HRテックとは、テクノロジーを駆使し、人と組織のパフォーマンスの最大化することです。そんなHRテックの、海外トレンドや今後の展望について解説します。
目次
1.HRテックのトレンドとは?
HRテックのトレンドは、働き方改革や労働環境といったHRテックを取り巻く環境によって変化します。
そもそもHRとは何か?
HRテックのHRとは、「Human Resource」の頭文字をとったもので、HRは人的資源・人材のことです。ただし日本でHRといえば、人事部・人事課・人事担当などを指す言葉として用います。
人事部とは、人材の採用・適材適所の配置・教育など幅広い業務を担当する部署です。
HRはビジネスで活用されている
HRはビジネスで活用されています。HRは、ビッグデータ・AI・クラウドなどの最新技術を活用して、「人と組織のパフォーマンスの最大化」「データを活用して一人ひとりに適した管理を行う」を実現するのです。
また労働人口の減少や働き方の多様化を背景に、HRを活用した人材確保・人材活用が企業に求められています。
2.世界のHRテックトレンド市場規模について
世界のHRテックトレンド市場規模は、2018年で4,000億ドル。相当するのは、半導体や仮想通貨市場です。
人材管理市場は成長中
人材管理市場は成長中で、2018年における市場規模は146億ドル以上だといわれています。さらに2025年まで、平均して年11%の成長率が予想されているのです。
このままの勢いでいけば、2020年時点で180億ドルを超過する可能性も高いでしょう。こうした数字から考えると、人材管理市場の成長は明らかといえます。
海外企業はHRテックへの投資額が大きい
海外企業は、HRテックへの投資額が大きいことでも知られています。2018年時点での海外におけるHRテック市場規模は140億ドル、日本円にして約9,548億円でした。2012年から2016年の5年間では、アメリカが世界市場の62%を占めており、シェアはNo.1です。
日本の2018年のHRテック市場規模は、250.8億円で、率にして2.7%ほどとなっています。
3.人事に導入したい6つのHRテックトレンド
人事に導入したいHRテックには、6つのトレンドがあります。それぞれのポイントを解説しましょう。
- 多様な人材を活用
- データの取り扱い
- 効果的な人員配置
- マネージャーの業務を最適化
- リモートワークへの対応
- 透明性の確保
①多様な人材を活用
最新のIT技術の活用によって、雇用が困難だと思われがちだった障がいを持つ人々の雇用の機会を創造できます。それにより労働力不足の解消や社会貢献につながるでしょう。
②データの取り扱い
HRテックでは、パーソナルな属性を含めたさまざまなデータが扱われるのです。「データを注意して取り扱う」「むやみにデータを収集しない」などに留意する必要があります。
③効果的な人員配置
「定型業務はオートメーション化する」「人でなければできない創意工夫を要する業務は社員が行う」など、メリハリがついた人員配置を行います。
④マネージャーの業務を最適化
業務を最適化する際のポイントは、「マネージャーの負担軽減」「マネージャーが本来行うべき業務に注力できる環境の整備」「マネージャーが持つ能力の最大限発揮」です。
⑤リモートワークへの対応
HRテックでは、リモート操作によるコミュニケーション・シフト調整が容易にできます。テレワークが広く求められる昨今、リモートワークへの対応は必須です。
⑥透明性の確保
評価基準内容や評価結果と処遇との連動性、運用ルールなど細かいルールを含めてその透明性を高められるかが、HRテック導入の成功を左右します。
4.海外で注目されているHRテックのトレンドとサービス5つ
海外で注目されているHRテックにも、トレンドやサービスがあります。ここでは、HRテックの活用方法について具体的なイメージを持てるよう、HRテックコンテストで受賞歴のあるサービスを5つご紹介します。
- AI4JOBS
- TalVista
- PILOT
- LEARNLUX
- Gpayroll
①AI4JOBS
Ai4JOBSとは、マッチングに特化したサービスです。AIと機械学習の併用で、採用条件にベストマッチした候補者を、ピンポイントで探し出してくれます。
