ダブルケアとは?【簡単にわかりやすく】事例、対策、問題点

少子高齢化が進む日本では、ダブルケアが社会問題化しています。一体ダブルケアとはなんでしょうか。ダブルケアについてさまざまな点から解説します。

1.ダブルケアとは?

ダブルケアとは、「子育て」「親や親族の介護」の時期が重なったため、両方を並行して担わなければならない状態のこと。ダブルケアでは、ダブルケアを行う人の身体的ならびに精神的負担が大きくなるため、日本において大きな社会問題となっているのです。

ダブルケアとは、子育てと親や親族の介護の両方を並行して担わなければならない状態のことです

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2.ダブルケアが生まれた背景、きっかけ

ダブルケアは、横浜国立大学の相馬直子氏によって2012年に提唱されました。

言葉が誕生した背景にあるのは、「女性の社会進出に伴って、結婚の時期が遅くなり出産の年齢が高くなった」「少子化により兄弟姉妹の少ない家族構成や親戚との疎遠などによって介護者が不足した」などです。

2025年には団塊の世代が75歳以上になることもあり、団塊ジュニア世代のダブルケア問題が増加していくと考えられています。

ダブルケアは2012年、横浜国立大学の相馬直子氏によって提唱されました。晩婚化や出産時期の遅れ、少子化による家族構成の変化が主な要因とされています

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3.ダブルケアの実態

ダブルケアの実態について、2つの調査結果をもとに解説しましょう。

内閣府男女共同参画局の調査によると

平成28年4月に発表された内閣府男女共同参画局の「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」によれば、

  • ダブルケアを行っている人は約25万人
  • 内訳は女性が約17万人で男性が約8万人
  • ダブルケアを行っている人の多くは、40歳前後の男女
  • ダブルケアを行っている女性の半数は有業者で、そのうち仕事を主とする人が約半数を占める
  • ダブルケアを行っている男性の90%は仕事を主とする有業者

といった結果が出ました。

ソニー生命の調査によると

ソニー生命の2018年のダブルケアに関する調査からは下記のような結果が出ました。

  • ダブルケアという言葉の認知度は18%
  • 現在、ダブルケアを担っているのは16%
  • ダブルケアの経験率は29%で、中でも50代女性の経験率は41%
  • ダブルケアを担っている人の約20%が介護で中心的な関わりを担っている
  • ダブルケアに中心的に関わる理由で最も多い回答が、女性は「自分以外に主にできる人がいない」、男性は「自分自身の希望で主に関わりたい」

ダブルケアの調査結果から、「40代の担い手が多い」「仕事をしている」「女性に負担が偏っている」ことが分かります

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4.ダブルケアの実例

ダブルケアは厳しい実態を持ちます。一体どのようなものか、ダブルケアの実例を2つ紹介しましょう。

育児と祖母の介護

1つ目は、5歳と7歳の子どもの育児と90歳の祖母の介護というダブルケアを行っていた女性のケースです。この女性は、ダブルケアによる負担から、介護放棄をするなど精神的に追い詰められてしまいました。

妊娠と義母の介護

2つ目は、「自分自身が妊娠中」「義母の介護」というダブルケアです。妊娠中の体調の変化や出産への不安に加え、手探りの介護がのしかかってきたため、自分がどうすればいいのか判断できなくなってしまいました。

ダブルケアは、育児と介護だけでなく妊娠と介護などさまざまなケースがあります。精神的に追い詰められてしまったという事例も報告されているほどです

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5.ダブルケアによって生じる問題、課題

ダブルケアによって生じる問題を5つに絞って解説します。

  1. 仕事の継続が難しい
  2. 金銭面での負担
  3. ダブルケアに対する仕組みがない
  4. 負担が女性に偏る
  5. 精神面での負荷

①仕事の継続が難しい

育児も介護も担いながら仕事をするというのは、まるで三足のわらじを履くようなもの。ダブルケアに関する調査によると、ダブルケアを担った人で「女性の3人に1人」「男性の4人に1人」が離職したという結果もあります。

育児と仕事、介護と仕事の両立だけでも負荷が大きいのに、育児と介護と仕事の3つの負担がのしかかってくる状況になれば、現実問題、仕事の継続は難しくなるでしょう。

②金銭面での負担

育児と介護、双方の支出により、金銭面で大きな負担が強いられます。さらに、ダブルケアによって仕事を続けることが難しくなり離職せざるを得なくなった場合には、離職によって収入源が喪失してしまうのです。

