PDCAサイクルとは、管理業務や品質管理の手法です。理想的にサイクルを回すための具体的なやり方について説明します。
目次
1.PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは管理業務や品質管理の効率化を目指す手法で、計画から改善までを1サイクルとし、何度もサイクルを回し続けて精度を高めます。実行した後は必ず評価を行い、改善につなげるのです。
PDCAとは?
PDCAとは、下記の頭文字を取ったもので、計画から改善までを1つのサイクルとして行い、管理業務の効率化を目指します。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(評価)
- Action(改善)
品質管理の父といわれるW・エドワーズ・デミング(アメリカ)が提唱したフレームワークで、主に日本で使われているのです。
PDCAにとって重要なこと
PDCAにとって重要なことは、計画を実行した後は必ず、成功しても失敗しても評価を行う点。
計画を実行しただけでは、問題点は改善されません。どのような方法で実行したときに成功または失敗したのか、その結果を評価し続けると目標の数値に近付くのです。
またPDCAは1度で終わらず、何度もサイクルを回すことが重要となります。改善された計画を繰り返し評価すると、業務が改善されていくのです。
似た言葉「OODA」
PDCAと似た言葉のOODAは、下記の頭文字を取ったものです。
- Observe(観察)
- Orient(状況判断、方向づけ)
- Decide(意思決定)
- Act(行動)
目標を達成するための要素を4つの段階に分けて成功に導く方法を示しています。PDCAは計画を立ててから実行しますが、OODAは状況を観察してとりあえず行動してみることから始めるのです。
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2.PDCAサイクルのメリット
またPDCAサイクルを自律的に習慣化すると多数のメリットが生まれます。特に注目されるメリット3つを紹介しましょう。
- 目標を達成する意欲の向上
- どんなことにも対応できる応用力
- 経験から学ぶ力
①目標を達成する意欲の向上
社員はPDCAサイクルにより、下記のような意欲が生まれます。
- 目標を達成するために必要な成果を自主的かつ自律的な活動により出そうとする
- 組織内での役割を明確にして、積極的に日々の業務に携わる
②どんなことにも対応できる応用力
PDCAサイクルを繰り返し行うとPDCAを回す精度が高まります。また何度もサイクルを回していると、経験値もどんどん増えていくのです。
実際の活動により積み上げた経験は新しい事業やプロジェクトに取り組む際、大いに役立つでしょう。そうして過去の経験から得た知識や技術をどんなことにも対応できる応用力が身に付くのです。
③経験から学ぶ力
PDCAサイクルは計画を立てて実行するだけではなく、成功しても失敗しても必ず評価することが重要とされています。
評価をして原因を突き止めて次回の実行に活かすという経験を積むと、今後の自分の行動にフィードバックできるノウハウが学べるのです。そしてこれらの経験から学ぶ力が身に付きます。
3.PDCAサイクルのデメリット
PDCAサイクルはさまざまな業種や業界で使用されていますが、デメリットによりうまく回っていない企業も少なくないのです。特に注目される3つのデメリットを紹介しましょう。
- 改善に時間がかかる
- PDCAサイクルの目的化
- 前例主義が多い
①改善に時間がかかる
PDCAサイクルは、計画、実行、評価の一連を経て改善を行うという流れで、中でも評価の継続が非常に重要とされています。
たとえば改善のアイデアが生まれた時点ですぐに実行すれば、一つの問題がスピーディーに解決するかもしれません。しかしPDCAサイクルは、必ず評価した上で改善に取り組む手法ですので、業種や業界によっては改善に時間がかかり過ぎてしまうのです。
②PDCAサイクルの目的化
PDCAサイクルは、管理業務や品質管理の改善などを行うための手段の1つで、PDCAサイクルを行うそのものは目的になりません。
しかしPDCAサイクルを重要視し過ぎて、計画、実行、評価、改善のプロセスに時間や労力、手間を掛け過ぎてしまう場合があるのです。PDCAサイクルにばかり気を取られ、本来達成すべき目標を見失ってしまうでしょう。
