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役員とは、会社の経営や業務などにおいて重要事項を決定する権限を持つ役職陣営のこと。
役員の種類や報酬、登記方法などについて解説します。
目次
1.役員とは?
役員とは、会社の経営において責任を持つ役職に就いている人。経営や事業の方針の決定や、業務や会計の監督や監査などを担います。
会社法第329条の定義で役員とされているのは「取締役」と「会計参与」、「監査役」の3つです。役員と一般的な社員が異なる点は、以下のとおりです。
- 役員の選任や解任は「株主総会」で決議される
- 雇用契約ではなく「委任契約」となる
- 役員へ支払われるのは給与ではなく「報酬」
- 労働時間の定めがない
役員など
会社法423条では、「役員等」に以下の役職が記載されています。
- 取締役
- 会計参与
- 監査役
- 執行役または会計監査人
なお経営に従事しているのであれば、会長や理事長なども役員に含めることが可能です。
一般的な社員と役員にはさまざまな点で違いがありますが、経営目標達成に向けて事業を進めていく点では同じ立場です。
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2.役員の種類
会社法で定められている役員は、すべて社内の経営層にあたる人材が選任されると思われがちですが、一部は社外の人材を選任しなければなりません。
ここでは会社法で定められている取締役と会計参与、監視役について説明します。
取締役とは?
取締役とは、業務執行を行う際に意思決定を行う責任者。
代表取締役と混同されやすい役職ですが、その内容は異なります。取締役会を設置する会社においては複数の取締役が選任され、そのうち代表者となる役職が代表取締役なのです。
従来の会社法では取締役会(取締役が3名と監査役が1名)の設置が義務でした。しかし、2006年に新たな会社法が施行され、株式会社に設置する取締役は1名以上でよいことになりました。
会計参与とは?
会計参与とは、会社を代表する取締役と共同して会計書類などを作成する会計専門の役員のことで、2006年に施行された会社法で新設されました。
会計参与の職務は、会計書類の作成や保管、開示を取締役と共同して行うこと。
公正中立な監査や監督を行うために、会計参与は社内から独立した立場でなければなりません。そのため外部機関に所属していて以下の資格を保有する者が就任できます。
- 公認会計士監査法人
- 税理士
- 税理士法人
監査役とは?
監査役は、取締役と会計参与の業務執行を監査する役員。取締役会設置会社と会計監査人設置会社は、監査役の設置が義務づけられています。
それ以外の会社や株式を公開していない会社には、設置の義務がありません。監査役の役割は、取締役や会計参与へ報告を要求し、それぞれの職務に不正がないかを調査すること。
不正行為の事実あるいは恐れが発覚したら、取締役会や株主総会で報告します。
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3.役員報酬とは?
役員報酬とは、役員の職務執行に対する対価報酬として支払われる給料のこと。
ただし一般的な社員の給与と異なる点として、以下の2点が挙げられます。
- 役員報酬額は株主総会の決議で決定される
- 条件を満たせば役員報酬は損金(法人税法上で企業の「費用」にあたるもの)として計上できる
役員報酬額の決定方法や相場などについて解説します。
役員報酬の決め方
役員報酬は、事前に「定款」で定めておく、もしくは株主総会の決議で決定します。
定款とは組織を運営するために記載する必要事項のこと。言うなれば、会社の憲法のようなものです。取締役会で決める場合は、役員の職務内容に対して報酬が正当であるかを判断します。
そのほかの判断材料は以下のとおりです。
- 会社の損益
- 会社や役員が負担する税金や保険料とのバランス
- 同業他社の役員報酬相場
- 一般社員の給与とのバランス
役員報酬の相場
国税庁が実地した「令和2年 民間給与実態統計調査結果」によると、役員報酬の相場は以下のとおりです。
- 資本金2,000万円未満の場合:年収667.6万円
- 資本金2,000万円以上の場合:年収972.9万円
- 資本金5,000万円以上の場合:年収1,177.3万円
- 資本金1億円以上の場合:年収1,397.5万円
- 資本金10億円以上の場合:年収1,502.7万円
会社規模によって役員報酬は変動しますが資本金が高い大手会社になるほど、役員報酬も上がっていく傾向があります。
役員報酬の計上
役員報酬を計上する際は、社員の給与とは計上方法が異なるため、会計上分けて計上を行います。
なぜなら役員は労働者ではなく、経営者と同様の立場であるからです。そのため勘定科目においては、一般社員は「給与」など、役員報酬は「役員報酬」と処理します。
ただし取締役総務部長のように役員と社員を兼任している場合は「使用人兼務役員」とみなされ、役員報酬と給与の両方を支払わねばなりません。
経費にできる役員報酬
役員報酬は、「定期同額給与」や「事前確定届出給与」、または「利益連動給与」のいずれかに該当すれば損金(経費)で計上できます。
損金に計上できれば経常利益額が減ります。課せられる法人税額も下がるため節税につながるのです。
定期同額給与
定期同額給与とは、1か月以下の一定期間ごとに同じ額で支払われる給与形態。毎月同額の役員報酬が支払われていれば、損金算入が可能です。
なお会社全体が経営悪化に陥った場合などは定期同額給与を減額できます。一方増額は、上の役員が退職するなどして空いたポストに就任した場合のみ認められます。
