インストラクショナルデザインとは? 特徴や効果、理論を簡単に

インストラクショナルデザインとは、学習効果をもたらす教育方法のことです。ここではインストラクショナルデザインについて解説します。

1.インストラクショナルデザインとは?

インストラクショナルデザインとは、学習者に最適な効果をもたらすための教育方法のことです。日本では、教育設計と訳されています。

  • 教育活動の効果や効率を高めるための手法
  • 教育活動の魅力を高めるためのモデル
  • 授業や研修などの実施に関する研究

など最適な教育効果をあげるための教育方法を設計します。

インストラクショナルデザインとは、学習者に最適な効果をもたらす教育方法です。日本では、教育設計と訳されています

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2.インストラクショナルデザインの3つの目的

インストラクショナルデザインの目的は、3点あります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 学習成果を効率的に向上させる
  2. 学習環境を良くする
  3. 学習者のモチベーションを維持する

①学習成果を効率的に向上させる

インストラクショナルデザインでは、「理解する」ではなく「行動できる」点を評価します。つまり「行動できる・実践できる」人材を育成できるのです。

②学習環境を良くする

インストラクショナルデザインでは学習をスタートする前の段階で、分析方法が決められています。そのため「学習プロセスの実行」「学習成果の測定」「学習成果の分析」「学習プロセスの見直し」といった環境をシステマチックに設計できます。

③学習者のモチベーションを維持する

インストラクショナルデザインで活用されているのは、動機付け理論です。それにより、学習者自身が自信をつけながら積極的に学習を進めていけます。当然、学習者のモチベーションも高い水準で維持されるのです。

インストラクショナルデザインの目的は、「学習成果を効率的に向上させる」「学習環境を良くする」「学習者のモチベーションを維持する」の3点です

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3.インストラクショナルデザインの理論

インストラクショナルデザインのプロセスに関しては、理論が構成されています。ここでは主要な理論として、下記4点を解説しましょう。

  1. ADDIEモデル
  2. ID第一原理
  3. ARCSモデル
  4. 9教授事象

①ADDIEモデル

もっともベーシックでポピュラーなこのADDIEモデルは、5個の基本モデルで構成されているのです。ここではモデルすべてについて解説します。

分析(Analysis)

分析(Analysis)とは、組織の現状・課題を分析し、教育の内容や教材、評価基準などを策定する段階のこと。

組織を導くため教育の内容や基準について、「研修が必要か」「研修以外のアプローチがあるか」「どのような教材を選択すべきか」「教育の対象者はどのような人材にするか」といった具体的な方法を検討します。

設計(Design)

設計(Design)とは、分析のフェーズで設計した内容の実現に向けたプログラムを設計する段階のこと。

分析で導き出した要件に対し、「教育の全体像や個々のアプローチを設計図にまとめる」「実施すべきプログラムを決定する」「用意すべきコンテンツを準備する」といった研修計画書の詳細を決定します。

開発(Develop)

開発(Develop)とは、設計図に該当する研修計画書にもとづき、環境やサポート体制、人員配置など実際の教育内容を整える段階のこと。

たとえば教材について、「どのような教材を活用するか」「書籍といった市販のものを選択するか」「Webサイトから有効活用できるものがあるか」のように内容を詰めていきます。

実施(Implement)

実施(Implement)とは、詳細に中身を整えた研修計画書にもとづいて研修を実施すること。

その際、「受講状況や進捗の確認をする」「受講者に対する研修内容やスケジュールを通知」「研修中に発生したトラブルや問題などの対処」を行います。研修結果をのちに評価するため、実施中のデータも取得しておくと効果的です。

評価(Evaluate)

評価(Evaluate)とは、研修の成果を測定し、評価する段階のこと。受講者の習熟度や、受講前と受講後の行動変化などを目標に照らしあわせて評価します。

仮に目標に到達していないものがあれば問題点をあぶりだし、再教育プログラムを実施したり教育プログラムを再構築したりして改善を進めるのです。

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②ID第一原理

ID第一原理は、効果の高いとされる教育の要件がまとめられている理論のことで、「五つ星インストラクションの要件」とも呼ばれます。教育プログラムを設計する際は、これらの要素を網羅するとよいでしょう。

