予実管理とは? 目的ややり方、予算管理との違いをわかりやすく

予実管理とは、予算や実績を管理することです。予実管理を行うことで目標と現状の差異が把握でき、その原因を洗い出すことで適切な改善策が検討でき、効率的に目標達成が目指せるようになります。

今回は予実管理について、その目的や予実管理のやり方、成功のポイントや効果的なツール・システムなどを詳しくご紹介します。

1.予実管理とは?

予実管理とは、プロジェクトや部門ごとの予算と実績を管理することです。管理会計業務の一つであり、「予算実績管理」とも呼ばれます。予実管理の目的は、年初や月初に立てた計画や目標に対して、実績が計画通りに推移しているかを管理することです。

適切な予実管理を行うことで、予算と実績のずれに早期に気づけ、迅速に細かい軌道修正が可能となります。感覚的ではない、数字を根拠とした合理的な経営戦略の立案ができ、効率的な経営につながります。

予算管理との違い

予算管理は、目標数値に対する予算を達成するための管理です。目標数値(予算)を設定して経営管理するマネジメントであり予実管理のプロセスの一つで、予実管理と同義として扱われることもあるものの、厳密には異なります。

また、どちらも目標達成のために予算と実績を比較分析することです。しかし予実管理は1週間・1か月ごとなど短期間のサイクルで、予算管理は3か月ごとなど中期的なサイクルで取り組むもの。つまり、予実管理は予算管理を確実なものにするためのプロセスといえます。

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2.予実管理の目的|なぜ必要なのか?

予実管理の大きな目的は、最終的な経営目標を達成するためです。ここでは、主な3つの目的から予実管理の必要性をみていきます。

  1. 目標達成の進捗を可視化するため
  2. 安定した経営を行うため
  3. 経営の将来予測を明らかにするため

①目標達成の進捗を可視化するため

最終的な経営目標を達成するために、プロジェクトや部門ごとに目標が細分化されています。予実管理を行うことで目標達成に向けた進捗が見える化され、予算に対してどれだけ実績を上げているのかが分析でき、改善のためのアクションが洗い出せるようになります。

また特定の部門で赤字が出ている、売上は立っているがそれ以上にコストがかかっているなど、現状を細かく把握することも可能です。

②安定した経営を行うため

予実管理から明らかになった問題や課題に対して改善のためのアクションが策定でき、迅速に軌道修正ができるようになります。また、課題だけでなく、目標に対して良い実績が得られたときの要因も分析できます。良かった点は今後さらなる向上を目指すことで、より高い実績につなげられ、効率的に利益が創出できるでしょう。

対して、予実管理を行わないと課題が放置され、段階的に経営状況を悪化させてしまう恐れがあります。課題に気づけないままの状態が続けば、気づいたら修正できないレベルの経営悪化に陥っている可能性もあるでしょう。

予実管理を行うことで現状がわかり、数字をもとにした分析によって感覚的ではない合理的な判断が下せ、安定した経営にも期待できます。

③経営の将来予測を明らかにするため

上場企業では業績予測の開示が求められるため、予算実績比較表のような証券取引所に提出しなければならない書類もあります。経営の将来予測を算出するには、月次の予実管理が欠かせません。

また、中小企業では一定の規模になると金融機関などから融資を受けるケースも多いでしょう。その際、企業の返済能力を判断するため事業計画書の提出が求められます。作成した事業計画書をもとに計画通りに経営ができているかも重視されるため、事業計画通りの経営を行うためにも予実管理によって経営をコントロールすることが必要です。

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3.予実管理のやり方

予実管理は、下記手順で実施します。手順ごとに、予実管理のやり方を詳しく解説しましょう。

  1. 予算目標と予算の設定
  2. KPIとスケジュールを決める
  3. 月次決算を行う
  4. 予算と実績を比較・分析する
  5. 課題への対策を検討・実行する

①予算目標と予算の設定

まずは指針となる目標を設定します。企業の成長を目指しつつ、達成可能な現実的なストレッチ目標を設定することがポイントです。自社や業界全体の実績、トレンドなどを外部要因もふまえて無理のない目標かをしっかりと確認しましょう。

次に、過去の実績を参考に予算を設定します。繁忙期や閑散期がある業種は、その点もふまえて現実的な予算を検討することが必要です。自社のリソース・キャパに見合った予算を設定しましょう。