事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、役員に定められた時期に支払う給与を事前に確定しておき、税務署に届け出を行っている給与形態。
決められた時期に支給されるため、賞与のような給与形態です。
ただし変更できるタイミングが「年に1度、変更可能時期も決算後3か月間のみ」と決められている点に注意しましょう。
利益連動給与
利益連動給与(業績連動給与)とは、利益の増減によって支給額が決定される給与形態。定期同額給与や事前確定届出給与との大きな違いは、支給額が決定されていないことです。
損金として計上するならば、利益連動給与の計算において営業利益や株式指標、売上高といった客観的な指標を用いる必要があります。
役員報酬を変更する場合
基本的に役員報酬は事業年途中での変更はできません。しかし会社設立時または事業年度開始から3か月以内であれば、一度限り変更が認められています。
事業年度開始から4か月後以降に役員報酬を変更する場合、特定の理由が必要です。変更が認められている理由には以下のものが挙げられます。
増額
- 役員としてのランクが上がった
- 新しく役員となった
減額
- 役員としてのランクが下がった
- 役員でなくなった
- 会社の業績が悪化した
役員報酬と役員賞与の違い
役員賞与とは、役員へ役員報酬以外に臨時で支給される給与。役員賞与は原則損金として扱われません。
ただし事前確定届出給与の要件を満たしていれば、損金算入が可能です。
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4.役員の雇用保険
取締役や監査役といった役員は社会保険の加入対象ではありますが、原則雇用保険の被保険者対象ではありません。会社と雇用契約を締結しないからです。
ただし役員でも、使用人兼務役員で労働者的性格が強く、雇用関係がある社員だと認められれば、雇用保険に加入できる場合があります。
ここでは、役員が雇用保険に加入できるケースについて説明します。
使用人兼務役員
使用人兼務役員とは、役員でありながら支社長、部長や工場長といった役職を兼任している社員のこと。
役員の中でも、労働者としての側面を持つ使用人兼務役員は、雇用保険に加入できるのです。
たとえば「取締役営業部長」や「取締役総務部長」といった肩書を持つ役員が該当します。
なお代表取締役や代表執行役など、代表権や業務執行権を持つ役員は使用人兼務役員として認めらません。
雇用保険に加入できる基準
役員が雇用保険に加入できる基準は、法律上で明記されていません。
使用人兼務役員となりえる役員の労働基準にもとづいて、労働者としての側面が強いかを判断し、雇用保険の加入対象になるかを決めることになります。
以下の点を考慮して総合的に判断しましょう。
- 役員報酬より労働で得る給与の方が高いか
- 労働時間が定められており、勤怠管理がされているか
- 代表権や業務執行権を有していないか
雇用保険加入手続きの方法
役員が雇用保険に加入する場合、その対象者が労働者として勤務していることを証明する「兼務役員雇用実態証明書」のほかに、定款・取締役会議事録・組織図・就業規則・賃金台帳など、労働の実態を証明できる書類の提出が必要になります。
なお役職報酬は雇用保険の適応外となるため、雇用保険によって支給される失業手当の算出には適応されません。あくまで労働者として得た賃金水準から、雇用保険料と失業手当が算出されます。
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5.役員の社会保険
法律上、役員は社会保険に加入しなければならないとは明文化されていません。
しかし厚生労働省保険局の通達では「法人から労務の対償として報酬を受けている者」として役員を被保険者とみなし、厚生年金保険法では「適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金被保険者とする」と定めています。
そのため原則役員は社会保険に加入する必要があるのです。
加入できない役員
社会保険の加入対象から外れる条件は、「役員の報酬が0円であること」と「非常勤役員であること」です。
法人事業所もしくは常時使用される者が5人以上の事業所において、労務の対価として報酬を受けている役員には、医療保険と厚生年金保険の加入義務が生じるからです。
ただしいずれも常勤である者が対象であるため、会社が必要とした場合のみ取締役会などに出席して業務執行を行う非常勤役員は、加入の義務がありません。
複数の会社の役員を兼務する場合
2か所以上の会社の役員を兼務する場合、1円でも報酬を受ける会社のすべてに社会保険の加入義務が発生します。
この場合は主たる事業所を選び、管轄の年金事務所へ「二以上事業所勤務届」を提出しなければなりません。
社会保険料の算出はすべての会社での報酬を計算して、会社ごとに得た報酬額をもとに分配し、それぞれの会社で社会保険を納付します。
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6.役員の退職金(役員退職慰労金)
役員退職慰労金とは、役員が退職した際に支給する報酬。一般的な退職金とは、以下のような点が異なります。
- 退職金規程ではなく定礎で役員退職慰労金に関する事項を定めておく
- 定礎で定めていない場合は、株主総会によって支給の有無や支給額、支給方法を決議する
- 法人税における損金へ参入できる
- 役員側が支払う所得税では、勤続年数によって控除額が決定する
ここでは役員退職慰労金について説明します。
役員退職慰労金と一般的な退職金の違い
