スタートアップとは、新たな価値を創造できる企業形態のこと。よく耳にしますが、一体どのような企業形態なのでしょう。スタートアップについて解説します。
目次
1.スタートアップとは?
スタートアップとは、大きな成長を継続できる企業のこと。「スタート」という単語から、「起業したばかりの会社」という解釈が見られますが、スタートアップは起業時期を問わないため間違いといえます。
また、大きな成長の継続には新たな価値の創造が欠かせません。そのため、スタートアップは、「新たな価値を創造する力を持つ企業」と言い換えることもできます。
2.スタートアップの特徴
スタートアップには特徴があります。大きな成長を継続できる企業の特徴を解説しましょう。
- イノベーション
- 拡張性
- 課題解決
①イノベーション
イノベーションとは、「既存の価値ではない、新たな価値を生み出す」「技術革新」のこと。
イノベーションが企業の中で動き始めれば、以前からあるプロダクトに縛られず、「新しい考え方や技術を積極的に活用して新しい価値を生み出す」「新しい価値によって、社会に大きな革新、刷新、変革をもたらす」ことができます。
よって企業は、イノベーションによって大きな成長を継続できるのです。
②拡張性
拡張性とは、利用者や仕事の増大といった変化に適応できる能力のこと。英語で「scalability」といい、ソフトウェア工学世界で多く用いられる言葉です。
新たなシステムに交換するのではなく、増築や改築といったようなリソースの追加によって規模そのものを大きく拡充します。その結果、プロダクトが汎用性を持つようになれば、企業は大きな成長を約束されるのです。
③課題解決
課題解決とは、プロダクトが多くの人にとっての課題解決につながっていくということ。
単に問題や課題を解決するだけでは、スタートアップとはいえません。あくまで、広範囲にわたる人々が「問題だ」と強く認識していた事柄の解決が必要になるのです。
難題が解決できれば、そのプロダクトは広く社会に浸透し、それは、大きな成長を継続させるスタートアップの礎になるでしょう。
3.スタートアップが広まった背景、原因、実態、現状
スタートアップが広まった背景には、IT業界の躍進があります。インターネットが広く社会に普及する過程で、IT技術を活用してどのように新しい価値を創造していくのかを問われる場面が急増しました。
その結果、スタートアップの特徴である「イノベーション」「拡張性」「課題解決」の3つを実現する企業が次々と誕生したのです。
IT業界は、最も象徴的にスタートアップが実践される業種である点から、今後もIT関連企業の増加とともにスタートアップも増加すると期待されています。
4.スタートアップとベンチャーとの違い
ベンチャーとは、企業として新たな事業への取り組みを行うこと。
ベンチャー企業のことをベンチャーと省略して呼ぶことも多くあり、この場合は、「創業してからさほど時間が経過していないスモールビジネス」「既存の企業では難しいクリエイティブな事業を展開するために新たに起業した中小企業」といった意味を持ちます。
5.スタートアップとスモールビジネスとの違い
スタートアップとスモールビジネスとの違いと特徴は、下記の通りです。
- スタートアップ:新しくかつ大きな成長を継続できる企業を意味、事業規模を問わない
- スモールビジネス:成長するが必ずしも革新的な成長である必要はない、中小企業といった小規模で運営されている
インパクトと汎用性を兼ね揃えた事業展開ができることが、スモールビジネスとの大きな違いです。
6.スタートアップのメリット
スタートアップには、どんなメリットがあるのでしょうか。スタートアップに関する3つのメリットを解説します。
- 裁量や権限が増える
- 柔軟性がある
- スピーディー
①裁量や権限が増える
スタートアップの場合、経営者と従業員との距離が近い場合が多くあります。そのため、従業員の意見が経営に反映される状況が増え、同時に、従業員の裁量や権限も自然と増えていくのです。
②柔軟性がある
スタートアップを実現するため、さまざまな制度や体制、仕組みを柔軟に変更できます。「慣習やしがらみなどに縛られない」「臨機応変」、そんな柔軟性を得られるのです。
③スピーディー
人数が少ない場合、当然、意思決定のスピードが速まります。メンバーの意思確認に時間を要しない、稟議を通す階層が少ないといった点は、スタートアップの大きなメリットでしょう。
7.スタートアップのデメリット、問題点、課題
メリットが多く見えるスタートアップにも、デメリットがあります。2つのデメリットについて解説しましょう。
- 給与や福利厚生が十分でない場合も
- 責任が増える
①給与や福利厚生が十分でない場合も