②KPIとスケジュールを決める

予算目標と予算が設定できたら、予算目標を実現するための具体的なアクションとなるKPIといつまでに達成するかのスケジュールを決めましょう。

全体の目標だけを見ていると、細部の予算管理や細かい課題が把握できなくなってしまいます。そのため、①で設定した全体の予算目標をふまえ、各部門やプロジェクトごとの予算目標に落とし込んでいくことが必要です。KPIを設定すると目標達成の進捗が可視化され、細かい軌道修正が行えます。

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③月次決算を行う

予実管理は、月毎に行うことがポイントです。月次決算として、予実管理を定期的に行いましょう。月次決算といっても、月の売上・仕入、費用を明らかにするレベルで問題ありません。ただし、保険料や減価償却費など、1年分まとめて計上する費用は月毎に配分する必要があります。

定期的な数値を把握できると、差異が大きくなる前に課題に気づけ、ビジネスの軌道修正が容易となります。

④予算と実績を比較・分析する

月の実績がまとまったら「売上」「売上原価」「販管費」「営業外損益」の区分ごとに、予算と実績を比較します。この時、売上額ではなく、販管費を差し引いた営業利益に着目することが重要です。なぜなら、売上が高くても、コストがかかっていると赤字になってしまうからです。

大きな差異があれば原因を分析し、原因が一時的なものなのか、長期的に影響をおよぼすものか、見極めましょう。あわせて良い差異にも着目し、今後のさらなる向上を目指すことがポイントです。

⑤課題への対策を検討・実行する

予実管理は課題に対する対策を実行するところまで含まれるため、比較分析で課題を洗い出したら、対策を検討します。すべての課題に一気に取り組むのは、リソース的にも現実的ではありません。そのため、課題が多い場合には優先順位を決め、企業への影響度が高い課題から着手しましょう。

課題を放置したままだと差異が拡大し続け、取り返しがつかないことになってしまう可能性があります。PDCAサイクルを意識し、対策を実行した後はその結果を次月に検証して改善し続けていくことが重要です。

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4.予実管理を成功させるポイント

予実管理を成功させるためにも、以下のポイントを押さえましょう。

適切な予算を設定する

予算は高すぎても低すぎても適切とはいえません。というのも、達成が現実的でない、あるいは簡単すぎてもモチベーションや向上意欲が低下してしまうからです。予算目標は努力すれば手に届くラインで設定することがポイント。適度に高いことで、モチベーションを高めて目標達成に取り組めるようになります。

リアルタイムで行う

時間が経過するにつれて予算と実績も変動してしまうため、予実管理はなるべくリアルタイムで行うことがポイントです。差異の拡大に伴い問題が大きくなったり、別の問題と絡み合って複雑化したりする恐れもあります。

早い段階で課題を発見するためにも、まとめて分析するのではなく、リアルタイムで分析・検証することで、分析結果の精度も高まります。

短期的かつ定期的に課題を発見・対策する

差異ができるだけ小さいうちに発見できれば、それだけ軌道修正しやすくなります。反対に、早い段階で課題を見つけて対策できないと差異が拡大し続け、改善にも時間がかかってしまう恐れがあります。

予実管理は月次で行うのが一般的であるものの、可能であれば週ごとで実施できるとよいでしょう。こまめに現状分析できるほど、課題が小さいうちに発見でき、対策もしやすくなります。

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5.予実管理の失敗例

失敗例を参考に、予実管理の注意点を押さえましょう。

細かい差異に着目しすぎる

細かい差異にばかり着目していると、予実管理の本質を見失ってしまいかねません。予実管理の目的は自社の現状を把握し、課題を改善して経営目標の達成につなげることです。差異の確認はあくまでその手段であることを押さえ、差異から課題を見つけて対策するところまでしっかりと取り組みましょう。

予算目標にこだわりすぎる

予算目標を達成することは重要でしょう。しかしそこにこだわりすぎると売上を水増しして報告するなど、不正行為につながる恐れがあります。予算を厳しく設定することで従業員の負担を増やしてしまい、モチベーションが低下した結果、目標を達成できない悪循環に陥ってしまうリスクもあるでしょう。

