行政機関での手続きだけでなく、就職や転職でも必要不可欠となったマイナンバー。私たちの生活にもすっかり身近になったマイナンバー制度ですが、そもそもどのような意味を持つのでしょうか?
ここではその始まりや理由、目的や特徴、メリットやデメリット、マイナポータルやPRキャラクターについて詳しく掘り下げます。
目次
1.マイナンバー制度とは?
マイナンバーとは、外国人を含む日本に住民票を有するすべての人が持つ12桁の番号のことで、原則、個人が一生涯同じ番号を使用します。
特例としてマイナンバーが漏洩し、他者によって不正に用いられる恐れがあると認められる場合を除いて、自由に変更することができないと定められているのです。
マイナンバー制度の正式名称
実は、マイナンバーは通称であり個人番号という正式名称があります。
そして、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成二十五年五月三十一日法律第二十七号)に規定されている法律の通称を「マイナンバー法」もしくは「番号法」といいます。
個人番号とは?
個人番号とは、日本国内のすべての住民に指定・通知されている12桁の番号のこと。番号法に定められた社会保障、税、災害対策分野の事務における手続きに限って利用できます。
個人番号の取得、利用、提供、保管、安全管理には規定が設けられており、番号法で定めるケースを除き、収集や保管は一切禁じられているのです。
法人番号とは?
法人番号とは、株式会社などの法人などに指定される13桁の番号のこと。マイナンバーと異なり原則として公表され、すべての人が自由に利用できます。
法人番号は、「国税庁法人番号公表サイト」を通じて公表されており、「商号又は名称」「本店又は主たる事務所の所在地」「法人番号」の3つの項目に分類されているのです。
マイナンバーカードとは?
マイナンバーカードとはマイナンバーが通知された後、個人の申請によって交付される顔写真入りのプラスチック製カードのこと。このカード1枚でマイナンバーの確認と本人確認ができます。
ICチップの中には、電子証明書(電子的に個人を認証する機能)が搭載されており、民間業者も含めさまざまな用途に利用できるのです。
2.マイナンバー制度はいつ始まった?
ところで皆さんはいつからマイナンバー制度が始まったか覚えていますか?
マイナンバー導入について日本国内で議論が始まったのは、2007年のことです。当時話題になった「消えた年金」問題の発覚も大きく影響し、社会保険を一括管理する手段として個人番号の重要性が注目されるようになったのです。
その後国会で検討が進み2013年にマイナンバー法が成立。2015年10月に日本国内に住民票があるすべての人にマイナンバーの通知が行われたのです。
3.マイナンバー制度が必要になった理由
さて、それではなぜマイナンバー制度が必要になったのでしょうか?
マイナンバー制度が始まる以前は各行政機関において、住民票コードや基礎年金番号、健康保険被保険者番号など、それぞれ異なる番号で個人の情報を管理していたのです。
しかし、幾つもの機関をまたいだ情報の連携で、氏名、住所などの個人の特定に多くの時間と労力を費やしていました。そこで個人の確認や手続きの簡略化を目指すものとして考案されたのがマイナンバー制度だったのです。
4.マイナンバー制度の目的
ここでは、マイナンバー制度の大きな目的を3つに分けて説明します。
- 社会を公正・公平な形に変える
- 利便性を高める
- 行政の効率化
①社会を公正・公平な形に変える
マイナンバー制度によって、日本に住民票を置く人々の所得や、国の行政機関や地方公共団体などのさまざまな行政サービスの受給状況を把握しやすくなるというメリットが生じます。
さらにマイナンバーの使用により、税金などの負担を不当に免れたり不正に給付を受けたりすることを防げるのです。また、生活が極めて困難な人へきめ細かな支援を実施することもできます。
②利便性を高める
従来、申請手続きごとに行政機関への提出書類が多く必要とされ、また申請場所も異なるため決して利便性が良いとはいえませんでした。
マイナンバー制度の導入によって、国の行政機関に提出する書類の削減など行政手続きが簡素化され、国民もその分の負担が軽減します。
また行政機関や地方公共団体が保有する自分の個人情報を確認したり、いろいろなサービスの通知をスムーズに受け取ったりすることができるようになりました。
③行政の効率化
マイナンバーの利用により、国の行政機関や地方公共団体などは個人情報の照合や転記、入力などに要していた時間や労力を大幅に減らすことができます。また各行政機関の連携が進み、作業の重複などの無駄を削減できるようにもなりました。
さらに行政側が膨大な書類をチェックする必要がなくなったことから、事務処理もスムーズになり、同時に国民の手続きにおける時間の短縮化も図れるのです。
5.マイナンバー制度の特徴
それでは、マイナンバー制度の具体的な特徴を見ていきましょう。
マイナンバー制度の利用
