就職氷河期(ロスジェネ)世代とは?【年齢・いつ生まれ?】

就職氷河期とは、社会的に就職難となった時期のこと。時期的には1990年代初頭〜2000年代半ばを指し、1970年〜1984年に生まれた世代が大学を卒業して就職活動時期に差し掛かった頃です。

ここでは就職氷河期世代に関する概要やそれに付随する支援などについてご紹介します。

1.就職氷河期世代とは?

就職氷河期世代とは、就職氷河期に新卒で就職活動をしていた人たちのこと。1970年〜1982年、または1984年までに生まれた2021年現在37歳〜51歳の年齢の人たちを指し、別名「ロストジェネレーション世代」とも呼ばれます。

バブル崩壊に伴った人件費削減の影響を受けて、正社員での就職ができず、やむを得ずに派遣社員やフリーターといった非正規社員で社会に出るようになった人も少なくありません。

就職氷河期とは?

就職氷河期は、一般的には1993年〜2005年までの就職難であった約10年間を指します。バブル期に大量募集や一斉採用を行っていた企業は、1990年のバブル崩壊に伴い人件費削減を実施。

日本全体で企業の採用枠が絞られたためこの世代の新卒者は、就職活動が難航してしまったのです。「就職氷河期」という名称はリクルート社が造った造語で、1994年の流行語大賞にノミネートされるほどの社会問題に発展しました。

さらに1990年代後半〜2000年頃は金融不安、ITバブル崩壊によりさらに景気の悪化が進み、「超氷河期」と称されるほど就職活動が絶望的になったのです。

就職氷河期の求人倍率と就職率について

厚生労働省の調査による就職氷河期の求人倍率は、1990年度の2.77%から2000年には0.99%まで下がり、求人倍率が約3分の1まで減少しています。また採用率は1997年の94.5%から2000年には91.1%へ減少。

あらゆる企業がバブル崩壊後に新卒採用を渋り、採用枠を極端に少なくしたことが大きな理由でしょう。

就職氷河期には希望する職種に付けないのはもとより、なんとか就職できても希望職種ではないため思うように活躍できず、正社員として登用されてもすぐに解雇される場合もあったようです。

バブル崩壊による不景気が原因で、1993年〜2005年間に就職活動をすることになった現在37歳〜51歳の世代を「就職氷河期」といいます。就職活動が難航して正社員で働けずに非正規社員で働く人が増えた点は社会問題となりました

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2.ロストジェネレーション世代について

就職氷河期世代は、別名「ロストジェネレーション世代」略して「ロスジェネ世代」と呼ばれる場合もあります。「ロストジェネレーション」は「失われた世代」という意味です。

就職氷河期世代は、就職活動時期に不景気が重なったため上手くいかずあらゆるものを失った世代といえるでしょう。そのような苦労を重ねることになったロスジェネ世代の現状や特徴をご紹介します。

ロスジェネ世代の現状とは?

ロスジェネ世代で正社員として働いている人は916万人です。一方、非労働力は216万人とされており、非労働力の人々には40万人の無職者が存在しています。

なおロスジェネ世代には、現在引きこもりやニートとなっている人も少なくありません。正社員としての就職ができなかったため、その後のキャリア形成が上手くいかなかった、という背景も1つの要因といえるでしょう。

ロスジェネ世代の特徴とは?

ロスジェネ世代は、倍率の高い厳しい就職活動を乗り越えてきたため優秀な人材が多いという特徴があります。厳しい就職時期を乗り越えた結果、「仕事に対して前向きな人」「素直に指示を聞き専門的なスキルや知識を取り入れようとする人」が多い傾向にあるのです。

また不景気を経験したため、収入面での不安を解消するために貯金好きな人も多いといえます。

前向きな仕事への姿勢

就職したくても就職できず、働けない環境下を経験したロスジェネ世代は、働けるありがたさを感じ、仕事に対して前向きに取り組む傾向にあるのです。

厳しい競争世界で就職を勝ち取る必要があった世代だったため、人より専門的な高度なスキルや知識を身に付けることにも前向きに取り組みます。

前向きで真面目な世代といえるものの、バブル崩壊により社会が一変した世界を見てきたため、将来に対して悲観的で慎重な傾向も見られるのです。

貯金好きが多い

将来を悲観的に考えがちなロスジェネ世代は、貯蓄を好む傾向にあります。

不景気により低所得となった世代のため生きていくためのお金を残し、あまりお金を使わない、または贅沢をしないようです。これはバブル世代と比べて、若い頃に遊べなかったという経験も影響しているでしょう。

