働き方改革実現会議とは? 9つのテーマ、メンバー

働き方改革実現会議とは、働き方に関する問題解決のための諮問機関です。ここでは、働き方改革実現会議について解説します。

1.働き方改革実現会議とは?

働き方改革実現会議とは、働き方に関する問題解決のために平成28年9月に設立された諮問機関のこと。議長は内閣総理大臣が担っており、メンバーは労働界のトップ・産業界のトップ・有識者などになります。

働き方改革実現会議の目的

働き方改革実現会議の目的は、働き方改革の実現を目的とした実行計画の策定などにかかわる審議に資すること。

少子高齢化といった社会構造の変化に伴い、「多種多様な人材が働きやすい」「心身ともに健康で働ける」といった、環境の整備に関する検討が求められているからです。

働き方改革実現会議とは、「多種多様な人材が働きやすい労働環境を整えるには」といった課題解決のために設立された諮問機関です

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2.働き方改革実現会議の構成

働き方改革実現会議は、下記のような構成になっています。

  • 議長:内閣総理大臣
  • メンバー:担当大臣を含む関係閣僚のほか、労働界や産業界のトップ、15人の有識者など

有識者とは?

有識者とは、「広く物事を知っている人」「学問や識見のある人」のこと。働き方改革実現会議のメンバーである有識者には、働き方改革の実現に必要な識見があると見なされた人物が選定されています。

働き方改革実現会議は、「議長である内閣総理大臣」「関係閣僚」「労働界や産業界のトップ」「15人の有識者」で構成されています

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3.働き方改革にある8つの柱

働き方改革には、8つの柱があります。一体どのようなものか、解説しましょう。

  1. 時間外労働
  2. 勤務間インターバル制度
  3. 年次有給休暇取得日数
  4. 割増賃金率
  5. 労働時間状況
  6. フレックスタイム制の導入
  7. 高度プロフェッショナル制度
  8. 産業医・産業保健機能

①時間外労働

時間外労働とは、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超えた労働のこと。労働者に時間外労働をさせる場合、残業の上限時間を原則、「月45時間・年360時間」とし、これ以上の労働については臨時的な特別の事情がないと認められません。

②勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後から翌日出社するまでの間に、一定時間以上の休息時間、すなわちインターバルを確保する仕組みのこと。

勤務間インターバル制度は、企業の努力義務とされています。そのため企業は、労働者のために十分な生活時間・睡眠時間を確保するよう努めなければならないのです。

③年次有給休暇取得日数

年次有給休暇取得日数とは、使用者が労働者の希望を聴いたり踏まえたりしたうえで、年次有給休暇の時期を指定すること。従来、労働者自らの申告が必要だった有給休暇の取得が、申告なしで年5日取得できるようになりました。

④割増賃金率

割増賃金率とは、中小企業で働く労働者が「月60時間」を超える残業となった場合、残業割増賃金率が50%になること。改革前は、「大企業は50%」「中小企業は25%」だったため、中小企業の残業割増賃金率の部分が引き上げられたことになります。

⑤労働時間状況

労働時間状況とは、割増賃金の適正な支払いを目的として、労働時間を客観的に把握すること。通達により規定されました。

そのため従来、通達の対象外とされていた「裁量労働制適用の人」「管理監督者」含め、すべての人の労働時間を客観的な方法もしくはそのほか適切な方法で把握することが、義務付けられたのです。

⑥フレックスタイム制の導入

フレックスタイム制における労働時間の清算期間は従来、1ヵ月と定められていたのです。それが改革によって清算期間が3カ月へと変更されました。

フレックスタイム制における労働時間の清算期間延長の目的は、子育て・介護などといった労働者のさまざまな生活ニーズに合わせた、柔軟な労働時間の決定を可能にすることです。

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⑦高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、「高度の専門的知識などを有する」「職務の範囲が明確である」「一定の年収要件を満たす」といった労働者を対象とした制度のこと。

労使委員会の決議や労働者本人の同意を前提として、「年間104日以上の休日確保措置」「健康管理時間の状況に応じた健康、福祉確保措置など」を講じて、労働基準法に定められた労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金の規定を適用外にする制度です。

⑧産業医・産業保健機能

産業医・産業保健機能は、改革によって下記のような内容が行われるようになりました。

  • 事業者から産業医への情報提供を充実、強化
  • 産業医の活動と衛生委員会との関係を強化
  • 産業医などによる労働者の健康相談を強化
  • 事業者による労働者の健康情報の適正な取扱いを推進

つまり労働者が心身ともに健康で就労するための措置を、強化したのです。

働き方改革には、「時間外労働」「勤務間インターバル制度」「年次有給休暇取得日数」「割増賃金率」「労働時間状況」「フレックスタイム制の導入」「高度プロフェッショナル制度」「産業医・産業保健機能」といった8つの柱があります

