会社や組織の内部構造を図で示した組織図の作成方法を紹介します。あわせて、作成の目的や作成に役立つツールなども詳しく見ていきましょう。
目次
1.組織図作成の方法とは?
組織図とは、組織の階層や役職、指示系統や権限、責任などを図で示したもの。
会社の部門や指示系統が変わる際、組織図を変更します。しかしそもそも組織図を作成していない場合、どのように作ればよいのでしょうか。組織図作成の方法について、その流れを見ていきます。
組織図とは? 種類と特徴、作り方、メリットをわかりやすく
組織図は組織の内部構造を社内外に見える化するほか、さまざまなメリットをもたらしてくれます。ただし組織図にもいくつか種類があるため、目的に合わせて最適な形式を選ぶとよいでしょう。
ここでは組織図とは何か...
組織図を作る際の流れ
言葉で説明すると理解しにくいものの、図で「見える化」すると誰が見ても組織構造が分かるようになるのです。それでは組織図を作る際の流れについて、見ていきましょう。
- 組織図作成の目的を明確にする
- 現状の業務を洗い出す
- 現在の人材をあてはめる
- 必要な承認を得て周知する
①組織図作成の目的を明確にする
組織図を作成する際、「人材マネージメント」「組織管理」「効率改善」などさまざまな目的が考えられます。
また組織図も「社長をトップに置く階層型組織図」「社長や上司がいないティール型組織図」「部門ごとの役割を示す機能別組織図」など、種類があるのです。
目的に合わせた的確な組織図を作成するためにも、まずは目的を明確にしましょう。
②現状の業務を洗い出す
部署や課、係それぞれの業務や指示系統、役職などを洗い出します。そのうえで自社が行う事業に合わせて、必要となる部や課があれば挙げていくのです。その際、組織同士の関連性も整理しておくとよいでしょう。
③現在の人材を当てはめる
上記にて説明した手順で洗い出したポジションに、現在の人材を当てはめていきます。組織の新設や統廃合といった場合もあるでしょう。
最適な人材配置には、従業員のスキルや評価、強みなどの把握が重要です。もし「組織に配置する適切な人材がいない」「そもそも人材が足りない」といった場合は、人材の採用活動の要否も考えます。
④必要な承認を得て周知する
最後に、取締役会や各部門などの承認を得たら、組織図を全社員へ公開して周知します。多くの場合、組織図を整備する際に、社内規定の改訂を伴うもの。社内規程は従業員との合意なしで、会社側が一方的に定められます。
しかし社内規程を更新した場合などは社員に周知して、いつでも確認できるような状態にしておきましょう。
2.組織図作成のポイントとは?
組織図を作成する際、おさえておきたいポイントがあります。ここでは下記3つについて、解説しましょう。
- 最適な部門化ができているか
- 業務が適切に分業されているか
- 誰にどのような権限を持たせるか
①最適な部門化ができているか
部門化とは、業務・地域・顧客などによってグループ化すること。業種や職種でさまざまなグループ分けが考えられます。たとえば「業務…営業部・経理部・人事部」「地域…北海道・東北・関東・国内と国外」「顧客…一般と法人」などです。
自社ではどのように部門化するのか、考えておきましょう。
②業務が適切に分業されているか
分業とは、さまざまな業務を細分化して、それぞれ誰が担当するのか割り振って決めること。
部門化されたグループには、それぞれの役割(職務)が発生します。それらの業務を分業すると、「機能拡充」「役割分担の明確化」「 業務の専門化による質の向上」などが実現し、それぞれの専門性と効率性が高まるのです。
③誰にどのような権限を持たせるか
社員数が多くなるほど、組織の代表がすべて意思決定するのは難しくなります。そのため、管理職や管理者への権限委譲が重要となるのです。
権限委譲によって、社員に責任が与えられるため、モチベーションや自律性の向上にも役立ちます。権限の委譲は、人材教育としても重要なのです。
3.組織図作成の目的とは?
組織図は、組織内部の構造を「見える化」して、役割分担や指揮命令系統がひと目で分かるようにしたもの。会社の経営にも大きくかかわる組織図作成の目的3つについて、解説します。
- 組織体制や構造の見える化
- 業務遂行の円滑化
- 人材育成
①組織体制や構造の見える化
経営者と全従業員が組織を理解するには、「具体的な役割や機能」「従業員数」「部門間の関係」などの正確な把握が必要です。
また従業員一人ひとりが会社全体の組織関係を明確に知ると、部門間で連携できるため業務が効率化します。さらに従業員自身、どの立ち位置にいるのか理解して業務に取り組めるでしょう。
②業務遂行の円滑化
「指示系統・報告・連絡・相談」の道筋が明確にすると、情報伝達がスムーズになり、業務も円滑に進みます。組織図は、「指示系統や権限、責任が誰にあるのか」「誰が誰に報告、連絡、相談をするのか」を明確にしたうえで、定着できるのです。
③人材育成
組織図を作成すると、以下のような効果が期待できます。
従業員一人ひとりが自分の立ち位置や役割を把握できるため、部署に対する責任を自覚し、業務の質も上がる
「人材が足りない部門」「目標の達成に必要な人材」が明確になるため、人材採用や人材育成などで対処できる
4.組織図作成で用いられる図の種類とは?
