社宅(制度)とは? メリット・デメリット、住宅手当との違い

社宅とは、安い家賃で住めるように企業が従業員のために用意した住宅のこと。社宅は、従業員の経済的負担を抑えるために設けられています。しかし、メリットだけではなくデメリットもあるため、社宅制度を導入する際はしっかり検討しなければいけません。

今回は、社宅(制度)のメリット・デメリットや種類、社員寮や住宅手当との違いなどを解説します。

1.社宅とは?

社宅とは、福利厚生の一環として、企業が従業員を住まわせるために用意した住居のこと。一般的に賃貸マンションやアパートなどの集合住宅を指すものの、法的に明確な定義はありません。ファミリー向けの住居を「社宅」、単身者向けの住居を「寮」と表すことが多くなっています。

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社宅制度とは?

社宅制度とは、企業が従業員に住宅を提供する福利厚生制度のひとつ。福利厚生の充実によって従業員満足度を高めると、人材流出を防いだり企業イメージを向上させたりするメリットがあります。こういったメリットについては後ほど詳しく解説しましょう。

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2.社宅制度導入の目的

社宅制度の主な目的は、従業員の満足度向上です。社宅は従業員の経済的負担を減らし、急に就職や転勤が決まってもスムーズに住環境を整えられます。従業員の満足度向上のため、積極的に社宅制度を導入している企業は少なくありません。

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3.社宅のメリット

社宅制度の導入は、企業側と従業員側の両方にいくつかのメリットをもたらします。それぞれ分けて解説します。

企業のメリット

社宅は、企業側にもメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。それぞれについて詳しく解説します。

  1. 人材流出を防止
  2. 資産価値が向上
  3. 生産性の向上
  4. コスト削減
  5. 企業イメージの向上
  6. 採用応募者の増加

①人材流出を防止

社宅制度といった福利厚生の充実は、従業員の満足度を高めるため、人材流出を防止します。とくに、比較的賃金が低い若手従業員にとって社宅制度は経済面で大きな支えになるでしょう。

社宅制度の導入により、従業員を大切にする企業イメージを持ち、自社に魅力を感じるかもしれません。早期退職を引き留める要素のひとつにもなり得ます。

②資産価値が向上

社有社宅(企業が所有する物件を従業員に貸し出す社宅)の場合、社宅が企業の資産として扱われ、その価値が上がると金融機関からの融資の際に有利に働くこともあります。

社有社宅は、定期的なメンテナンスやリフォームを行う必要があるものの、資産価値を維持できれば、財務上の恩恵を受けられるでしょう。

③生産性の向上

従業員満足度を上げて生産性を向上させるため、社宅を提供することは有効です。

家賃は、生活費のなかで大きな割合を占め、ときには従業員の生活を圧迫することも。そこで家賃が安い社宅を提供すると、従業員は企業に対する満足度が高まります。

また、モチベーション高く業務に取り組み、生産性向上にもつながるとされているのです。

④コスト削減

社宅は、コスト削減に関するメリットもあります。

企業が負担する家賃は、全額「地代家賃」として経費計上できます。従業員から受け取った家賃との差額を実質的に企業の損金にできるため、企業にとっては大きな節税メリットがあるのです。

また、住宅の提供は現物支給にあたるため、従業員の所得金額が膨らむこともありません。

⑤企業イメージの向上

社宅制度を導入して企業の福利厚生を充実させると「働きやすい会社」「従業員を大切にする会社」など、良い企業イメージを持たれることも少なくありません。

近年、年収や業務内容だけでなく、福利厚生の充実度を重視して企業選びをする方も増えてきました。とくに転勤が多い企業では、社宅をはじめとする住宅に関する支援が重視されることもあります。

⑥採用応募者の増加

就職時または転職時に住宅が保障されれば、応募のハードルが下がります。

とくに、地方出身者にとって上京して働き始めることは経済面で大きな負担を感じることも少なくありません。「東京都にある会社に入社したいけど、給与と東京都の家賃を照らし合わせると、生活していけるか不安」という方もいます。

