営業職とは、客に物品やサービスなどの購入を促して、売買契約を結ぶ職業のこと。ここでは営業職の役割や仕事内容について説明します。
1.営業職とは?
営業職とは客に自社の物品やサービス、情報などの購入を促して売買契約を結ぶ職業のこと。営業職を担う人は、一般的に「営業」「営業マン」「セールスマン」と称され、業界の分野によって仕事内容は異なります。
営業の役割
営業の役割を簡潔に表すと、「売上をつくり出し、利益を出すこと」。また自社の物品やサービスの魅力を十分に客先(相手先)に伝え、自社と客の架け橋になったり、客が抱える課題を解決に導いたりします。
企業においての立ち位置
営業職は企業の代表として客先に出向くため、企業の顔としての役割もあります。また営業職は業務の特質性上、実力主義の世界とも表現されるのです。
結果を残すことにより昇進や昇給が他の職務よりも見込みやすいという特徴を持つため、モチベーションを感じやすいというメリットがあると考えられています。
2.営業の流れ
営業職が営業をかける際の流れは概ねに決まっており、一般的に、同じ流れを繰り返す形で営業します。つまりアプローチ手法に変化があっても、本質的にはあまり変わらないとされているのです。ここでは、営業の流れを具体的に見ていきましょう。
- 情報収集
- アポ取り
- 提案・見積もり
- 成約
- 納品・提供
- アフターフォロー
①情報収集
営業のスタートは情報収集からです。たとえば「営業先が求めるニーズは今何なのか」「抱えている課題は何だろうか」というような問題に対して、必要な情報を集めていきます。またアポイントを取るための情報についても収集するのです。
②アポ取り
新規の客に対して営業をかける場合、電話やメールを使ってアポイントを取ったり、いわゆる飛び込み営業でアポなしで訪問したりします。近年、webサイトの問い合わせフォームなどを通してアポイントを取る手法も増えました。
③提案・見積もり
アポイントが取れた後は営業先に出向き、事前に準備した資料を元に客に提案し、見積もりを提示します。その際、ただ提案するだけでなく、客の課題や要望をしっかりとヒアリングすることも必要となるのです。
④成約
営業先の客が提案した内容に納得し、見積もり金額に了承すれば契約成立となります。一方でどんなに上手に提案したとしても、ここで了承をもらえない場合は失注となります。訪問したときに客の感触がどれだけ良くても、契約成立までは安心できません。
⑤納品・提供
契約を交わした内容にもとづき、物品やサービスを客に納品します。その際、受注と発注に関する処理を営業マンが行うケースもあれば、営業事務担当が処理するケースもあるのです。会社のやり方に応じて対応しましょう。
⑥アフターフォロー
たとえば、「商品に何か不都合はなかったか?」「こうしたらさらに良くなるのでは?」といった確認やさらなる提案は、継続して成約するための大切な要素です。またさらなるニーズを聞き出すチャンスにもなります。
3.営業職の仕事内容
営業職の主な業務は、自社の物品やサービスの販売ですがそれだけではありません。販売に関係する作業全般も含まれ、販売はもちろん企画や情報収集、接待やアフターサービスといった要素を客に求められる場合もあるのです。
販売促進・調査
販売活動を効果的に行っていくため、市場調査や各種広告も出すケースもあります。これらは客の購買意欲を高めて商品を購入させるために行う活動で、一般的に「セールスプロモーション」「販促」と称されています。
また他社の商品について掘り下げて調べたり、市場でどんなものが流行っているのかなどを市場調査で把握したりするのです。
顧客の開拓
営業による新規顧客の開拓手段としては、下記3通りがあります。
- 見込み客(ターゲット)へ営業をかけて積極的に売り込む方法
- 広告を出して客(ターゲット)からの反応を待つ方法
- ①と②の両方を併用する方法
