ボトルネックとは、全体の成果や能力に影響する最も問題となる箇所のことです。本記事では、ビジネスにおけるボトルネック意味や引き起こす問題点、その解消法について解説します。
目次
1.ボトルネックとは?
ボトルネックとは、業務やプロジェクトの行程のなかで、停滞や生産性の低下を招いている行程や人を指す言葉です。業務全体に悪影響を与えるため、正確な把握と早急な解消が求められます。ボトルネックという呼び方は、大きな瓶でも首が細いと注げる量が制限される現象に由来しています。
たとえば、コンピューターの分野で障害や問題が発生した際の原因、システム処理や通信のスピード低下の原因や要因がボトルネックに当たります。
また製造業などの分野では、いくつかの生産工程のうちでスピードが遅いなど生産率を下げている工程をボトルネックと呼んでいます。
2.ボトルネックが引き起こす問題
生産ラインの進行の妨げになる原因や、作業がうまくいかない要因など、業務の成果に影響を及ぼすボトルネックが引き起こす問題点、課題とは何でしょうか。生産性の低下、使える時間やお金が減る、精神的な余裕が減るなど3つの視点から解説します。
生産性が低下
たとえば、ある企業が製品を製造するために、複数の工場を用いて順に製造工程を進めていくとしましょう。
ある工場は製造能力が高く作業スピードが速いのですが、他の工場を順に通って製品が製造されていくため、最も製造が遅く製造数の少ない工場に合わせて工程を進めていくしかありません。
この最も製造能力の低い工場こそがボトルネックです。ボトルネックが大きな課題となり、生産性は低下してしまうでしょう。
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使える時間やお金が減る
生産性低下の項目でも解説しましたが、会社が持つ複数ある工場の中で、最も製造が遅くて製造数の少ない工場がボトルネックです。能力の高い最も優れた工場に工程を合わせられず、この工場によってほかの箇所に影響が生じ、その結果、時間を使ったりコストがかさんだりしてしまいます。
精神的な余裕が減る
仕事がうまくいかない原因、非効率の原因、拒否する原因などの意味を持つボトルネックという言葉は、さまざまなビジネスシーンで使われています。
新しい商品やサービスの企画会議、上司への進捗状況の説明、取引先へのトラブル説明という場面もあるでしょう。いずれも仕事の進行を妨げる事柄を指してボトルネックと呼ぶのです。
こうした事態に遭遇すると、「どうしたら解決できるだろうか」「困った」などといった気持ちが生まれます。つまりボトルネックは、当事者の精神的な余裕をなくしてしまうのです。
3.ボトルネックが発生する原因と対策
ボトルネックが発生する原因は様々です。こちらでは様々な業界・業種に共通する主な原因について紹介します。
業務の属人化(ブラックボックス化)
ボトルネックを引き起こす主な要因の1つが業務の属人化です。属人化とは、特定の個人や少数の人間しか業務プロセスや進捗を把握していない状態を指します。つまり業務担当者の不在や異動が発生すると、業務が滞ってしまうのです。
属人化を防ぐためには、業務の分散化やマニュアル化といった対策が必要となります。
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人手不足
業務に対して十分な人的リソースがない場合も、ボトルネックを引き起こします。急激な業務の増加、特定スキルを持つ人材の退職など、人手不足がプロジェクトや業務の進行を遅らせるのです。
こうした状況に対応するためには、ポジションごとに必要な人材像やスキルを明確化しておくことが重要です。必要な要件が明らかになっていれば、人材不足解消に向けた人材の採用や外部委託、人材の育成が円滑に進みます。
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非効率な承認プロセス
組織における承認プロセスが多い場合、意思決定が遅れ、施策の進行が停滞する可能性があります。
細かな確認と承認が必要な場合でも、なるべく承認プロセスを削り、効率的な意思決定のプロセスを確立すべきです。もし承認プロセスの数を減らせない場合は、ワークフローシステムで承認プロセスをデジタル化し、承認速度を速めることも検討するとよいでしょう。
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アナログな業務
