厚生年金とは? 保険料、メリット、加入条件

厚生年金とは、会社員や公務員が加入する公的年金のことです。毎月の給料から引かれる厚生年金について、加入条件やメリット、保険料額などについて詳しく解説します。

1.厚生年金とは?

厚生年金とは、国が定めた公的年金制度のこと。原則として会社に勤めている会社員や公務員など、組織に雇用されている人が国民年金と合わせて加入するものです。

パート勤務やアルバイトとして働く人でも、雇用期間や賃金月額、1週間の所定労働時間や1カ月の所定労働日数などの条件を満たしていると厚生年金に加入します。

厚生年金は事業所単位で加入するもので、加入しなければいけない事業所は国の法令で決められています。

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厚生年金は会社員や公務員が加入する公的年金制度です。パートやアルバイトも労働時間や労働日数などの条件を満たせば加入できます

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2.厚生年金に加入できる人とは?

厚生年金に加入できる人とは、厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務する人のこと。適用事業所は、株式会社などの法人の事業所、従業員が常時5人以上の個人事業所(農林、漁業、サービス業などを除く)などです。

厚生年金適用事業所のすべての従業員

厚生年金適用事業所に勤務するすべての従業員が、国籍、性別、賃金の額にかかわらず厚生年金に加入します。原則、会社に入社した時点から、70歳まで加入でき、70歳以上の人は健康保険のみの加入になるのです。

70歳になる誕生日の前日に被保険者資格を失います。しかし、厚生年金保険の被保険者期間があるなどの条件を満たせば、70歳以上被用者という特別枠で働き続けることができるのです。これは70歳以上の経営者や役員なども該当します。

非正規雇用でも加入できる

厚生年金はアルバイトやパート、契約社員として働く非正規雇用でも、いくつかの条件を満たしていれば加入できます。以下に示した2つの条件のいずれかを満たす場合、被保険者となるのです。

  • 1週間の所定労働時間、1カ月の所定労働日数が、一般社員の4分の3以上
  • 「週20時間以上勤務」「年収106万円以上(賃金月額が8.8万円以上)」「1年以上の使用が見込まれる」「従業員501人以上の勤務先で働いている」「学生でない」5つの条件を満たす労働者

公務員

かつて公務員には、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私立学校教職員共済年金という共済年金制度がありました。しかし2015年10月から公務員も厚生年金の加入者となり、制度が一本化されたのです。

その理由は、「共済年金よりも保険料が低い」「共済年金にはない職域部分がある」「職域部分は保険料負担なしで受け取れるため共済年金よりも有利といったもの。内容を厚生年金に合わせて公平にし、持続可能な安心できる年金制度を目的にしているのです。

厚生年金に加入できるのは、厚生年金適用事業所に勤務するすべての従業員と条件を満たした非正規雇用、公務員です

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3.厚生年金以外の年金制度

公的年金には、会社員や公務員が加入する厚生年金、厚生年金に加入できない学生や自営業の人、無職の人が加入する国民年金や国民年金基金、企業年金などがあります。厚生年金以外の年金制度を説明しましょう。

国民年金

国民年金とは、厚生年金に加入できない人が加入する年金制度で、原則、日本に住む20歳から60歳までのすべての人が加入し保険料を納めなければならないと定められているのです。

国民年金は老齢になったときに所得を保障するだけでなく、重い障害を負ったときなどすべての国民に共通して給付する基礎的な年金です。国民年金の支給開始年齢は65歳とされ、納付した期間によって給付額が決定します。

国民年金基金

国民年金基金とは、国民年金に上乗せされて受給できる年金制度のこと。会社員や公務員の年金制度は、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2階建てですが、自営業者やフリーランスなどの場合、国民年金だけしか給付されません。

会社員や公務員など給与所得者と、自営業者など国民年金にしか加入できない第1号被保険者とでは、将来受け取れる年金額に大きな差が生じます。この差を解消するのが、第1号被保険者のみが加入できる国民年金基金なのです。

企業年金

企業年金とは、企業が基金を設立し管理、運用を行っている私的年金のことで、勤務する企業の加入が必要です。主な企業年金には、以下の3つがあります。

  • 確定給付企業年金:加入した期間などに基づいて給付額が決められている年金制度
  • 企業型確定拠出年金:拠出した掛金額とその運用収益との合計額によって給付額が決まる年金制度
  • 厚生年金基金:厚生年金の一部を国に代わって支給。さらに基金独自の上乗せ給付を企業が行うことができる制度

