グループウェアとは、社内の情報共有や業務遂行の迅速化を目的としたコミュニケーションツール。搭載された機能やメリットとデメリット、無料で使えるツールなどを解説します。
目次
1.グループウェアとは?
グループウェア(Groupware)とは、スケジュールや業務管理などの情報共有やコミュニケーションに活用するアプリケーションソフトウェアです。一般的なグループウェアには以下のような機能が搭載されています。
- メール
- スケジュール管理
- タスク管理
- 連絡先一覧
- 施設予約
- 掲示板
社内SNSも類似したシステムですが、こちらはチャットやメールなどのコミュニケーションを重視したシステム。グループウェアには、これらに加えて業務の生産性向上のための機能が搭載されているので、社内SNSが進化したツールともいえるでしょう。
2.グループウェアの種類
グループウェアの種類は、大きく分けるとオンプレミス型とクラウド型のふたつがあります。
- オンプレミス型:自社サーバーの中に必要なソフトウェアをインストールする方式
- クラウド型:インターネット上のサーバーを利用してソフトウェアを使用する方式
それぞれの特徴やメリットとデメリットを解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型は、サーバーやネットワークなどのインフラをすべて自社で調達して整備します。オンプレミス型のメリットは以下のとおりです。
- 自社のニーズに沿ったカスタマイズができるので、既存システムとの連携がしやすい
- 社内ネットワークとして活用するのでオフラインで利用できる
ただしすべて自社で環境やシステムを構築しなければなりません。専門的なスキルを持った担当者が必要になり、導入コストも高額になるのがデメリットです。
クラウド型
クラウド型は、他社が提供するクラウドサーバー上の基本ソフトを利用する方式です。クラウド型のメリットは以下のとおりです。
- 自社インフラへの投資が無いので初期費用は格段に安く抑えられる
- クラウドサーバー上にあるソフトウェアを使用するため、インターネット環境さえあれば社内外を問わず使用可能
カスタマイズには限界があることと、自社の既存システムとの連携できない場合があることがデメリットです。
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3.グループウェアの機能
グループウェアには、情報やコミュニケーションの円滑化を促進する機能が搭載されています。そのためそれぞれの作業を個別のソフトウェアで行うよりも効率的なのです。ここでは一般的なグループウェアに搭載されている標準的な機能を紹介します。
ファイル管理・共有
ファイルサーバーなどを使わずにファイルの管理と共有を行う機能です。ワークグループのメンバーで共有したい書類や文書などのファイルのほか、画像や動画などをグループウェア内のフォルダに格納すれば、メンバーはいつでも閲覧可能です。
ファイルやフォルダごとにアクセス制限や、閲覧権限の付与ができるグループウェアを選ぶと情報漏えいを防げます。
ワークフロー
申請書の作成や承認、決済などを行う機能。これらの手続きを電子化し、システム内で迅速に処理することが可能です。具体的な機能としては、申請書の作成や検索、承認者や承認ルート設定、通知などの機能が挙げられます。
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設備予約
グループウェア上で社内の各種設備や会議室などの予約管理を行う機能です。予約状況の閲覧はもちろん、新規予約や変更、キャンセルなども行えます。グループウェアによっては使用状況のレポートを出力することも可能です。
スケジュール管理機能
複数のスケジュールを管理および共有する機能です。部署やチームごとに、グループ全員のスケジュールをまとめて閲覧できるため、メンバー間のスケジュール調整がしやすくなります。クラウド型グループウェアはスマートフォンなどでも使用可能なので、外出中でもスケジュールの確認や変更が行えるのです。
チャット機能