しかしロスジェネの世代には、ニートや引きこもりとなってしまった人も存在します。このようなケースでは親の収入に頼っているため、親の収入源がなくなって80代の親と50代の子供が生活難に陥ってしまうのです。

この問題は「8050問題」と呼ばれており、現在社会問題になっています。

就職活動も慎重

就職氷河期は求人倍率が高かったため、就職活動も慎重に行った人が多いです。ロスジェネ世代では確実に採用されるため、本来希望する第一希望の会社ではなく第二希望や第三希望の会社へランクを落とした人も多数いました。

このことは、企業レベルに比べて優秀な人材が多くなる点にもつながるのです。またロスジェネ世代は将来を悲観的に考える慎重な傾向も持ちます。

その分仕事に対して真面目に取り組み、スキルを高めてきた点も優秀な人材が多いといわれる理由といえるでしょう。

ロスジェネ世代以外の世代

ロスジェネ世代以外に、さまざまな世代が登場しています。

  • 1947年~1949年の第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた「団塊世代」
  • 1955年〜1964年に生まれた高度経済成長と学生運動時代が終わった頃に成人を迎えた「新人類」
  • 1986年〜1991年のバブル景気時に入社した大卒の半数が上場企業へ就職できた「バブル世代」
  • 1987年〜2004年生まれのゆとり教育を受けた「ゆとり世代」
  • ゆとり教育後半に、脱ゆとり教育を受けた「さとり世代」

なお団塊世代の子世代である1971年~1974年生まれの人は、「団塊ジュニア」と呼ばれる場合もあります。

ロスジェネ世代は「仕事に前向き」「貯金が好き」「慎重・悲観的」な傾向にあります。これらの特徴は、就職時期の採用難を経験した際の苦労と、若年層のころに見据えた社会や将来に対する不安などが起因といえるでしょう。

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3.若年層の非正規雇用が増加した理由

就職氷河期世代では、フリーターや派遣社員といった「非正規雇用」の働き方をする労働者が増えました。非正規社員が増えた背景には、就職氷河期の採用難や派遣法改正、技術進歩やグローバル化などさまざまな時代の変動があります。

派遣法改正などの法制度変更によるもの

「正規社員で就職ができず非正規社員でしか働けなかった」という理由だけでなく、派遣法改正などの法制度変更によって非正規雇用で働く人がさらに増えたのです。

1985年に制定された労働者派遣法。当時、派遣で就業できる業種は一部のみで派遣社員として働ける環境がそれほど整っていませんでした。しかしその後の法改正により、特例業種以外はすべての業種で派遣就業が可能になったのです。

2003年の法改正では派遣で就業できる期間が1年から最長3年間に延長され、非正規社員でも働きやすい社会へと変化していきました。

バブル崩壊後の需要からの雇用調整圧力

バブル崩壊後、あらゆる企業が需要低迷期に入り、企業存続のために人件費を圧縮しなければなりませんでした。バブル景気の頃、一斉採用しこともあり、バブル崩壊後の不景気を生き残るためにリストラや雇用調整を図ったのです。

そのため就職氷河期世代では正規社員での就業が難しくなり、パートやアルバイト、派遣社員といった非正規社員での雇用を余儀なくされた人も少なくありませんでした。

非正規社員の増加は全体所得の低下にもつながり、日本はデフレに陥ります。その結果、企業はますます全体の費用を圧縮するようになったのでした。

技術進歩、グローバル化の進展によるもの

非正規雇用の労働者が増加した理由に、IT化やグローバル化なども挙げられています。技術の進歩により、それまで人間が手作業で行ってきた会計処理などの作業をIT技術や機械で行ったため人手が要らなくなった、という見方です。

