人事管理クラウドとは? できること、メリット、比較ポイント

人事管理クラウドとは、人事業務に必要なデータをクラウドで管理する仕組みのことです。ここではクラウド型システムでできることや導入のメリット、選び方などについて解説します。

1.人事管理クラウドとは?

人事管理システムとは、給与管理や労務管理、要員配置など人事業務に関わる従業員のデータを一元に管理する仕組みのことで、下記の2種類があります。

  1. インターネットに接続して利用するクラウド型
  2. 自社で情報システムを保有・運用するオンプレミス型

導入や運用にかかるコストを抑えるという意味で近年、人事管理にクラウド型を使用する企業が増えてきました

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2.人事管理を紙とExcelで行う際の問題点とは?

人事管理クラウドが普及する前は、紙とExcelにて人事管理が行われていました。今でもタイムカードを利用した勤怠管理や紙ベースの労務管理を行っている企業も、少なくありません。しかし人事管理を紙やExcelで行うことには、さまざまな問題が潜んでいるのです。

個人情報を安全に管理する義務がある

2003年に公付、2005年に全面施行された「個人情報保護法」。社会人であれば聞いたことがある人も多いでしょう。

従業員の氏名や住所に始まり、採用時の応募者情報や昇給昇格などの評価、給与や賞与の金額など、あらゆる人事給与システムの従業員情報が個人情報にあたります。

それまでは一部の大企業に限定されていた法律ですが、2015年公付の改正法により、個人情報を取り扱う「すべての事業者」に個人情報保護法が適用されました。

個人情報に簡単にアクセスできないよう万全なセキュリティ対策を取る義務が、全事業者にあるのです。

個人情報保護法の第20条について

この個人情報保護法についてもう少し掘り下げてみましょう。個人情報保護法20条では次のように明記しています。

「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない」

この安全管理のために必要かつ適切な措置のことを「安全管理措置」と呼びます。以下4つを講じられれば「適切な措置」が施せていることになるのです。

  1. 安全管理の実施状況を確認する「組織的安全管理措置」
  2. 従業員に対して適切な教育、訓練を行う「人的安全管理措置」
  3. 入退室管理などの「物理的安全管理措置」
  4. 情報システム管理などの「技術的安全管理措置」

4つのリスクが潜んでいる

人事管理を紙とExcelで管理すると、そこには4つのリスクが潜んでいます。

  1. 漏れのリスク:必要事項の記入やファイルの更新時に漏れの可能性。データの提出状況を別途チェックする必要が出てくる
  2. 紛失のリスク:郵送や手渡しなどによる紛失の可能性。紛失したほとんどの場合、後追いはできない
  3. 誤りのリスク:記入欄の誤りや筆跡による誤認識が起きる可能性。ファイルの削除、誤修正があっても復旧できない
  4. 遅れのリスク:差し戻しがあった場合の遅延。後続作業に遅れが生じる可能性も高い

人事管理を紙とExcelで管理すると、法的や運用面でさまざまなリスクが生じるのです

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3.まずはおさえておきたい人事管理業務の4つのポイントについて紹介

目標を達成するため、従業員を効率的に制御・統制し運用する人事管理業務は、次の4つに大別されます。

  1. 労働者の雇用に始まり解雇に終わる「採用活動全般」
  2. 所属部署や就業場所の変更などによる「異動・配置転換」
  3. 能力や業績の成果を公正に評価する「人事考課(人事評価)」
  4. 個々の能力を底上げする「人材育成と教育」

①労働者の雇用に始まり解雇に終わる「採用活動全般」

人事管理業務、と聞いてまず思い浮かべるのが労働者の採用・雇用の仕事でしょう。会社は「ヒト・モノ・カネ」で成り立つとされるとおり、継続した企業経営には人材の管理が欠かせません。

担当部門は自社の採用計画にもとづいて、労働者を募集します。優秀な人材に応募してもらうための就職・転職イベントへの参加や、SNSなどを通じた企業PRなどもこれに含まれます。

②所属部署や就業場所の変更などによる「異動・配置転換」

従業員一人ひとりの適性やポテンシャル、能力などを把握分析しながら異動・配置を行い、部署間の調整を進めることも人事管理業務のひとつです。

適切な異動・配置が行われていないと、企業にとって大切な経営資源である人材を活用しきれなかったり、無意味に人材を増やす(もしくは減らす)だけで終わったりする可能性があります。

③能力や業績の成果を公正に評価する「人事考課(人事評価)」

従業員の評価は、数ある人事管理業務のなかでも特に重要な業務です。各従業員の働き方やスキル、レベルに応じて業績の成果や能力を正当に評価します。

いうまでもなく、透明性かつ公平な人事評価制度の策定および運用が必要です。適切な評価、またそれに応じた処遇を与えれば、従業員のモチベーションが一定以上に保たれ、結果として企業の業績向上につながります。

④個々の能力を底上げする「人材育成と教育」

人事管理には、人材育成や教育の場を設ける業務も欠かせません。業務上必要とされる能力は、職種や職位によって異なるもの。新たなスキルや経験を獲得する必要に迫られた従業員に対して、企業は育成の場を提供しなければなりません。

新卒や中途採用といった新しく入った従業員に研修の場を設け、個々の能力を底上げすることも、将来的な戦力を増やして生産性を高めるといった意味では不可欠なのです。

一言に人事管理業務といっても、その内容は多岐にわたります。いずれも、企業の活性化には欠かせない業務です

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4.人事管理クラウドの機能でできることとは?