厚生年金・国民年金の併用

厚生年金と国民年金の併用とは、国民年金分と厚生年金分の両方を受け取ることができる公的年金制度です。

  • 国民年金(基礎年金):日本に住んでいる20歳から60歳のすべての人が加入する
  • 厚生年金:厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する会社員や公務員などの第2号被保険者が加入する

そのため国民年金と厚生年金に加入する第2号被保険者は両方から年金が給付されます。厚生年金の保険料は毎月の給料に対して定率となっており、納付する金額は人によって異なるのです。

国民年金と厚生年金は公的年金制度です。国民年金基金や企業年金は、公的年金の上乗せの給付を保障する私的年金制度となっています

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4.厚生年金に加入するメリットとは

厚生年金に加入すると、下記のようなメリットが得られます。これらについて、詳しく解説しましょう。

  1. 保険料の負担額が減る
  2. 老後の年金額が増える
  3. 手厚い保障制度である
  4. 障害年金支給の適用範囲が広い

①保険料の負担額が減る

厚生年金の保険料は、事業所(雇用側)と折半になります。会社に勤務している期間は、保険料を半分、会社が負担してくれるという点は大きなメリットでしょう。国民年金の保険料は個人の収入にかかわらず一律で、16,540円(2020年度)。

収入の低い人ほど保険料が大きな負担になります。しかし厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率を掛けて計算されるため加入者は払いやすくなるといえるでしょう。

②老後に支給される年金額が増える

会社に勤務している期間に支払う厚生年金保険料には、国民年金保険料も含まれているため、老後は国民年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。

そのため、国民年金だけに加入している第1号被保険者よりも、老後に支給される老齢年金の金額が増えます。老齢基礎年金の支給開始年齢は65歳ですが、60歳に繰り上げた場合は、1カ月につき0.5%減額されるんどえす。

繰り下げは70歳まで可能で、1カ月につき0.7%増額されます。減額や増額になった年金額は一生変わりません。

③保障制度が手厚い

ケガや病気などのために仕事に就けず給料が全額もらえない、減額して支給されたなどの場合は、被保険者とその家族の生活を守るための傷病手当金が支給されます。傷病手当金として支給される額は、月給の3分の2程度です。

また厚生年金の被保険者が出産し仕事を休業している場合、厚生年金の保険料が免除されます。さらに産前産後の給料が下がった場合、下がる前の標準報酬月額が適用される制度があるのです。

この手続きをしておくと、将来受け取る年金額が減少しなくなります。

④障害年金支給の適用範囲が広い

ケガや病気などにより所定の障害の状態になった人に対して支給される障害年金は、障害等級1級です。また、2級に該当する障害状態になった場合、国民年金部分の障害年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。

さらに、国民年金の障害基礎年金の支給要件対象が1級、2級に対して、厚生年金は対象の幅が広く、3級の場合でも障害厚生年金が支給されます。また3級に該当しない場合でも、障害手当金(一時金)が支給されるケースもあるのです。

厚生年金の保険料は会社と折半、老後の年金は国民年金に上乗せして支給、傷病手当金や障害年金支給の対象も幅広いなどメリットは多数あります

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5.厚生年金の保険料はどう決まる?

厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率を掛けて計算します。給与の額が上がれば、基本的に厚生年金保険料も上がりますが、将来受け取る老齢年金の受給額も増えるのです。

どのように保険料が決まるのか、詳細を解説しましょう。

標準月額報酬をもとに決定する

厚生年金の保険料は、標準報酬月額をもとに決定します。基本給に残業手当、通勤手当などを含めた税引き前の給与から算出した給与を、一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて標準報酬月額を決定するのです。

2020年現在の標準報酬月額は、1等級(88,000円)から31等級(62万円)までの31等級に分かれており、この標準報酬月額に保険料率18.3%を掛けて算出します。報酬月額が分かっていれば、標準報酬月額と保険料額を調べることができるでしょう。