売り込む相手がどのような客層か、競合する他社商品(サービス)はどんなものか、あるいは継続した受注をもらえるかなどを考慮して新規顧客を開拓していくのです。
商品の売り込み
さまざまなプレゼンテーションを行って、潜在顧客に商品を購入してもらうように促します。まずは顧客との接点を明確にし、商品を認知してもらい、より効果を見込めるプレゼンテーションを実施していくのです。
プレゼンテーションは、一方的なものではなく、客の要望を汲み取るような方向にします。
予算管理・スケジュール管理
予算管理とは、当初の予算目標と実績からの達成度合いを考察する手法の一つです。
営業には達成すべき予算が割り振られます。そこで掲げた目標予算に対する現在の進捗度などをモニタリングして共有したり、予算達成に向けた最適なスケジュールを組み立てていったりするのです。
契約の締結
法務や財務、総務などといった他部門と協力して、契約書を作成します。その際は法律の側面から問題は発生していないか、コスト面から問題は発生していないかといった事項をチェックするとよいでしょう。
既存顧客のケア
営業活動は客に物品やサービスを購入してもらうことがゴールではありません。その後のリピート購入やコメント(フィードバック)を得ることも重要な役割となります。
営業職の特徴は、客と接する機会の多さ。そのため、アフターフォローなどの際、他部署の担当者に引き継ぐより、そのまま営業職が対応したほうが効率的だといえます。
製品開発部門と顧客との橋渡し
客とのコミュニケーションで得られる情報には、物品やサービスの問題点や新たなニーズなど有益な情報が含まれています。
そこで営業職が、客とコミュニケーションを取って、購入後の客の活用方法をしっかりと把握し、満足しているかどうかを明確にして、製品開発部門と客との橋渡しになる必要があるのです。
4.営業職に求められるスキル
営業職に求められる多彩なスキルについて、説明します。
- ヒアリング力
- 提案力
- プレゼンテーション力
- 理解力
- コミュニケーション力
- 交渉力
- 柔軟な対応力
①ヒアリング力
客から課題やニーズをヒアリングすると、自社の物品やサービスを購入してもらえる可能性が高まります。また話を聴くスキルが高ければ高いほど、客から多様な悩みや課題を引き出せるだけでなく、多くの信頼を得られるのです。
②提案力
客に物品やサービスの購入を促す際、ただ商品の特徴や魅力を相手に伝えるだけでなく、相手にとってどのような使い道が有効的なのかなど、具体的な使用イメージの提案も重要です。
③プレゼンテーション力
客のニーズに結び付けて、自社の物品やサービスのメリットを的確に顧客に伝えるというプレゼンテーション力も必要になります。自社商品の魅力を最大限にアピールできれば、契約への道もぐっと近くなるでしょう。
④理解力
自社の物品やサービスを売り込むのですから、当然、商品やサービスへの深い理解が必要です。さらに客自身についての理解も欠かせません。2つの理解により、質問への回答含めたさまざまなフォローが可能になるのです。
⑤コミュニケーション能力
営業職は人を相手にする仕事という性質から、コミュニケーション能力が何よりも大切です。商品の魅力を相手にきちんと伝えられ、的確に話をヒアリングできれば、信頼関係もより深まるでしょう。
⑥交渉力
自社の物品やサービスを客に紹介する際、値下げなどを求められる場合があります。しかし売り上げにもかかわるため、社内の各部門との調整が必要でしょう。根回しをするスキルや、双方に利益が出るような契約を実現させるための交渉力は非常に大切です。
⑦柔軟な対応力
営業職にはイレギュラーな事象がつきもの。とりわけ客と自社の架け橋であり、窓口である営業職には突発的な事案を解決に導く柔軟な対応力と判断力が求められます。
また客からの要望にどう対応するかも契約を結ぶための重要な分岐点となるのです。営業職には、客に振り回されすぎず、多様な事態にも冷静かつ迅速に対応できる力が不可欠でしょう。
5.営業職が持っていると役に立つ資格とは?
