衛生管理者試験とは、衛生管理者免許を取得するための試験です。ここでは、衛生管理者試験について解説します。
目次
1.衛生管理者試験とは?
衛生管理者試験とは、公益財団法人安全衛生技術試験協会が指定機関となって行う衛生管理者免許を取得するための試験です。ここでは、「衛生管理者の役割」「労働安全衛生法の概要」「衛生管理者の選任する義務」について解説します。
衛生管理者の役割とは?
衛生管理者の役割とは、下記などのなかで衛生に関する技術的事項の管理を行うことです。
- 労働者の危険または健康障害を防止するための措置
- 労働者の安全または衛生教育の実施
- 健康診断の実施そのほか健康の保持や増進の措置
- 労働災害防止の原因の調査および再発防止対策
労働安全衛生法の概要を知る
労働安全衛生法の目的は、「労働災害防止のため基準の確立」「責任体制の明確化」「自主的活動を促進する措置を講ずる」といった、労働災害防止に関する総合的・計画的な対策を推進して、
- 職場における労働者の安全と健康の確保
- 快適な職場環境の形成の促進
を行うことです。
衛生管理者の選任する義務について
衛生管理者の選任する義務については、以下のような明確な定めがあります。
- 常時50人以上の労働者を使用する事業場は、衛生管理者を選任しなければならない
- 衛生管理者の選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行う
- 衛生管理者を選任したときは、遅滞なく、選任報告書を所轄労働基準監督署長に提出する
2.衛生管理者試験の種類
衛生管理者試験には、2種類あります。ここでは衛生管理者試験から下記についてかんたんに解説します。
- 第1種免許
- 第2種免許
- 第1種免許と第2種免許の違い
①第1種免許
衛生管理者試験の第1種免許には、下記のような特徴があります。
- 衛生管理者として就ける業種が全業種になる
- 第1種免許を有する衛生管理者の選任が必要な業種は、有害業務にかかわりのある業種(事業場単位)となる
- 試験科目は関係法令、労働衛生、労働生理の全般で、第2種免許より広い範囲が出題される
②第2種免許
衛生管理者の第2種免許には、下記のような特徴があります。
- 農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業も含む)電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業機械修理業、医療業および清掃業の業種を除いた業種に就ける
- 第2種免許を有する者の選任でよい業種は、事業場単位で有害業務とのかかわりが少ない業種となる
③第1種免許と第2種免許の違い
第1種免許と第2種免許には、それぞれ以下に挙げるような特徴があります。
- 第1種免許の保有者…あらゆる業種の職場で衛生管理者になれる
- 第2種免許の保有者…情報通信庁や金融・保険業、卸売り・小売業など、人体に有害がおよぶ業務と関連の少ない業種でのみ衛生管理者になれる
両者の違いを見ると、衛生管理者免許を取得しようと考えた場合、第1種免許を取得するほうが雇用機会を増やせるため、就業で有利になると考えられます。
3.衛生管理者試験の試験科目と試験範囲
衛生管理者試験の試験科目と試験範囲は、第1種免許と第2種免許とで異なる部分があります。ここでは、下記について解説します。
- 主な試験科目
- 第2種免許で出題範囲が変わる科目
- 特例の第1種免許で変わる試験科目
①主な試験科目
衛生管理者試験の主な試験科目は「関係法令」「労働衛生」「労働生理」3つで、それぞれに試験範囲が設けられています。
関係法令
関係法令とは、下記のような法令です。
- 使用者が守るべき最低限の労働条件を定めた労働基準法
- 労働者の安全と衛生に関する基準を定めた労働安全衛生法
- 作業環境の測定に関して必要な事項を定めた作業環境測定法
- じん肺に関して健康の保持や福祉の増進に寄与することを目的としたじん肺法
- これらにもとづく命令中の関係条項
労働衛生
