欠勤とは、本来出勤しなければならない日に労働者都合で休むことです。やむを得ない理由で当日に仕事を休む必要が出てくるケースも少なくありませんが、給料はいくら引かれるのか、欠勤の代わりに有給休暇を使用できないかなど、気になるポイントも多いでしょう。
今回は、欠勤についてさまざまな観点から詳しく解説します。
目次
1.欠勤とは?
欠勤とは、本来出勤しなければならない日に労働者の都合で休むこと。労働者の都合のうち、前もった申請のない法定外休暇を指します。しかし法律上「欠勤」の明確な定義はありません。
欠勤した分の労働時間は、残業や休日出勤では補填できない仕組みとなっています。というのも、残業や休日出勤は法律上、賃金に手当が上乗せされるため、企業側は通常より多くの給料を支払わなければならなくなるためです。
欠勤は労働者による労働契約違反
欠勤は、労働契約違反に該当する行為です。
雇用者と労働者は「労働者は雇用者の指示にもとづいて労働を提供し、雇用者は対価として給料を支払う」といった内容で労働契約を結んでいます。そのため欠勤は「契約における労働提供義務の不履行」に値するのです。
また、労働者は「出勤する義務」はありますが「欠勤する権利」はありません。欠勤だけでなく、二日酔いや体調不良などで本来欠勤したいところを出勤し、指示通りに業務がこなせない状態も契約に違反している状態です。
ノーワークノーペイの原則とは?
欠勤の場合、ノーワークノーペイの原則(労働義務のある日に労働をしないならば、給料を支払う義務はないという考え方)が適用されます。これは、労働基準法24条「賃金の支払」に規定されているのです。
給与計算の原則は、労働に対する対価として賃金を支払うという考え方にもとづくもの。つまり、労働していない使用者に対して賃金を支払う義務はありません。
この考え方は1日を通した欠勤だけでなく、時間単位の欠勤にも適用されます。たとえば始業時間9時に対し、遅刻して10時から仕事を始めた場合、1時間分の欠勤としてその分賃金を差し引くのも可能です。これに対し、従業員は給料を請求できません。
2.欠勤控除とは?給料からいくら引かれる?
欠勤控除とは、ノーワークノーペイの原則にもとづいて欠勤した場合、基本給から欠勤分が引かれること。欠勤控除は終日の欠勤だけでなく、遅刻や早退にも適用されるのです。欠勤控除について、詳しく解説します。
欠勤控除になるケース・ならないケース
すべての欠勤や遅刻、早退に欠勤控除が適用されるわけではなく、欠勤控除になるケースとならないケースがあります。
欠勤になるケース | ・有給申請をせずに休む ・有給が残っていない状態で休む |
欠勤にならないケース | ・有給休暇を使用して休む ・会社独自の休暇制度を使用して休む ・会社都合の休業 |
体調不良といったやむを得ない事情での休みでも欠勤扱いとなる場合があります。二日酔いのような、自己管理に問題がある理由では当然欠勤扱いです。ただし、医者の診断書があれば欠勤扱いにならないケースもあります。
一方、インフルエンザや新型コロナなど感染性のある病気の場合、感染が広らないよう、会社側も注意が必要です。
欠勤にならないよう無理して出社した結果、感染が広がってしまっては企業にとっても大きな損失でしょう。体調不良時の欠勤は慎重に扱うことが求められます。
欠勤控除の計算方法
欠勤控除の計算方法は、日単位と時間単位で2種類あります。
日単位 | 時間単位 | |
計算方法 | ・固定給÷所定労働日数=1日あたりの賃金 ・欠勤控除額=1日あたりの賃金×欠勤した日数 |
・固定給÷所定労働日数÷1日の所定労働時間=1時間あたりの賃金 ・欠勤控除額=1日あたりの賃金×欠勤した時間 ・遅刻や早退は1分単位で計算:1時間あたりの賃金÷60 |
計算例 | 【固定給30万円/月の所定労働日数20日の場合】 30万円÷20日=1.5万円 1回あたりの欠勤控除額は「1.5万円」 |
【固定給30万円/月の所定労働日数20日/1日の所定労働時間8時間の場合】 ・1.5万円÷8時間=1,875円 1時間あたりの欠勤控除額は「1,875円」 ・10分の遅刻による欠勤控除額=1,875円÷60=31(小数点以下切捨) ・31円×10分=310円 |
固定給は「基本給+諸手当」で算出します。ただし基本給から差し引くのか、諸手当も含めた上で差し引くのかは雇用者の判断となるのです。
欠勤控除の注意点
欠勤控除は、法律で定められたルールではありません。企業側は欠勤控除を適用するにあたって、欠勤控除が適用されるケースや計算方法を就業規則や給与規定に明記しておくことが必要です。
従業員が欠勤控除について把握していないなかで適用し、給与が減っているとトラブルの原因となるため、ルールとして明文化して社内で周知しましょう。
欠勤控除が違反になるケース
欠勤控除で給料から差し引けるのは、欠勤により働かなかった日・時間分の賃金のみ。欠勤のペナルティと称してそれ以上の賃金を差し引くことはできず、欠勤分以上の賃金を控除することは労働基準法違反にあたります。
ただし、就業規則に「減給」を定めている場合は例外です。「特別な理由なく遅刻や早退、欠勤を繰り返す」「無断欠勤する」などといった行為は減給の対象となり得ます。
なお、懲戒処分としての減給は「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、月給の10%以下」と定められているのです。ただし、就業規則で定めていないのに減給する、規定の減給額を超える減給はルール違反となります。
3.欠勤時に有給休暇は使える?