SNSのようなチャットが行える機能です。ちょっとした打ち合わせや業務内容の確認などをわざわざ電話やメールで行う必要がなくなります。1対1のやり取りだけでなく複数人と一度にチャットができる点や、オンライン会議を開催できる点もメリットです。
掲示板・回覧板機能
社内文書の回覧や人事や総務などの各種通達などをグループウェアで共有する機能です。掲示板は通知や通達などの一般情報を広く周知させるもの、回覧板は決められたメンバー内で情報を共有するものです。通知する部門や公開日などを指定できる場合もあります。
4.グループウェアを導入するメリット
グループウェアを導入するもっとも大きなメリットは、情報が共有しやすくなること。このメリットは、効率化やコミュニケーションの活性化にもつながります。
情報共有の活性化
業務の進捗や新たな情報、必要な知識などを、オンタイムでグループメンバー全員と共有できるようになります。今までメールや電話で伝えていた情報は、掲示板や回覧板などの機能で多くの相手へ一斉送信することが可能です。
ファイル共有によって資料や新たなナレッジなどの保存と共有が容易になるので、売上アップや課題解決につながるでしょう。
事務作業の効率化
従来の紙媒体の回付のように「どこで書類が止まっているかわからない」などのトラブルが解消され、配布や回覧などの事務作業が効率化します。回覧板機能で、必要な情報を漏れなく全員へ迅速に周知することが可能です。
各種申請や稟議書類の回付なども、ワークフロー機能でペーパーレス化すれば、進捗の可視化や遠隔での決済が行えます。
コミュニケーションの活発化
チャット機能や会議機能で、メンバー間のコミュニケーションを活発化できます。電話やFAX、メールなどを使用していた連絡や相談は、チャット機能で手軽かつ即時に行うことが可能です。複数のメンバーがチャット機能に参加すればオンライン会議も開催できます。
メンバー同士のコミュニケーション活性化は業務の生産性の向上にもつながるでしょう。
5.グループウェアを導入するデメリット
グループウェアのデメリットは「コスト」と「教育」などです。導入する前にデメリットも確認しておきましょう。
コストがかかる
グループウェアを導入するにあたっては、少なからずコストが生じます。無料のクラウド型グループウェアもありますが、必要な機能を使うにはオプション料金が必要になるかもしれません。有料プランを利用するなら、初期費用や月額利用料などのランニングコストがかかります。
オンプレミス型は自社サーバーやシステムの構築をしなければならず、多額のコストが必要となるでしょう。
社員教育が必要となる
グループウェアを使いこなすための社員教育が必要です。実際に使用する社員が機能を十分に活用できなければ、効率化が実現されないからです。またグループウェアを使う目的を説明しないと、「操作を覚えるのが面倒」と思われて浸透しないおそれもあります。
まずはチャットやスケジュールなど、一部の機能を浸透させることから始めるのもよいでしょう。
目的次第では意味がない場合もある
グループウェアを導入する前に、実際の業務とのマッチングを慎重に検討する必要があります。使いたい機能が限定されている場合は、ほかのツールが適していることもあるからです。
たとえばビジネスチャットツールには「Chatwork」や「Slack」などがありますし、ファイル管理だけなら、MicrosoftやGoogleのクラウドストレージサービスなどでもよいでしょう。
6.グループウェアを選定する際のポイント
現在ではグループウェアは多くの種類がリリースされていますが、それぞれに長所と短所があります。高額なコストを費やして導入を実現したとしても、機能が自社の業務フローとフィットしなければ意味がありません。最適なグループウェアを選定するためのポイントを紹介します。
導入の目的は何か
それぞれの目的に応じたグループウェアおよび機能を選択する必要があるため、「社内の情報共有の強化」や「社員間のコミュニケーションの活性化」など導入の目的を明確にしましょう。
目的を明確にするためにはまずは社内の課題を洗い出し、それらの課題をグループウェアのどの機能を使えば解決できるかを考える必要があります。
自社の環境や業務に適しているか
