従業員エンゲージメントの強化とは、現代日本の就業環境にて、非常に重要視されている考え方のひとつです。従業員のモチベーションを高め、生産性の向上や離職率の低下といったメリットをもたらします。
目次
1.従業員エンゲージメントの強化とは?
はじめに、従業員エンゲージメントの強化とはどのような概念なのかを確認しておきましょう。
従業員エンゲージメントが高い状態とは、会社と従業員の双方が信頼関係で結ばれている状態のこと。つまり従業員エンゲージメントの強化とは、従業員が会社に対して誇りや愛着を持てる状態に導くもしくはその状態をより高めることなのです。
社内人材のエンゲージメントを強化する目的
エンゲージメント強化の最終的な目的は、企業と従業員個人の関係性を分解し、人材の流出に歯止めをかけること。従業員エンゲージメントを強化すると、従業員一人ひとりが活き活きと働ける環境を構築できるのです。
2.企業が従業員とのエンゲージメントを強化すべき理由
企業が従業員エンゲージメントを強化する理由について、もう少し詳しく掘り下げてみましょう。企業が従業員とのエンゲージメントを強化すべき理由として挙げられるのは、次の4つです。
- 競争環境のグローバル化を推進していくため
- 労働市場のオープン化に対応していくため
- 人材獲得競争の拡大に適応していくため
- 社内人材のマネジメントをしていくため
①競争環境のグローバル化を推進していくため
業界や企業規模により多少の大小があったとしても、国内市場の多くは成熟化と低成長が定着しています。企業が継続的な成長を続けるには、頭打ちになった競争環境から踏み出し、海外にも成長の糸口を見つけなければなりません。
そこで組織に対する自発的な貢献意欲を持った人材、つまり従業員エンゲージメントの強化が必要になるのです。
②労働市場のオープン化に対応していくため
一昔前の転職は、どちらかといえばネガティブで異例なものとして語られていました。しかしそれも今は昔で、キャリアアップの大きなチャンスとされています。エンゲージメントの強化は、貴重な人材の流出に歯止めをかけることでもあるのです。
③人材獲得競争の拡大に適応していくため
キャリアアップのチャンスにもなり得る転職は、なにも若い人材に限った話ではありません。近年の転職市場では管理職ひいては役員層まで、即戦力を求める企業も増えてきました。
エンゲージメントが低いままでは、せっかく活躍を期待して育成を進めたマネージャー層が、企業を離れる恐れもあるのです。
④社内人材のマネジメントをしていくため
企業全体の生産性向上は、どの会社も共通して抱く課題のひとつです。「明るい将来を描ける会社」と「成長チャンスが見出せない」会社。従業員はどちらに属して貢献したいと考えるでしょうか。
エンゲージメントの強化は、社内人材マネジメントの面でも必要な取り組みなのです。
3.従業員エンゲージメントを強化するメリット
従業員エンゲージメントを強化するメリットは、3つです。
- 離職率の低下:企業への自発的な貢献意欲が高まり、この会社で働き続けたいという気持ちが生まれる
- モチベーションのアップ:仕事に誇りを持ち、価値のある仕事だと感じることで、モチベーションだけでなくサービスレベルや顧客満足度も上がる
- 業績の向上:企業全体の士気が高まり、サービスや品質、安全性の向上につながる
4.エンゲージメント向上のために強化すべきポイント
実際にエンゲージメントを強化したいと考えた際はまず、自社にエンゲージメントを低下させる要因が潜んでいないか、見直してみましょう。従業員エンゲージメントの高低に大きな影響を与えるのが、マネージャー層・管理職の存在です。
従業員エンゲージメントが低下する要因
グローバルな組織コンサルティングファーム、コーン・フェリー社が実施した従業員エンゲージメント調査によると、エンゲージメントの高い従業員と低い従業員との間には、特に中間管理職に関わる要因で大きな差分が見られました。
つまりマネージャー層、管理職の立ち振る舞いが、従業員エンゲージメントの高低に影響を与えているのです。
エンゲージメントに対するマネージャーの影響力と重要性
エンゲージメントの向上に向けた取り組みに即効性を持たせ、具体的な活動に落とし込むためにはマネージャー層・管理職の機能強化が必要です。
エンゲージメントを高められるマネージャー層・管理職は、どのような特性を持つのでしょうか。従業員エンゲージメントの高い従業員と低い従業員との間で差分が大きかった項目のうち、中間管理職に関係する要因は下図の4つに大別できます。
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従業員エンゲージメントの強化ポイント4つ
それでは、従業員エンゲージメントの強化ポイントについて、ひとつずつ見ていきましょう。
- 組織のビジョンや戦略的決定についての説明と共有
- キャリア開発や能力開発の指導
- 仕事に対するフィードバック
- 情緒的なケア
①組織のビジョンや戦略的決定についての説明と共有
まず中間管理職が組織全体のビジョンや戦略的決定をについて、従業員一人ひとりに説明・共有できているかを見直します。
中間管理職には、従業員それぞれの特性を理解したうえで、企業戦略や経営方針などを浸透させるハブの機能が求められているのです。
②キャリア開発や能力開発の指導
「ビジョンや理念を一律で部下に伝えれば必ず、全従業員のエンゲージメントが強化される」わけではありません。
伝える際は、「この従業員にはどんな言動が響くか、どんな切り口が有効なのか」など、一人ひとりに焦点を当てた指導や能力開発が必要なのです。
コーン・フェリー社では、パーソナルな特性を診断するセルフ・アセスメントの手法に5つの対立軸があると説いています。従業員一人ひとりの特性に応じて、下図の手法を使い分けてみましょう。
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③仕事に対するフィードバック
従業員エンゲージメントが高い企業には、総じて「仕事に対する適切なフィードバックが行われている」といった特徴があります。
- 会社は自分のことを認めてくれている。正当な評価がなされている
- 何のためにこの会社にいるのか分からない。自分の仕事が何の役にたっているのか実感が湧かない
どちらの会社に自発的な貢献やエンゲージメントが生まれるかは、一目瞭然でしょう。
④情緒的なケア
規模や業界を問わず、すべての企業は人対人の関係で成り立っています。直接的な業務の指示だけでなく、心情を汲んだ情緒的なケアが効果的という点はいうまでもありません。
従業員の体調や家族、興味などについて細やかなコミュニケーションを行うと、エンゲージメントの向上に大きく影響します。
5.組織と人材の関係性を強化しよう
「給与を増やせば人材は定着する」「チーム全体が同じ業務量で一丸となって」といった考えは今や過去の話。従業員の仕事に対する動機や価値基準は、もはや一律に考えられる時代ではありません。
これを機に、従業員エンゲージメントの切り口から企業と人材の関係性を見直してみましょう。