育児休業給付金(育休手当)とは? もらえる条件、いつから?

「育児休業給付金」とは、育児休業給付金は、育児休業中の労働者に支給される給付金です。子育て支援の一環として、一定期間、収入の一部を補填し、仕事と育児の両立を支援します。

2022年10月の育児・介護休業法の改正(厚生労働省)により、「育児休業の分割取得」や「産後パパ育休制度」が施行されるなど、夫婦での育休取得を後押しする制度が充実してきています。

そこでこの記事では、育児休業給付金の基本や、受給の条件、手当をもらえる期間や具体的な金額、申請手続き方法や注意点について詳しく解説します。

1.育児休業給付金とは?

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した際に受け取れる給付金です。この給付金を育休手当と呼ぶ場合もあります。この制度は、育休中に受け取る給与が減少するか、またはなくなることを補うため、職場復帰までの生活を支える重要な収入源となります。

育児休業給付金は、雇用保険に加入している父親、母親にかかわらず支給されるものの、一定の受給条件を満たす必要があります。

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手取りの80%(実質10割)への引き上げはいつから?

2023年3月、日本政府は、育児休業給付制度の最低支給率を給与日額あたり80%へ引き上げると表明しました。

現在の支給額は、休業開始から180日までは休業開始時賃金日額の67%、181日以降は50%。80%に引き上げられることによって、育児休業中の社会保険料の免除と合わせ、手取りベースでは育休取得前の給与と同等の収入を得ることが可能となります。

ただし育児休業給付金の支給額には上限が設定されており、一定額を超える場合は、休業開始前賃金日額にかかわらず、一律上限額が支給されます。なお、具体的な引き上げ時期については未定です。(2024年1月時点)

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2.育児休業給付金がもらえる条件|支給対象

育児休業給付金を受け取るための条件は以下のとおりです。

  • 育児休業開始日前2年間に、11日以上働いた月が12か月以上ある
  • 育児休業期間中の1ヵ月ごとに、休業開始前の1か月あたりの賃金の8割以上が支払われていない
  • 就業日数が支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日(10日を超える場合は就業時間が80時間)以下である
  • 有期雇用契約の場合、同じ事業主のもとで1年以上継続して働いており、かつ、子が1歳6ヵ月に達する日までにその労働契約が満了することが明らかでない

これらの条件を満たさない場合、育児休業給付金の受給資格がないと判断されます。

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3.育児休業給付金の支給対象とならないケース

育児休業給付金の支給対象外となるケースには、以下のような状況が含まれます。

  • 育児休業開始前の2年間で、11日以上働いた月が12か月未満の場合
  • 育児休業期間中に、休業開始前の1か月あたりの賃金の8割以上が支払われている場合
  • 就業日数が支給単位期間ごとに10日を超える場合(または就業時間が80時間を超える場合)
  • 有期雇用契約の場合で、同じ事業主のもとで1年以上継続して働いていない、または子が1歳6ヵ月に達する日までに労働契約が満了することが明らかな場合

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4.育児休業給付金の支給金額|いくらもらえるのか?

育児休業給付金がいくらもらえるかは気になるところでしょう。ここでは、育児休業給付金の計算方法や支給金額の上限について紹介します。

育児休業給付金の支給金額の計算方法

育児休業給付金の計算方法は、休業開始時の賃金にもとづいて行われます。

【育児休業給付金の支給額】
休業開始時賃金日額×支給日数(原則30日)×67%(181日以降は50%)

具体的には、休業開始前6ヵ月間の賃金総額を180日で割った額が1日当たりの賃金となり(休業開始時賃金日額)、これに休業日数と支給率を乗じて計算します。支給率は、休業開始から180日までは67%、181日以降は50%です。

【支給額の例(賃金月額が30万円の場合)】
支給単位期間中に賃金が支払われていない場合の育児休業開始から180日目までの支給額は、月額20万円程度。賃金月額30万円×67%=20万1,000円です。181日目以降の支給額は「賃金月額30万円×50%=15万円」で月額15万円となります。