グローバル化によって利益を得た企業とそうでない企業、代替された業種などによって異なるため、必ずしも技術進歩が非正規雇用の労働者が増加した原因とは言えません。

しかしIT技術で代替された職種の場合、さらに低賃金の単純労働に移ることになってしまった人がいることも事実です。

就職氷河期における非正規雇用の割合は90年代の前半と後半では1.5倍にも増えています。非正規雇用が増えた理由には、採用難以外にも「派遣法改正」や「技術進歩」などが考えられているのです

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4.就職氷河期世代支援プログラムについて

就職氷河期世代支援プログラムとは、2019年5月に内閣より発表された、就職氷河期世代を支援するプロジェクトのこと。ここでは就職氷河期世代支援プログラムで受けられる施策や施設をご紹介します。

対象となる人

就職氷河期世代支援プログラムの対象者は、自身が望む雇用形態で就業できていない就職氷河期世代の人たちです。就職氷河期世代支援プログラムでは、以下のような人への支援を行っています。

  • 正規雇用を希望しているがやむを得ずにパートやアルバイト・派遣社員など非正規雇用で働いている人
  • 約1年以内の離職を繰り返して、不安定な生活をしている人
  • 社会とのつながりが絶たれて長くなり社会復帰ができない中高年ニート・引きこもりの人
  • 就業を希望しているもののさまざまな理由で求職活動ができていない長期無就業者

就職相談体制の確立

就職氷河期世代支援プログラムでは、ハローワークに無料相談窓口を設け、職業訓練への助言や求人開拓のアドバイスやサポートなどをとおして、就職氷河期世代の転職や社会復帰を支援しています。

地方自治体によって内容は異なるものの、おおむね無料職業紹介事業のノウハウを生かしたキャリアコンサルティングや生活設計面での相談などがあり、就職に関するさまざまな相談を無料で行えます。

リカレント教育の確立

リカレント教育とは、義務教育を終了した人が「就業」と「教育」を繰り返し「仕事に必要な知識やスキル」を学び、身に付けることを目標にした教育方法のこと。

就職氷河期世代支援プログラムでは、この方法にもとづいて短期間での資格取得と職場実習プログラムなどを整備しています。給付金制度を利用した資格取得や職業訓練受講などがあり、仕事や子育てをしている人なども支援の対象です。

リカレント教育を推奨し提供している企業や団体が「就職氷河期世代支援プログラム」をバックアップしています。社会全体でサポート体制が進められているといえるでしょう。

採用増加につながる環境整備

内閣府でも、採用増加につながる取り組みを行っています。インセンティブや助成金を設けて就職氷河期世代を受け入れる企業の負担を軽減し、受け入れ体制を整えられるように社会意識を改革しているのです。

就職氷河期世代に対する採用選考を兼ねた社会人インターンシップの実施を企業に推進し、各種助成金やインセンティブ制度を設けました。ほかにも就職氷河期世代の農業初心者が農業へ転職してIT技術を取り入れ成功した事例などを企業へ紹介。

就職氷河期世代の受け入れ体制や中年層を取り入れるメリットなどについて、説明を実施しています。

アウトリーチの展開

現在は求職活動を行っていない人たちなども支援の対象です。働きたくても働けない事情のある人や引きこもりやニートなどを支援対象者とし、状況に合わせた継続的な支援を行って社会復帰を目指します。

支援内容には「地域若者サポートステーション」や「生活困窮者相談支援機関」との連携などが挙げられるでしょう。

支援の輪を拡大させる

就職氷河期世代支援プログラムでは、1人でも多くの人が望む就職につながるよう、さまざまな地域や団体とも連携を行って支援の輪を拡大しています。

たとえばひきこもりやニート、介護問題などに対しては、同様の境遇を経験した人の協力やNPOや地域包括支援センターと協力体制を築き、対応力を強化しているのです。

就職氷河期世代プログラムは、就職難や無労働力となっている就職氷河期世代の人がよりよい環境へ転職できるよう、行政や施設の垣根がない支援を行っています

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5.就職氷河期世代活躍支援の主な助成金

就職氷河期世代支援活動では、企業への助成金やインセンティブ制度を設けています。企業が利用できる助成金にはどのようなものがあるのでしょうか。主な助成金をケース別に見てみましょう。

  1. 求職者を一定期間試行的に雇い入れようとする場合
  2. 正社員経験が無い人を正社員として新たに雇い入れようとする場合
  3. 非正規雇用労働者に対して雇用型訓練を実施しようとする場合
  4. 企業内の非正規雇用労働者を正社員に転換などさせた場合