③前例主義が多い
過去の施策や行動を評価し、改善策を生み出すのがPDCAの手法です。過去の活動で経験値を増やすと応用力が身に付くというメリットを持つ一方、それらはすべて過去の実績で新しいアイデアや解決策がまったく生まれないという問題点があります。
つまり過去の前例ばかりを重視し、新しい発想を出しても採用されないという認識が生まれてしまうのです。
4.PDCAサイクルを回すやり方
PDCAサイクルは、下記一連の流れを繰り返す手法です。
- 計画する(Plan)
- 実行に移す(Do)
- 検証する(Check)
- 対策や改善を行う(Action)
それぞれのプロセスの説明とともに、PDCAサイクルの実際のやり方を解説しましょう。
①計画する(Plan)
目標を設定し、目標を達成するための実行計画を立てる際、下記5W2Hの要素をもとに計画案を作成します。
- 誰が(Who)
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのように(How)
- いくらで(How much)
目標数値を示すなど、シンプルで実用性が高い計画にすると、目標を達成するスケジュールが立てやすくなります。
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②実行に移す(Do)
できるだけ計画案どおりに実行します。ただ実行に移すのではなく、次のプロセスである評価を意識して、行動内容を記録しておくことも必要です。進捗度や計画どおりに進んだかどうかだけでなく、計画どおりにいかなかった場合は発生した問題などを記録します。
③検証する(Check)
実行した内容の検証を行います。まずは設定した目標に結果がどのくらい到達したのか、計画案通りに実行できたかをしっかりと評価するのです。
そしてよかった点、悪かった点を洗い出し、悪かった点や、計画どおりに進まなかった場合は、その原因を分析します。数値目標を立てている場合は、検証結果としてまとめましょう。
④対策や改善を行う(Action)
評価で明らかにした検証結果を受け、今後どのような対策や改善を行っていくかを考えます。よかった部分の強化方法、悪かった部分については次に同じようなことが起きた時の対処法など具体的に考えていくのです。
その際、引き続き当初の計画通りに進めるのか、計画を中止または延期するのかなどの選択肢を用意し、決定していきます。
5.効果的なPDCAサイクルにするには
PDCAサイクルはどのようなことに対しても有効です。うまくPDCAサイクルを回すと、効果が大きく変わり、改善のスピードが加速し設定した目標に近付きます。ここでは、効果的なPDCAサイクルにするための方法を紹介しましょう。
計画はより具体的に
目標達成に向けての計画は、内容を具体的にします。計画はPDCAサイクルを効果的に回す際に、最も重要なステップです。
計画があいまいになると当初の目標設定がぶれて、PDCAサイクルの失敗にもつながります。計画を立てる際には誰が見ても分かりやすく、実用性が高いシンプルな内容にしましょう。
実行した内容や課題を記録する
計画を実行したステップでは、活動の内容や課題を記録します。たとえば下記のような内容をできる限り具体的に記録していくのです。
- どのような内容の活動を実行したのか
- そこに至るまでの過程
- 実行によって発生した課題
- 計画通りにいかなかった点
これらの記録やデータを残しておくと、次のステップの評価や分析がうまく進みます。
確認方法は数値をもとにする
計画を立てる際には、目標や行動指数を数値化しておくと、その後の確認作業がはかどります。そして設定した数値をもとに活動の進捗具合、目標がどの程度達成できているのかなどを確認するのです。
数値化が難しい業種や業界もありますが、PDCAサイクルがうまく回っているかを判断する大きなポイントになるため、できるだけ数値化できる目標を定めましょう。
定期的な確認を
定期的に実行した内容の確認作業を行うと、適切な改善策が見出せます。たとえば定期的に進捗状況を確認すると、スケジュールに沿った進行や修正も可能になり大きなミスも未然に防げるのです。そのためには定期的に確認できる仕組みづくりが必要でしょう。
失敗原因の分析