退職金は一般的な仕事に従事している労働者が退職する際に支給される報酬。退職金は会社規定や内部規定に沿って支給する金額や支給方法などが決定されます。
一方役員退職慰労金は、内部規定による設定が行えません。役員退職慰労金を支給するには、事前に定款にて定めておく必要があります。
また定款で定めていない場合には株主総会において決議しなければならず、決議が否決されれば支払われないのです。
また使用人兼務役員の場合、退職金が慰労金とみなされる恐れがあり、決議を行わずに支払ったとして問題になる可能性がある点に注意が必要です。
役員退職慰労金にかかる税金
役員退職慰労金は、通常の退職金と同様に所得税と復興特別所得税が課税されます。
源泉徴収すべき所得税額及び復興特別所得税額の早見表が国税庁のホームページで確認するとよいでしょう。国税庁による課税退職所得金額の計算は以下のとおりです。
課税退職所得金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
収入金額は源泉徴収される前の金額です。
上記の退職所得控除額は、勤続年数によって控除額が変動します。退職所得控除額の計算式は以下のとおりです。
- 勤続年数が20年以下:40万円×勤続年数(ただし80万円に満たない場合には80万円)
- 勤続年数が20年超下:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
退職所得は「分離課税」となっているため、支給額が控除額を超えた場合にもその額の2分の1の金額に税率をかけて所得税が決定されます。
勤続年数が5年以下の場合はこの優遇措置は受けられません。
また役員退職慰労金には住民税も課税されます。計算は以下のとおりです。
住民税=課税退職所得額×住民税率10%
役員退職慰労金の計算方法
役員退職慰労金の金額を決定する際の計算方法には、「功績倍率法」と「1年当たり平均法」の2種類があります。
功績倍率法で計算する場合、不相当に高額となる場合があるので、裁判などで適正な金額を設定する際には1年当たり平均法が使用されます。
ここではそれぞれの特徴と計算方法について説明します。
功績倍率法
功績倍率法とは、功績倍率を使用して退職慰労金を計算する方法。
功績倍率とは、役員のキャリアや役割ごとに定められた倍率であり、この功績倍率と退職時の月額報酬、勤続年数をかけ合わせて退職慰労金を算出します。
計算式は以下のとおりです。
役員退職慰労金=退職時の月額報酬×勤続年数×功績倍率
なお役員の功績倍率では、以下が目安といわれています。
- 代表取締役(創業者):3.0~3.4
- 代表取締役:3.4~3.2
- 専務取締役:2.2~2.7
- 常務取締役:2.0~2.6
- 取締役:1.2~2.0
- 監査役:1.0~1.6
たとえば監査役の月額報酬が40万円で、勤続年数が25年、功績倍率を1.5とした場合、退職慰労金は1,500万円です。
1年あたり平均法
1年あたりの平均法とは、同種や同規模の会社などの役員の退職金額を参考にして、1年あたりの退職金額から退職慰労金を算出する計算方法。
功績倍率法では不相応な金額が算出される可能性があるため、補完的な方法として用いられます。計算式は以下のとおりです。
役員退職慰労金=1年当たり退職金×勤続年数
基本的には功績倍率法で退職慰労金を計算することが一般的であり、特定の事情がある場合のみ、裁判などで1年あたり平均法が使用されます。
役員の退職金は、一般社員の退職金とは異なり複雑です。
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7.役員変更の登記とは?
会社で役員に変更が出た場合には、法人登記簿に記録されている役員の変更手続きを行わなければなりません。
管轄の法務局へ出向き、登記申請書と必要書類を揃えて提出する必要があります。必要書類は以下のとおりです。
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 有限会社あるは取締役会を設置していない株式会社の場合:就任する者の印鑑証明書
- 取締役会を設置している株式会社の場合:就任する者の本人確認証明書(印鑑証明所、住民票、運転免許証のうちいずれか)
司法書士に依頼する場合
役員変更の登記申請を司法書士に依頼すれば、申請書を揃えたり調査を行ったりといった事務手間が発生しないため、登記申請の負担が軽減します。
自分で登記申請を行う場合は、必要書類を揃えて法務局へ出向かなければなりません。申請を行う手間が大きいうえに、少しでも書類の不備があった場合は再提出を求められます。
司法書士に依頼すれば費用は発生しますが、自社で手間をかけずとも不備のない申請書が作成でき、法務局への提出まで行ってもらえます。
自分で行う場合
司法書士に依頼せずに自分で役員変更の登記を行えば、費用を最小限に留めることが可能です。
代表取締役がマイナンバーカードとICカードリーダーライターを保有していれば、オンラインで登記申請を行うこともできます。
しかし登記申請の手続きをすべて自分で行う必要があり、ミスや漏れをせず書類を用意しなくてはなりません。
新任や退任、重任によっても必要となる書類が異なるため、自分で行う場合は十分な注意が必要です。
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役員は一般社員とは異なるため、人事・労務管理も複雑化するもの。役員情報もまとめて一元管理することで人事・労務管理の効率化を実現するだけでなく、役員にも共有できるデータベースで経営視点を取り入れた人材戦略の実行に役立ちます。
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