バイアスを可能な限り取り除いて推薦してくれるため、従来見逃していた候補者もピックアップできるのです。見逃し率を約38%改善し、優秀な人材の採用を実現します。
②TalVista
TalVistaとは、最新テクノロジーを駆使した採用システムで、導入により下記を実現できます。
- AIを使って、ターゲットが魅力を感じる包括的な求人内容の作成
- 実際の面接時に使える構造化された質問項目を作成
- スキルや経験にもとづいた履歴書ビューの実現
- 機械学習をもとに予測分析を活用
③PILOT
PILOTとは、HRTCで開催されたピッチフェスト(Pitchfest)でグランプリを受賞したサービスです。「AIの活用による社員へのコーチングの実施」「コーチングの結果分析と次回のコーチングへの反映」が可能になります。
これらは、「コーチング担当者の負担軽減」「コーチングの精度向上」といったメリットを生み出すのです。
④LEARNLUX
LearnLuxとは、社員向け財務管理サービスです。アメリカでは、財務的状況から生じたストレスが原因で、仕事に支障が出ていると感じる人が36%にものぼります。そこで財務的状況から生じる課題解決のために、LearnLuxが活用されています。
金融リテラシーの向上を目的とした学習ツールも含まれる、個人財務管理ソリューションパッケージとなっているのです。
⑤Gpayroll
Gpayrollとは、オンライン上で給与計算や月末や年末の事務処理を自動で行ってくれるサービスです。
初期設定で社員の給与情報をインプットすれば、給与の自動計算や銀行口座への自動振込ができます。経費処理を行うシステムと連動しているため、別途経費処理の必要もありません。
5.今後もトレンドとなるHRテック10の分野
今後もトレンドとなるHRテックは、10もの分野があると予想できます。ここでは、今後期待されるHRテックのトレンドについて解説します。
- 潜在的人材の発見と確保
- リモートワーク
- VRの活用
- オンデマンドプラットフォーム
- ダイバーシティ採用
- 従業員のモチベーションアップ
- ゲーミフィケーション
- Employee Experience(従業員体験)
- 複雑な業務の効率化
- セルフサービステクノロジー
①潜在的人材の発見と確保
労働人口減少や働き方の変化などにより、日本の労働市場は今後も変化を余儀なくされます。そこで「ビッグデータ分析やAI技術の活用」「プル型から脱却し、プッシュ型転職サービスに転換」といった、HRテックのトレンドが期待されているのです。
②リモートワーク
今後のトレンドとなるのは急激な広がりを見せるリモートワーク。HRテックにも、リモートワークにおける業務の効率化や学習管理システム(LMS)によるリモート研修の実施が求められています。
リモートワークによる新しい働き方の構築や人材を効率よく育成できるサービスの需要は、これからますます高まるでしょう。
③VRの活用
リモートワークと同様、VRの活用は今後の展開に期待されているのです。オフィスを構えなくても手軽にビジネスを展開できるため、さまざまな業種から注目を集めています。
「バーチャルオフィスを構築し、複数人で仮想空間を共有しながらビジネスを展開させる」「VRを採用面接や社員研修などに活用する」といった運用が期待されているのです。
④オンデマンドプラットフォーム
オンデマンドプラットフォームをHRテックとして活用すれば、必要なときに必要な人材が必要な仕事に就くことをサポートしてくれます。
たとえば、「大量注文のため、急きょ人手が必要」「ある分野に特化した人材が一定期間必要である」といった突発的な問題にも、慌てず冷静に対処できるのです。
⑤ダイバーシティ採用
ダイバーシティ採用もHRテックのトレンドです。ダイバーシティ採用とは、国籍・性別・年齢・雇用形態などの枠組みを廃して、より優秀な人材を採用すること。
ダイバーシティ採用の実現にはHRテックを活用して、「マネジメント方法の変更」「評価制度の再構築」「雇用制度の見直し」などを行う必要があります。
⑥従業員のモチベーションアップ