アナログな業務もボトルネックの原因の1つです。たとえば紙の文書はデジタルデータに比べ、情報の検索や更新に時間がかかるため、業務やプロジェクトの進捗に遅れが生じやすくなります。また手作業でのデータ入力や管理はヒューマンエラーを誘発し、ミスの対処に時間を取られることになります。
こうした問題を解決するためには、デジタルツールや業務プロセスのデジタル化などの対策が必要になってきます。いきなり全てをデジタル化するには難しいので、優先順位の高い業務やすぐにデジタル化できるものからはじめてみましょう。
コミュニケーション不足
部門間やチームのコミュニケーションが不足していると、予期せぬ誤解や問題を引き起こし、業務やプロジェクトの進捗が停滞、ボトルネックとなる可能性があります。
解決策としては、全社的なチャットツールやプロジェクト管理ツールの導入、定期的な会議や報告の実施などが挙げられます。特にリモートワークを実施している場合は、コミュニケーションの円滑化は重要な課題です。
4.ボトルネックの解消方法TOCとそのやり方
TOC(Theory of Constraints)とは、見つけたボトルネックの解決を目指す手法のこと。提唱したのはイスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット氏で、日本語では「制約条件の理論」と訳されています。
TOCでは、ボトルネックとなる工程や箇所(制約条件)を集中的に管理し解決して、ゴールに向かうのです。導入によって全体の作業工程が最適になることはもちろん、労働者に精神的な余裕が生まれるでしょう。
TOCを活用してボトルネックを解消するステップは、5つです。この5つのステップをどのように進めていくとよいのか、説明していきます。
- ボトルネックを特定
- ボトルネックをフル活用する方法を考える
- ボトルネックに合わせる
- ボトルネックを改善
- 1から繰り返していく
①ボトルネックを特定
ボトルネックがすぐに特定できる場合は、そのまま次のステップへと進めていきます。
しかし、「仕事量が多い、工程数が多い」「同時に行っている仕事がある」などの理由でボトルネックが特定できない、またはボトルネックが全く見えない、というケースもあるでしょう。
その場合、必要のない仕事や最優先する仕事など、環境を整理してできるだけシンプルにして、ボトルネックを特定していきます。
②ボトルネックをフル活用する方法を考える
ボトルネックを見つけたら、ボトルネックをフルに活用する方法を考えていきます。
ボトルネックになっている箇所が本来の能力を十分に発揮できているのか、何らかの不具合や障害によって発揮できていないのかを判断して、生産性が向上する方法を考えていくのです。
ここで重要なことは、新たに設備を導入する、新規採用して人員を増やすなど資金を投入する対策ではないという点。あくまでも、現在の設備や人員数、労働者が持っている能力を最大限に引き出すことにフォーカスします。
③ボトルネックに合わせる
第3ステップでは、ボトルネック以外のリソースなどをボトルネックと同様にコントロールしていきます。たとえば製造工程の場合、ボトルネックが処理できる量だけ資材を投入し、ボトルネック以外の工程は稼働させません。
これまでボトルネックとなっていた工程を解消しながら、それ以外の工程の稼働率を上げるやり方をやめて、全工程の能力を同期させてバランスを取るのです。
とはいえ、簡単にできるものではありません。「ボトルネックに合わせる」は、5段階ステップのうち、最も難しいステップとされています。
④ボトルネックを改善
第4ステップでは、お金を使う対策を含めてボトルネックを改善する方法を決めていきます。第2ステップでは新たな設備や人員を増やさずに、今ある能力を徹底的に活用してボトルネックを改善してきました。
しかしそれでもボトルネックが変わらない、やるべきことは十分に行った、これ以上は限界だと判断できる場合もあるでしょう。
そのとき初めて、新規設備の導入や遊休設備の改造など設備増強、優れた人材を採用するなどお金を使った対策を行い、ボトルネックの改善を進めていくのです。
⑤1から繰り返していく
いよいよ最後のステップです。第5ステップでは、今まで進めてきたボトルネックとなっていた工程がどのように改善されたのかを判断しながら、再度第1ステップから第5ステップまでを繰り返します。
また、第4ステップでボトルネックとなっていた工程が改善し能力が向上した場合、制約工程が変わることもあり得ます。改善に向けて進めてきたことが崩れないよう、次のボトルネック解消に向け、再度、再度第1ステップから第5ステップまでを行っていくのです。