労働衛生とは、下記に関する事項です。この分野には、衛生管理者として衛生的な職場環境を整備するために必要な事項が並んでいると分かります。
- 衛生管理体制
- 作業環境要素
- 職業性疾病
- 作業環境管理
- 作業管理
- 健康管理
- 健康の保持増進対策
- 労働衛生教育
- 労働衛生管理統計
- 救急処置
労働生理
労働生理とは、下記に関する事項のことです。メンタルヘルスの重要性が指摘される現代、衛生管理者は労働環境が人体に与える影響といった、労働生理分野の正しい理解が求められています。
- 人体組織および機能
- 環境条件による人体の機能の変化
- 労働による人体の機能の変化
- 疲労およびその予防
- 職業適性
②第2種免許で出題範囲が変わる科目
第2種免許で第1種免許と出題範囲が変わる科目は、「関係法令」「労働衛生」の2つです。ここでは、第2種免許の出題範囲である「有害業務に係るものを除いた関係法令」「有害業務に係るものを除いた労働衛生」について解説します。
有害業務に係るものを除いた関係法令
第2種免許で出題範囲が変わる科目は、関係法令です。このなかで有害業務に係るものを除いた「労働基準法」「労働安全衛生法」「これらにもとづく命令中の関係条項」が、出題範囲になります。
出題範囲が有害業務に係るものを除く理由は、「第2種免許の保有者は、人体に有害が及ぶ業務と関連の少ない業種でのみ衛生管理者になれる」ためです。
有害業務に係るものを除いた労働衛生
労働衛生についても、有害業務に係るものを除いた労働衛生が出題範囲になります。
具体的な出題範囲は、「衛生管理体制」「健康の保持増進対策」「労働衛生教育」「労働衛生管理統計救急処置」「有害業務に係る労働衛生概論」のほか、有害業務に係るものを除く、「作業環境要素」「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」となります。
③特例の第1種免許で変わる試験科目
特例の第1種免許とは、第2種衛生管理者免許を受けた者が受ける第1種衛生管理者免許試験のこと。特例の第1種免許で変わる試験科目は、「有害業務に係るものに限られた関係法令」「有害業務に係るものに限られた労働衛生」の2つです。
ここでは特例の第1種免許試験の試験科目について、具体的に解説しましょう。
有害業務に係るものに限られた関係法令
特例の第1種免許で変わる試験科目は関係法令で、有害業務に係るものに限った関係法令が、試験科目になります。具体的には、「労働基準法」「労働安全衛生法」「これらにもとづく命令中の関係条項」内の有害業務に係る関係法令です。
第2種免許の試験科目に有害業務に係る関係法令が除外されていたため、このような試験科目となりました。
有害業務に係るものに限られた労働衛生
特例の第1種免許で変わる試験科目は、労働衛生です。労働法令の中でも、有害業務に係るものに限られた労働衛生が試験科目になります。
具体的には、「作業環境要素」「職業性疾病作業環境管理」「作業管理」「健康管理」内の有害業務に係る労働衛生です。これら試験科目も、第2種免許の試験科目にはなかった範囲といえます。
4.試験時間や出題形式および配点・合否などについて
衛生管理者試験には、定められた要項があります。衛生管理者試験を受ける際の参考になるよう、これら衛生管理者試験要項について解説しましょう。
- 試験時間
- 出題形式
- 配点詳細
- 合否について
①試験時間
衛生管理者試験の試験開始時刻は、午後1時30分。試験時間は、下記のように定められています。
- 第1種衛生管理者免許試験および第2種衛生管理者免許試験は、共に全科目を通じて3時間
- 第2種衛生管理者免許を有する者が、第1種衛生管理者免許試験を受ける場合の特例の第1種衛生管理者免許試験は、全科目を通じて2時間
②出題形式
衛生管理者試験の出題形式は、「筆記形式」「回答は、5肢択一」「マークシート方式の解答用紙を使用」となっています。
マークシート方式を採用しているため、文章を作成して解答する必要はありません。5つの選択肢から正解だと思う1つを選択し、マークシートに記入するのです。
