働き方改革の推進を背景に、就業形態が多様化し複雑化する勤怠管理。このようなニーズに合った勤怠管理はどのようなものか解説します。
目次
1.タイムカードとは?
タイムカードとは、始業時刻・終業時刻などを書き込む紙のことで、日にち時間を計測するタイムレコーダーに紙のタイムカードを差し入れ、時刻を打刻する方法で運用されています。
職場や執務エリアの入口に設置されている場合が多く、従業員が自らカードを差し込んで勤怠管理をするシステムです。タイムカードとタイムレコーダーをセットして「タイムカード」と呼ぶ場合もあります。
2.タイムカードのメリット・デメリット
出勤時間・退社時間を知らせる勤怠管理は、給与計算にも関わる重要な情報です。タイムカードで出退勤時間を打刻する従来のやり方には、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
まず、タイムカードで勤怠管理するメリットについて3つの視点から見ていきます。
コストが抑えられる
タイムカードの導入に必要なものは、レコーダーと従業員分のタイムカードですので、初期費用はさほどかからず、継続費用は用紙代とインク代のみとなります。そのため、管理に費用が割けない中小企業で重宝されているのです。
誰でも簡単に使える
タイムカードは出勤時と退勤時にタイムレコーダーに紙を差し入れればいいだけなので、誰でも簡単に使えます。システム上の手続きや面倒な承認作業などを要しないため、手間を掛けずに打刻できるのです。
運用も簡単に行える
タイムカードさえあれば誰でも簡単に集計作業ができるため、運用に特別なスキルは必要ありません。紙をさばく作業にある程度時間はかかりますが、長年のやり方を変えるほうが手間がかかるといった声もあるようです。
デメリット
では次に、タイムカードのデメリットを4つのポイントから見ていきます。
用紙の回収・入力・保管などの業務工程が多い
タイムカードは紙の用紙ですので、集計の際、用紙を回収する必要があります。また、タイムカードに打刻された情報を給与計算に反映させるため、エクセルに入力しなければなりません。
従業員が少なければまだしも、企業が成長するに従って業務の手間がかかるようになる方法といえるのです。
打刻漏れ・不正打刻を防ぐことができない
打刻を忘れてしまった場合、後から手書きで入力したり忘れた理由を申告したりと作業が増えます。さらにこの特徴を利用して、遅刻した際に他の人に打刻をしてもらう、意図的に忘れたふりをして不正な申告をするといったこともできてしまうのです。
集計時のミスが避けられない
タイムカードの回収と集計は人の手によるものなのでミスは避けられません。また、手入力による集計のため、データの改ざんも容易にできてしまいます。さらに、従業員の残業時間を故意に短くできるため、客観的な証拠としての信頼性が低くなってしまうのです。
法律改正後に対応できない
タイムカードでは、残業時間をリアルタイムに確認できません。また、有給休暇の取得状況は別のシステムを使用しなければ管理しづらいといえます。
働き方改革の影響で残業時間の削減や有給休暇の消化が義務付けられる昨今の状況に合わせた対応が難しいのです。
3.勤怠管理システムの導入が流行
メリットと比較してデメリットが多いタイムカードに代わり、各企業では勤怠管理システムの導入が進められています。勤怠管理に抜け漏れやミス、不正を事前に防ぐ意味でも、システムでの管理はニーズが高まっているのです。
勤怠管理システムの種類
勤怠管理システムとは、ICカードや生体認証システムを用いて従業員の出退勤を管理するもの。執務フロアやゲートへの入退室管理システムと併用すると、勤務時間入力の手間を省きつつ、正確な勤怠管理が可能です。主流の種類は、以下3つとなります。
- 自社専用にサーバを開発・構築した「自社システム」
- サーバとソフトウェアを購入し、自社で運用する「パッケージ型」
- 月額や年額で契約して、インターネット上で利用する「クラウド型」
4.勤怠管理システムでできること
勤怠管理システムを導入するとどんなことができるようになるのでしょうか。効率面やコスト面、時短勤務や雇用形態の多様化など複雑化する勤怠管理の問題、法改正の観点といったさまざまな点から解説します。
勤怠情報の自動データ化
従業員は、システムと連携しているタイムレコーダーで出勤・退勤時刻を報告します。タイムレコーダーは取り付けるものや持ち運び可能なものなどさまざまあるため、従業員の勤務地が一定ではないときに便利です。
打刻によって記録されたデータは自動でシステム上に登録され、従業員、管理者ともに、データの確認だけで個人の勤務時間を把握できるため、管理が容易になります。別途数字を入力したり計算したりする業務がなくなるのです。
タイムレコーダーの種類
企業によって製品は異なりますが、タイムレコーダーの多くはスマートフォンやPC、タブレットなどさまざまなデバイスに対応しているため、業種や従業員の働き方から選べます。
suicaやおサイフケータイといったICカードに対応しているものもあり、これは初期費用を抑えたい職場で人気です。
セキュリティの高いものだと指紋や顔、指の静脈といった生体認証に対応したレコーダーも続々と製品化されており、セキュリティ意識の高い職種で活用されています。
有給休暇管理・休暇申請の一括管理