経営してみたものの、思ったより利益が出ない、固定費がかかるといった理由から給与や福利厚生が十分でない場合もあり得ます。起業してすぐ事業が軌道に乗るわけではない点は認識しておきましょう。
②責任が増える
スタートアップでは、経営者と従業員との距離が近いため、従業員にも裁量や権限が与えられます。言われた仕事をやるだけではないという点は大企業との大きな違いでしょう。しかしその分、責任が増えてしまいます。
8.スタートアップの成功事例
スタートアップには、どんな成功事例があるのでしょうか。スタートアップがよりよく理解できる6つの成功事例をご紹介します。
Facebookは、マーク・ザッカーバーグが学生時代に創業した企業です。
初期のFacebookは、大学が固有に運営するコミュニティサービスでしかありませんでした。しかし、サービスの一般化、汎用化を実現するうちに、8億人以上にものぼる利用者が存在する世界的企業になったのです。
WeChatは、中国のネット大手であるTencentが運営するユーザー数3億人のモバイル向けコミュニケーションサービスです。
競合他社には、米国のWhatsAppがありますが、「感情表現や動画による通話」「プッシュ・トゥ・トーク機能」「ソーシャルネットワーキングとの連携」といった独自性を海出すことで、他社との差別化に成功しました。
SoundCloud
SoundCloudはYouTubeのオーディオ版で、録音した楽曲をSNSなどで共有できるサービスを提供しています。
「サウンドファイルを好きな場所に保存できる」「Twitter、FacebookといったSNSと統合できる」といった利点から、現在のユーザー数は1億8,000万人となっています。
Angry Birds
Angry Birdsは、鳥をパチンコで放ち、敵の豚を倒すスマホゲームで、2009年12月に発売されました。それ以来、「iOSの優れたタッチ機能」「手頃な販売価格設定」がゲーム愛好家に受け、ダウンロード数は10億回以上という大ヒットを成し遂げたのです。
iPhoneがゲームのプラットフォームに躍り出るタイミングと重なったことも勝因のひとつといえます。
Okey
Okeyは、トルコとアラブ周辺国で親しまれてきたカードゲームやボードゲームがもとになっているゲームで、開発国はトルコです。
英語版の「Lost Bubble」はユーザー数が560万人
Okeyの提供元であるPeak Gamesも2012年第1四半期の収益が前年同期比10倍
など、順調な企業経営を続けています。
Viki
Vikiは、コミュニティの参加者によって翻訳された字幕翻訳を付けるサービスで、字幕翻訳付きの動画をHuluといったパートナー企業に配信しています。サービスの基幹となるる翻訳サービスは、100万人いるボランティア会員によって自主的に行われているのです。
著作権を取得した動画は10億本以上あり、次の事業展開が期待されています。
9.スタートアップに失敗した企業から見る注意点
スタートアップに失敗した事例を見ると、スタートアップの注意点が分かります。どんな内容なのか、3つの事例から見ていきましょう。
事業拡大はほどほどに
2011年創業の料理宅配サービスを行うマンチェリーは、1億1,700万円という多額の資金調達に成功しました。
調達した資金を、経営課題であるメニューのコスト管理や食品ロスに活用するのではなく、積極的な事業拡充に充てました。その結果、料理宅配に対する市場評価の低迷の影響を受け、2019年に経営破綻したのです。
ジェームズ・ベリカーCEOは、「拡大可能な確固たるビジネスモデルを築かないままで事業拡大に積極投資した」と振り返っています。
他社のサービスに依存すると
2014年創業のアンロックドは、モバイル端末のロック解除時に表示されるカスタマイズ広告を閲覧するとポイントがもらえる新たなサービスを提供していました。
しかし、Googleからアプリを配信ストアから削除するなど、サービス規定違反の制裁を受け、アンロックドは、「Googleの行為には悪意がある」「サービスを妨害されている」とオーストラリアの連邦裁判所と英裁判所の高等法院で争いました。
しかしGoogleに依存した経営が仇となり、2018年に経営破綻したのです。
M&Aで必ずしもシナジーが生じるわけではない
2007年に創業した化粧品ブランド「ジュレップ」は、現実の店舗とネットを融合したオムニチャネルの大手として急成長した企業です。
しかし、顧客が「無料お試しセット」を選択したにもかかわらず、「毎月の定期サービス」という契約になっていたことで、顧客から訴訟を起こされます。そこでM&Aなどに活路を求めましたがシナジーが生じず、結果、2018年に破綻しました。
この事例からは、M&Aで必ずしもシナジーが生じるわけではないと分かります。