そのため予算目標にこだわりすぎないだけでなく、そもそも予算を適切に設定することも重要です。設定した予算の達成が難しいと感じたら、臨機応変に見直しましょう。

正確な情報を収集できていない

実績に関する情報が正確でなければ、分析結果にも誤りが生じます。システムやツールを導入したばかりのうちは、正確な情報が入力されない、反映されないといったミスも起こりやすいでしょう。予実管理の担当者には十分な研修を行う、システムのテスト稼働を行うなど、事前準備をしっかり行うことが大切です。

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6.予実管理表のつくり方

予実管理表とは、分析に必要な情報を一元化できるツールです。予実管理表を作成することで、予算や期に応じた予実管理が行えます。

予実管理表の作り方には、エクセルまたはシステムで作成する2パターンがあります。自社で運用しやすい独自のフォーマットを作成したい場合には、エクセルがおすすめです。システムなら予実管理表の作成だけでなく、データの収集やグラフ出力などデータの収集・分析ができる機能も備えているため、予実管理の効率化が図れます。

予実管理表に入れる項目

予実管理表をエクセルなどで独自に作成する場合に入れ込む項目例は、以下のとおりです。

横軸 縦軸
・当月発生
・当月予算
・差額(予算比)
・前年同月
・差額(前年比)
・売上(売上原価)
・売上純利益
・経費(給料手当、法定福利費、法定厚生、接待交際費、通信費、支払い手数料など)
・販売費計
・営業利益
・営業外収益
・経常利益

分析に必要な項目を入れ込み、管理しやすいフォーマットに整えましょう。

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7.予実管理を効率化するツール・システム

あわせて、予実管理を効率化するツール・システムもご紹介します。

Excel

Excelは導入コストを抑えられ、カスタマイズ性の高いツールです。Excelのメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
・馴染みのツールで、管理しやすい
・導入コストを抑えられる
・自由にカスタマイズできる
・ヒューマンエラーが起こりやすい
・扱うデータ容量が増えると動作が重くなってしまう
・複数人で同時編集できない

扱うデータ量がそこまで大きくなく、まずは基本的な予実管理から始めたいという場合にはExcelがおすすめです。Web上で多種多様なテンプレートがダウンロードできるため、自社にあったテンプレートを用いて予実管理が行えます。

Googleスプレッドシート

Googleスプレッドシートは、Excelと類似する表計算ソフトです。Excelとの大きな違いは、クラウドで管理できること。オンラインで複数人が同時編集できるため、リアルタイムなデータの反映が可能であり、Excelのデメリットが解消されるツールといえます。

ただし関数や分析は手動になるため効率面で劣ってしまう、かつヒューマンエラーが起こる可能性がある点に注意が必要です。

予実管理ツール

事業規模が大きく、扱うデータが多い場合は予実管理ツール・システムの活用が効果的です。予実管理ツールのメリット・デメリットは、以下のとおりです。

メリット デメリット
・データが一元管理できる
・他システムと連携できる
・データの収集を自動化できる
・大容量データも処理できる
・導入、ランニングコストがかかる
・操作を覚えるまでに時間がかかる
・システムに不具合が生じる可能性がある

予実管理ツールは自動化によるヒューマンエラーを防ぎ、データ収集の自動化など効率面でメリットがあります。クラウドタイプやSaaSなど、形態もさまざま。予実管理ができる代表的なツールには、BIツールやSFAツールがあります。

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BIツール

BIツールは、売上をはじめ、企業が保有するあらゆるデータを見える化・分析できるツールです。データを用いた迅速かつ高精度な意思決定を行うために活用されています。

企業が持つ膨大なデータから必要なデータを引き出し、予実管理の分析に活用することが可能です。ダッシュボード機能ではリアルタイムにデータが更新され、かつグラフや表に反映されるため、短期的な予実管理に最適なツールといえます。

SFAツール

SFAツールとは、営業支援システムです。売上を中心とした営業と関連性の高いデータを扱うため、予実管理と相性の良いシステムです。

SFAツールでは予実管理に必要な売上データを蓄積・管理できるだけでなく、営業メンバーの行動管理や商談の進捗管理も行え、営業進捗から売上の見通しを立てるのにも役立ちます。また、営業データと連携することで、具体的な実績を把握・管理でき、高精度な分析を可能とします。