マイナンバーは社会保障や税などの法令で定められた手続きのために、国や地方公共団体、勤務先、金融機関、年金・医療保険者などに提供するものと定義されています。
またマイナンバーの提供を受けた側は、法令で定められた目的以外にマイナンバーを使用することは禁じられているのです。
マイナンバーカードのICチップには電子証明書などの機能が搭載されており、さまざまな用途に活用できます。しかし電子証明書などで利用する際、マイナンバーを使用したり提供したりすることはありません。
マイナンバー制度と情報連携
行政機関の各種事務手続きで提出する書類については、専用のネットワークシステムを利用し、異なる行政機関の間でマイナンバーから生成された符号をもとに情報をやり取りします。
また各種手続きを行う際、マイナンバーを申請書などに記入することで、今まで提出を求められる必要があった書類を省略できるようになったのです。
マイナンバー制度と個人情報の管理
マイナンバー制度においては個人情報の管理が徹底されています。
たとえば他人のマイナンバーを不正に手に入れたり、マイナンバーや個人情報が記録されたファイルを他人に不当に提供したりした場合、厳しい罰則が課せられると法律で定められているのです。
さらに法律に規定があるものを除き、マイナンバーを含む個人情報の収集や保管をすることは禁止されています。マイナンバーが適切に管理されているかについては、個人情報保護委員会という第三者機関が監視・監督を行っているのです。
マイナンバーカードは簡単につくれる
マイナンバーカードは簡単に作成できます。
役所の窓口で手続きすると、約3~4週間後に自宅に交付通知が到着するのです。写真はスマートフォンやデジタルカメラで自撮りした写真も使えます。そして申請用のWEBサイトにて必要事項を入力し、顔写真データなどを送信するのです。
マイナンバーカードがあると、携帯電話の契約、銀行口座の開設、確定申告時の身元確認、就職・転職の際に身分証明書を求められるときなどさまざまな状況に対応できます。
6.マイナンバー制度のメリット
ここではマイナンバー制度のメリットについて少し掘り下げてご紹介します。
身分証明
マイナンバーカードは身分を証明できるという役割も持っています。たとえば携帯電話を契約するときや、就職や転職をするときに身分証明書を求められる場合にも使うことができるのです。
さらに銀行口座の開設や確定申告をする際にもマイナンバーを提示することで身元確認が可能になります。
また学生がアルバイトを始める際の身元確認にも有効です。身分証明書としての効力があるため、運転免許証を持っていない人にとって大変便利なカードといえるでしょう。
マイナンバーカードで手軽
マイナンバーカードの表面に本人の顔写真と氏名、住所、生年月日、性別が記載されていることから、本人確認のための身分証明書として利用可能です。
裏面にはマイナンバーが記載されているため、税、社会保障、災害対策の法令で定められた手続きを行う際の番号確認に使用できます。
身分証明書という位置付けなのでお財布に入れておけば、銀行口座の開設や携帯電話の契約、またさまざまな手続きの場面で大いに役立つでしょう。
証明書取得
マイナンバーカードのICチップには電子証明書などの機能が備えられていますが、電子証明書を利用するときにマイナンバー自体は使用されません。そのため、民間事業者などでいろいろなサービスに活用できます。
たとえば、マイナンバーカードの電子証明書で本人認証を行うことで、コンビニで住民票の写しや印鑑登録証明書を取得できたり、確定申告などの行政機関における電子申請などに利用できたりするのです。
7.マイナンバー制度のデメリット、問題点
反対に、マイナンバー制度のデメリットや問題点について詳しく説明していきます。
詐欺など個人情報の悪用
マイナンバーは私たちが生活する上で便利な機能を持つ一方、詐欺など個人情報を悪用されてしまうといった可能性もあります。
行政機関だけでなく、コンビニなどでも住民票の発行が可能になり、これまでより利便性が向上しますが、同時にその個人情報のセキュリティに関する不安も生じてくるのです。
もしかしたら第三者によって、特定の個人になりすまして口座開設や名義の悪用に使われるという可能性も考えられます。マイナンバーの利用普及に危惧される被害をしっかり把握して、未然に防ぐ防衛策を考えておくことが重要でしょう。
有効期限がある
マイナンバーカードには有効期限が決められています。20歳以上であれば「10回目の誕生日」、20歳未満なら「5回目の誕生日」までしか使うことができません。
1日でも期限が切れてしまうと身分証明書としての効力を完全に失うことため、引き続き身分証明書として利用したい場合、改めて更新手続きをしなくてはならないのです。
更新自体は役所で簡単に手続きできます。定期的にマイナンバーカードをチェックして、期限をしっかりと頭に入れておきましょう。
8.マイナンバー制度とマイナポータル
ここではマイナンバー制度に伴って運営が開始された、マイナポータルについて詳しく説明していきましょう。
マイナポータルとは?
