ビジネス環境の変化が激しい現代では、どんな企業も時代の流れに応じた変革なしに生き残ることは不可能です。組織のあるべき姿やミッションを再確認し、新たな風土を醸成する「組織変革」の取り組み方を紹介します。
「組織変革」とは?|現状とのギャップを短期的に埋めるためには変革が必要
組織の「構造」および「文化」、「運営方法」などを見直し、抜本的な改革を成し遂げることをいいます。
経済環境、所属する業界の状況、会社の規模や事業内容、組織の状況と人材など、会社を取り巻く要素や抱える経営課題によって対策が変わってくるため、とくに決まったプロセスや方法論は存在しません。
組織の課題を包括的に捉えて、改革に必要な要素を押さえながら、変革の方向性と経営戦略にズレがないかをチェックすることが重要です。
「組織変革」のプロセス|一番大事なのはゴールの共有
進め方の一例として、ジョン・コッターが提示した「組織変革の8つのステップ」から基本的に必要な要素と流れを紹介します。
(1)危機意識を高める→(2)変革推進チームをつくる→(3)適切なビジョンをつくる→(4)変革のビジョンを周知徹底する→(5)メンバーの自発的な行動を促す→(6)短期的な成果を生む→(7)さらに変革を進める→(8)変革を根付かせる
この8つのステップのうちでとくに難しいのが(3)と(4)に登場する「適切なビジョン作りと周知徹底」です。業績の悪化や体制の脆弱化など、一刻の猶予を争う事態においては目先の対症療法に終始してしまい、社員全員の自発行動につなげられない例も少なくありません。
会社としてのビジョンを明示することで、社員の不安を払拭し、モチベーションを高めることが可能となります。大きな変革のためには、こうしたステップ全体を視野に入れた、冷静沈着な取り組みが求められるのです。
「組織変革」のフレームワーク|柔軟に作戦を立てることが求められる
また、世界の2大コンサルティングファームのひとつであるマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱した「7Sモデル」も大変わかりやすいフレームワークです。組織の要素を7つの「S」で現して、それぞれの要素がどう絡んでいるのかを明らかにします。
【ハードのS(組織の構造)】
- (1)戦略(Strategy):競争優位性を維持する事業の方向性
- (2)組織(Structure):組織の構造や形態
- (3)システム(System):組織の仕組み(会計制度、報酬、人事評価、情報の流れなど)
【ソフトのS(人に関すること)】
- (4)価値観(Shared Value):共通認識となる会社の価値観
- (5)スキル(Skill):組織に備わる能力(マーケティング力、技術力、営業力など)
- (6)人材(Staff):個々の人材の能力
- (7)スタイル(Style):組織文化と社風
上記「ハードのS」の変更はそう難しいものではありません。これに対し、「ソフトのS」のように長年培われてきたものは変更に時間がかかるとされています。どちらのほうがより重要ということはなく、ハードとソフトの整合性がとれていることが大切です。
たとえば、システムや組織構造、戦略が確立されていなければ、いくら社員のスキルアップトレーニングや配置替えを行っても組織パフォーマンスに変化はないでしょう。
逆もまた然りで、どんなにしっかりした組織構造とシステムだったとしても、企業理念やビジョンが浸透していなければ人材は付いてこず、社風の醸成にはつながりません。
「組織変革」という言葉の意味するところは多岐に渡りますが、最も重要なことは、「世の中の変化に柔軟に対応できる組織に変えていく」こと。
自分たちの会社が、チームワークを強化し、シナジーが生まれ、業績向上につながる組織となっているのかどうか、組織構造そのものを入念に考えて見直して、一気に改革する覚悟が必要なのです。