基本、営業職に資格は必要ありません。しかし資格の取得が実力の証明やスキルアップに結び付く場合もあるのです。ここでは、ワンランク上の営業職になるための理想的な資格をご紹介しましょう。
TOEIC
英語によるコミュニケーション力を判定するための世界共通テストです。財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が運営しているテストで、外資系企業などでは採用選考時の英語力の指標として用いられています。
外資系企業だけでなく、海外支店を持つ企業や輸入業を始めとする営業職を希望する際、提示を求められる場合があります。
マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
PCスキルを客観的に証明できるので、就職や転職時にも有効とされています。MOSのスキルを習得すると、ビジネス文書や稟議書、提案資料作成も一層効率的に進められるでしょう。
ビジネス実務法務検定
法務部門のみならず、人事総務、セールス部門、営業部門と一般的なビジネスパーソンにも必要とされる法律知識を習得しているかを証明できる資格です。会社にとって大切な契約書を作成する際などにも大変役立つと考えられています。
ITパスポート
ITにまつわる知見を証明できる国家資格です。AI、ビッグデータ、IoT などの先進的なIT技術やネットワーク、プロジェクトマネジメント、マーケティングなど幅広い分野のIT知識を体得できます。
営業士検定
日本営業士会が認定する資格で、昨今の現場で求められる科学的な営業スタイルを習得していると証明できる資格です。初級、上級、マスターの3段階が設けられています。
中小企業診断士
中小企業が抱える経営課題に対応するための診断・助言を実行できる資格です。営業職でも、この資格を保有していると説得力が増します。営業先の担当が一定以上の立場(経営者層や役員層)という際、大いに役立つでしょう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定
投資に関するアドバイスを行えるスキルがあると認定する国家資格で、1級から3級まで設けられています。資格保有者が金融、保険業界だったり接する人にその知識を求める人がいたりすれば役立つ資格でしょう。
販売士
販売時に必要とされる商品知識や接客マナー、販売のテクニックやマーケティング、在庫管理などの知識を持つと証明する資格です。主に流通業界の販売職に求められる資格ですが、営業のさまざまな場面でも役立つでしょう。
宅地建物取引士
建物の売買や貸借などの取引における基本的な知識を持つと証明する資格です。主に不動産を扱う営業職がこの資格を持っています。今後取引先相手が不動産業界になる可能性があれば持っておいて損はないでしょう。
6.営業職における適性とその特徴
営業職は成績や結果が数字に出るため実力が分かりやすく、向き不向きが顕著に表れるという職種といっても過言ではありません。ここでは、営業職における適性やその特徴などについて掘り下げましょう。
話を聴くのが得意・上手い
営業職は客の話をヒアリングする場面が多く、「話を聴くのが得意」という人に向いています。
自社の物品やサービスを紹介するだけが営業ではありません。販路の開拓だけでなく、さらなる利益を上げるためには、顧客がどのような要望を持っていて、どのような課題を抱えているのかを明確にする必要があるのです。
相手の話を徹底的に聴いて新しいニーズを見出したり、現状の課題を引き出した上で独自の提案を投げかけたりします。つまり「話を聴く」というスキルは必須といっても過言ではありません。
ストレス耐性が高い
企業と客の架け橋である営業職は、同時に「板挟み」にもなり得る可能性も高いです。ときにはトラブルが生じ、解決へ向かう間に大きなストレスを抱える場合もあるでしょう。
このように上手くいかないときでも必要以上に落ち込まず、気持ちを切り替えて業務に取り組めるようなストレス耐性が必要です。
決断や行動が早い
商談中は意思決定が求められる場面も多々あります。たとえ重大な事案だったとしても、いつまでも考え込んで結論を出さない状態が続けば、クライアントを待たせてしまいますし、相手を苛立たせてしまう可能性もあるため避けなければなりません。
臨機応変に決断をしたり、柔軟に対応できたりする行動力は営業職に欠かせないスキルだといえるでしょう。
営業とは? 目的、営業職の種類と仕事内容、必要スキルを簡単に
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