人事管理業務の重要性が分かったところで、改めて人事管理クラウドの説明に戻りましょう。事業規模を問わず多くの企業が導入している人事管理クラウドでは、人事管理部門がやるべき仕事の多くをシステム上で行ってくれます。

ここでは以下5つの側面から、人事管理クラウドの機能について見ていきましょう。

  1. 勤怠管理
  2. 労務管理
  3. 給与計算
  4. 採用管理
  5. 人事評価

①勤怠管理

前述したいくつかのリスクから、出退勤などの勤怠データ管理はタイムカードや紙ベースからITを活用したシステムに移行しています。人材管理クラウドを勤怠管理に活用すると、以下のメリットが生じるのです。

  • 打刻漏れや不正打刻の防止
  • 勤怠データの集計にかかるコストの削減
  • 給与計算の効率化

②労務管理

労務管理とは、賃金や労働時間、福利厚生や労働条件などの労働環境を各法令に従って管理すること。人事管理クラウドを活用すると、以下の業務をスムーズに進められます。

  • 新たに雇用した従業員に対する労働条件通知書(雇用契約書)の交付
  • 昇給や人事異動など労働条件変更の履歴管理
  • 社会保険や労働保険に関する書類作成および行政への届け出

③給与計算

人事管理業務担当者にとって給与計算は、非常に工数がかかるうえ、決してミスが許されない業務でもあります。人事管理クラウドの給与計算システムを活用すると、煩雑な給与計算業務にかかる工数を大幅に削減できるのです。

給与や税金の自動計算だけでなく、システムによっては明細の作成や配布の自動化、源泉徴収票の自動作成、法定調書合計表など帳票作成をサポートするものもあります。

④採用管理

人事管理クラウドには「採用管理システム」を備えているものもあります。採用管理システムとは、応募者情報や求人情報の管理、面接選考の管理など、応募から入社までの一連の業務を一元管理するシステムのこと。

採用管理システムを活用すると、人的リソースのコスト削減だけでなく、売り手市場による応募者への対応にスピード感を持たせてくれます。

⑤人事評価

人事管理クラウドでは、従業員一人ひとりの能力や所有資格、経験などをデータベースとしてクラウドで管理できます。

経営者一人が全従業員の能力や働きぶりをすべて把握することは、残念ながら不可能です。しかし従業員が生き生きと働くには、労働に応じた適切な評価と報酬が欠かせません。

人事管理クラウドを活用すれば、より明確かつスピード感を持って従業員の人事評価を把握できるのです。

人事管理クラウドはさまざまな機能を備えています。システムの透明性は、従業員の満足感や安心感にもつながっているのです

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5.人事管理クラウド導入のメリットと効果5つ

ここでは人材管理クラウドシステムを導入するメリットについて、掘り下げてみましょう。適切に人事管理クラウドを活用すると、以下5つのメリットを得られます。

  1. 業務の効率化
  2. セキュリティの強化
  3. 人為的なミスの削減
  4. 継続的な人材育成
  5. 法改正の対応が容易

①業務の効率化

組織の基盤ともいうべき「ヒト」に関する情報量は、膨大です。紙やExcelで管理するには限界があるでしょう。

人事管理クラウドでは「ヒト」に関する情報のすべてを一元管理します。業務ごとに必要な人事情報の差し戻しや更新・修正にかかるコストを大幅に削減し、業務の効率化を図れるのです。

②セキュリティの強化

前述のとおり、人事管理業務には高度なセキュリティ管理が求められます。人事情報が漏えいすれば、従業員からの信頼を失うだけでなく、企業価値そのものを下げてしまうでしょう。

人事管理クラウドでは、パスワード管理やバックアップを徹底して行います。操作ログが保存できるシステムを利用すれば、万が一悪質なデータ操作があったり、外部に漏洩したりしても発見しやすくなるでしょう。

③人為的なミスの削減

人間はミスをおかす生き物ですので、人がかかわる以上ヒューマンエラーは0になりません。しかし可能な限り人的な作業を減らして、エラーを0に近付けることは可能です。

人事管理クラウドは勤怠管理や給与計算などを自動で計算するため、人がするより早くかつ正確にデータを抽出できまし、必要に応じて特定の時期にアラートも上げられます。また「うっかり作業を忘れてしまった」というミスも減らせるのです。