こういった場合、社宅があれば、安心して応募できるでしょう。出身地域に縛られず広範囲にアピールできるため、優れた人材と出会える可能性も広がります。

従業員のメリット

続いて、従業員側のメリットについて解説します。

  1. 経済的負担の軽減
  2. 住居手続きに関する時間を削減
  3. 節税対策に利用

①経済的負担の軽減

従業員側の最大のメリットは、経済的負担の軽減です。

安い家賃であるうえ、企業が敷金・礼金の全額を負担するケースもあります。さらに家具や家電がそろっているため、従業員の経済的負担が小さく、安心して入社または転勤できます。

家賃は給与から天引きされることが多く、「お金を使いすぎて家賃が支払えない」といったトラブルも避けられるでしょう。

②住居手続きに関する時間を削減

企業が住居手続きを代行するため、従業員は物件探しや引越し手配などに関する時間を大幅に短縮できます。その短縮した時間を資格取得のための勉強といった自己研鑽に費やすのも可能です。

また社宅であれば、給与や貯金額などを理由に入居審査で落とされることがありません。

③節税対策に利用

社宅は、家賃補助とは異なり、税金が増えないことがほとんど。

家賃補助は、給与の一部と見なされるため、税金の課税対象額が増えます。しかし、社宅制度は、ほとんどのケースで課税対象額を上げずに済むため、実質的な節税対策です。

さらに家賃が給与から差し引かれる場合は、所得が減るため、節税効果が高まります。家賃補助を受けたときと同じ水準の生活を維持できるうえ、節税効果があるのは大きなメリットです。

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4.社宅のデメリット

社宅には、デメリットもあります。企業側・従業員側、双方から解説しましょう。

企業のデメリット

企業側のデメリットは以下のとおりです。

  1. 煩雑な手続き
  2. 家賃の負担

①煩雑な手続き

企業が不動産会社や物件所有者から賃貸住宅を借りて従業員に貸し出す場合、契約や家賃の支払いなどの手続きを企業がおこなうことになります。それにともない、総務部や人事部などの担当部署の手間が増えてしまうでしょう。

たとえば、福利厚生として社宅ではなく住宅手当を選ぶ場合、契約や家賃の支払いなどの手続きは従業員が行うため、担当部署の手間は増えません。煩雑な手続きをおこなうコストとメリットを比較して、社宅制度を導入するか決めるとよいでしょう。

ときには社宅の手続きを進める従業員を新たに雇う必要があるかもしれません。

②家賃の負担

自社が保有する物件ではない場合、毎月の家賃支払いが必要となります。

そもそも従業員が支払う家賃は少なく、さらに退職や転勤などで退去した後、次の入居者(従業員)が見つかるまでの期間は家賃がまったく入らず、企業の負担が増すでしょう。そのため、空室期間を最小限にする努力が求められます。

従業員のデメリット

従業員側のデメリットは以下のとおりです。

  1. 物件の選定が不可
  2. プライベートの制限
  3. 将来の年金が減る可能性あり
  4. 生活が不便になる可能性あり

①物件の選定が不可

社宅は、従業員の好みに合わせて自由に選べないため、住みにくいと感じることもあります。たとえば、学校や商業施設が近くにない、築年数が古い、設備が使いにくいなどと不便かもしれません。

また、東京都といった都市部は家賃が高いため、千葉県や神奈川県など勤務地から少し離れた場所に社宅があることも考えられます。物件の選定が自由にできないことは、従業員側のデメリットです。

②プライベートの制限

企業がマンションやアパートを一棟借りしている場合、複数の従業員が同じマンションやアパートに住むことになります。そのため同僚との交流が増えやすく、プライベートな時間や空間を十分に確保できていないと感じてしまう従業員もいます。

③将来の年金が減る可能性あり

社宅の家賃は給与から天引きされることがほとんどのため、その分所得が減り、支払う社会保険料が少なくなります。

一見従業員にとってメリットのようにも見えるものの、ここには将来の年金が減るリスクが潜んでいるのです。家賃が安い社宅のため節約できているお金を投資や貯金に回し、老後の資金にするといった自身の努力が必要でしょう。

