予算管理とは? 目的、やり方、予実管理との違いを簡単に

予算管理とは、企業全体の利益目標を達成するために予算計画を策定し、その進捗と実績を管理することです。決められた期間内で目標を達成するには、適切な予算管理が欠かせません。

今回は予算管理について、その目的や扱う予算の種類、予算管理のやり方やポイントなどを詳しくい解説します。

1.予算管理とは?

予算管理とは、期間ごとに設定した数値目標を達成するために予算計画を立て、管理することです。設定した目標にあわせて予算を算出し、計画の達成状況や未達の場合の原因分析、状況に応じた目標や予算計画の変更などを行います。

企業活動の目的は、利益を出すことです。利益目標達成のため期初に予算計画を立て、期中や期末に計画との差分や実績、目標の達成度を確認していきます。予算管理は、企業の経営状況を正しく把握するために重要な管理業務の一つです。

予算とは?

予算にはさまざまな種類があり、企業全体の予算を「総合予算」といいます。その下層には、「損益予算」「資金予算」「資本予算」の主に3種類の予算があります。

企業の利益目標に大きくかかわるのは、損益予算です。損益予算のなかには、売上予算や原価予算、利益予算とさまざまな種類の予算があります。なお、資金予算とは資金繰りに関する予算であり、資本予算とは資金調達などの計画、将来的な収益に影響する予算です。

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2.予算管理の目的

予算管理の大きな目的は、利益目標を達成することです。一般的に企業では利益目標やビジョンを達成するために経営計画を策定します。

経営計画は、短期・中期・長期の3つを立てることが多いでしょう。経営計画を実行するにあたって、ヒト・モノ・カネなどの経営資源の分配・管理計画を立てることが必要です。うち、予算管理はカネの分配・管理にあたります。

予算管理が行われていれば予算計画に沿った業務計画の作成や目標設定ができ、計画実行後の実績と予算を比較し、目標に対する進捗も把握できます。

つまり、予算管理は経営戦略や経営計画の実行のベースとなるものであり、適切な予算管理によって経営状態予算の達成状況が把握できることで効率的に目標達成に取り組めるようになるのです。

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3.予算管理と予実管理、経営管理との違い

予算管理と類似する管理業務に予実管理と経営管理があります。予算管理との違いを詳しくみていきます。

予実管理との違い

どちらも目標達成を目的とした管理業務で、その目的やプロセスに違いがあります。

予算管理は「予算の策定」、予実管理は「予算と実績の分析・評価」が目的です。

予算管理は経営資源の一つであるカネの分配・管理機能をもち、経営計画にもとづいて予算計画を立てます。対して、予実管理は予算と実績の差異を分析し、問題点や課題点を洗い出す役割を持ちます。

予算管理でも実績と比較してその後の目標や予算を変更するものの、予実管理はそこをメインの機能とする点が違いです。なお、予実管理は予算管理のプロセスの一つであることからも、予算管理と予実管理は同じ意味合いで扱われることもあります。

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経営管理との違い

経営管理とは、ヒト・モノ・カネなどすべての経営資源を管理することです。予算管理は経営管理の一環であり、予算管理のほか人事管理や労務管理、生産管理などがあります。

経営管理の目的も、組織の目標を達成するためです。経営管理では目標達成に必要な経営資源の分配・管理を幅広い視点からとらえ、計画を策定していきます。

予算管理はそのなかでもカネの分配・管理をメイン機能とし、資金面から組織の目標達成をサポートする役割を持つ点が特徴です。

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4.予算管理で取り扱う予算の種類

予算管理で取り扱う予算は、主に下記4種類です。それぞれの予算の概要や役割をご紹介します。

  1. 売上予算
  2. 原価予算
  3. 経費予算
  4. 利益予算

①売上予算

売上予算は、売上目標となる数値です。事業で得られる収入の総計であり、売上目標と同義となります。売上予算の算出方法は、主に下記2パターンです。

  • 過去の実績をもとに算出
  • 将来の目標をもとに算出

製品やサービスを販売する企業であれば、「目標販売数×単価」で算出するケースもあります。売上予算は市場動向や為替に左右されることもあるため、定期的な見直しが必要です。

②原価予算

製品やサービスを製造・開発するうえで必要となる原材料に関する予算です。売上予算をベースに仕入れや製造・開発に必要な予算を算出します。

わかりやすい例が製造業です。製造業では、売上予算を達成するためにどれくらい製品を製造するかを計画し、そこから必要となる原材料や仕入れなどにかかる費用を算出します。

原価予算は売上予算や原材料価格によって変動するものであり、社内の目標設定や市場動向にあわせて定期的な見直しと調整が必要です。

③経費予算

事業を営む上で発生する費用であり、販管費や一般管理費が経費予算にあたります。代表的な経費には人件費や交通費、オフィスの賃料や光熱費、広告宣伝費などがあります。

経費は売上状況によって変動するものであり、市場動向など外部の影響はあまり受けないため管理しやすい予算です。

経費は削減するほど支出が減り、利益が増えます。しかし、ただ減らせばよいわけではない点に要注意。たとえば、宣伝にかかる経費を増やしたことで新規顧客を獲得できるなど、利益にプラスに働くこともあります。

