被保険者資格取得届とは、厚生年金保険や健康保険への加入を必要とする人がいる場合に、事業主が提出する書類のこと。ここでは 、被保険者資格取得届の定義や適用事業所、書き方や作り方、注意点などについてご紹介していきましょう。
目次
1.被保険者資格取得届とは?
被保険者資格取得届とは、厚生年金保険や健康保険への加入を必要とする人が事業所に存在する場合に、事業主が提出する書類のこと。
被保険者資格取得届は、事業主が従業員を採用し、新たに健康保険や厚生年金保険に加入すべき必要性が生じた場合に、事実発生から5日以内に事業主が行うものと法律で定められています。
2.適用事業所とは?
健康保険や厚生年金保険は、事業所による単位で適用されると定められているのです。中でも厚生年金保険は事業所単位で適用されており、現在その適用事業所は「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類に分かれています。
強制適用事業所
強制適用事業所は「常時5人以上の従業員を使用する事業所(製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保健業、通信報道業)」と「常時従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所」とされています。
また、法律によって事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が定められているのです。
任意適用事業所
任意適用事業所とは、強制適用事業所とならない事業所のうち、厚生労働大臣の認可を受けて健康保険・厚生年金保険の適用となった事業所のこと。
事業所で働く半数以上の人が適用事業所となることを認め、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けた場合に適用事業所になれるのです。また、保険給付や保険料などは、強制適用事業所と同じ扱いになります。
なお、被保険者の4分の3以上が適用事業所の脱退に同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けると、適用事業所を脱退できます。
3.被保険者資格取得届の書き方、作り方
被保険者資格取得届の書き方や作り方について説明していきましょう。
提出するのは事業主
被保険者資格取得届の提出は、事業主が行います。事業主が従業員を採用した際、新たに健康保険や厚生年金保険に加入する必要がある場合に、事業主が手続きを行うのです。
提出は採用から5日以内と定められており、年金受給者でも要件を満たす場合は被保険者資格取得届を提出します。
添付書類が必要な場合
被保険者資格取得届を提出する際、添付書類が必要な場合があります。一体どんなケースなのか、見ていきましょう。
60歳以上の人を再雇用
事業主が60歳以上の人を退職後1日の間もなく再雇用した場合、「就業規則と退職日が確認ができる退職辞令の写し」「継続して再雇用されたと分かる雇用契約書の写し」の2つ、または「退職日」と「再雇用された日」に関する事業主の証明書(事業主印が押されているものに限る)の提出が義務付けられているのです。
たとえば、4月1日に資格を取得する場合、4月2日以後、60歳の誕生日を迎える人がこれに該当します。もし届け出後に該当者が60歳以上でないと判断された場合は、月額変更届の取扱いになります。
国民健康保険への加入
国民健康保険組合に引き続き加入し、一定の要件を満たす場合も添付書類の提出が必要となります。このケースでは国民健康保険組合の理事長が認めた場合と限られており、事実発生日から14日以内に届け出ることが義務付けられているのです。
天災地変、交通関係の事故やストライキ、事業主の入院や家族の介護、法人登記の手続き、国保組合理事長の証明を受領するなどで日数を必要とする場合、理由書を添付するとよいでしょう。
本人確認の徹底
日本年金機構では、偽名による健康保険被保険者証の不正取得を防ぐため、資格取得時の適正化を強化しています。
事業主は新たに被保険者となる人を採用した際には必ず、氏名や生年月日、性別、住所、マイナンバーもしくは基礎年金番号などで、本人確認を行うのです。本人確認が無事できれば、資格取得届に必要事項を記入し、届け出ます。
もし本人確認ができない場合、健康保険被保険者証は交付されません。資格取得時における本人確認の徹底は極めて重要といえるでしょう。
提出時期、提出先、提出方法
ここでは被保険者資格取得届の提出時期や提出先、提出方法について見ていきましょう。
提出時期
被保険者資格取得届は、新たに健康保険および厚生年金保険に加入すべき従業員を採用したときから5日以内に提出する必要があります。従業員が年金受給者でも、加入要件を満たしている場合、届け出る必要があるので覚えておきましょう。
提出先
被保険者資格取得届は、事業所の所在地を管轄している各年金事務所に提出します。年金事務所は全国に312カ所あり、年金に関するさまざまな相談や各種手続きを行うことが可能です。
提出方法
提出方法は、郵送、電子申請、窓口持参の3つです。また指定された届出用紙だけではなく、電子媒体(CDやDVD)による提出も可能となっています。
4.被保険者資格取得届の注意点
ここでは、事業主が被保険者資格取得届を提出する際の注意点を見ていきましょう。
基礎年金番号が記載できない
被保険者資格取得届を提出する際、事業者は被保険者資格取得届に、被保険者となる従業員のマイナンバーまたは基礎年金番号を記入する必要があります。
もし、公的年金制度に加入していた際の年金手帳を紛失し、基礎年金番号の記入ができない場合は、「年金手帳再交付申請書」を提出しなければなりません。この「年金手帳再交付申請書」は、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
被保険者資格取得届が提出されなかった
被保険者資格取得届の届け出が必要にもかかわらず、提出されていなかったと判断された際は、改めて提出が求められます。また提出がされていないという事実が発生した時点に遡って保険料を支払うことが義務付けられているのです。
対象となる従業員が老齢厚生年金の受給者である場合、本人の1カ月当たりの年金額と総報酬月額相当額の合計額に応じて年金額の一部、またはすべてが支払停止になる場合もあります。
この場合、支払停止が開始されるべき時点に遡って支払いの停止が行われるため、すでに支払われた年金を返納する必要も生じるので注意しましょう。
60歳以上の再雇用における年齢確認
事業主が60歳以上の人を退職後1日の間もなく再雇用した場合、「就業規則と退職日の確認ができる退職辞令の写し」「継続して再雇用されたことが分かる雇用契約書の写し」の2つ、または「退職日」「再雇用された日」に関する事業主の証明書(事業主印が押されているものに限る)の提出が義務付けられます。
届出後に60歳以上でないと判断された場合は、月額変更届という取り扱いになります。また60歳以上の人を再雇用するため資格取得届を提出する際は、資格取得の日に60歳以上となっているか、チェックしなくてはなりません。
パートタイマー労働者の雇用
パートタイマーで働く従業員の場合、労働時間および労働日数が一般社員の4分の3以上であれば被保険者になることができます。
仮に、4分の3以下でも「週の所定労働時間が20時間以上」「月の給与が8.8万円以上」「雇用期間が1年以上見込まれる」「学生でない」「厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の法人・個人の適用事業所、国又は地方公共団体に属するすべての適用事業所に勤めている」という5つの条件をすべて満たす場合、被保険者となることができるのです。