マイナポータルとは政府が運営するオンラインサービスで。情報提供ネットワークシステムを通じて、住民情報のやり取りの記録確認や子育てに関する行政手続きなどを実行できるのです。
各種手続きをワンストップで行える上、さらに行政機関からのお知らせの確認も可能。マイナポータルを利用するには、マイナンバーカードとパソコン、ICカードリーダライターあるいはマイナンバーカードに対応したスマートフォンが必要です。
マイナポータルでできること
政府が運営する「マイナポータル」ではどんなことができるのか、紹介しましょう。
お知らせの確認
マイナポータルを利用することで、各行政機関などから配信されるお知らせや通知を受信することができます。また「特定健診」「予防接種」「税関係」「年金など社会保障関係のプッシュ通知」などのサービスが今後予定されているのです。
自分の情報を表示
各行政機関などが保有する、世帯情報や税情報、予防接種情報などの特定の個人情報を随時検索して確認できます。この個人の情報の確認から回答を確認するまでの作業は「自己情報開示」とも呼ばれているのです。
各種やりとりの履歴確認
「やりとり履歴」と呼ばれる、あなたの個人情報を行政機関がやり取りした履歴が確認できます。各審査や手続きなどに伴い、特定の個人情報がどの機関との間にて、いつどのように利用されたのかが見えるのです。
サービス検索
あらかじめ登録することで、マイナポータルから外部サイトへログインできます。また、マイナポータルと連携するウェブサイトの確認も行うことができるのです。
マイナポータルを入り口として、子育てや介護などの自分に合ったサービスを検索できるので便利でしょう。
オンライン申請
マイナポータルを利用すれば、わざわざ役所に行かなくともオンラインからさまざまな申請ができます。たとえば「児童手当の手続き」「保育所の入所申請」「妊娠の届出」「児童扶養手当の現況届」なども申請可能です。
操作履歴の確認
マイナポータルでは、特定の個人情報が市区町村や国の各行政機関でどのようにやり取りされたのか確認できます。また手続きなどに伴い、各行政機関同士における個人情報のやり取りについても閲覧できるのです。
子育てワンストップサービス
子育てワンストップサービスは、マイナポータルの一環のサービスです。オンライン上で下記のようなサービスが利用できます。
- 児童手当の手続き(児童手当の申請や現況届など)
- 保育の手続き(保育園入園の申請など)
- 母子保健の手続き(妊娠届など)
- ひとり親支援の手続き(児童扶養手当や現況届など)
9.マイナンバー制度のPRキャラクター
ここではマイナンバー制度のPRキャラクター「マイキーくん」「マイナちゃん」についてご紹介しましょう。
マイキーくん
マイナンバーカードのICチップの空き領域と公的個人認証(マイキー)を象徴するPRキャラクターが「マイキーくん」で、広報用ロゴマークにも頻繁に登場しています。
マイナンバーカードや公的個人認証(マイキー)により親しみを感じてもらうため、公的個人認証制度の根幹をなす鍵を確実に守る忠犬の姿をイメージし、総務省の職員がデザインしたと発表されています。
この「マイキーくん」は政府の公的個人認証サービスの広報においても統一的に使用されているので、ぜひチェックしてみてください。
マイナちゃん
内閣府によって作成されたマイナンバーPRキャラクターが「マイナちゃん」です。政府のマイナンバーにおける広報や、マイナンバーを利用する地方公共団体などが広報を実施する場合などで使用できるとされています。
目や耳が「1」であることでマイナンバーが「1人に1つ」であることを示しています。また、手に「1」を持つことで、マイナンバーを大切にしてもらいたいというメッセージが込められているそうです。
なお、マイナちゃんの誕生日はマイナンバー法成立日と同じ、5月24日となっています。