人事管理システムとは、人事管理を効率的に行うためのツールです。ここでは、人事管理システムについて解説します。
1.人事管理システムに必要な機能は何か?
人事管理システムに必要なものとは、人事管理で発生する問題点や課題を解決するための機能です。ここでは、人事管理システムに必要な機能について下記5つの観点から解説します。
- 人事管理の人手不足をカバーする機能
- 採用の機能
- スキルを持った従業員を発掘する機能
- 人材の流出を食い止める機能
- 人材を育成する機能
①人事管理の人手不足をカバーする機能
少子高齢化や労働人口の減少といった社会構造問題は、企業にとって大きな課題といわれています。
勤怠管理・給与計算・人材配置・人材教育などを担う人事担当者も人材不足が続いており、人事管理システムは人事担当者の不足を補えるような機能が求められているのです。
②採用の機能
売り手市場が続くと、採用難易度が上昇します。このとき、「企業が求める理想の人材像が不明瞭である」「事業計画と採用計画の連携ができていない」といったミスが起きると、採用難を招くでしょう。
採用をスムーズに行うための機能が、人事管理システムには求められているのです。
③スキルを持った従業員を発掘する機能
年功序列の時代、人事管理はさほど難しくありませんでした。
しかし「転退職で人材の流動性が高くなる」「M&Aなどで従業員が一気に増加する」「多様な雇用形態が混在している」といった状況が起こり得る現在、人事管理システムを活用して効率的に優秀な人材を発掘する機能が必要となっています。
④人材の流出を食い止める機能
従業員の能力を開発しながら長期雇用するという状況は、経営上の観点から考えても極めて合理的です。しかし給与・仕事・職場環境・人間関係などに不満を抱き離職する従業員もいます。人事管理システムは、流出抑止に役立つ機能の保有が求められるのです。
⑤人材を育成する機能
近年、「少子高齢化による新人採用」「キャリアを持つ人材採用」の難化を背景に、企業は社内の人材を育成し、一人ひとりに高いパフォーマンスを求めざるを得ない状況です。人事管理システムには、人材育成機能の搭載が必須となっています。
2.人事管理システムの機能でできること2つ
人事管理システムの機能でできることは、2つあります。それぞれついて解説しましょう。
- 人事・給与の管理
- 人材のマネジメント
①人事・給与の管理
人事、給与の管理は、「勤怠管理」「給与計算」「労務管理」の3つから構成されています。人事・給与の管理を行う目的は、以下のとおりです。
- 勤怠管理データを取りまとめる
- 勤怠管理データをもとにして、効率的な給与計算を行う
勤怠管理
勤務管理とは、従業員の勤務状況を適正に把握すること。人事担当者は、適正に把握した勤怠管理データをもとに、さまざまな人事関連の処理を行っています。
最近では、「出退勤の打刻をPCやスマートフォンで行う」「従業員の勤怠管理データをクラウド上で集計する」などができるシステムもあり、導入企業が増えています。
給与計算
給与計算とは、勤怠管理データをもとに、従業員の給与額を計算すること。「就業規則や雇用契約に則った手当」「社会保険や税金」などを計算し、最終的な従業員の手取りを算出します。
雇用形態の多様化により給与計算は複雑になっていますが、人事管理システムの活用で煩雑な給与計算事務の負担軽減が期待できるでしょう。
労務管理
労務管理とは、「求人」「採用」「配置」「異動」「人事評価」「人材育成」「各種保険の手続き」といった管理の総称です。労務管理は、従業員の生活をサポートする重要な管理業務ですが、人事管理システムでは、以下のような業務をかんたんに行えます。
- 雇用契約書や名簿の作成
- 労働条件変更の履歴管理
- 社会保険など各種保険の手続き
人材のマネジメント
人材マネジメントとは、企業戦略を達成するための人材採用や人事評価のこと。人材採用も人事評価も、ともに企業が持つ経営資源のひとつである「ヒト」を活かしながら、企業活動を充実させたり活性化させたりするきっかけになる重要な業務です。
人材採用