4~6月の給与平均額で決定する

1等級~31等級(88,000円~62万円)に区分された報酬月額に当てはめて標準報酬月額を決定し、それに保険料率を掛けて1年間の保険料を算出します。

この標準報酬月額は毎月見直されるのではなく、毎年4~6月の3カ月間の給与の平均額で決定され、その年の9月分から翌年の8月分までの毎月の保険料となるのです。

しかし1年の途中で昇給や手当の支給が変更されるなど給与が大幅に変更した場合、保険料額の見直しが行われます。

基本給以外の手当からも保険料が引かれる

厚生年金保険で、標準報酬月額の対象となる報酬は下記の通りです。

  • 通勤手当
  • 残業手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 別居手当
  • 役付手当
  • 能率給
  • 奨励給
  • 職務手当
  • 勤務地手当
  • 宿直手当
  • 休職手当
  • 早出残業手当
  • 継続支給される見舞金
  • 会社から現金または現物で支給されるもの

また、標準報酬月額の対象とならないものは、結婚祝金、見舞金など臨時に支給されるもの、3カ月を超える期間ごとに支給されるものです。

事業主が厚生年金保険料の半分を負担

厚生年金保険は一定の条件を満たした会社員であれば加入しなければいけない制度ですが、保険料は被保険者と事業主とで半分ずつ支払います。会社が半分折半してくれるため、国民年金よりも支払額が安く済むケースもあるでしょう。

また配偶者については保険料の負担がないなど、家族がいる場合はさらに大きなメリットが得られるのです。厚生年金に加入するには、厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務する必要があります。

適用事業所とは、法人事業所、従業員が常時5人以上の個人事業所(農林、漁業、サービス業などを除く)などです。

原則として70歳まで支払う

厚生年金保険料は原則70歳まで支払うという決まりがあります。しかし会社員や公務員が60歳や65歳で定年を迎えて無職になる場合、厚生年金の加入から外れます。

再雇用制度などを使って、定年退職後も働き続ける場合は、70歳まで厚生年金に加入して保険料を引き続き支払うことになるのです。

一方の国民年金の支払いは原則60歳までとなり、厚生年金保険料に国民年金の保険料が含まれます。しかし60歳以降になると厚生年金の保険料に影響が出ることはありません。

ねんきんネットで支払記録が確認可能

日本年金機構が提供する「ねんきんネット」では年金の支払記録を確認することが可能です。確認できるものには以下があります。

  • 各月の年金記録:厚生年金、国民年金、船員保険加入、共済年金のすべての加入期間について月別にどの制度に加入していたか
  • 国民年金加入記録:加入月数、各月の納付状況、免除制度、納付猶予制度の適用期間など
  • 厚生年金保険加入記録:加入月数、資格取得・喪失年月日、標準報酬月額、標準賞与額など

厚生年金保険の加入は原則70歳までです。1年間の保険料は、毎年4~6月の3カ月間の給与の平均額で決定します

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6.厚生年金加入で受け取ることができる年金の種類

厚生年金も国民年金も受給できる年齢は、原則65歳からです。60~64歳の間に年金を受け取ることも可能ですが年金支給額は減額されてしまいます。反対に、年金受給開始を65歳以降に繰り下げると、年金額は増額されるのです。

老齢年金

老齢年金の支給開始年齢は原則65歳で、20歳から60歳まで全額を納めている人、途中で支払っていない人など加入期間はさまざまですが、支給開始年齢は同じとなります。

国民年金の場合、40年間の全期間保険料を納めた人は65歳から満額支給され、厚生年金の場合、65歳になったときに国民年金の老齢年金に上乗せして老齢年金が支給されるのです。

いずれも支給開始年齢の繰り下げ、繰り上げができますが、その場合、年金が増額、減額されます。

障害年金

障害年金は、ケガや病気で生活や仕事に支障が出る場合に支給される年金で、65歳以上でなくとも、20歳以上の年金加入者であれば受け取ることが可能です。

厚生年金加入者であれば障害厚生年金を、国民年金加入者は障害基礎年金が請求でき、障害年金をもらえる時期は、医師の診断書をもとにした障害認定日が基準となります。

障害基礎年金の1級または2級に該当する際は、障害厚生年金に障害基礎年金が上乗せされて支給されるのです。

遺族年金

遺族年金は、厚生年金または国民年金の加入者が亡くなった際、遺族に支給される年金です。亡くなった人の納入状況によって、遺族基礎年金もしくは遺族厚生年金のいずれか、または両方の年金が支給されます。

その際、年金受給者死亡届(報告書)を年金事務所に提出する必要があります。提出しないと、亡くなった人の年金がいつまでも支給され、不正受給になってしまうのです。

日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合、年金受給者死亡届(報告書)の提出を省略できます。

厚生年金の加入者は、老齢年金、障害年金、遺族年金の厚生年金保険料に、国民年金の保険料が上乗せされて支給されます