スローガンとは企業が掲げる「合言葉」のようなもので、企業のイメージを左右します。スローガンを作成する上で抑えておきたいポイントや、有名スローガンの事例について、見ていきましょう。
1.スローガンとは?
スローガン(slogan)とは、企業や団体などが、組織に関する情報、主張や理念、活動目的を短い言葉で表したものです。スローガンを活用することで、発信主が伝えたい内容を分かりやすく、かつ人々の印象に残すなど、効果的な発信が可能になります。商業的に用いられる際は、「キャッチコピー」と呼ばれる場合が多いです。
2.企業におけるスローガンの持つ意味
企業におけるスローガンは、経営理念・ミッション・ビジョンなどを端的な言葉で言い表したものを指します。
宣伝効果をねらった対外的なキャッチコピーとは異なりますが、従業員や顧客、消費者に対して企業が持つビジョンを訴えかけるための重要なフレーズとなるのです。そのため企業のイメージそのものについて表した言葉を、スローガンに掲げる企業が多くなっています。
スローガンを作成する目的
企業ロゴが視覚的に企業イメージを訴えかけるためにつくられたものだとすれば、スローガンは言語的な側面から企業の在り方や主張をアプローチするために作成するものとなります。
社名やブランド名のみを伝えるより、印象でインパクトのあるスローガンを提示したほうが受け手の興味・関心を引き出しやすくなり、注目を集めやすくなると考えられるからです。
つまりスローガンは、それ自体がプロモーションの役割を担っているといえます。
スローガンによってもたらされるメリット
スローガンがあると、「その言葉=企業」として思い浮かべてもらえます。テレビCMやWeb上の広告などで良く見聞きするフレーズを聞いただけで、パッと企業が浮かぶ場合もあるでしょう。
自社に合ったスローガンを掲げると、派生して商品やサービスのキャッチコピーなどをつくりやすくなります。スローガンとキャッチコピーを連動させれば、顧客に「あの会社のあの商品」と連想させ、より認知が高まることも期待できるでしょう。
3.スローガンを作成するときの基本ポイント4つ
スローガンは企業の本質が表れるからこそ、質の高いものになるよう工夫する必要があります。そんなスローガンを作成する際のポイントを解説しましょう。
- メッセージ性
- 分かりやすい表現を心がける
- 誰に伝えるのかを考える
- 盛り込みたいキーワードを選別する
①ポイント1:メッセージ性
大手企業はスローガンの作成を外注する場合もあります。しかし社内で考えれば、「従業員が売上貢献への意識を高める」「日ごろ忘れがちな企業としての取り組みやアイデンティティの再確認ができる」といった効果も期待できるのです。
最初から一つの正解を見つけようとするのではなく、アイデアを出しながら複数の単語をピックアップし、候補をつくっていきましょう。時間をかけて検討すると「企業として消費者に伝えたいこと」が鮮明になってくるはずです。
②ポイント2:分かりやすい表現を心がける
スローガンは企業のブランディングにつながるため、会社の「顔」ともいえます。「今後、企業をどのような方向性に導いていきたいのか」「企業が今進めたい方向性は何か」を盛り込んだメッセージの作成が重要です。
その際、誰でも理解できる分かりやすい言葉や表現にするよう意識しましょう。内容がどんなに優れていても難しすぎて受け取り側が理解できなければ、インパクトが薄れますし価値も半減してしまいます。
③ポイント3:誰に伝えるのかを考える
スローガンを作成する前に、まずそのスローガンは顧客・取引先・従業員など、誰に対して向けられたものであるのかを認識して取り組みます。スローガンはメッセージ性の強いもの。そのメッセージの受け取り手を明確にしましょう。
相手が誰かによって企業としての向き合い方は異なるので、企業にかかわるすべての人に向けてのスローガンを考えるのは非常に困難です。しかし相手が明確であれば、スローガンの方向性もおのずと決まってきます。
④ポイント4:盛り込みたいキーワードを選別する
スローガンに使用するワードを選別する際は、前向きでポジティブな言葉をピックアップしましょう。企業としてのポジティブな姿勢が伝わるような言葉を選ぶと、受け取り側の心に響きやすくなり、印象にも残ります。
またメッセージ性の高いスローガンであればあるほど、前向きなワードを使用すると好感度や支持率の増加が期待できます。受け取り側が従業員であれば自社に対するロイヤリティが高まり、顧客であればリピーターの確保につながるでしょう。