収入が絶たれた上に育児や介護による金銭的な負担がのしかかってくる場合、日常生活に大きな影響が出るでしょう。

③ダブルケアに対する仕組みがない

行政機関には、育児や介護に関する個別の窓口が設置されています。しかし、育児と介護のダブルケア専門の相談窓口は未整備な自治体がほとんどです。

ダブルケアに対する取り組みが体系化、制度化されていない状況により、ダブルケアを担う人はどこにも相談できない状況に陥ります。ますます窮地に立たされてしまうでしょう。

④負担が女性に偏る

旧態の日本社会には、「育児は女性が行うべき」「介護は女性が引き受けるべき」といった固定観念があり、現代でもダブルケアは女性が担うべきものと考える人が多くいます。
そのため、負担が女性に偏ってしまうのです。

⑤精神面での負荷

育児や介護では、「慣れない事柄が多い」「家族の複雑な人間関係が絡む場合も」「いつ終わるか、先が見えない」などから、精神的な疲れが溜まりやすくなります。また、昼夜を問わずに授乳や介護をする場合、睡眠時間の確保すら困難になるでしょう。

心身の疲労が蓄積されると、精神的な負荷からダブルケアをしている人が追い詰められてしまう問題も起きています。

ダブルケアによって生じる問題は、「仕事の継続が難しい」「金銭面での負担「ダブルケアに対する仕組みがない」「負担が女性に偏る」「精神面での負荷」などです

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6.ダブルケアへの対応、対策、対処法

ダブルケアの問題が発生したときにどのように対処すればよいのでしょうか。その対処法を5つ紹介します。

  1. 家族間での話し合い
  2. 支援制度について情報収集
  3. ダブルケアのコミュニティに参加
  4. 経済面での準備
  5. 社会全体でダブルケアを認知

①家族間での話し合い

ダブルケアになる前から、育児と介護に関する役割分担、在宅か施設かといった介護の方向性、育児や介護で発生する費用負担、仕事との両立などについて、家族の間でしっかりと話し合います。

ダブルケアが始まった際、事前に話し合ったように進まない場合もあるかもしれません。しかし、家族で事前に話し合うと、さまざまな問題に対してよりスムーズに対応できるでしょう。

②支援制度について情報収集

ダブルケアが始まってしまうと毎日の生活に追われ、支援制度に関して調べる時間が確保できません。そのため、ダブルケアが現実のものとなる前に、自治体の相談窓口、介護保険制度、支援申請方法などの情報を集め、まとめます。

たとえば、下記のような内容です。

  • 自分が住む自治体には育児や介護についてどのような支援制度、支援体制があるのか
  • ダブルケアについて、どこが相談窓口になっているのか
  • 実際に支援を持ち込む場合には、どのように申請すればよいのか

③ダブルケアのコミュニティに参加

ダブルケアを担った人の中には、誰にも相談できずに一人で悩みを抱えていたという人も多いです。オフィシャルな相談窓口の活用も重要ですが、自分と同じようにダブルケアを担う人たちのコミュニティに参加すると、日々の負担から少しでも解放されます。

コミュニティへの参加により、

  • 同じ思いを抱いている人と気持ちを共有し、励まし合う
  • 同じ立場にいる者からのアドバイスを聞く

などが気分転換となり、ダブルケアの負担軽減の一助となるでしょう。

④経済面での準備

ダブルケアでは、育児と介護、両面での金銭的負担が発生し、もしダブルケアによって離職を余儀なくされれば、収入源が絶たれてしまうでしょう。育児、介護、生活、3つから経済に備えることは、ダブルケアを無理なく担うためにも重要なポイントです。

まずは、ダブルケアに関する家族との話し合いの機会を活用しましょう。ダブルケアになった場合を考えて、どのように貯蓄していくべきかプランニングをしてみるのがお勧めです。

⑤社会全体でダブルケアを認知

ダブルケアは身近な問題です。今、ダブルケアをしていない人でも「過去にダブルケアを経験した」「ダブルケアに直面する可能性が高い」「近い将来、ダブルケアを担うことが予想される」といった人を含めると、かなりの数に上ります。

少子高齢化が進む日本社会において、ダブルケアは決して他人事ではありません。ダブルケアの当事者だけでなく広く社会全体でダブルケアを受け止めて認知する、これが、ダブルケアの負担軽減に大きく作用するのです。

ダブルケアへの対処法は、「家族間での話し合い」「支援制度について情報収集」「ダブルケアのコミュニティに参加」「経済面での準備」「社会全体でダブルケアを認知」の5つです