④生活が不便になる可能性あり

社宅の立地は、企業へのアクセスの良さを重視して決めるため、周辺環境が二の次になってしまうことが多いでしょう。

たとえば保育園や小学校が近くにない場合、子どもがいる家庭にとっては不便だと感じるかもしれません。通勤は問題なくても住みにくいと感じる可能性があります。

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5.社宅の種類

社宅には「社有社宅」と「借り上げ社宅」の2種類があります。それぞれどのような特徴を持つのか詳しく解説します。

社有社宅

企業が所有している住宅のこと。企業が管理し、従業員とその家族のみが住むため、従業員同士の親睦が生まれやすくなります。

また、企業が所有する住宅のため、地価の高騰といった影響を受けにくく、入居後に家賃が上昇する恐れも低いでしょう。ただし企業には、社有社宅の維持・管理費や、リフォームといった老朽時の負担がかかります。

企業が所有しているため、不動産会社や物件所有者へ毎月賃料を支払う必要はありません。しかし、毎年固定資産税が発生します。

借り上げ社宅

企業が不動産会社や物件所有者などから借りて従業員に提供する住宅のこと。現在の社宅の主流です。

借り上げ社宅は、マンションやアパートを一棟借りするケースだけではなく、従業員の要望に合わせて個別に物件を契約するケースもあります。従業員の要望に合わせて個別に契約する場合、煩雑な手続きになるため、企業側の負担が増えてしまうでしょう。

ただし企業は、物件を所有しないため、維持・管理費がかかりません。

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6.社宅と社員寮の違い

社宅と似た言葉として「社員寮」があります。社宅と社員寮には明確な定義がなく、法的な違いはありません。ただし、社宅は従業員とその家族向けの住宅で、社員寮は単身の従業員向けの住宅と区別されることが多くなっています。

さらに社員寮では食事や生活面のサポートがあるケースも多く、共同の風呂・トイレというところも少なくありません。社員寮は、主に若手従業員向けの福利厚生で、居住できる期間が定められることも多くなっています。

企業によって社宅や社員寮の条件や内容は異なるため、事前に採用サイトや会社ホームページなどで詳細を確認するとよいでしょう。

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7.社宅制度と住宅手当の違い

住宅手当とは、企業が従業員の住宅関連費用を補助するもので、給与の一部として扱われる福利厚生のこと。

社宅は無償で提供されることもあります。しかし従業員が一定額以上の家賃を支払う場合、所得に加算されません。

一方、住宅手当は、従業員の家賃の一部を支給するもの。従業員は、企業から利益の供与を受けていると見なされ、給与所得として課税されます

ただし、従業員にとっては、一般の賃貸物件から自分が住みたい物件を選べるため、社宅より住宅手当のほうがよいと考える方もいるでしょう。社宅制度と住宅手当のどちらを導入するかは、メリットと負担・リスクを考慮して検討する必要があります。

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8.社宅の家賃相場

ここで、社宅の家賃相場について解説しましょう。社宅の家賃は企業が決めます。社宅の家賃相場を決める際に重要なのは「賃貸料相当額」の考え方です。賃貸料相当額とは以下のこと。

  • (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  • 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  • (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

社宅の家賃を考える際は、課税処理の有無を考慮しなければいけません。企業が社宅を貸与する場合、1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額の50%以上)を受け取っていれば給与として課税されません。

一般的には実賃料の20%~35%を社宅の家賃としていることが多いでしょう。また、以下のケースを想定して、社宅の家賃相場を解説します。

  1. 役員に小規模住宅を貸与した場合
  2. 役員に小規模住宅以外を貸与した場合
  3. 従業員に社宅を貸与した場合

①役員に小規模住宅を貸与した場合

まず、役員に小規模住宅を貸与する場合について解説します。そもそも、小規模住宅の定義は、法定耐用年数によって異なるのです。

耐用年数 床面積
30年以下 床面積132平方メートル以下
30年超 床面積99平方メートル以下

小規模住宅の場合、家賃相場は①~③の合計額になります。

  • ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  • ②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  • ③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