③配点詳細
衛生管理者試験の配点は、第1種免許と第2種免許とで異なるのです。ここでは、それぞれの衛生管理者試験における配点について詳しく解説します。
第1種衛生管理者免許試験の配点
第1種衛生管理者免許試験の配点は、次のとおりです。
- 関係法令では、「有害業務に係るもの(うち労基法)は80点」「有害業務に係るもの以外のもの(うち労基法)は70点」
- 労働衛生では、「有害業務に係るものは80点」「有害業務に係るもの以外のもの(うち救急処置)は70点」「労働生理では100点」
合計点数は、400点です。
第2種衛生管理者免許試験の配点
第2種衛生管理者免許試験の配点は次のとおりです。
- 関係法令では、有害業務に係るもの以外のものは100点
- 労働衛生では有害業務に係るもの以外のもの(うち救急処置)は100点
- 労働生理では100点
第2種衛生管理者免許試験の合計点数は300点となっています。
合否について
衛生管理者試験は、「それぞれの試験科目(範囲が分かれているものはそれぞれの範囲)ごとの得点が、それぞれの試験科目配点の40%以上」「全科目の合計得点が満点の60%以上」という2つの要件を満たした場合に、合格します。
試験の合否が、各試験科目・合計点の両方の基準で判断される点に注意が必要です。
5.衛生管理者試験を受けるための条件
衛生管理者試験を受けるためには、3つの条件があります。ここでは3つある受験資格の条件について、それぞれポイントを解説します。衛生管理者試験を受ける前に、受験資格があるかどうかを事前に確認しておいてください。
- 学校教育法による大学または高等専門学校を卒業している
- 学校教育法による高等学校または中高一貫教育学校を卒業している
- 10年以上の実務経験があれば学歴は関係ない
①学校教育法による大学または高等専門学校を卒業している
この要件を満たした者が、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験がある場合に、受験資格が認められます。
②学校教育法による高等学校または中高一貫教育学校を卒業している
この要件を満たした者が、その後3年以上労働衛生の実務に従事した経験がある場合、受験資格が認められます。
③10年以上の実務経験があれば学歴は関係ない
学歴を問わず、10年以上の労働衛生の実務に従事した経験がある場合にも、衛生管理者試験の受験資格が認められます。
6.労働衛生の実務経験とみなされる主な業務内容
衛生管理者試験の受験資格には実務経験の項目があり、社長や人事部長、総務部長や支店長といった事業場代表者が証明すると、実務経験として認められるのです。ここでは、労働衛生の実務経験と見なされる主な業務内容を解説します。
- 労働衛生関係の仕事
- 衛生上の調査や改善の仕事
- 統計作成や労働衛生保護具などの整備といった仕事
- 公的機関での仕事
- 建築物に関する仕事
- 健康診断と教育に関する仕事
①労働衛生関係の仕事
衛生上の調査や改善の仕事には、「労働衛生関係における作業主任者の業務」などが該当します。
②衛生上の調査や改善の仕事
衛生上の調査や改善の仕事には、「作業環境の測定など、作業環境の衛生調査業務」「作業条件や施設などの衛生改善業務」が該当します。
③統計作成や労働衛生保護具などの整備といった仕事
公的機関での仕事には、「自衛隊の衛生担当者、衛生隊員の業務」「看護師または准看護師の業務」といった、公共性の高い機関での仕事が該当します。
④公的機関での仕事
公的機関での仕事には、「自衛隊の衛生担当者、衛生隊員の業務」「看護師または准看護師の業務」といった、公共性の高い機関での仕事が該当します。
⑤建築物に関する仕事
建築物に関する仕事には、「建築物環境衛生管理技術者の業務」「専任する大規模な建築物のビルメンテナンスの統括業務」などが該当します。
⑥健康診断と教育に関する仕事
健康診断と教育に関する仕事には、「健康診断実施に必要な事項または結果処理の業務」「衛生教育の企画や実施などに関する業務」などが該当します。