トレードオフとは、何かを達成するためには何かを犠牲にしなければならない関係のこと。ここでは、ビジネスシーンで多用されるトレードオフの定義や使い方などについて解説します。
目次
1.トレードオフとは?
トレードオフ(trade off)とは、何かを達成するためには何かを犠牲にしなければならない関係のこと。
たとえば「製品の在庫を減らしたため、顧客のニーズに応えられず販売機会や契約延長のチャンスを損失した」「在庫を増やすと売れ残りが発生しやすくなるため、余剰が増えてスペースや人件費で問題が生じる」のような場合に使います。
また「取引」「貿易」「商売」といった意味合いも持つのです。
2.トレードオフの関係性
トレードオフは基本的に「両立できない関係性」を指す言葉です。
2つの物事がある状態で1つを選択すれば他方が成り立たない状態や、一方が得をすれば他方は損をしてしまうというような状態や状況を表します。ニュアンス的には「より望ましいほうと入れ替える」というイメージです。
マーケティングを始めとする昨今のビジネスシーンでは、ひとつの交換条件として使用される場合が多いといえます。また、「代償」「得失評価」「両立できない関係」というような意味合いも持つのです。
3.トレードオフの具体例
言葉の意味だけではイメージが浮かびにくいので、具体的な例を使ってトレードオフの言葉の意味を説明します。
日常生活での使われ方
トレードオフはビジネスシーンだけでなく、日常生活でも反比例を表す言葉として使われています。たとえば、時間とお金という関係の場合、仕事は時間を増やせばこなせる作業が多くなり、得る賃金も増えますが、自由な時間は減少してしまうのです。
また高品質と低価格という関係の場合、クオリティの高さを追求すれば高額になり、安さを重視すればクオリティは低下してしまうでしょう。
ビジネスシーンでの使われ方
ビジネスシーンにおけるトレードオフは、高品質と低価格の関係を示す場合が多いといえます。消費者はクオリティの高いモノを好む一方で、低価格を求めがちです。
しかし実際に高品質で低価格なものが市場に増えると、消費者は得をしますが売る側は、損をしてしまいます。よって理想的な商売であるとはいえないでしょう。
「低コストでリーズナブル、かつ高品質」という商品は、なかなかないと考えられるのが一般的です。最適なバランスを取れるかどうかが、ビジネスの成功を左右する要と考えられます。
トレードオフと関係性の深い「機会費用」
トレードオフという言葉を用いる際、「あるモノを得たいがために放棄した利益」、つまり、何かを選んだ際、選択しなかったほうを選んでいれば得られていたのではないかと想定される利益「機会費用」という言葉も同時に用います。
たとえば「もっと仕事をしていたい、でも子育てに専念したい」というトレードオフにおいて子育てを選んだ際の機会費用は、仕事をし続けていた場合に得られたと想定される生涯賃金とキャリアに当たるのです。
4.トレードオフを使った例文
ここでは、トレードオフを使った代表的な例文を見ていきましょう。
- 「トレードオフはビジネスシーンだけでなく我々の日常生活にも多く存在している」:「一方が良くなれば、他方が悪くなる」という矛盾やジレンマを表す際に使う
- 「経済成長におけるトレードオフ問題について特集を組んで議論をする」:「一方を得れば、他方が失われる」という矛盾と代償が発生する現象を指す、双方も公平な結果となる状態で使うのは適切とはいえない
- 「多くの企業で公平なビジネスを継続させるには、トレードオフを解消するしかないのかもしれない」:両立が難しいと伝える際に使われるケース
- 「安かろう、悪かろうの精神ではなく、商品価格と品質のバランスを保つと、トレードオフを防げる」:品質の高さを求めれば高額になり、安さを重視すれば品質は下がるといわれていますが、双方をできるだけ実現したい際に用いる
5.ビジネスシーン以外での使い方
トレードオフという言葉は、ビジネスシーンや日常生活以外でも使われます。ここでは、「経済学」「生物学」における「トレードオフ」の使われ方や特徴について見ていきましょう。
