人事評価制度研修は、部下を評価する上司や管理者にとって欠かせない研修です。人事評価制度研修の方法や効果などについて、説明します。
目次
1.人事評価制度研修とは?
人事評価制度研修とは、評価者が「人事評価制度を理解する」「公平で正しい評価をする」2点を身に付ける研修のこと。これにより部下の人生を左右するほど大きな影響を与える人事評価を正しく進められるようになるのです。
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人事評価制度研修の必要性
組織や企業における活動は、人材がいなければ進みません。その人材を確保・維持・育成するためには人事評価制度が必須といえるのです。
しかし経営方針や働き方の見直しなどによって、人事評価制度が改定される場合もあります。評価者は人事評価制度研修を通じて、つねに自社の人事評価制度について正しく理解しておく必要があるのです。
人事評価者の多くが「評価の目的」を正しく認識していない
多くの管理職が人事評価を経験していますが、そのほとんどが人事評価制度の目的を正しく認識できていないといわれています。人事評価の本来目的は、経営戦略や人事戦略に沿った人材の育成と企業の業績向上。
認識を誤ったまま人事評価が進んでしまうと、賃金やポジションといった待遇面ばかりを見てしまい、正しい評価にならない恐れがあります。
人事評価制度研修はどこで受けられる?
人事評価制度研修の方法は、さまざまです。たとえば、「人材活用や育成を得意とする企業が開催する研修に参加」「講師を招いて自社で研修を行う」「公務員や病院、保育所などは行政が主催する研修に参加」など。
研修の参加人数や必要となる研修回数などをふまえて、どこで受けるか検討しましょう。
2.知っておこう!人事評価制度研修の目的
人事評価制度研修の目的は、管理職が人事評価を正しく行い、社員を成長させて組織力や業績向上へつなげること。しかしそれ以外の目的も多数あります。ここでは、人事評価制度研修の目的を見てみましょう。
評価能力を向上させるため
被評価者によって、性格や価値観、部内で担っている役割などが異なるため、人事評価でさまざまな問題や課題が出てきます。
そのような実際のケースを題材にして人事評価制度研修を進めると、解決のための知識やスキルを研修者間で共有できるため、評価者の評価能力向上につながるのです。
評価者の役割を正しく認識させるため
評価者の役割は、社員の成長と企業や組織の成長を結び付けること。評価者はそのために、企業や組織の経営ビジョンや戦略・求める人材像・成果などを提示し、社員が人材像や成果へどれだけ近付けているかを評価するのです。
評価制度や評価方法など運用における基本を理解させるため
人事評価制度や評価方法など、人事評価における基本の理解も人事評価制度研修の目的です。人事評価制度研修では、基本的な人事制度の機能である評価・処遇・育成と、自社の人事評価制度について、基本的な運用方法や評価方法を学びます。
また管理職になって間もない社員に対して、評価者としての責任をしっかりと理解させる重要な機会なのです。
公正・公平な評価を行えるようにするため
「評価者が感情的な評価を付ける」「評価の根拠や評価結果を開示していない」「被評価者の日々の行動を見ていない」のは、公平で正しい評価とはいえません。人事評価制度研修で、評価者として公正・公平な評価をするための意識や行動を身に付けましょう。
評価のフィードバックを行えるようにするため
評価者はただ評価を伝えるだけでなく、企業や組織の経営方針あるいは部署の目標などと比較してどのような部分が評価されたのか、もしくはされなかったのかなどを具体的にフィードバックしなければなりません。
なぜならば、結果を踏まえて今後どのようになっていって欲しいのかを、将来の目標設定につなげる必要があるからです。
現場への適用
部下が、「どのような人材が求められていて、どのような成果が評価につながるのか」を理解し、自主的に成長できるようになれば、管理職として評価制度をきちんと活用できているといえます。
もしも人事制度自体が経営方針に沿っておらず、現場にとって運用しにくい場合は、自社の制度を更新してみましょう。
3.人事評価制度研修の対象者とは?
人事評価制度研修は、管理職者だけが参加するものではありません。対象者はほぼすべての社員ともいえるのです。研修を受けるべき対象者について見てみましょう。
管理職
管理職を対象とした人事評価研修は、新任管理職者と経験のある管理職者とで目的が異なります。
- 新任管理職者向けの研修:自社の人事評価制度について目的や手段を理解し、スムーズな実践につなげる
- 経験のある管理職者向けの研修:これまでの人事評価業務の中で感じた疑問点などを解消して、スキルアップにつなげる
人事担当者
人事担当者として、人事評価制度の基本や運用方法を理解することが目的です。人事評価制度の基本、構築や運用のポイントなどを学び、自社の人事評価制度の改善や更新などに役立てるのです。
変化の激しい社会情勢や経営環境に対応するには、人事評価制度の更新が重要となります。人事担当者が人事評価制度について学ぶことは、非常に大切なのです。
経営層
変化の激しい経営環境や社会情勢に対応するには、人事評価制度を経営戦略とリンクさせる必要があります。経営層が人事評価制度に参加すると、より経営戦略に沿った人事評価制度を構築できるのです。
また外部の専門家と提携すると、他社の事例を参考にする機会を得られます。
被評価者(被評価者研修)
被評価者が自社の人事評価制度について目的や運用を理解すると、「人事評価の結果を自分の成長を結び付けよう」という意識を持てるようになります。
また評価者の観点を知ると、評価者と被評価者、双方で評価に対するギャップを減らせるため、両者の間に信頼関係が構築されるのです。
4.人事評価制度研修が掲げている4つのテーマとは?