経費予算は売上や資金状況、目標などを考慮しつつ、適正額を編成することがポイントです。

④利益予算

利益予算は、事業から得られる利益の目標値となる数値です。売上予算から経費予算や原価予算を差し引いて算出します。

売上予算、原価予算、経費予算の目標値を達成できれば、必然的に利益予算も達成できます。通常、利益を出すには売上を大きくすることが必要なものの、原価や経費を目標以上に削減できれば、売上予算が未達でも利益予算を達成する場合もあります。

利益予算を達成するには、売上、経費、原価それぞれの課題点・問題点を洗い出し対策することが必要です。

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5.予算管理のやり方

予算管理のプロセスは、PDCAサイクルに当てはめられます。下記で、予算管理のやりを手順ごとに解説していきます。

予算編成(Plan)

まずは、経営目標に対して必要な予算や経営資源を決定しましょう。予算編成は予算管理の中でも最も重要なステップであり、以下の流れで実施します。

  • 利益予算の設定
  • 人件費や固定費などの算出
  • 売上予算、原価予算の設定
  • 販管費、一般管理費を含む経費予算の設定
  • 各種予算の最終調整

予算の決定方法には「トップダウン型」「ボトムアップ型」の2種類があります。日本企業では、それぞれの方法で予算を算出し、擦り合わせて全体の予算計画を立てるケースが多くみられます。

トップダウン型

トップダウン型は、経営陣の判断で予算を決定する方法です。経営陣の決めた予算計画を企業全体で予算管理していきます。トップダウン型の予算編成は迅速な意思決定のもと、経営実態に沿った予算編成が可能です。

しかし、現場のリソースや業務内容などの実態が反映されにくく、計画内容によっては現場負担が大きくなるリスクがあります。

ボトムアップ型

ボトムアップ型は、各部門の予算計画に基づいて企業全体の予算を決定する方法です。各部門の担当者が現場のリソースや状況を考慮して予算計画を立てられるため、現場が予算目標を意識しやすく、目標達成へのモチベーションを高めやすい点が特徴です。

しかし、予算計画を立てるのに時間がかかり、内容によっては企業の利益目標と連動しなくなってしまう恐れがあります。そうならないためにも、経営目標との連動や各部門の予算計画の適正をしっかりと確認することが必要です。

計画の実行(Do)

次に、予算計画に基づいて事業を進めていきます。週次、月次、四半期ごとの予算目標を設定し、都度進捗を確認しましょう。

予算管理で主に扱うのは、売上予算・原価予算・経費予算・利益予算の4つです。それぞれの予算を日々管理し、定期的に確認することで計画とのズレが大きくなる前に軌道修正できるようになります。

予算実績の分析(Check)

日々の管理とは別で、月次や四半期ごとに計画値と実績値の差異を分析します。最終的な期末のズレを防止するためのステップであり、予実管理と同じ役割です。

期初に立てた計画との差分を予算差異分析により洗い出し、予算と実績に差異があればその原因を特定します。差異が大きいと予算編成に問題がある可能性が高いため、Planのステップに戻って計画値の見直しが必要です。

差異の良し悪しを一律で判断できるよう、あらかじめ自社で差異範囲を決めておくとよいでしょう。

予算管理の改善(Action)

予算と実績に差異があった場合に、その原因を特定して改善を進めていきます。改善策は、原因に応じて以下のようにさまざまです。

  • 売上予算の上方修正
  • 資金調達の実施
  • マーケティング費用の削減
  • 利益が出ていない部門の人員や予算の調整
  • 新規事業の撤退や継続の判断

数値にもとづいた合理的な判断ができるため、経営の最適化にもつながります。

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6.予算管理のポイント

効率的に予算管理を行うためのポイントもご紹介します。

初期の予算計画にこだわりすぎない

予算は経営状況を把握するための重要な指標です。ビジネス状況はさまざまな内的・外的要因に影響を受けるものであるのと同様に、予算もこうした要因に影響されることがあり、状況によっては初期の予算計画の達成が難しい場合もあります。

そうした状況下で、初期の予算計画を無理に達成しようと現場に負担をかけるのは、ベストとはいえません。

初期の予算計画はあくまでその時のビジネス状況をベースに策定したものであるため、状況に応じて予算計画を柔軟に見直すこともポイントです。

月次の予算編成も行う

予算計画は短期・中期・長期の経営計画に沿って策定するものの、月次単位での予算編成も行うことがポイントです。

月次の予算編成は、経営計画達成のためのKPIとしても機能します。月次で予算編成を行うと差異分析もしやすく、目標達成までに生じるズレを修正しやすくなります。月次の予算達成が最終的に年次の予算達成につながるイメージで予算を編成してみましょう。