仮に以下の条件で家賃相場を計算してみましょう。

  • 建物の固定資産税の課税標準額:1,000万円
  • 敷地の総床面積:100平方メートル(法定耐用年数10年)
  • 敷地の固定資産税の課税標準額:100万円

この場合、以下のような計算式になります。

  • ①1,000万円×0.2%=2万円
  • ②12円×(100平方メートル/3.3平方メートル)=363円
  • ③100万円×0.22%=2,200円
  • ①+②+③=2万2,563円

つまり、役員が2万2,563円以上の家賃を支払う場合、企業が支払っている賃料を社宅として損金にできます。

②役員に小規模住宅以外を貸与した場合

役員に貸与する社宅が小規模住宅以外の場合、その社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅かによって、賃貸料相当額の算出方法が異なります。自社所有の社宅の場合は、以下の2つの合計額の12分の1が賃貸料相当額です。

  • ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%(※ただし、法定耐用年数が30年を超える場合は12%ではなく10%を乗じる)
  • ②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

対して、ほかから借り受けた住宅を貸与する場合、企業が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記で算出した数値(①と②の合計額の12分の1)とのいずれか多い金額が賃貸料相当額となります。仮に以下の条件で家賃相場を計算してみましょう。

  • 建物の固定資産税の課税標準額:1,000万円
  • 敷地の総床面積:100平方メートル(法定耐用年数10年)
  • 敷地の固定資産税の課税標準額:100万円
  • 1か月あたりの家賃:20万円

この場合、以下のような計算式になります。

  • ①1,000万円×12%=120万円
  • ②100万円×6%=30万円
  • ①+②=150万円 150万円×12分の1=12万5,000円

つまり、自社所有の社宅の場合、12万5,000円が賃貸料相当額となります。

また、ほかから借り受けた住宅を貸与する場合、「12万5,000円」と「企業が家主に支払う家賃の50%の金額(10万円)」と比較して多い金額を選択するため、今回は12万5,000円が賃貸料相当額です。

③従業員に社宅を貸与した場合

従業員に社宅を貸与した場合、1か月当たり賃貸料相当額の50%以上を従業員が企業に支払っていると、給与として課税されません。賃貸料相当額は、下記①~③の合計額です。

  • ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
  • ②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  • ③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

仮に以下の条件で家賃相場を計算してみましょう。

  • 建物の固定資産税の課税標準額:1,000万円
  • 敷地の総床面積:100平方メートル(法定耐用年数10年)
  • 敷地の固定資産税の課税標準額:100万円

この場合、以下のような計算式になります。

  • ①1,000万円×0.2%=2万円
  • ②12円×(100平方メートル/3.3平方メートル)=363円
  • ③100万円×0.22%=2,200円
  • ①+②+③=2万2,563円

つまり、上記の条件の場合、賃貸料相当額は2万2,563円になります。従業員は、1か月当たり1万1,282円以上を社宅の家賃として支払うと給与として課税されません。

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9.社宅にかかる税金

社宅の入手・維持・運用において、給与課税・不動産取得税・固定資産税・消費税などが発生する可能性もあります。課税の有無は前述した賃貸料相当額を基準とした従業員の負担割合で変わるため、事前にしっかり理解しておきましょう。

所得税

従業員が無料で社宅に住む場合、賃貸料相当額が給与として課税されます。ただし、看護師や警備など、勤務場所の近くに住む必要がある場合は、非課税になる場合もあるのです。

また、社宅の家賃を支払っていても、金額が賃貸料相当額の50%未満の場合、会社が負担している家賃と賃貸料相当額との差額が給与として課税されます。

たとえ課税されても一般的な賃貸の家賃を支払うより安く済むでしょう。しかし、課税対象となる場合もあると知っておいてください。

消費税

社宅にかかる費用(賃料や敷金・礼金など)は、国が定めた消費税法で非課税対象となっています。そのため、基本的には消費税がかかりません。しかし、仲介手数料や社宅の管理費用、駐車場などには消費税が課税されます。