人事評価制度研修には、4つのテーマがあります。それぞれについて解説しましょう。
- 評価者としての心構え
- 人事評価制度の仕組み
- 目標設定
- 面談
①評価者としての心構え
評価者としての心構えは、人事評価の根幹に関わるテーマです。誤った心構えのままでは正しい評価が行えません。「人事評価は賃金査定のための評価」だと思っていると、人事評価の最大の目的である人材育成が果たせなくなってしまいます。
まずは評価者が人事評価制度の目的やその意味を理解し、公平な評価を行うための心構えを身に付けることが大切なのです。
②人事評価制度の仕組み
人事評価制度には、3つ(情意評価・能力評価・成果評価)あります。
- 情意評価:仕事を行う姿勢に対する評価
- 能力評価:仕事に用いる能力に対する評価
- 成果評価:仕事の成果に対する評価
それぞれの制度で評価項目や基準が異なりますので、評価者はできるだけ人事評価制度研修でそれらを理解しておきましょう。
③目標設定
人事評価では、被評価者への目標設定が欠かせません。次の評価期間が始まる前に、前回の目標達成度や評価を参考にして次の目標を提示しなければならないからです。
そのため人事評価制度研修では、部下の目標を設定する時のポイントや目標設定の進め方、避けるべき目標などを学びます。評価者が評価目的を理解し、それに沿った具体的な目標設定ができるようになるためです。
目標管理シートの活用
目標管理シートを利用すると、目標の設定から結果のフィードバックまでを被評価者ごとに管理できます。目標設定時やそれ以降の面談の内容、評価の課程も見やすく残せるため、社員の人事異動を決める際にも有効活用されるのです。
目標管理シートには定まった様式がありません。自社で使用する書式や項目などを理解して使いこなすために、人事評価研修が行われる場合もあります。
④面談
面談は、部下との信頼関係を築く大切な機会。目標設定時や中間評価などで部下とコミュニケーションを取り、「設定した目標は適切か」「中間評価時点では期末評価までに何をするべきか」など、目標達成に関わる面談スキルを定期的に学ぶことが大切です。
評価を行うに従って、面談の基本を忘れがちになります。第三者に客観的にスキルを見てもらうことも有効かもしれません。
5.人事評価制度研修を取り入れるべき企業の特徴3つ
人事評価制度は、どのような企業が取り入れるとよいのでしょう。人事制度研修を取り入れるべき企業の特徴を見てみます。
- 人事制度が機能していない
- 目標設定や面談が上手くできていない
- 評価者の評価スキルが低い
①人事制度が機能していない
人事制度が機能していないという状態は、管理者の評価スキルやリーダーシップスキルが未熟であるという証でもあります。
評価スキルが未熟ですと、適正な目標設定やフィードバックができないため、評価結果を部下の成長へ結び付けにくくなります。「評価が社員のやる気につながっていない」という場合は、人事評価制度研修が必要でしょう。
②目標設定や面談が上手くできていない
目標設定や面談は、部下の能力・適正・将来のキャリアプランなどを把握して部下との信頼関係を築く重要な機会です。
人事評価制度研修を実施すれば、目標設定・面談・フィードバックなどのロールプレイやケーススタディを通じて、スキルを習得できます。
③評価者の評価スキルが低い
評価スキルが低いまま評価を続けてしまうと、適正な評価になりにくいため、部下は評価に納得しにくくなります。結果、部下のモチベーションが下がり、離職率や業績ダウンなどが生じてしまうかもしれません。
6.人事評価制度研修を開催している企業・団体について紹介
社外の人事評価制度研修を利用する場合、ほかの企業や団体が開催する研修やセミナーなどに参加することになります。どのような団体が開催しているのか、見てみましょう。
社労士事務所
社労士事務所が主催する人事評価制度研修では、新人マネージャー向け研修やフィードバック研修などが開催されています。社労士は人事・労務管理の専門家ですので、「人事評価制度とは何か?」からしっかり学べるのです。
なお社労士事務所によっては、労務管理が主な業務になっている場合も。研修を開催する事務所の得意分野を見極めておきましょう。
コンサルティング会社
人材育成などのコンサルティング会社が開催する研修では、人材育成につながる能力・姿勢・行動などを学べます。研修で行うロールプレイやケーススタディなどの題材をカスタマイズできる場合もあり、研修者のレベルや自社の評価制度に合った研修が行えます。
官公庁や自治体向けもあり
官公庁や自治体は、民間企業と組織の性質が異なります。そのため、さまざまなコンサルタント会社が、官公庁や自治体向けに独特のプランを作っているのです。
官公庁や自治体の場合、民間企業のような組織の業績を上げるなどとはまた違った組織の役割があるもの。働きがいや個人の成長などに焦点をあてるとよいでしょう。
地方自治体
地方自治体では、市区町村職員や教職員を対象とした研修が開催されています。企業が行う研修と同様の内容が多く、「人事評価制度の目的や評価のポイント」「職員のモチベーション向上」「目標設定や面談などのロールプレイ」などがテーマになっているのです。
近年、地方自治体では人事評価制度の導入や見直しが推進されています。そのため定期的に研修を行う自治体も、あるようです。
一般財団法人
一般社団法人が主催している研修では、主に講師を企業などの組織に派遣する形式を取っています。自社内で研修を開催できるのでスケジュール調整がしやすいでしょう。
また部署や階層ごとに時間を分けて研修を行うことも可能です。さらに自社に特化した内容の研修を行えます。「受講対象者が多い」「面談やフィードバックなど評価者のロールプレイに時間を多く取りたい」場合などに向いているでしょう。
スクール形式
スクール形式では、ほかの人事評価者と意見交換がしやすいです。さまざまな企業や組織での実践例を知っていけるため、自社のケースにも活用できるでしょう。
参加資格が限られていたり受講料がテーマごとに異なっていたりする場合もあるので、よく確認してから申し込みましょう。