HRテックのトレンドとして、従業員モチベーションアップも欠かせません。「従業員が自分の会社に愛着を持つ」「自分の仕事にやりがいを感じる」ことは、企業の生産性向上に不可欠です。
HRテックの活用で、このような人材を採用・育成するための調査・評価・環境整備を、客観的に効率よく進められます。
⑦ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションとは、ゲームデザイン要素をゲーム以外に応用することで、「仕事のゲーム化」ともいわれています。
HRテックで、「行動目的の明確化」「立ち位置の可視化」「自分のアクションへの賞賛や敗北、叱責といった即時フィードバック」「ゴールによって報酬を得る」といったゲームの要素を取り入れ、仕事を組み立てるのです。
⑧Employee Experience(従業員体験)
Employee Experienceとは、従業員が仕事や職場から学習機会・成長機会といった価値ある体験・機会を得ることで、「従業員体験」と訳されます。
可視化の難しい分野でしたが、HRテックの活用により、「企業と社員双方の共通認識を構築する」「業務に没頭できる環境を整備する」などが効果的に実施できるようになるのです。
⑨複雑な業務の効率化
人事や労務に関する複雑な業務の効率化も、HRテックの今後予測できるトレンドのひとつです。複雑な業務とは、「人材データの一元化や可視化」「データをもとにした分析・解析」「定型業務の見直し・削減」など。
HRテックを活用すれば、膨大なデータを扱ったり高度なテクノロジーを生かしたり発想を大きく転換させたりなどが可能になります。
⑩セルフサービステクノロジー
セルフサービステクノロジーとは、社員自らがシステムを使って手続きを完結させること。たとえば入社手続き・社会保険・労働保険といった労務関連のデータを、社員自らが入力し、データ入力を完成させます。
HRテックでは申請書類の作成も自動化できるため、労務管理にかかる事務負担を劇的に軽減できるのです。
6.HRテックのトレンドで活用される5つの技術について
最後に、HRテックのトレンドで活用される5つの技術について解説します。
- クラウド
- ビッグデータ
- ピープル・アナリティクス
- AI
- RPA(Robotic Process Automation)
①クラウド
クラウドとは、インターネットに接続されたコンピューターやサーバーが提供するサービスを、ネットワークを経由して自分が持つ端末で利用する形態のこと。
自前で環境を整備しなくてよいので、コストや手間が軽減するのです。実際、2020年度前半には、HRテックソリューション市場は前年比36.4%増となっています。
②ビッグデータ
ビッグデータとは、記録や保管、解析が困難なほどに巨大化、複雑化したデータの集合体のこと。
人事労務部門では、さまざまな社員のデータを収集、管理しています。これら人事部門が取得するビッグデータを、HRテックを使って横断的に掛け合わせて分析すると、人材採用・人材活用・人材育成に活用できるのです。
③ピープル・アナリティクス
ピープル・アナリティクスとは、収集した人事関連の情報・数字を分析して、人材採用・人材活用・人材育成・人材評価などの意思決定を客観的に行うこと。
活用すれば面接官や評価者、上司の主観に頼ってきた部分を徹底的に排除し、人事業務に客観性を取り入れられます。
④AI
AIとは、「膨大なビッグデータから特徴を分析する」「経験則的に高い精度で予測、分類を行う」ためのプログラム機能です。顔画像をもとに人物を判別するなど、AIの活用方法は日々進化しています。
人事管理業務でも、AIによる解析やシミュレーションなど、さらなる応用が期待されているのです。
⑤RPA(Robotic Process Automation)
RPA(Robotic Process Automation)とは、ロボットによる業務の自動化のこと。従来、人間がパソコンを使って作業していた定型業務を、AIなどを活用して自動化します。
すでにさまざまな分野で人間の業務を肩代わりするソフトウェアも誕生しており、人事労務の分野でも、労働時間集計といった提携業務のRPA化が進んでいるのです。