マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての人が持つ12桁の番号のこと。ここではマイナンバー制度の概要や今後の展望、課題点について見ていきましょう。
1.マイナンバーとは?
マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての人(外国人を含む)が持つ12桁の番号のこと。
従来、国の行政機関や地方公共団体などにおいて個人情報のやりとりを行う際、住民票コードや基礎年金番号、健康保険被保険者番号など、それぞれ異なる番号で管理していたため多くの時間と労力が費やされていました。
そこで、社会保障や税、災害対策の3分野での個人の特定を迅速に行えるようにとマイナンバーが導入されたのです。
2.マイナンバー制度の今後の展望と課題
マイナンバーは、行政機関や地方公共団体、役所の手続きなどの効率化を図って国民の利便性を高め、公平公正な社会を実現する社会基盤です。そんなマイナンバー制度の今後の展望や課題について解説しましょう。
給付金の不正受給防止などに役立てる
マイナンバーは、社会保障や税、災害対策の3つの分野で効率的な情報管理をし、それぞれの機関が保有する個人の情報が同一人の情報だと確認するために利用されます。
マイナンバー制度を導入すると、人々の所得状況などが把握しやすくなります。さらに「税や社会保障の負担を不当に免れる」「不正受給」といった事柄の防止や経済面で困窮している人々へのきめ細かな支援を実現しやすくなると考えられているのです。
行政手続きなどの利便性向上
行政機関の事務手続ではさまざまな書類の提出が求められます。しかしマイナンバーでは専用のネットワークシステムを用いるため、各行政機関の間で、マイナンバーから生成された符号をもとに情報を管理できるようになるのです。
これにより、各自治体と連携して、児童手当や介護保険、地方税の減免手続、 健康保険関係、ハローワーク関係、奨学金関係の各種手続を行う際の利便性が向上しました。
医療情報との展望
「未来投資戦略2018」によると、世帯単位であった被保険者番号を個人単位化し、医療などの分野におけるIDとして、マイナンバー制度のインフラを活用するとしています。
またマイナンバーと結び付けられた「被保険者番号履歴」により、転職や転居などで被保険者番号が変更した場合でも、個人の特定が可能になったのです。
医療分野における個人情報の活用は、安全で質の高い医療・介護の提供はもちろん、災害時の対応でも今後ニーズが高まると考えられています。
3.マイナンバー制度の問題点やリスク
行政機関や役所での手続きの効率化を実現したマイナンバー制度ですが、一方で問題点やリスクもあります。一体どのような内容なのか、4つの点から見ていきましょう。
- 個人情報の漏えい
- 国家による国民の管理
- 不正利用
- マイナンバーの利用格差
①個人情報の漏洩
たとえば、ある人物が他人のマイナンバーを知った結果、行政機関や地方自治体が保有する個人情報が当人の知らないところで外部に漏洩してしまう、という可能性があります。
さらに不正に入手したマイナンバーを用いて個人情報の追跡や突合が行われた結果、個人情報が外部に漏洩してしまうというケースも考えられるでしょう。
②国家による国民の管理
また、「国家によって、個人のさまざまな情報が、突合・一元管理されてしまうのではないか?」と懸念する声も上がっています。しかし、国がマイナンバーに紐付く情報を「一元管理」するようなことは決してありません。
行政機関で管理していた個人情報はそのまま厳重に保管され、必要な情報を必要なときだけやりとりする「分散管理」という体制を取っているのです。そのため、一元管理によって個人の情報が漏洩する可能性はないといえます。
③不正利用
マイナンバー制度の導入によって、「悪意のある人物が自分になりすまして不正に利用することも起こるのではないか」と心配する声もあります。
しかしそのような不正利用対策として、制度面とシステム面の双方から個人情報を保護するための厳格な安全対策が講じられているため、安心できるでしょう。