経済学で用いられる場合
「あるモノを入手するためには、あるモノを放棄しなければならない」というトレードオフの概念は、経済学にも存在します。たとえば、「失業率の低下と、物価の上昇」「経済発展と、環境破壊」といったジレンマの関係です。
「福祉政策に注力すれば増税は免れず、減税すれば福祉政策が崩壊する」というように、優れた経済成長や社会資本を目指す過程では、トレードオフに直面する場面も多くなります。
生物学で用いられる場合
「トレードオフ」は生物の世界でも使われます。たとえば「飛ぶ」ことが一般的に認知されている鳥類のなかには、ペンギンやダチョウのように「飛ぶことができない」とされる鳥も存在しているのです。
これを「トレードオフ」として考えてみると、ペンギンは飛ぶことができないかわりに「泳ぐ能力」を、ダチョウは「速く走る能力」を代償として得ていると分かります。上記のペンギン、ダチョウともに「両立不可能な関係性」だといえるでしょう。
6.トレードオフと関係のある用語
トレードオフに関係する用語も多く、一般的なビジネスシーンから日常生活のあらゆる場面で使われています。ここでは、「トレードマーク」「トレードタームズ」など代表的なものをご紹介しましょう。
トレードマーク
トレードマークは、人物の場合、ある人物を特徴づけているものを指します。たとえば「〇〇さんのトレードマークは笑顔と笑ったときに見える真っ白い歯」といった使い方です。
一方でビジネスでは、登録した企業や団体だけが使用できる商標を指します。商品やサービスの名前やロゴのそばに書かれている「R」や「TM」といった小さなアルファベットの記号は、商標です。
トレードタームズ
トレードタームズとは、売主と買主で定型化された価格と使用される取引条件で、貿易条件という意味を持ち、貿易取引契約とも呼ばれています。
国際商業会議所(ICC)が策定した貿易条件の定義で、貿易取引における運賃や保険料、リスク負担などの条件に関する売主と買主の合意内容について、国際的に統一的な定義を取り決めたインコタームズが最も一般的です。
トレードシークレット
トレードシークレットとは、企業が持つ財産的価値のある秘密情報のことで、経営学用語のひとつです。
顧客情報や未公開の新商品情報とそのノウハウ、生産方法や販売方法、会計情報など企業に経済利益をもたらすような情報を指し、一般的に機密事項として管理されます。
また流出によって企業の損害となるようなものもトレードシークレットと呼ばれます。アメリカはこの分野への意識が浸透しており、その保護を強調している傾向にあるのです。
トレードマネー
トレードマネーとは、プロスポーツにおいて、選手が移籍する際に獲得する側がもとの所属チームなどに対して支払う移籍料のこと。
現在の海外サッカー界では、移籍金や年俸が高騰の一途をたどる傾向にあるため、著名な選手が別のクラブに移籍する際などはその金額に注目が集まります。これは日本の野球界でも同様です。
フェアトレード
フェアトレードとは、先進国の企業が、開発途上国で生産される原料や製品を正当な価格で継続的に購入して、不利とされがちな開発途上国の生産者や労働者の生活水準改善などを目指す「貿易の仕組み」のこと。公平・公正な貿易を意味します。
近年、スーパーやデパート、セレクトショップなどにフェアトレードを詳しく説明するポップや商品が置かれるようになりました。果物やお菓子、コーヒー、お茶、ワインなどの食品パッケージにも記載される場合が多いようです。
交換トレード
トレードとは、売買の取引や貿易、さらに保有権と金銭などを交換すること、また物と物、人と人とを交換することもトレードに含まれます。
プロスポーツ競技の場合、複数のチームがお互いの所属選手の保有権を交換するという意味を持ち、「他球団にトレードする」のように使われます。日本の野球界やサッカー界でもこのトレードが毎年行われるため、注目のニュースとして扱われることも多いです。