組織図にはさまざまな種類があり、目的に応じて組織図の種類を選ぶのです。ここでは下記3つについて、メリット・デメリットなどを交えながら解説します。
- 階層型
- マトリックス型
- フラット型
①階層型
階層型とは、以前からある組織構造形態のこと。権限と責任を組織のトップに置いて、そこから下方や左右に分散していきます。通常は社長・部長・課長・係長・社員といった階層別に組織されており、「ピラミッド型組織図」とも呼ばれているのです。
一般的にメンバーは、直属の上司や複数の部下とコミュニケーションを取ります。
②マトリックス型
マトリックス型は、一定の責任範囲内で組織横断的に業務を遂行するもの。たとえば、1つの軸を業界、もう1つの軸をサービスとします。このケースの場合は、業界特化チームとサービス特化チームの混成部隊となってプロジェクトを進めていくのです。
メリットとデメリットは、下記のようになっています。
- メリット…必要最低限のリソースで生産性を高めていける
- デメリット…組織運営が困難になる
③フラット型
フラット型は、指揮命令系統がないタイプで、階層が以下に挙げるとおり2つか3つほどしかありません。
- トップ…ビジネス所有者の総合管理者
- 第2層…マネージャーやチームリーダー
- 第3層…チームメンバーが並列
メリットとデメリットは、下記のとおりです。
- メリット…意思決定や情報伝達が速く、仕事の柔軟性や自由度が高い
- デメリット…メンバーが高い自律性を持っていないと作業がうまく進まない
5.組織図作成のまとめ方のポイントについて
組織の形は、大きく分けて3つです。それぞれの特徴とメリット・デメリットなどについて、解説します。
- 機能でまとめる…最も一般的
- 事業部でまとめる…組織構造
- プロジェクトでまとめる…チーム形成
①機能でまとめる
多くの企業が採用している形態で、機能・業務の内容で分けて組織を作っていきます。メリットとデメリットは、以下のとおりです。
- メリット…特定の業務に特化した人材が集まっているので、業務の効率を高められる。また人材が能力を発揮しやすくなるため、結果を出すチームが作れる
- デメリット…偏った思考になりやすい。部門間の調整に時間がかかる
②事業部でまとめる
製品やサービスなど各事業で部署を編成します。メリットとデメリットは、以下のとおりです。
- メリット…上層部の意思決定をもたなくとも、事業部ごとに業務を完結でき迅速に対応可能。経営者が変わっても働き方を変えずに業務を継続できるため、買収されても対応しやすい
- デメリット…大きな企業ほど、事業部間での人材交流が少なくなる
③プロジェクトでまとめる
各部門からプロジェクトごとにスキルがあるメンバーを招集し、1つのプロジェクトチームとして組織を作る形態です。主にシステム開発などで採用されています。
プロジェクトが完了すればチームは解散し、それぞれ自分の部門に戻るのです。メンバー一人ひとりが高いスキルを持っているため、クオリティの高い仕事を完遂できます。
6.組織図作成に役立つツールを紹介
最後に組織図の作成に役立つツールについて、見ていきましょう。
- Officeソフトの「SmartArt」
- 人材管理システムなどの機能を利用する
①Officeソフトの「SmartArt」
Officeソフトに搭載されている「SmartArt」を使えば、PowerPoint・Word・Excelでかんたんに組織図を作成できます。
用意されている図表のテンプレートに、テキストを入力するだけでよいのです。「図形の数・サイズの調整・色・デザイン」の変更など、細かなスタイル編集もできます。
②人材管理システムなどの機能を利用する
人事管理や人材管理システムの組織図作成機能を使っても、組織図が作成できるのです。機能のひとつに、組織図に顔写真を並べて表示するというものがあります。活用すると下記のような効果が期待できるのです。
組織図ごとに所属長とメンバーの顔写真が並ぶため、組織状態を直感的に把握できる
顔写真を並べて、異動や新組織のシミュレーション、組織の検討に活用できる