自社の環境や業務内容に適したグループウェアであるかも検討しましょう。たとえば「ワークフローの決済と経理や会計システムを連動させたい」といった場合、グループウェアのワークフロー機能では実現できないことがあります。このような場合は、ワークフローに特化したシステムを導入するべきでしょう。
外出先でスマートフォンやタブレットなどを使うことが多いなら「専用アプリがあるか」なども検討内容に挙げられます。
だれでも操作しやすいか
全社員がグループウェアを有効に活用するためには、社員からヒアリングを行ったうえで操作性に優れた使いやすいツールを選択することが重要です。
実際に使用する社員に、パソコンなどのITスキルが十分に備わっているとは限りません。パソコン操作が苦手な社員にとっては、操作が複雑なグループウェアはむしろ作業効率の低下を招くおそれがあります。「マウスで操作できるか」や「画面が見やすいか」などの点をチェックしましょう。
コストはどのくらいかかるか
グループウェアの導入にはコストが発生します。発生するコストには、導入時のイニシャルコストに加えて運用時のランニングコストも含めなければなりません。クラウド型の場合、初期導入コストは抑えられますが、月額料金や必要な機能を使うためのオプション料金がかかることもあります。
初期費用の安さだけで選ばず、導入後のランニングコストまで計算し、複数のグループウェアを比較しましょう。
セキュリティ対策がどの程度なされているか
グループウェアの選定にあたっては、セキュリティの観点からも検討しなければなりません。グループウェア内で、人事や経理などの社外秘扱情報や社員の個人情報、顧客情報などを格納する場合もあるため、これらの情報漏えいを防がなければならないからです。
マルウェア対策やアクセス制限、暗号化などの基本的なセキュリティ機能を備えているかを確認しましょう。
7.無料で使えるグループウェア
近年では、比較的手軽に活用できるクラウド型の無料グループウェアも多数多くリリースされています。グループウェアに慣れるために導入するのもひとつの方法です。代表的な無料グループウェアの特徴や機能を紹介します。
Google Workspace
Googleのサービスを使用できるグループウェア。無料で14日間利用できます。
特徴
- PC、スマートフォン、タブレットなど複数のデバイスでストレスなく使用できる
- 利用にはGmailアドレスの取得が必要
機能例
- Gmail
- Meet(ビデオ会議ツール)
- Chat(チャット)
- カレンダー
- ドライブ(ストレージサービス)
- ドキュメントやスプレッドシートなど(文書作成ツール)
GRIDY
ナレッジスイート株式会社が運営する無料グループウェア。スマホやパソコンのWebブラウザ上で利用できます。
特徴
- 社内メンバーだけではなくGRIDYを使用する社外メンバーとも情報の連携・共有が行える
- 23種類の基本機能をすべて無料で利用でき、ユーザー登録数も無制限
機能例
- プロジェクト管理
- タイムカード
- ワークフロー
- スケジュール
- メール
- ファイル共有
iQube
プロトスター株式会社が運営する無料グループウェア。すでに9,000社以上の導入実績があります。
特徴
- スケジュールをカラーリングでき、空き時間や予定が見やすい
- ノウハウの蓄積と共有に適した機能を搭載
- 10名(ID)まで無料
機能例
- スケジュール
- 社内wiki
- ファイル管理
- メッセージ
- ワークフロー
- タイムカード
GroupSession
日本トータルシステム株式会社が運営する無料グループウェア。
特徴
- 日本企業の風土に合わせて開発されており、直感に操作できる
- 無料版でもユーザー数が無制限なうえに、20種類以上の機能を利用できる
機能例
- 掲示板と回覧板
- スケジュール
- 施設予約
- ワークフロー
- ファイル管理
- チャットとメール
- タイムカード
- 日報
R-GROUP
Rグループ株式会社が運営している無料グループウェア。2,000社以上の企業が導入しています。
特徴
- 完全無料で利用者数や期間の制限も無い
- 英語を始めとして20カ国語以上の言語に対応
- スマートフォン用アプリも無料で利用可能
機能例
- スケジュール
- 掲示板
- メール
- チャット
- タイムカード
- ファイル共有
- 無料通話
- 名刺管理