④継続的な人材育成

人材育成は一度の研修やトレーニングで成せるものではなく、継続的な取り組みが必要です。人事管理クラウドでは、従業員一人ひとりの異動や配置転換の履歴、目標や評価などを管理するため、戦略的に能力開発を続けられます。

保有資格や役職歴、人事評価などを一元管理し、企業の将来イメージや人事施策の検討などに役立てられるのです。

⑤法改正の対応が容易

育児介護休業法や労働基準法など、労働条件に関する法令はひんぱんに行われています。もちろん法改正に明るい従業員がいれば、その都度アラートを上げて対応できるでしょう。しかし現実的には難しいと考えられます。

人事管理クラウドでは、就業に関する法改正があった場合、システムを通じて速やかに通知されるのです。法令改正に対して迅速に対応できる点は、人事管理クラウドの持つ大きなメリットでしょう。

人事管理クラウドの導入は、「業務の効率化」「セキュリティの強化」「人為的なミスの削減」「継続的な人材育成」「法改正の対応が容易」の5つです

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6.人事管理クラウドを選ぶ際におさえておきたいポイント4つ

さまざまなメリットを持つ人事管理クラウド。一方で、デメリットと思われる側面も少なからず存在します。人事管理クラウドを選ぶ際は、以下の4点に注意しましょう。

  1. 安心・安全なセキュリティ体制が整っているか
  2. 機能に過不足はないか
  3. 導入によってどの程度の工数削減が実現できるのか
  4. 導入後のサポート体制は充実しているか

①安心・安全なセキュリティ体制が整っているか

人事業務で管理する従業員情報は個人情報にあたります。この個人情報に簡単にアクセスできないよう万全なセキュリティ対策を講じる義務が、すべての企業にあるのです。

残念ながらネットワークを用いている以上、不正コピーや不正アクセスなどの被害を受ける可能性がまったくないとはいい切れません。システム以外のバックアップを整えるなどして、リスクを意識した運用が必要です。

②機能に過不足はないか

人事管理クラウドには給与計算や人事情報管理、人事評価や要員配置などさまざまな機能が備わっています。導入を検討しているシステムが、「課題解決につながる機能を備えているか」「不要な機能を多く備えていないか」、事前に確認しておきましょう。

紙やExcelでの管理から移行する際は、一度にすべての情報をクラウド管理しようとせず、基本情報から少しずつシステムに取り込むとよいです。

③導入によってどの程度の工数削減が実現できるのか

総従業員10名の企業と1,000名の企業とでは、人事管理業務にかかる工数が異なります。人事管理クラウドシステムを導入すると、どの程度工数が削減されるのか、あらかじめ試算しておきましょう。

システムを導入しても結局タイムカードやExcelを参照にしながら手入力していては、作業負荷の軽減どころか新たなヒューマンエラーを起こす原因になります。

④導入後のサポート体制は充実しているか

人事管理クラウドは長期的に活用されるシステムです。導入後のサポート体制についても必ず確認しておきましょう。

  • 保険料率や税率が改定された際、素早くアップデートできる体制がシステム側に備わっているか
  • 新設された社内制度にも柔軟に対応できるか
  • 柔軟なカスタマイズ性を備えているか
  • ほかツールとの連携にも対応しているか

人事管理クラウドの目的は、システムの導入ではなく人事管理業務への活用です。導入が完了したところで終了、とならないよう注意しましょう

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7.知っておきたい!クラウド型とオンプレミス型の違い

冒頭でも少し触れたとおり、人事管理システムには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つのタイプがあります。それぞれ提供形態や導入フロー、カスタマイズ性などさまざまな違いがあります。特に注目されるのはコスト面での影響です。

ここではクラウド型とオンプレミス型の特徴を比較しながら、2つの違いについて見ていきましょう。

クラウド型とは?

クラウド型とは、インターネット上のサーバを使用してソフトウェアを利用する形態のこと。物理的にソフトを購入したり、サーバを設置したりする必要がないため、ほとんどの場合、導入にかかる追加費用はありません。

比較的かんたんに利用を開始できるのが、クラウド型です。ストレージの拡張性が高く、ユーザーごとの月額課金が基本となっているため、ランニングコストも安く抑えられます。

オンプレミス型とは?

対するオンプレミス型は、サーバーやパソコンにソフトをインストールして利用する形態のこと。導入の際、必要機器を購入もしくはリース契約する必要があるため、クラウド型に比べて導入費は高めです。

しかし強固なセキュリティやカスタマイズ性の高さなどはオンプレミス型に軍配が上がります。ほかソフトウェアとの統合性が高いのもオンプレミス型の強みです。

クラウド型とオンプレミス型、それぞれ異なる特徴があります。自社の運用目的や導入コストとあわせて比較検討してみましょう