また行政機関でマイナンバーを提供する際は、マイナンバーの確認と身元の確認の両方が求められています。マイナンバーを用いて本人になりすまして手続することは現実的に考えて難しいでしょう。
④マイナンバーの利用格差
マイナンバーは、日本に住民票を有するすべての人が保有することが定められていますが、一方でマイナンバー制度の活用から取り残される人が存在しているという指摘もあるのです。
たとえば多重債務者、ホームレスなど、住民登録をしていない人は、マイナンバー制度の適用対象になりません。そのため本来すべての国民が対象とされるべき制度でありながら、排除されてしまう人たちもいるという利用格差が生じているのです。
4.マイナンバーの申請・受け取りについて
日本に住民票を持つすべての人が保有できるマイナンバーですが、どのように申請や受け取りをすればよいのでしょうか。マイナンバーカードの申請から受け取りまで、手続きについて説明します。
申請方法
マイナンバーカードは、「郵送」「パソコン」「スマートフォン」「まちなかの証明写真機」から無料で申請でき、その際、デジカメやスマホで撮った写真の使用も可能です。(ただし、顔写真は直近6カ月以内に撮影したものに限ります)
「郵送」で申請する場合、マイナンバーカードの交付申請書に自分の顔写真を貼り、送付用封筒に入れて郵便ポストに投函。「パソコン」「スマートフォン」で申請する場合は顔写真を撮影した後に所定のフォームからオンラインで申請します。
受け取りについて
郵送による申請、あるいはスマートフォン・パソコンによるWEB申請を行うと、交付通知書が自宅に届きます。受け取る際は、「交付通知書」「通知カード」「本人確認書類」を持参し、交付通知書に記載された場所に行き、定められた期限までに受け取ります。
再交付について
マイナンバーを知らせる通知カードは平成27年11月から12月にかけて簡易書留で送付されましたが、もし、通知カードがなくなったり番号が不明になったりした場合、各自治体で再交付申請が可能です。
申請手続きを行った日から3週間程度後に、簡易書留で通知カードが再配達されます。(通知カードの再交付手数料は、1件500円です)
また通知カードを外出先で紛失したり盗難などに遭ったりした場合は、速やかに警察署への届出を行いましょう。各自治体の窓口へ訪問するのはその後です。
交付時に必要なもの
マイナンバーカードを交付する際に必要なものは以下の通りです。
- 交付通知書(はがき)
- 通知カード
- 住民基本台帳カード
- 本人確認書類※
本人確認書類とは?
以下の場合、いずれか1点の提示でOKです。運転免許証、交付年月日が平成24年4月1日以降の運転経歴証明書、パスポート、顔写真付きの住民基本台帳カード、在留カード、特別永住者証明書、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳。
以下の場合、いずれか2点以上の提示でOKです。「氏名・生年月日」または「氏名・住所」が記載されている健康保険証、介護保険証、後期高齢者医療保険証、医療受給者証、各種年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、生活保護受給者証。
5.マイナンバーカードの具体的な用途
導入によって人々の暮らしに利便性をもたらしたマイナンバー制度。行政機関や役所の手続きの効率が向上しただけでなく、日々の生活でもマイナンバーは活用されているのです。ここでは、具体的な用途について見ていきましょう。
コンビニエンスストアで各種証明書が取り出せる
マイナンバーカードを利用すると、コンビニエンスストアで各種証明書が取得できるようになります。これは「コンビニ交付」とも呼ばれ、マイナンバーカードを利用して、住民票の写しや印鑑登録証明書などをコンビニエンスストアで取得できるサービスのこと。
全国のコンビニエンスストアから取得できれば、平日昼間に役所に行けない人も便利です。また住んでいる市区町村に関わらず、最寄のコンビニエンスストアで各証明書を取得できるのもメリットでしょう。
公的な身分証明書として使う
マイナンバーカードは、プラスチック製のICチップ付きカードで作られており、券面に氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーと本人の顔写真が表示されています。そのため公的な身分証明書としても使用可能です。