PDCAサイクルをただ回すだけでは、効果的なPDCAサイクルの活用、業務の改善にはなりません。計画や実際の行動において、うまくいかなかった場合にはその原因が明らかになるまで徹底的に追求、分析することが必要です。
サイクルを細分化する必要もあるでしょう。設定目標の再考、課題の見直しなどの検討も考えられます。
改善策の優先度の設定
改善では、評価での検証結果で分かった課題への解決策を検討して改善します。この時、改善策が複数ある場合は、実行項目に優先順位を付けましょう。
それぞれ提案された改善策が、課題へどれほど影響力があるのかをしっかり見極め、優先度の高いものから実行するのです。時間がかかるものを実行した際、サイクルが滞る可能性も考慮しましょう。
継続は力である
PDCAサイクルは1回で終わらせず、目標が達成するまで何度も実行しましょう。1回のサイクルでは気付かなかった問題点が、何度も繰り返して分かってくる場合もあるからです。
また、やりっぱなしあるいは評価しただけで改善をしないなど、サイクル途中でストップしてしまってはいけません。
PDCAサイクルはできる範囲内にとどめる
PDCAサイクルで重要な点は、目標を達成するまで繰り返し行うことですが、できるだけ日々の業務量を考慮し、実現可能な範囲で行いましょう。
計画を立てる、実行した結果を検証し、改善へつなげる、この一連の作業は大変な労力が必要です。PDCAサイクルをストップさせず継続するためにも、日常業務に支障がでないよう進めるよう考えましょう。
次のPDCAサイクルに活かすために
次のPDCAサイクルに活かすためにも、評価をしたままにせず、問題の提起や反省点、良かった部分、悪かった部分などを振り返り、どう改善すべきかを考えましょう。次の計画につなげるための仕組み作りが大切なのです。
6.PDCAサイクルが回らない理由
PDCAサイクルがうまく回らない原因はさまざまなケースが考えられます。計画が具体的でない、計画の策定に時間がかかり過ぎる、曖昧なチェック基準、改善に重視し過ぎるなど、失敗につながりやすい原因を紹介しましょう。
- 計画が具体的ではない
- 計画を立てる時間がかかりすぎている
- 抽象的で曖昧なチェック基準
- 改善を重視しすぎている
①計画が具体的ではない
PDCAがうまく回らない理由として考えられるのは、PDCAの基礎となる計画がしっかりとイメージできていない、具体的ではないという点です。
計画があいまいだと、その後の実行が完遂できなくなり、評価、改善といった作業がまったく意味のないものになります。PDCAの成果は、目標達成までの計画をどう立てたかが左右するといっても過言ではありません。
②計画を立てる時間がかかりすぎている
計画を入念にしすぎた結果、実行に移せなくなる失敗のケースです。「現状の把握」「分析を行ってから」と時間をかけ過ぎた計画の場合、実行する際、すでに現状とはかけ離れている場合も考えられます。
日常は日々変化するもの。速やかに計画を立てたらすぐ実行に移しましょう。完璧な計画でも実行しなければ意味がありません。
③抽象的で曖昧なチェック基準
評価における失敗要因として挙げられるのは、評価の基準が抽象的で曖昧である点です。数値化した目標設定など、客観的な視点による行動の評価がカギとなります。それによって、次の改善がより具体的になり目標達成へとつながるのです。
④改善を重視しすぎている
PDCAサイクルですぐにも成果を出したいと焦るあまり、各ステップでやるべきことをおろそかにし、先に進みがちになってしまう場合もあるでしょう。とにかく行動することが第一と考えている人によく見られる傾向かもしれません。
改善を重視しすぎて、当初の計画を何度も変更したり、適当な評価ですぐに改善に進んだり、これではPDCAサイクルをしっかり回せないので注意しましょう。
7.PDCAサイクルの応用
PDCAサイクルは仕事だけではなく自分のキャリアッププランなどにも活用できますが、一体どうすればよいのでしょうか。PDCAサイクルの応用方法を紹介します。
PDCAサイクルはキャリアプランに役立つ
PDCAサイクルは、キャリアプランに役立ちます。たとえば「現状の自分に不足しているスキルを明確にしてそれを補う目標」と「計画」を立てたとしましょう。
計画に沿って活動し、評価し、実行して明確になった事実をしっかりと認識して改善を検討します。それにより現在の自分を客観的に評価し、改善できるため自己の成長となりキャリアアップにつながるのです。