不動産の取得と維持にかかる税金

個人が住宅を購入すると不動産取得税や固定資産税が発生しますが法人名義で住宅を購入した場合、これらの税金を全額経費で落とせます。土地や物件の登記費用も経費です。

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10.社宅を導入する手順

社宅制度を導入するときは以下の手順を踏むとよいでしょう。

  1. 社宅利用規定を整備
  2. 物件の選定と内見
  3. 契約内容を調整
  4. 申し込みと契約
  5. 入居手続き
  6. 鍵の引き渡し

①社宅利用規定を整備

まず、社宅制度の運用に関連する社内規定を整備する必要があります。物件選定や利用条件、賃料計算などの詳細を明確に定めましょう。

既存の規定との整合性を確保するために、適宜弁護士から助言をもらうとよいでしょう。特に明確にしておきたいのは、入居資格や使用料と負担方法、入退去の手続きです。

②物件の選定と内見

社宅制度の規定が決まったら、不動産会社に相談して物件を選定します。候補物件を何件かに絞ったら内見してください。最寄り駅や周辺環境の様子もあわせてチェックします。

③契約内容を調整

社宅の申し込みは、不動産会社や仲介業者を通じて進め、契約を調整して合意を目指します。契約は通常の賃貸物件とは異なり、企業の規定に合致する必要があるので覚えておきましょう。同時に入居前に必要な書類の準備も進めていきます。

④申し込みと契約

入居審査後、社宅に関する規定に従い契約内容を調整します。問題がなければ法人が署名する正式な契約書が作成され、賃貸契約が完了します。

⑤入居手続き

従業員の入居が決まったら入居手続きを行います。入居する際は、契約手続きから引っ越し、従業員の情報管理まで煩雑な業務が多くなるため、注意が必要です。

⑥鍵の引き渡し

社宅制度では、家具や家電の準備を会社がするか、従業員がするかがポイントになります。会社側が用意するとなると従業員の負担が減り、福利厚生が充実して魅力的である一方、従業員の好みに合わない可能性も考えられるでしょう。

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11.社宅代行サービスとは?

企業が自社で進めている社宅管理業務を外部に委託すること。企業が不動産会社や物件所有者から物件を借りる、借り上げ社宅は手続きが複雑です。社宅代行サービスを利用することで業務負担を減らせるでしょう。

12.社宅に関するよくある疑問

最後に、社宅に関するよくある質問を紹介して、回答します。

  1. 経費にできる?
  2. 火災保険は誰が負担する?
  3. 家族と住める?
  4. 同棲はできる?
  5. ペットは飼える?

①経費にできる?

社宅を経費計上するためには条件を満たす必要があります。たとえば家賃が一定額より少ないと差額は所得税(給与所得)の課税対象になるのです。

家賃を経費にすると節税効果が高まるものの、役員に貸し出す場合の条件は異なるため、注意しましょう。前述したとおり、不動産取得税や固定資産税は経費として計上できます。

②火災保険は誰が負担する?

火災保険料の支払者はとくに決まっておらず、企業負担でも従業員負担でも問題ありません。一般的には企業がまとめて火災保険に加入し、従業員の給与から天引きする方法がとられている場合が多くなっています。

③家族と住める?

企業の規定によって異なるものの、社宅に家族と住める可能性はあります。社宅はファミリー向けであり一般の賃貸住宅と類似しているためです。一般的に、ファミリー向けの社宅は、広い部屋が用意されています。

④同棲はできる?

企業の規定によって異なるものの、一般的に独身寮での同棲はできません。ただし、ファミリー向け社宅の場合や特定の規定がある場合は、同棲が認められることもあります。

企業によって条件が異なるため、入居前に相談して許可を得てください。「同棲がバレなければOK」という考え方はトラブルを招く恐れもあるため、控えましょう。

⑤ペットは飼える?

ペットの飼育に関する規制は法的にはなく、ほとんどの企業の規定ではペットについて触れていません。企業によっては柔軟に対応してくれるものの、ペット禁止の場合もあるため、事前に確認しておきましょう。