①求職者を一定期間試行的に雇い入れようとする場合

まずは安定的な就職が難しい求職者を試用期間として、受け入れるケースです。「職業経験や知識と技術が不足している人」「転職が多い人」「離職期間が長い人」などが該当します。

企業はこの場合、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の支給を受けられるのです。試用期間(最長3か月間)で求職者の適正や能力を試験し、その期間1か月につき4万円の助成金が企業へ支給されます。

ただし支給はトライアルコース終了のタイミングで一括支払いのため、毎月4万円が支給されるわけではありません。また1カ月に満たず試用期間が終了した場合、助成金額が減額となります。

②正社員経験が無い人を正社員として新たに雇い入れようとする場合

「正社員経験が少ない」「正社員経験の無い求職者」を正社員として受け入れると、企業は「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)」の支援を受けられるのです。

過去5年間で正社員として1年以上就業した経験が無く、過去1年間に正社員として雇用されたことのない労働者を正社員として受け入れた場合、半年につき助成金が加算されます。企業規模により助成金額は変わるものの、目安は下記のとおりです。

  • 大企業の場合:半年で25万円、さらに半年で25万円 1年間で計50万円
  • 中小企業の場合:半年で30万円、さらに半年で30万円 1年間で計60万円

③非正規雇用労働者に対して雇用型訓練を実施しようとする場合

正規雇用労働者として雇用するため研修や訓練が必要な場合、「人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)」を受けられます。助成メニューは以下の7種類です。

  • 特定訓練コース
  • 一般訓練コース
  • 教育訓練休暇付与コース
  • 特別育成訓練コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

なお研修や訓練は、企業でのOJTと教育訓練機関などで行われるOff-JTを組み合わせて実施する必要があります。

④企業内の非正規雇用労働者を正社員に転換などさせた場合

非正規雇用労働者を正規雇用労働者へ転換させた場合、「キャリアアップ助成金」が企業に支給されます。支給額は下記のとおりです。

  • 有期雇用社員から正規雇用社員へ転換した場合は57万円
  • 有期雇用社員から無期雇用社員へ転換した場合は28.5万円
  • 無期雇用社員から正規雇用社員へ転換した場合は28.5万円

上記のとおり、雇用形態により支給額が変動しています。また対象労働者は「雇用期間が6か月以上」「転換後の賃金が転換前より上がること」が条件となっているのです。

就職氷河期世代活躍支援では、就職氷河期世代の採用や教育、正規雇用への切り替えなどを行った企業に助成金を支給しています

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6.就職氷河期世代が対象の求人について

就職氷河期世代対象求人とは、就職氷河期世代である年齢層に限定した求人です。日本では求人に年齢制限を設けることは基本禁止されています。しかし2019年8月より厚生労働省が作った就職氷河期世代対象求人は、特例として年齢指定が許可されているのです。

就職氷河期世代が対象の求人申込みが可能となった

就職氷河期世代対象求人は、就職氷河期世代である年齢層だけに絞り込んだ求人のこと。応募できる対象者の条件は、下記のとおりです。

  • 就業の難しい35歳〜54歳の求職者
  • 安定した就業経験の少ない求職者

就職氷河期世代対象求人には「限定」求人と「歓迎」求人の2種類があります。限定求人では対象の年齢層しか応募できません。しかし歓迎求人は対象年齢から外れた若年層でも応募可能です。

ただし若年層と採用枠を争うことになった際、不利になる場合もあるので限定求人に応募したほうが採用率は高まるでしょう。

就職氷河期世代の方々の採用について相談できる

2019年に就職氷河期世代対象求人が作られた頃は、ハローワークの求人への申込みのみを可としていました。しかし2020年2月以降は、ほかの民間求人や紹介会社の求人サイトからの申込みも認められ、企業と求職者のマッチングが効率よく行えるようになっています。

ほかにも、「求職者向けの就職氷河期世代専門窓口」「雇用者向けに行われる就職氷河期世代の人材活用セミナー」といった支援も利用可能です。

特例として「就職氷河期世代」だけを対象にした求人が作られるなど、就職氷河期世代支援の幅はさらに広がっています