マーチャンダイジングとは価格や販売形態を決める際のプロセスのこと。ここではマーチャンダイジングの重要性や構成する要素、具体例について解説していきます。
目次
1.マーチャンダイジング(MD)とは?
マーチャンダイジングとは、価格や販売形態を決める際のプロセスのことで、マーケティング戦略における重要な過程のひとつです。
たとえば市場に出回っている既存商品と同じような商品を販売する際、マーケティング戦略と販売にズレが生じてしまうとどうなるでしょう。どれだけPR活動や価格戦略が適正でも、ターゲットとする顧客を満足させることは難しくなります。
近年では、ITの活用によって、商品の品揃えや棚割り、発注など一連の作業を自動化させる仕組みを整える企業も増加する傾向にあるのです。
2.マーチャンダイジングの意味と重要性
マーチャンダイジングという言葉は、業界や使う人によって意味が異なる場合がありますので、意味を正しく捉えておく必要があります。一体どんな意味なのか、語源や目的などから解説しましょう。
マーチャンダイジングの語源と意味
マーチャンダイジングには、「商品を売買する」「宣伝する」「キャラクター商品」といった意味があります。
流通業界では必須のビジネスマーケティング用語で、商品やサービスを販売する際、効果的に販売計画、販促プロジェクトを行ったり、またこれらの管理をしたりすることを包括的に表します。
卸業では、商品を消費者に直接提供する小売業が採用するマーケティング戦略となり、運営を支える軸となる概念をマーチャンダイジングという場合もあるのです。
マーチャンダイジングの重要性
マーチャンダイジングはなぜ重要なのでしょうか。その理由は、繁盛店を作るための基本的な考え方を示すためです。さらにマーチャンダイジングを展開することで売場の活性化につながります。
つまり、マーチャンダイジングには以下の6つをマネジメントすることが必要になるのです。
- 提供する価格:商品の販売価格
- 品揃え:売場に陳列する商品の種類
- 提供する数量:商品の仕入れ計画
- 展開する時期:商品の導入や終了時期
- 展開する場所:商品の陳列場所
- 売場づくりツール:商品の視認性を高くする手段
マーチャンダイジングの2つの目的
流通業界では同様の要素を持つ商品が扱われる場合が多いため、商品力の向上を図り、競争力を高めていく価格設定が必要となります。マーチャンダイジングには店舗に効率の良い運営を促し、他店舗との競争に勝てるような役割をつける活動も含まれているのです。
つまりマーチャンダイジングの目的は、商品力の向上と価格における強い競争力の2つといえます。当然ながらモノを売る仕事に就く人は、「マーチャンダイズ」という概念への理解が必須でしょう。
3.マーチャンダイジングを構成する6つの要素
マーチャンダイジングとは、流通業に特化したマーケティング用語で、商品やサービスを販売するにあたって重要な要素となります。ここではマーチャンダイジングを正しく実施するための6つの構成要素を解説しましょう。
- 商品の販売価格を考える「提供価格」
- 商品の種類を示す「品揃え」
- 仕入れの計画に重要な「提供数量」
- 商品の導入時期を探る「展開時期」
- 商品の陳列を考える「展開場所」
- 商品の視認性を高める「売場づくりのツール」
①商品の販売価格を考える「提供価格」
商品の販売価格を指し、仕入単価や販売単価などの最適な価格を検討するものとなります。利益を確保するためには仕入れ値や販売価格の選定は大切です。マーチャンダイジングの主な目的である商品が持つ強い競争力を考慮して、最終的に価格を決定します。
価格設定では、スタート価格ラインから終了価格ラインに至ってもマネジメントし、また消費者が購買しやすい売場づくりのマネジメントも求められるのです。
②商品の種類を示す「品揃え」
売場に陳列する商品の種類を指すもので、「消費者のニーズを満たすためにどのような商品を提供するとよいか」という商品政策です。消費者へ適正な商品を提供するために重要な要素で消費者が必要としているものを追求し、満足向上を実現できる対策を練ります。
たとえばどのような商品規格や品質、容量、パッケージが最適か、さらに他商品とのバランス、主力品・品揃えという位置付けの選択も行っていくのです。
③仕入れの計画に重要な「提供数量」