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4.労働における3つの課題

労働における課題とは何でしょうか。ここでは、下記3つの課題について、解説します。

  1. 賃金など処遇の改善
  2. 場所・時間などの制約の克服
  3. キャリア構築の再整備

①賃金など処遇の改善

働き方改革では、「非正規を社会から無くしていく」という指針をもとに、「雇用形態を問わず個々の労働者の能力が正当かつ適正に評価される」「労働者の就労意欲を高めて、生産性を向上する」などを実現する環境の整備が重要だと考えられています。

②場所・時間などの制約の克服

「育児や介護など家庭生活との両立」「女性や高齢者の就労機会の拡大」を目指した環境の整備は、労働における大きな課題です。また「時間当たりの労働生産性の改善」「ワークライフバランスの実現」の達成は、労使双方にとって急務となっています。

③キャリア構築の再整備

従来の日本では終身雇用制度により新卒から定年まで、ひとつの企業で勤め上げるキャリアパスが一般的でした。

しかしこれからは、労働者一人ひとりの年齢・生き方・ライフステージに適したキャリアパスを柔軟に選択できる環境の整備が、必要なのです。

労働者一人ひとりが柔軟に働き方を選択するためには、「賃金など処遇の改善」「場所・時間などの制約の克服」「キャリア構築の再整備」が必要です

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5.第一回働き方改革実現会議におけるの9つのテーマ

働き方改革実現会議では、労働における3つの課題「賃金など処遇の改善」「場所・時間などの制約の克服」「キャリア構築の再整備」を9つのテーマに細分化し、検討しています。ここでは9つのテーマについて、それぞれ解説しましょう。

  1. 非正規雇用の処遇改善
  2. 賃金引き上げ・労働生産性向上
  3. 長時間労働の是正
  4. 転職・再就職支援
  5. 柔軟な働き方
  6. 女性・若者の活躍
  7. 高齢者の就業促進
  8. 子育て・介護と仕事の両立
  9. 外国人材の受け入れ

①非正規雇用の処遇改善

非正規雇用の処遇改善とは、同一企業における正規雇用労働者・非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消すること。これには、「同一労働同一賃金」の実現が不可欠です。

そのため労働契約法・パートタイム労働法・労働者派遣法といった、非正規雇用者に関する法律の改正が計画されています。

②賃金引き上げ・労働生産性向上

賃金引き上げ・労働生産性向上とは、「名目GDP成長率に配慮したうえで年率3%程度を目途とした賃金の引き上げ」「中小企業や小規模事業者の生産性を向上するために行う支援や取引条件の改善」のこと。

これらの実現に向け、「各種税制の整備」「生産性向上と賃上げを実現した企業に対する助成金制度の創出」などが計画されています。

③長時間労働の是正

長時間労働の是正とは、「労働者の生活状況に合わせた柔軟な働き方の実現」「労働者の心身の健康を確保」のため、以前より問題とされてきた長時間労働を是正すること。

これに向け、「長時間労働の一因となる36協定に、罰則付き上限規定を制定」「過重労働が確認された企業への立入調査や指導」が計画されています。

④転職・再就職支援

終身雇用制が守られていた日本社会。転職・再就職は、いまだに労働者を労働市場上、不利な立場に陥れる一因になっているのです。

そこで転職や再就職を、「労働者のキャリアアップ」「採用機会の拡大」と捉えるため、「転職者受け入れ促進の指針策定」「能力を評価する人事システムの推奨」が計画されています。

⑤柔軟な働き方

柔軟な働き方とは、労働者一人ひとりが自らさまざまな働き方を選択できること。日本では、在宅勤務やテレワーク、副業や兼業を認める企業はまだ多くありません。

そのため「雇用契約の有無を問わないテレワーク普及のためのガイドライン」「労働時間管理や健康管理、労災保険給付を含めた兼業や副業の在り方のガイドライン」などの制定が、計画されているのです。

⑥女性・若者の活躍

女性・若者の活躍とは、一億総活躍社会の実現を目指す施策のこと。「女性活躍推進法の制定」「配偶者控除の引き上げ」「同一賃金同一労働の制度をもとにした、若者への集中的な支援」などが計画の柱に置かれています。

少子高齢化による労働力不足の解消とともに、さまざまな働き方をとおして「女性や若者の職場定着」を目標としているのです。

⑦高齢者の就業促進

高齢者の就業促進とは、定年退職を迎えた高齢者の定年を延長したり継続雇用したりして、就業機会を創造すること。

高齢者に「健康・意欲・能力」がある限り、年齢にかかわらず働き続けられる社会の実現のため、「就業促進に関するマニュアルや事例の作成」「助成措置の強化」といった施策を企業側に働きかけているのです。

⑧子育て・介護と仕事の両立

子育て・介護と仕事との両立とは、誰もが「仕事と生活の調和」を取って働ける社会の実現です。子育て・介護をしながら仕事を続けられるような環境の整備のために、育児・介護休業法などの法整備が進められています。

企業は仕事と生活の調和を目的とした環境整備のために、社内の制度設計を見直していかなければなりません。

⑨外国人材の受け入れ

外国人材の受け入れとは、イノベーションによる日本経済の活性化を目的として、高度な技術や知識がある外国人材を受け入れること。これにより企業は、生産性の向上を実現できるのです。