問題

問題とは、実際の現場で起こりそうな問題をあげること。現実的な課題を題材とすることにより、学習者の研修への興味を喚起する・学習者に研修の有用性を認識させるといった効果が期待できます。

活性化

活性化とは、既存の知識や経験を活用すること。過去の経験やすでに承知していた知識などと、新しい知識を関連付けながら研修を進めます。

従来の知識や経験、知恵と新しい知識や技術を融合させていくと、構造的理解の促進や汎用性の周知、応用性の習得などを実現できるのです。

例示

例示とは、たとえを見せること。学習者に対して、「実際にお手本としてやってみせる」「具体的に現実のケースを紹介する」「ネットの画面上だけでなく、実物を準備してリアルな体験を実施する」などを行います。

習得して欲しい知識をリアルに体感させて、学習効果や習得の度合いを向上させるのです。

応用

応用とは、研修で学んだ内容を実際の現場で活用すること。練習問題として類題に取り組んだり質問やフィードバックを行ったりすると、より実践的な知識として定着させられるのです。

研修で得た知識を研修だけで終わらせないよう、充実したリアルプログラムを導入し、応用可能な知識へと進化させます。

統合

統合とは、研修と現場とを統合させること。現場での課題に研修で学んだ知識や技術を活用します。

研修で学んだ知識が日常に生かせるため、学習者が学習のメリットを感じたりモチベーションが向上したりするのです。また研修と現場の統合には、振り返りや適切な支援も不可欠となります。

③ARCSモデル

ARCSモデルとは、学習者のモチベーションを向上させる研修設計に役立つ理論のこと。学習意欲をかきたてる4点の要素の頭文字を取ったものです。

Attention(注意)

Attention(注意)とは、学習者の注意をひく要素のこと。「面白そう」「役立ちそう」「自分に足りないものが学べそう」といった学習者の興味・関心につながる要素を取り入れます。

たとえば「謎解きを取り入れて探求心を刺激する」「メリハリのある研修で注意をひきつける」「新規性を使う」などです。

Relevance(関連性)

Relevance(関連性)とは、研修内容を目的・動機・成果などをつなげて、関連性のなかで学習意欲を駆り立てること。

研修のなかに、「何のために学習するのか」「何を学びたいのか」「学んだ成果をどう生かしたいのか」「どのような教材を使って学習を進めたいのか」といった関連性を仕掛けます。

Confidence(自信)

Confidence(自信)とは、「自分はできる」「自分にしかできない」「自分は努力できる」といった自信や意欲を持たせて、学習を効果的に進めていくこと。

こうした自信を持たせるには、「学習者にどうやって成功体験を積ませるか」「どのような課題なら意欲を引き出せるか」といった検討が必要です。

Satisfaction(満足感)

Satisfaction(満足感)とは、研修が終わったときに満足感を得ること。「1日の研修・1つの課題・研修の全過程」などが終了したタイミングで、受講の満足感を持ってもらうと新たな学習の意欲につながります。

学習者に有益な課題や経験・面白く学べる仕掛けなどを散りばめ、満足感を生み出すのです。

④9教授事象

9教授事象とは、研修プログラムを「導入」「実践」「評価・定着」といったグループからなる理論のこと。ここでは3グループについて解説します。

導入

導入とは、「学習者の注意を獲得する」「学習者に目標や目的を知らせる」「学習者に前提条件を思い出させる」こと。

プロセスをとおせば学習者に対し、学習に向かう準備を整えるよう促せます。新しい知識をインプットするために、研修の位置付けを認識させるウォーミングアップは欠かせません。

実践

実践とは、「新しい事項を提示する」「学習の指針を与える」「練習の機会をつくる」こと。ウォーミングアップが終わった学習者に、新しい知識や技術、物事の真理や本質を教授するのです。