マイナンバーの提示と本人確認が同時に必要な場合、これ1枚で済み、金融機関の口座開設やパスポートの新規発給時でも身分証明書として活用できます。しかし、「通知カード」の状態では身分証明書として使うことはできません。
確定申告をオンラインで行う
確定申告をe-Taxで電子申告する場合、公的個人認証を行う必要があります。そこで、ICカードリーダライタにマイナンバーカードを読み込ませたり、マイナンバーカード対応のスマートフォンを使用したりするのです。
ICカードリーダライタは家電量販店やECサイトでも購入できるため、申告をオンライン上で済ませたいと考えている人は事前に準備をしておくとよいでしょう。
マイナポータルが使えるようになる
マイナンバーカードによって、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」を利用できます。「マイナポータル」はさまざまな行政手続がワンストップで行え、行政機関からのお知らせについても確認できるのです。
また情報提供ネットワークシステムを通じた住民情報のやりとりの記録の確認や、行政機関が所有する特定個人情報の確認、地方公共団体の子育てに関するサービスの検索やオンライン申請もできます。
今後はポイントカードとなる可能性も
顔写真付きのICチップ内蔵カードで作られているため、電子証明書としての役割もあるマイナンバーカードですが、このマイナンバーカードをポイントカードとしても利用することが検討されているのです。
マイナンバーカードがポイントカードになれば、各コンビニエンスストアやカフェ、さまざまなチェーン店が発行するポイントカードを何枚も持ち歩く必要がなくなるでしょう。
複数枚所有していたカードを一元化できるため、利便性が高くなるのでは?と期待する声も上がっています。しかしその一方で、「紛失や盗難にあっても大丈夫なのか」といった懸念の声もあるのです。
オンライン取引などでの活用
マイナンバーカードは本人確認が必要な場面にて、1枚で身分証明書としての役割を果たします。そのため金融機関における口座開設、パスポートの新規発給など、さまざまな場面で活用できるのです。
さらに将来的にはオンラインバンキングをはじめ、各種の民間のオンライン取引なども利用できるようになる見込みとなっています。また住宅ローンや不動産取引などのオンライン契約での利用も検討されており、取引対象の拡大が予想できるでしょう。
6.通知カードについて
マイナンバーカードと通知カードは異なります。どちらにも氏名やマイナンバーは記載されていますが、通知カードのみでは身分証明書としての利用や各種証明書の発行が行えないのです。通知カードとは一体何か、説明します。
通知カードとは
通知カードはマイナンバーを知らせることを目的とした紙製のカードで、券面には、マイナンバーのほかに、住民票に登録されている氏名や住所、生年月日、性別などが記載されているのです。
出生や国外からの転入によって初めて個人番号が付番される人には、手続きの後から約3週間後に、世帯主宛てに簡易書留で送られます。送付の際には「個人番号カード交付申請書」「案内状」「個人番号カード交付申請書の送付用封筒」も同封されます。
通知カードの利用目的
行政機関や役所の窓口などでマイナンバーを伝える際、通知カードの提示が可能ですが、本人確認を行うには、別途運転免許証などの書類が必要です。また通知カードだけではマイナポータルでの手続きやコンビニでの各種証明書の取得はできません。
対して、1枚で身分証明の役割を果たすマイナンバーカードは利便性が高いです。マイナンバーカードを作成すると、より暮らしが便利になるでしょう。
通知カードをなくしたら?
通知カードには、マイナンバー(個人番号)だけでなく、住民票に登録されている氏名や住所、生年月日、性別などの個人情報が記載されています。第三者による悪用や不要なトラブルを防ぐためにも紛失しないよう注意しましょう。
万が一、通知カードを紛失してしまったり盗難などに遭ってしまった場合は速やかに警察署への届出を行います。その後、住民票を置く市町村の役所窓口へ訪問して相談しましょう。