勤怠管理システムを扱う多くのサービスでは、年次有給休暇管理簿にも対応しています。これは働き方改革関連法によって新しく労働基準法で作成が義務付けられたもの。こうした法改正の動きにも迅速に対応できるのは勤怠管理システムの大きな魅力でしょう。
また、従業員それぞれの入社日をシステム上に入力しておくと、管理者だけでなく従業員自身も年次有給休暇の付与日数や利用日数が分かるようになります。これにより、働き方改革へ向けて意識も高まるでしょう。
勤務状況をアラートできる
時間と日数から、作業時間数や遅刻回数などが一定の値を超えた場合、画面上にアラートを表示できます。またシステム上で従業員一人ひとりが自分の労働時間を確認できるので「今週は働きすぎた」など確認がしやすくなるのです。
管理者は一括して従業員の労働状況が把握でき、打刻忘れや休日に打刻がある場合などを一覧ですぐにチェックできます。「見える化」によって勤怠管理がしやすくなる点は、勤怠管理システムの大きな特徴でしょう。
会社独自の勤怠ルールを設定
勤怠管理システムには、自由にカスタマイズができるものも多いです。
雇用形態がさまざまな従業員を抱える企業の場合、計算期間内で時給が変化したり、異動や昇格、転居などで細かい計算が必要になるケースもありますが、そのような状況に柔軟に対応できるサービスが多数あります。
各社でどのようなカスタマイズができるか、無料で行える範囲か有料プランかはシステムごとに異なります。導入前に確認して自社に合うシステムを選びましょう。
シフト作成・管理も簡単
シフトの作成や管理も一元化できます。各従業員はシステム上で希望のシフト日を記入し、それをもとに管理者はシフトを作成できます。
人が足りている日、足りていない日がひと目で分かるだけでなく、登録した従業員情報からそれぞれのスキルを把握し、営業に支障がないようなシフトが組めるようになるのです。
また、従業員自身も自分のシフトを忘れずいつでも確認できます。アプリを導入しているシステムなら、シフトの提出期限をアラートで通知してくれるものがあるため、管理の手間も省けるでしょう。
5.勤怠管理システムおすすめ6選
最後に代表的なおすすめの勤怠システムを紹介します。一口に勤怠管理システムといってもそれぞれ特徴や違いがあり、一概にどれがよいかとはいえません。自社の課題とニーズを正確に把握し、最も合ったものを選びましょう。
IEYASU(イエヤス)
タイムカードの打刻機能や勤怠管理レポートなどすべての機能が完全無料の「IEYASU」は、13,000社が利用するサービスです。
1,000社以上のサポート経験がある人事・労務の専門プロフェッショナルが開発に関わったもので、シンプルで使いやすい勤怠管理システムを目指しています。
PC、ICカードに対応しているクラウド型サービスで、アカウントを作成したその日から勤怠システムの利用を開始できるのです。
Corpus(コーパス)
「Corpus」も完全無料のクラウド型サービスです。タイムカード機能のほか、有給管理機能、給与計算機能、コスト管理機能、ワークフロー機能が最初から備わっており、勤怠の打刻から給与明細の作成までオールインワンで行えます。
PCから出退勤時刻を手入力する方法のほか、Felicaカードでの打刻、静脈認証での打刻、iPadでの打刻、スマホでの打刻にも対応。自社の職場環境や従業員の働き方に応じたものを選べるでしょう。
MosPオープンソース勤怠管理
「MosPオープンソース勤怠管理」は、タイムカード機能や給与計算機能のほか、プロジェクト管理機能、ワークフロー管理機能など基本機能が豊富です。そのため、作業工数管理や、雇用形態ごとの勤怠管理にも対応できます。
またOSS(オープンソースソフトウェア)で構築されているため、カスタマイズ性にも優れているのです。クラウドからオンプレミスまで自社に合わせたシステムを構築できるでしょう。
OEM提供も可能で、勤怠管理システムの内製化を進めたい組織から幅広く注目されています。
Pochikin
無料のクラウド型サービス「Pochikin」は、さまざまな雇用形態を集計できる豊富なエクセルテンプレートが特徴のサービスで、これによって残業時間や深夜労働、休日残業も簡単に算出できます。
打刻はスマホやタブレットをタイムレコーダー端末として利用でき、登録数は4,000社以上。管理画面で修正の履歴を表示できたりCSVデータ出力を可能にしたりと管理面での機能も充実しています。
KOKODAS
「KOKODAS」は、ICカードを用いたタイムカードシステムで、従業員が持っているSuicaやPASMOなどのICカードやおサイフケータイを使って打刻を記録できます。5名まで永久無料で、それ以上登録する際の費用は1人あたり99円です。
また、持ち運び可能なUSBタイムレコーダーを無料で使用できます。打刻データは管理画面で確認・修正でき、さらにCSVやエクセルに変換してメールで転送でき、zipでの暗号化も可能です。
オツトメ!
フリーソフトを検討する際、セキュリティ面に懸念がある場合も多いでしょう。しかし「オツトメ!」は、無料で使用できるクラウド型の勤怠管理システムの中でも、全ページSSL暗号化というズバ抜けて高いセキュリティ性を誇っています。
「シンプルな操作性で余分な機能がないため、誰にでも使いやすい」「CSV出力などの基本機能を備え、管理がしやすい」点も人気の理由です。