育休中に賃金をもらっている場合の支給金額

出典:厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続

賃金が通常の13%(休業開始より6か月が経過した後は30%)以下の場合は、規定通りの67%(休業開始より6か月が経過した後は50%)を乗じて計算します。

しかし、賃金が通常の13%(30%※)を超える場合、賃金月額の80%相当額と、実際に会社から支給された賃金の差額が支給されるのです。(※育児休業給付金の給付率が50%の場合は、13%ではなく30%)

支給単位期間において、休業開始時賃金日額×支給日数(原則として30日)の80%以上の賃金が支払われている場合、育児休業給付金の支給額は、0円となります。

育児休業給付金の支給金額の支給上限

育児休業給付金の支給額には上限が設定されています。この上限額は、毎月の勤労統計の平均定期給与額の増減に基づいて見直されます。厚生労働省の発表による令和4年2月1日現在の支給限度額は、以下が適用されます。

支給率 支給額
67%(育休開始から180日) 30万1,902円
50%(育休開始から181日以降) 22万5,300円

育休中に会社から賃金が支払われる場合、その支給額によって計算方法が異なるため、具体的な支給額は個々の状況によって変わります。

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5.育児休業給付金の支給日|いつもらえるのか?

育児休業給付金の支給日は、育児休業を開始してから約3か月後。支給が決定すると、ハローワークから「出生時育児休業給付金支給決定通知書」が自宅に届き、約1週間程度で指定した口座へ振り込まれます。

育休手当は原則として2か月分まとめて支給される仕組みで、初回は育児休業がスタートしてから、おおよそ3か月前後かかると考えられます。

育休期間が2か月以上ある人は初回以降、2か月に1度、申請の手続きが必要です。初回の育休手当の申請期限は、育児休業開始日から4か月経過した日を含む月の末日になります。期限を過ぎると受け取れなくなるため、注意が必要です。

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6.育児休業給付金がもらえる期間|いつからいつまで?

給付金の支給期間は、原則として子が1歳になる日の前日(具体的には1歳の誕生日の前々日。民法の規定上、誕生日の前日をもって満年齢に達したとみなされる為)まで。子が1歳になる前に職場復帰した場合は、復帰日の前日までです。

ただし、特定の条件を満たす場合、最大で1歳6か月または2歳となった日の前日まで支給期間を延長できます。

育休手当の支給期間を延長する場合

育児休業給付金の支給期間は、以下の条件に該当する場合に延長されます。

  • 保育所等における保育の実施が行われないなどの理由で子が1歳に達する日後の期間に育児休業を取得する場合、その子が1歳6か月に達する日前までの期間が対象となる
  • さらに保育所における保育の実施が行われないなどの理由で、子が1歳6か月に達する日後の期間に育児休業を取得する場合、その子が2歳に達する日前までの期間が対象となる

「パパ・ママ育休プラス」で育児休業期間を延長する場合

両親がともに育児休業を取得する場合、原則子が1歳までの休業可能期間が、子が1歳2か月に達するまで(2か月分はパパ(ママ)のプラス分)に延長されます。たとえば以下の場合、2人合わせて1歳2か月まで67%の給付を受けられるのです。

出典:厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!

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7.2022年10月スタート「育児休業の分割取得」と「産後パパ育休制度」

2022年10月から施行された育児休業給付金の制度改正により、育児休業の分割取得と産後パパ育休制度が導入されました。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説

これにより、育児休業制度が大きく変わったので、「育児休業」の分割取得や「産後パパ育休制度」を取得予定の人は確認しておきましょう。

「育児休業の分割取得」について

育児休業は、被保険者が原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得する際、2回まで分割して取得できます。

出典:厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年(2021年)改正内容の解説

出生時育児休業は、父親も出生後8週の間に2分割での取得が認められているため、育児休業の分割取得を活用すると、子が1歳までの間に育休を4回にわけて取得できるようになります。

分割取得が可能になると、パートナーへのサポートが必要なタイミングに休業可能です。それにより両親ともに協力しながら、より柔軟に仕事と育児の両立をしやすくなるでしょう。

「産後パパ育休制度」について

産後パパ育休制度(出生時育児休業)は、子の出生後8週間の期間内に合計4週間分(28日)を限度として、父親が育児休業を取得できる制度です。産後パパ育休を取得した場合、一定の要件を満たすと「出生時育児休業給付金」の支給を受けられます。