部門間で連携する

一般的に予算管理を行うのは経営陣や経理、財務部門ですが、予算管理を担当者部門だけで完結させないこともポイントです。予算管理は、実際のビジネス状況と連動して行うことで精度が高まります。

とくに、予算編成時は無理のない予算計画を立てるためにも各部門との連携が重要です。企業全体の予算だけに着目せず、各部門のニーズやリソースも考慮した上で企業の利益目標とのバランスが取れた予算編成を行いましょう。

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7.予算管理の注意点

予算管理を行う上では、以下のポイントに注意しましょう。

予算管理が目的にならないようにする

予算管理の目的は、企業の利益目標を達成することです。しかし、予算管理は必要な作業が多く、取り組んでいるうちに管理すること自体が目的になってしまうことがあります。

管理が目的になると予算と実績にズレが生じていることが問題と認識され、予算どおりの実績を出すことを重視する経営になってしまいます。

重要なのはズレが生じている原因であり、予算は状況に応じて適宜修正しながら、企業の利益創出につながる予算管理を行うことが重要です。

目標値を算出した根拠を明確にする

目標値は根拠をもとに設定するものです。なぜその目標値なのかを現場に説明できるよう、明確にする必要があります。とくに、トップダウンでの予算編成は各部門の目標値が達成可能であるか、現場への負担が大きくないかを確認することが重要です。

目標値は低すぎても高すぎても従業員のモチベーションを下げてしまうため、明確な根拠をもとに適正値を設定しましょう。

目標の粒度や外部要因、季節性に留意する

予算目標を細かく設定しすぎてしまうと管理が煩雑となってしまいます。管理に工数をかけすぎてしまう状況は望ましくないため、細分化しすぎないよう粒度に注意しましょう。

また、過去の実績を参考に予算目標を設定する場合は、参考にする年の外部要因についても確認することが必要です。事業柄、季節に応じて売上や原価が上下する場合は、その影響もふまえて目標を設定しましょう。

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8.予算管理システムとは?

予算管理は扱うデータも多く、予算編成や実績の比較分析などで収集・集計すべき情報も多岐にわたります。効率的かつ高精度な予算管理を行うには、予算管理システムの導入が効果的です。

予算管理システムなら、予算編成から予算計画の進捗確認、分析データの集計や分析に自動化などをシステム上で一貫して行えます。組織内でのデータ共有もスムーズに行えるため、部門間での連携力が上がり、組織で一体的に予算管理に取り組めるようになるでしょう。さらに、販売管理システムやSFA、BIツールなどと連携すれば、必要なデータを余すことなく活用し、精度の高い予算管理が行えます。

機能とできること

予算管理システムでは、以下のような機能から予算管理で行う一連の作業をシステム上で一貫して行えます。下記は、予算管理システムの基本的な機能・できることです。

  • 各拠点のデータ収集、集計・加工
  • データの自動集計
  • 予算計画、予算編成
  • 予算管理のステータス管理
  • 予実比較、差異分析
  • 予算と実績に発生した差異の原因分析
  • 業績評価、業績レポーティング
  • 目標達成度のフィードバック
  • 予算編成や利益予測などのシミュレーション
  • データ共有
  • SFAやBIツールなどの外部システムとの連携

システムによって、Excelと近似した操作性やインターフェースを備えているものもあります。データ収集や分析など手間のかかる作業が自動化でき、ヒューマンエラーのリスクや人的負担の軽減に役立ちます。

導入メリット

予実管理システムを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

予算管理の効率化

予算管理は行う作業も多く、Excelなどの表計算ソフトで行う場合はデータ入力や集計など工数もかかります。予算管理システムならデータ集計や分析など、作業の自動化が可能です。

各拠点のデータもシステム上に集約して統合できるため、分析に必要な数値の算出や予算編成など、予算管理におけるあらゆる作業が効率化できます。さらに、担当者の負担やヒューマンエラーも軽減され、予算管理の正確性と精度も高めてくれます。

高精度な予算編成

予算編成は予算管理のなかでも重要な作業であり、予算管理のベースとなるものです。予算管理システムなら蓄積した過去のデータや各部門の予算目標など、予算編成に必要なあらゆるデータを一元管理します。

システムが複数の予算シミュレーションを作成してくれたり、手軽に予算の再編成ができたりと、差異分析の結果に応じて柔軟に予算を見直すことも可能です。

従業員のモチベーションアップ

予算管理システムでは、目標達成の進捗や達成率が可視化されます。進捗や達成率がいつでも把握できることで従業員もやるべきことが明確になり、モチベーションを高めて目標達成に取り組めるようになるでしょう。

モチベーションが高まると生産性が向上し、効率的に目標達成につなげられます。