4.スローガンを浸透させるポイント4つ
ご紹介したポイントをもとに、企業独自のメッセージ性や伝えたい相手を明確して魅力的なスローガンを作成できたとしても、受け取り手まで浸透しなければ宝の持ち腐れです。
顧客や従業員、また社会に対して企業スローガンを浸透させていくにはどのような方法があるでしょうか。ここでは、実践したい4つのポイントを解説します。
- 社会貢献の意味合いを持たせる
- Webやポスターを活用する
- 経営者自身がスローガンを守る
- 部署内でのスローガンも作成してみる
①社会貢献の意味合いを持たせる
社内・社外にかかわらず、スローガンには社会貢献につながるような内容を盛り込むと浸透しやすいといわれています。社会全体に関係するようなスローガンにすると、さまざまな消費者・企業・社会の人々が関心を持ちやすく共通の想いになるからです。
逆に自社の利益だけを追求したスローガンの場合、利益関係のある一部の人以外は自分に関係のない内容なので、興味を示しません。従業員も利益主義のスローガンにやる気をなくしてしまう危険性すらあります。
②Webやポスターを活用する
企業スローガンを消費者などの社外に向けて伝えたい場合、さまざまな媒体を利用して浸透させる必要があります。企業のwebサイトやポスター、CMなど、人の目につく媒体にはスローガンを多用しましょう。
多くの人の目に触れると、スローガンは浸透していきます。インパクトのあるスローガンなら消費者に覚えてもらいやすいのはもちろん、一貫してアピールを繰り返すと「この会社といえばこのフレーズ」という風に意識も定着するでしょう。
③経営者自身がスローガンを守る
魅力的な企業スローガンを打ち出しても、会社の象徴である経営者や役員がそれを無視するような言動を取っていては、スローガンも浸透しません。また経営者が社会貢献を謳ったスローガンに反するような言動を取れば、消費者はもとより従業員の士気も下がるでしょう。
スローガンの浸透は、経営者層の日ごろの言動に大きな影響を受けると考えられます。つまりスローガンを生かすも殺すも経営者次第といえるのです。経営者が企業を率先して守っていくと、スローガンも浸透しやすくなります。
④部署内でのスローガンも作成してみる
企業としてのスローガンを作成したあと、部署ごとのスローガンを作成してみるのもよいでしょう。スローガン作成は企業や仕事に対する本質の再認識につながるため、従業員の士気向上や企業スローガンの社内浸透に役立ちます。
その際、企業スローガンと似たような内容だと作成する意味がありません。とはいえ企業スローガンと正反対の内容では、混乱や誤解を生む可能性もあります。企業全体のスローガンや他部署のスローガンの内容を加味しながら、高め合える内容を考えましょう。
5.各企業のスローガンの事例
CMや広告、街中で目にしたり耳にしたりすることも多い、有名な3つのスローガンをご紹介しましょう。いずれも主張したいテーマが明確で、各企業のイメージとマッチしており、聞いた人の印象に残る表現をしているという特徴があります。
事例1:日立グループ「Inspire the Next」
CMでおなじみ、日立グループの「Inspire the Next」。このメッセージには「次なる時代に息吹を与えていく」という意味が込められています。
英語でスローガンを発信すると「意図が伝わりにくいのではないか」という懸念を抱いてしまいがちですが、日立グループは世界に向けて発信している姿勢をアピールして見事に成功しています。
事例2:ロッテ「お口の恋人」
「お口の恋人」は、大手菓子メーカーのロッテが掲げるスローガンです。
ロッテという社名の由来は、ゲーテの著書「若きウェルテルの悩み」に登場し、永遠の恋人として知られる「シャルロッテ」という女性の愛称ですが、スローガンにも社名の由来が反映されています。
実はこのスローガンは一般公募で集められたもので、短い言葉でありながら企業姿勢を端的に表しているのです。
事例3:ファミリーマート「あなたと、コンビに、ファミリーマート」
「あなたと、コンビに、ファミリーマート」は、大手コンビニエンスストアのファミリーマートが掲げるスローガンです。
これは、「地域に寄り添う」「お客さま一人ひとりに」「家族のように」というファミリーマートの3つの基本理念に沿って作成されています。またスローガンに音楽をつけて、人々の意識に「スローガン=企業」が定着するよう工夫を施しているのです。