この制度は、こどもが1歳になるまでの育児休業とは別に取得できる制度で、男性被保険者が子の出生直後に育児に参加しやすくするために設けられたもの。原則休業の2週間前までに申請をし、2回まで分割取得が可能です。

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8.育児休業給付金の申請に必要な書類と手続きの流れ

雇用保険制度を利用するには、適切な手続きと必要書類の提出が必要です。ここでは、育児休業給付金の申請に必要な書類と手続きの流れを詳しく紹介します。

必要な書類

育児休業給付金を申請する際に必要となる主な書類は以下のとおりです。

  • 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(未提出の場合)
  • 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
  • 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカードなど育児休業を開始・終了した日、賃金の額と支払状況を証明できるもの
  • 母子手帳など育児の事実、出産予定日及び出産日を確認できるもの(写し可)

最後の「育児の事実、出産予定日及び出産日を確認できるもの」は被保険者が、それ以外は事業主がそれぞれ用意します。

手続きの流れ

育児休業給付金の申請手続きの流れは以下のようになります。

  1. 書類の準備:上記の必要書類を準備
  2. 申請書の提出:準備した書類とともに、最寄りのハローワークに育児休業給付金申請書を提出
  3. 審査:ハローワークが提出された書類をもとに審査を行う
  4. 給付金の支給:審査が通れば、指定された口座に給付金が振り込まれる
  5. 2か月ごとに支給申請書を提出

給付の延長を希望する場合の流れ

育児休業給付金の給付期間の延長を希望する場合、以下の手続きが必要です。

  1. 延長申請:給付期間の延長を希望する場合、ハローワークに延長申請を行う。延長の理由を示す書類が必要になる場合も
  2. 審査:ハローワークは提出された書類をもとに審査し、延長の可否を決定する
  3. 通知:延長が認められた場合、ハローワークから通知が行われる

これらの手続きを適切に行うことで、育児休業給付金の給付をスムーズに受けられます。とくに育児休業給付金の申請は、必要書類の準備と正確な手続きが重要です。

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9.育児休業給付金を受給している際の税金や社会保険料の取り扱い

育児休業給付金は課税対象になりません。また、社会保険料(健康保険、厚生年金)は、育児休業期間中の被保険者本人及び事業主負担分が免除されます。しかし、事業主から賃金が支払われた場合は、雇用保険料の負担が必要です。

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10.育児休業給付金を申請する際の注意点

育児休業給付金を申請する際には、以下の5つの注意点を理解しておくことが重要です。

就業状況を確認する

育児休業給付金の受給中、一定の条件を満たしていれば就業可能です。しかし、就業日数や時間に制限があります。

1支給単位期間において、休業開始時賃金日額×支給日数(原則として30日)の80%以上の賃金が支払われている場合、育児休業給付金の支給額は、0円です。

育児休業中の就業が育児休業給付金の支給条件に影響を与えないよう、就業規定の確認が必要となります。

パートタイマーでも申請できる

有期雇用労働者(パート、派遣、契約社員など雇用期間に定めがある労働者)も、条件を満たせば、育児休業給付金を受け取れます。この場合、雇用保険に加入しており、子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないことが条件となります。

有期雇用労働者でも育児休業給付金を申請できるので、忘れず申請しましょう。

申出期限を守る

子が2歳に達するまでの育児休業について、労働者が希望どおりの日から休業するには、原則、育児休業を開始しようとする日の1か月前までに申し出ることが必要です。

必要書類を正確に準備する

申請には育児休業給付金申請書のほか、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職証明書、子の出生証明書などが必要です。これらの書類は正確に準備し、不備がないか確認しておきましょう。

育児休業給付金を延長する場合は申請が必要

育児休業給付金は、一定の要件を満たした場合、2歳に達する日の前日まで給付を受けられる期間を延長できます。その場合、下記の確認書類を提出する必要があります。

【確認書類】

  • 入所不承諾通知(利用調整結果通知等)の写し ※注1
  • 入所申込書の写し(入所申込日及び入所希望日の確認のため)※注2
  • 入所不承諾通知に育児休業取得者の氏名がない場合には、母子手帳(出生届出済証明のページ)の写し等
  • その他安定所より提出を求められた書類

市区町村により入所申込時期は異なるため、提出時期の確認は十分余裕を持って確認しましょう。