小売店や店舗にとって余分な在庫の保有は、マネジメントにおいてリスクが高いもの。そのため、どれくらいの数を仕入れてどれくらいの数を販売するのかを市場調査をもとに決定しなくてはなりません。
仕入れ数が決まったら、さらに品揃えする商品の数、値入れ数、販売目標数、売場計画数などをマネジメントするのです。消費者が購入しやすいよう、売場ごとにアイテム数や価格ライン数のバランスの見極めも行っていきます。
④商品の導入時期を探る「展開時期」
商品の導入から終了の時期で、商品を販売する最適な時期を見極め、それに伴い商品を仕入れる時期や販売期間などを選定していきます。
たとえば夏に暖房器具やセーター、マフラーを店頭に陳列しても消費者のニーズに合致しません。そのため最適な時期での販売や、それに合わせた仕入れ時期を選定するのです。
さらに週や店それぞれに消費者が購入しやすいと感じるタイミング、あるいは競争優位に立てるタイミングを定めていきます。
⑤商品の陳列を考える「展開場所」
商品の展開店舗や適切な売場、陳列場所を指します。
たとえば高齢者向けの商品を販売する際に、若い世代が多く住むエリアを選択した場合、ミスマッチとなるでしょう。ターゲットとする消費者が集まる場所に合わせた商品やサービスの選定は、極めて重要なのです。
さらに販売する場所だけなく仕入れ場所においても同様となります。また消費者がより買いやすいように棚割りをマネジメントする売場作りも不可欠となるのです。
⑥商品の視認性を高める「売場づくりのツール」
品揃えすると計画した商品の視認性を高くするためのツールを指します。
プライスカード、POP、ショーカードなどメーカーに提供される販促アイテムなどを用いると、来店者に商品をよりアピールできます。これは視認性を高めるための売場のマネジメントとも考えられているのです。
売場づくりツールは、商品やサービスを販売するにあたって大切な要素。マーチャンダイジングでも有効な役割を果たすでしょう。
4.マーチャンダイジングの2つの種類
価格や販売形態を決める際のプロセスであるマーチャンダイジングには、「ビジュアルマーチャンダイジング」「クロスマーチャンダイジング」の2種類があります。一体どのようなものか、2つについて解説していきましょう。
ビジュアルマーチャンダイジング
ビジュアルマーチャンダイジングとは、マーチャンダイジングの視覚化を示し、他店舗との差別化を図って自社のオリジナリティを主張するというもの。英語の「visual merchandising」を意味し、「VMD」と略されて表記される場合もあります。
ビジュアルマーチャンダイジングはもともとアメリカのディスプレイ会社で使われ始めた言葉だといわれており、1970年代にアメリカで重要性が高まりました。
クロスマーチャンダイジング
クロスマーチャンダイジングとは、商品の発注や陳列方法を指し、同じカテゴリーで商品を陳列したり、逆に異なる種類の商品を隣接させて並べたりするもので、英語の「cross merchandising」を意味します。
同じ種類の商品を隣に並べるのが一般的ですが、鮮魚売場に醤油やわさびを置いて具体的な料理をイメージしてもらうといった方法もあるのです。
このようにクロスマーチャンダイジングは、消費者の購買意欲の向上を図るだけでなく、商品に付加価値をもたらす概念と考えられています。
5.マーチャンダイジングの事例
マーチャンダイジングについて具体的に学ぶために、実際の企業が行っている事例を知ってみましょう。「IKEA」と「ドン・キホーテ」による2つの事例を解説します。
IKEA
IKEAは、広大なため来店者の動線が大変長く、およそ1時間は店内に留まるといわれています。この長い店舗回遊性をもたらしているのが、カテゴリー別の陳列です。
一般的な家具店ではカテゴリーごとに陳列しますが、IKEAでは「ワンルームひとり生活」や「家族のリビングルーム」といったライフスタイルに合わせた陳列を実施。これが来店客を飽きさせることなく、動線を長く持たせることに結び付いているのです。
ドン・キホーテ
「圧縮陳列」「迷路」などといった個性的な陳列は、来店客の掘り出し物を見つける楽しさというニーズに応えてきたといえます。一見すると雑多な雰囲気ですが、マーチャンダイジングを戦略的に行えば効果が高まる成功例と考えられているのです。
一方で、他社に先駆けて実施したことが成功した理由といえるため、仮にこの戦略を真似てたとしても、うまくいく可能性は低いでしょう。