安定した人材を安心して受け入れるために、「高度外国人材グリーンカードの創設」「資格在留期間の大幅短縮」などが進められています。

働き方改革実現会議の検討テーマは、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引き上げ・労働生産性向上」「長時間労働の是正」「転職・再就職支援」「柔軟な働き方」「女性・若者の活躍」「高齢者の就業促進」「子育て・介護と仕事の両立」「外国人材の受け入れ」の9つです

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6.働き方改革実現会議の過去事例を振り返る

10回にわたる働き方改革実現会議における過去の事例から、それぞれの会議で「長時間労働の是正」「非正規雇用労働者の処遇改善」などがどのように検討されてきたかについて、見ていきましょう。

第2回働き方改革実現会議

第2回働き方改革実現会議で議論されたのは、下記のような内容です。

  • テレワークや副業などを含めた多様で柔軟な働き方の在り方
  • 多様な選考方法や採用機会の提供
  • 病気治療と仕事の両立
  • 障害者の就業環境整備の在り方
  • 働き方に中立的な社会保障制度
  • 税制の在り方
  • リーダー育成など女性が活躍しやすい環境整備

第3回働き方改革実現会議

第3回働き方改革実現会議では、下記のような内容について積極的な議論が行われたのです。

  • 労働者をどれだけ雇用できるかといった企業の雇用吸収力
  • 生産性の高い産業への転職
  • 再就職支援の在り方
  • 社会人の学び直しや職業訓練、給付型奨学金の在り方など、格差を固定化させない教育の在り方
  • 人材育成を充実させる在り方
  • 春季労使交渉に向けた賃金引き上げの方向性

労働者の能力や意欲をいかに伸ばし、企業の生産性に結び付けていくかについて、さまざまな角度から検討を進めました。

第4回働き方改革実現会議

第4回働き方改革実現会議では、同一労働同一賃金などの非正規雇用の処遇改善について検討しました。

会議中、安倍元首相は同一労働同一賃金の導入に関し、「賃金はもちろんのこと、福利厚生や教育、研修の機会にも恵まれていない点もあり、処遇全般について目を向けていく必要がある」との意見を述べています。これは、福利厚生や教育、研修までを網羅した検討の必要性を意味しているのです。

第5回働き方改革実現会議

第5回働き方改革実現会議では、同一労働同一賃金の政府のガイドライン案を中心とした議論が行われました。そこでは労働者の待遇を、以下の4つに分類したのです。

  • 基本給
  • 賞与、手当
  • 福利厚生
  • 教育訓練・安全管理

さらに正規と非正規雇用間の待遇差について、問題となる例と問題とならない例に分け、実例を挙げて分かりやすくまとめました。

第6回働き方改革実現会議

第6回働き方改革実現会議では、下記2つのテーマについて検討が行われました。

  1. 第5回働き方改革実現会議の議題である同一労働同一賃金
  2. 長時間労働是正

そして検討のなかで、「現状、実質的に無制限で残業できる状況改善の必要性」「時間外労働に関する36協定に何らかの上限規制を設定する必要性」の2つについて、提言しました。

第7回働き方改革実現会議

第7回働き方改革実現会議では、長時間労働是正・高齢者雇用について検討が行われました。長時間労働は、過労死などの原因でもあり、社会問題になっています。

長時間労働の是正に関しては、「残業上限時間数の検討」「上限時間違反の企業に罰則規定を盛り込む」といった、上限規制案が提示されました。月末の実行計画策定に向け、繁忙期の上限を「1カ月100時間」「2カ月平均80時間」とすることが検討されています。

第8回働き方改革実現会議

第8回働き方改革実現会議では、下記2つのテーマについて検討が行われました。

  1. 残業時間の上限規制
  2. 外国人材の受け入れ

会議中、日本労働組合総連合会神津里季生会長は、「上限規制の適用除外業種の撤廃」「過労死防止対策の法制化」「制度の導入後一定の期間を経て繁忙期の残業100時間を見直す」などを条件付きで容認したのです。

第9回働き方改革実現会議

第9回働き方改革実現会議では、時間外労働の上限規制などの実行計画について検討しました。

議長である安倍元首相の「長年の慣行を破り、実態に即した形で時間外労働規制を適用する方向としたい」といった発言を受け、「残業時間の上限を月45時間、年間360時間とする」「労使で協定を結べば月平均60時間、年間720時間、繁忙月は100時間未満とする」などの適用が決定しました。

第10回働き方改革実現会議

第10回働き方改革実現会議では、3月末までに取りまとめる予定の「働き方改革実行計画」の政府案が提示されました。

実行計画のロードマップ進捗状況については、

  • 継続的な実施状況の調査や、施策の見直しを図ることの必要性
  • 働き方改革実現会議を改組した同一の構成員からなる「働き方改革フォローアップ会合」の設置

により、フォローアップの実施が決まりました。

10回に及ぶ働き方改革実現会議では、労働者の自由で柔軟な働き方を実現させるための幅広い検討が行われました