を実現するため地方で起業をする、もしくは移住する人を対象とした補助金です。令和3年度の予算は1,000億円となっています。

起業支援金

対象者は、「新たに起業する場合」「事業承継又は第二創業する場合」です。それぞれに条件があり、すべてを満たす必要があります。地域課題の解決と地方創生の実現を目的とした活動に最大200万円が交付されるのです。

移住支援金

東京23区(在住者または通勤者)から東京圏以外へ移住し、就業や企業を行う人には、都道府県・市町村が共同で交付金を最大100万円(単身は最大60万円)が支給されます。5年以上東京圏で働く人限定の給付金制度です。

②地方創生臨時交付金

新型コロナウィルス感染拡大により損害を受けている地域の事業者や市民を支援するため、全都道府県・全市区町村を対象にした支援金です。公共施設の感染対策や事業者への補助金、資金繰り支援など用途はそれぞれの自治体に一任されています。

③地方創生テレワーク交付金

地方創生につながる企業や組織のテレワークを推進する交付金です。サテライトオフィスといった施設の整備や運営、民間の施設開設や運営への支援など、ひとの流れを創出する、地方公共団体の取り組みを支援します。

④地方拠点強化税制

本社機能を地方へ移転、または拡充する企業を対象にした法人税の軽減措置です。対象事業は、「移転型事業」「拡充型事業」の2パターン。税制を適用するには都道府県知事から整備計画の認定を受ける必要があります。

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8.地方創生についての企業の取り組み事例

企業による地方創生の取り組みを紹介しましょう。それぞれ多様な形で地方のビジネスを活性化させています。

能作

右肩下がりだった銅器製造業界にて、素材とデザインをキーワードに、すずを使った柔軟性のある金属製品を開発し、日本各地のみならず世界各地へ販売しました。特徴的な取り組みや成果は次のとおりです。

  • 地域発のグローバルトップクラス技術による商品開発
  • 地域資源の価値を高める地域ブランディングの確立
  • 産業観光の取り組み

小松製作所

本社機能の東京集中を、危機管理やより多様な人材雇用といった観点から、一部を石川県に移しました。

地元の優秀な人材の獲得とともに、金沢大学とのつながりが強くなり、さまざまな次世代プロジェクトの推進に成功。県のバックアップ体制を得た結果、自社企業だけではできなかった大規模なプロジェクトも積極的に実施できる基盤を完成させたのです。

シタテル

熊本県熊本市に拠点を置く、アパレルの分野で地域の業者間ネットワークの強化に貢献している企業です。

生産から販売までのプロセスが複雑化しやすい点に着目しました。そしてクラウドプラットフォームを通じて、業者をマッチングさせながら生産プロセスが管理できるシステムを構築。

また流通経路の確立に課題を抱えてきた地域の職人や工場などが、広く活躍できる場を整えました。

中村ブレイス

世界から注目される医療機器メーカーです。社会貢献活動の一貫として島根県大田市の景観を維持するため補助金や融資に頼らず、40年間で古民家を50軒以上再生しました。

古民家には、若者が多数移住しています。旧郵便局舎を活用した日本一小さなオペラハウス作りといった取り組みがメディアに取り上げられたため、地域PRにも貢献しています。

霧島酒造

拠点を構える南九州産の原材料を使用する酒造メーカーです。原材料の生産農家と連携しながら栽培拡大や品質向上に取り組んでいます。さらには自治体と連携して、ふるさと納税を利用したPRも実施しており、同社製品を謝礼品にしているのです。

その結果、平成27年度には、市のふるさと納税寄付金額が全国1位になりました。

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9.地方創生についての自治体の取り組み事例

世界でも有数の観光地として知られる日本の地方自治体がどう地方創生に取り組んでいるのか、紹介します。

北海道富良野市

数名の有志が市や商工会議所と一緒に、官民一体のまちづくり組織を設立。中心市街地の空き地を活用したまちづくりに取り組んでいます。

富良野の食の魅力を発信する複合施設「フラノマルシェ」を開設し、まちの新たな魅力を創出すると同時に、利便性・機能性に富んだ施設のまちなか集積によるコンパクトシティ作りを行っているのです。

奈良県大和郡山市

街全体をあげての賑わい創出事業を行いました。地域に元からある資源を活用し、かつ地域住民と協力した取り組みが積極的に行われたのです。

  • 街中の魅力を高めるための散策案内の作成
  • 金魚鉢デザインコンテストの優秀作品を街なかに配置
  • 周辺店舗の負担によるクーポンの提供
  • 郡山城の天守閣が復元されるアプリの開発

滋賀県長浜市

黒壁に代表される古い建物を生かし、統一感のある建物に改修して街並みを整備しました。

  • 建物は新規出店者に店舗を貸し出すほか、ガラスをテーマに新たな産業を確立
  • ガラス工芸品などを販売し、その売上を空き店舗の改装などの街並み形成に活用
  • エリアマネジメントを担うまちづくり会社が、空き町家の解消とあわせて創業や居住を支援