有給休暇が残っている、または雇用者に理由が認められた場合、欠勤時に有給休暇が使えます。有給休暇は、基本的に事前申請して利用するもので、欠勤は当日に休むことになるため本来は有給休暇と認められません。
しかし、雇用者が許可した場合は有給休暇を利用できます。たとえば、インフルエンザによる欠勤は、観戦拡大のリスクがあるため企業によって有給休暇が認められやすいです。
この点も、トラブルを避けるには欠勤時の有給休暇の扱いについて就業規則で明文化することが望ましいでしょう。一方、企業に義務づけられている従業員の年5日間の有給消化義務を欠勤時に勝手に適用させるのはできません。
有給休暇とは? 付与日数や計算方法、繰越の上限をわかりやすく
有給休暇(年休)とは、従業員が心身の疲労回復やゆとりある生活を送ることを目的に取得できる休暇で、休暇でも賃金が発生します。従業員は有給休暇を取得する義務があり、企業は有給休暇を付与・取得を承認する義務...
4.欠勤と休職の違い
休職は労働者が働けない状態となり、長期的に休むこと。うつ病を発症した病気や怪我で長期療養が必要などのケースが休職に該当します。
休職についても法律で明確な規定はなく、企業にその扱いが委ねられている状態です。そのため、どういった時に休職になるのかは企業によって条件が異なります。
基本的には休職についても就業規則で規定されており、なかには連続して欠勤することを休職の条件として規定している企業もあるのです。
なお欠勤と休職には、「休んでいる間の給料は支払われない」という共通点があります。
休職とは? 休職理由、手当金の申請・計算方法について
休職とは、労働者が自分の都合で会社を長期的に休むこと。ここでは、休職とは何か、そして業務外での病気やケガの療養で休職しているときに受け取れる傷病手当金などについて説明します。
1.休職の定義とは?
...
5.欠勤は解雇の理由になる?
一度欠勤したからといって、解雇の理由になることはありません。しかし解雇の理由にならないのは病気やケガなどのやむを得ない理由で欠勤している場合です。
状況次第では正当な解雇事由になるため注意しましょう。旅行のための欠勤といった、私的な理由で欠勤を多用するのは労働義務の不履行にあたります。
一方、どんな理由であっても、欠勤が多すぎる場合や長期的な無断欠勤は解雇の理由として十分なものです。たとえ解雇にならなくとも、始末書の提出や減給などの罰則が科されるケースがあります。
無断欠勤とは?【クビにできる?】その後対応方法まとめ
無断欠勤は会社に勤める上でもってのほかです。まともな社会人であれば説明不要の常識でしょう。しかし、無断欠勤とはそもそもどういったものか、詳しく知る人は少ないかもしれません。
明確な意味や定義を理解する...
6.欠勤時のメールの書き方
やむを得ない理由で欠勤する場合でも、無断欠勤は厳禁です。必ず理由と合わせて、欠勤する旨を上司に連絡しなければなりません。メールには理由を明記し、本来勤務すべき日に休んでしまうことに対して誠実な姿勢で対応することが大切です。
下記のメールの書き方を参考に、やむを得ず欠勤してしまう場合はしっかりと連絡を入れましょう。
件名 | 【営業1課/××】体調不良による欠勤のご連絡 |
本文 | ◯◯課長
おはようございます。 昨夜より発熱と腹痛があり、今朝も改善していないため本日の出勤が難しい状況です。 この後病院へ行き、診察結果を改めてご連絡いたします。ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。 |
基本はメールよりも電話での連絡が望ましいでしょう。なぜなら、メールは相手が受け取ったか確認できず、電話のほうが確実に休むと伝えられるからです。
なかには、メールが送信されていなかった、相手が確認していないことで無断欠勤と思われてしまう可能性もあります。しかし体調不良や状況的に電話がむずかしい場合、メールでの連絡で問題ありません。
7.企業の欠勤に関するケーススタディ
ここでは、企業の欠勤に関するケーススタディについて紹介します。
- 欠勤と残業(時間外労働)の相殺はできる?
- 欠勤と代休(休日出勤)の相殺はできる?
- 裁量労働制における欠勤の扱い方とは?
①欠勤と残業(時間外労働)の相殺はできる?
労働基準法では、会社に、1日8時間を超えた労働者の時間外労働に対して割増賃金を支払うことを求めています(時間外労働割増賃金(125%))。
あらかじめ変形労働時間制などを設ける、事前に承諾を得ての振替休暇を決めているなどが必要とされます。また時給制の仕事などであれば欠勤と残業の相殺は可能と考えられています。
②欠勤と代休(休日出勤)の相殺はできる?
代休とは休日に勤務した代わりに取る休暇のこと。会社側の一方的な欠勤と代休の相殺はできませんが、会社側と労働者の間で個別の同意を得ている場合は、欠勤を代休として扱えます。
ただし労働者が法定休日に出勤した場合、会社側は労働者に最低35%の割増賃金を支払わなくてはなりません。
就業規則に賃金の清算規定がない場合では、欠勤を代休として扱っても、結局法定休日労働に対して「1.35倍」の賃金を支払わなければならないと労働基準法で定められているのです。
③裁量労働制における欠勤の扱い方とは?
裁量労働制はその性質上、業務の遂行方法や労働時間の配分などを労働者の裁量に委ねることがほとんどです。とはいえこの制度を採用したからといって、労働基準法に定められている休日や休暇が除外されるわけではありません。
欠勤については他の労働者と同様、就業規則上の扱いを受けることができます。裁量労働制であるため欠勤したにもかかわらず、出勤したものと見なされることはありません。
ただし、欠勤しても給与からその分を控除するかは、それぞれの会社の就業規則などによる点が大きいと考えられます。