人材採用とは、応募・採用・入社に関する業務のこと。人事管理システムでは、「求人や応募者情報」「面接の選考」「応募者の評価」「内定者の情報」などについて、各段階で必要となる管理業務を一手に引き受けてくれます。
こうしたシステムを活用すれば、効率的な採用活動や漏れのない情報管理が可能になります。
人事評価
人事評価とは、従業員一人ひとりの勤怠・能力・保有資格・職場内経験・実績といったデータを集め、評価者が従業員を評価すること。
人事管理システムでは、評価履歴の管理や数値化できない評価の記録ができるため、適正な人事評価を実現します。こうした評価をもとにすれば、効果的な人材配置や昇進などの人事施策が実施できるでしょう。
3.人事管理システムの導入によって得られるメリット
システムの機能は多岐にわたり、さまざまなシーンで人事担当者を効率的にサポートしてくれるのです。ここでは、人事管理システム導入のメリットを下記5つの観点から解説します。
- 業務の効率化
- セキュリティの強化
- 人為的なミスの削減
- 継続的な人材育成
- 法令改正への対応
①業務の効率化
人事管理システムでは、「属性」「人事考課」「人材育成」「異動」「配置」「勤怠管理」「採用」など、従業員に関する情報を一元管理できます。これまで活用されていたExcelなどと比較して効率よく管理できるうえ、人事担当者の負担も軽減するのです。
②セキュリティの強化
情報の漏えいは、企業のリスク管理の脆弱さを象徴します。企業はデータ管理に目を光らせなければならず、人事関係のデータにおいても、「パスワードの管理」「バックアップの実行」などのセキュリティ対策が不可欠です。
人事管理システムには情報漏洩の防止機能が搭載されているので、こうしたセキュリティ対策にも対応できます。
③人為的なミスの削減
勤怠管理や給与計算などに象徴されるように、人事が担う業務は正確性が求められるものが多くあります。人事管理システムには自動計算してくれる機能があるため、システムを導入すれば計算ミスといった人為的なミスを低減できるのです。
④継続的な人材育成
人材育成は、従業員一人ひとりのデータベースをもとにした育成のプランニングが欠かせません。人事管理システムを導入すれば、蓄積されている豊富な個人データをもとにした戦略的な能力開発のプランニングが、できるようになるのです。
⑤法令改正の対応が容易
社会保険や税金に関する制度には法改正がありますが、就業に関する法改正が発生したか人事担当者が調べていくことは、非常に手間のかかる作業です。しかし人事管理システムを導入すれば法改正を適宜通知してくれるため、漏れなく迅速かつ正確に対応できます。
4.人事管理の課題から見えてくる人事管理システムの選び方とは?
人事管理の課題から見えてくる人事管理システムの選び方とは何でしょうか。ここでは、人事管理システムを選ぶときに注目したいポイントについて、下記4つの視点から解説します。
- 業務の効率化につながるか
- セキュリティ管理はしっかりしているか
- 必要な人事管理機能が備わっているか
- 長期的に利用するサポート体制が整っているか
①業務の効率化につながるか
人事担当者の業務は、多岐にわたります。給与計算などは正確で迅速な処理が求められるものもあり、業務の効率化は必須の課題です。人事管理システムの導入を選ぶ際は、「作業工程の軽減」「作業効率の向上」などが実現できるかどうかを検討します。
②セキュリティ管理はしっかりしているか
個人情報の漏えいは、必ず避けなければなりません。人事管理システムを選ぶ際は、「不特定多数の人物がシステムにアクセスできないか」「万全なセキュリティ体制が構築されているか」などを選択基準に入れておきます。
③必要な人事管理機能が備わっているか
人事管理システムの多くは、人事データ管理などの基本機能のほかにも、さまざまな機能が搭載されています。システムを選ぶ際は、「どのような機能があるか」「機能が自社の求める機能と合致するか」などを見極めなければなりません。
④長期的に利用するサポート体制が整っているか
人事管理では、「社会保険制度や税制の改正」「マイナンバー制度の適用」など、就業に関わる制度の改正への対応が求められます。制度変更を適宜アップデートできるなど、長期にわたるサポート機能があるかどうかの見極めが重要です。