より正しく深く理解するため、「資料の配布」「PPTを用いた講義」「具体例の表示」「メディアの活用」といった工夫が求められます。

評価・定着

評価・定着とは、「フィードバックを与える」「学習成果を評価する」「保持と転移を高める」こと。

「研修で学んだことを正しく理解しているか」「目標や目的を達成できているか」を測るため、チェックテストなどを行う場合も。また学んだ知識の確実な定着を目指し、学習内容をまとめるといったプロセスを課す場合もあります。

インストラクショナルデザインの主要な理論は、「ADDIEモデル」「ID第一原理」「ARCSモデル」「9教授事象」の4つです

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4.インストラクショナルデザインを学ぶ方法

インストラクショナルデザインはどうやって学べばよいのでしょう。インストラクショナルデザインを学ぶ方法と具体的な学びの場について解説します。

  1. 本で学ぶ
  2. 研修・セミナーで学ぶ
  3. 大学院で学ぶ

①本で学ぶ

インストラクショナルデザインは本からも学べます。ここでは、インストラクショナルデザインについての書籍をご紹介しましょう。

インストラクショナルデザインの原理

『インストラクショナルデザインの原理』では、「学習とインストラクショナルの基本プロセス」「成果」「さまざまな学習」「設計」「パフォーマンス目標の定義」など、インストラクショナルデザインの全体像を構造的に解説しています。

大学授業改善とインストラクショナルデザイン

『大学授業改善とインストラクショナルデザイン』には、「FDセミナーの舞台裏」「FDセミナーにおけるファシリテーションの位置づけと役割」「大学授業の改善事例」といったインストラクショナルデザインを大学授業に応用する方法が掲載されています。

学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル

『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』は、教育の効果や教育効率の最大化といった社会的ニーズにこたえたインストラクショナルデザインについて、新しい教育パラダイムへの包括的な指針を提案しています。

看護にいかすインストラクショナルデザイン

『看護にいかすインストラクショナルデザイン』では、看護という分野に特化したインストラクショナルデザインの活用方法について解説しています。簡潔なポイントだけでなく、ワークシートも掲載されており、実践的な活用が可能です。

②研修・セミナーで学ぶ

インストラクショナルデザインは、各地で開催されている研修やセミナーでも学べます。ここでは、代表的なものをご紹介しましょう。

JMAマネジメントスクール

JMAマネジメントスクールは、日本能率協会が主催するセミナーです。「マネジメント」「ISO」「イノベーション」「マーケティング」など、テーマやエリア、期間や開催場所などバリエーション豊かなセミナーを提供しています。

学習分析学会(JASLA)

学習分析学会(JASLA)は、企業人・一般向け人材開発セミナーや講習会の講師陣により構成されています。Learning Analyticsに関する調査・研究・普及啓蒙のほか、さまざまなテーマでイベントを開催しているのです。

全国専門学校教育研究会(全専研)

全国専門学校教育研究会(全専研)とは、全国の専門学校が集った一般社団法人です。教育に関する成功事例・取り組みといった情報共有をとおして、専門性の高い教育を目指しています。ICT活用研修など、実践的な研修も多く開催しているのです。

③大学院で学ぶ

インストラクショナルデザインは、大学院でも学べます。ここでは、熊本大学・東北大学・早稲田大学アカデミックセミナーをご紹介しましょう。

熊本大学

熊本大学大学院社会文化研究科教授システム学専攻では、インストラクショナルデザインの教授システム学を学べます。博士前期(修士)課程修了時に「ラーニングデザイナー」資格を取得すれば、eラーニングの専門家も目指せるのです。

東北大学

東北大学では、教育や研修に携わっている教員や研修担当者向けに、インストラクショナルデザイン関するセミナーやワークショップを開催しています。

これは東北大学履修証明プログラム「大学変革リーダー育成プログラム(TLP)」としても提供されているものです。

早稲田大学アカデミックセミナー

早稲田大学アカデミックセミナーは、「大学職員のためのインストラクショナルデザイン入門講座」を、若手職員から管理職向けに開講しています。

「職員が学びの場をコーディネートし、大学の教育のあり方を変革していく」などに必要なインストラクショナルデザインのセミナーです。

インストラクショナルデザインは「本」「研修・セミナー」「大学院」などさまざまな方法で学べます。取り入れやすい方法で学んでみてはいかがでしょう