退職金の相場や平均は? 勤続10年、中小企業、大企業の例

退職金とは退職した労働者に対して支払われる金銭のことで、勤続年数や学歴で変動します。ここでは退職金の平均額についてさまざまな観点からご紹介します。

1.退職金の平均額とは?

退職金とは、退職する際に企業から労働者に支給される基本給とは別になる金銭のこと。退職金は大きく分けて、「退職一時金制度」「企業年金制度」の2種類に分かれます。

退職金制度は民間企業にて必須ではないため、必ずしも制度が設けられているわけではありません。しかしながら人事院の調査によると、90%以上の企業で退職金制度が設けられているそうです。

定年退職する場合の退職金平均相場とは?

定年退職する際の目安は、「大企業が約2,268万円~2,500万円」「中小企業が約1,083万円~1,200万円」。ただし勤めている企業規模や労働者の学歴によって退職金支給額は変動するため、詳しい内訳では下記のようになります。

  • 大卒で大企業の退職金平均額は約2,500万円
  • 高卒で大企業の退職金平均額は約2,268万円
  • 大卒で中小企業の退職金平均額は約1,200万円
  • 高卒で中小企業の退職金平均額は約1,083万円

退職金を支払う企業の「経済力」によって平均額が変動するといえるでしょう。

退職金平均額は、学歴や企業規模によって変動します。退職金を支払う企業の経済力によって平均額が変動するため、大企業ほど退職金平均額が高い傾向にあるようです

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2.退職金の平均相場は様々な要因によって変わる

退職金の受給額は企業規模によって大きく変動する仕組みとなっているため、資金力を持つ大企業ほど退職金の受給額は高い傾向にあります。

ほかにも、「学歴」、定年退職または途中退職の「勤続年数」、「自己都合退職」、「会社都合退職」によって変動するケースもあるようです。

企業規模による違い

企業規模は、退職金平均額にてもっとも大きい要素といえるでしょう。大企業と中小企業では定年退職時の平均退職金額が2倍以上、1,000万円以上違う場合も少なくありません

支給額が大きく異なる背景にあるのは、退職金を支払う企業規模。つまり企業の資金力に違いがあるという点です。利益を出している大企業ほど従業員に高い退職金を出せるため、退職金にとどまらず平均賃金や平均賞与額なども高くなるでしょう。

勤続年数による違い

退職金は「長年勤めて会社に貢献した社員に感謝の気持ち」の意味を込めて支給されるため、勤続年数が長くなればなるほど高くなる傾向にあるのです。

会社によって何年目から退職金が支給されるかは異なるものの、平均的に10年目以降は5年ごとに退職金支給額が1.5倍、2倍と徐々に高くなる傾向にあります。大卒で大手企業の一般職社員が会社都合退職した際の平均額は、下記のとおりです。

  • 勤務年数10年で約230万円
  • 勤務年数15年で約430万円
  • 勤務年数20年で約690万円
  • 勤務年数25年で約1,000万円
  • 勤務年数30年で約1,500万円

勤務年数が1年未満でも、退職金が支給される場合もあります。基本は、勤務年数が5年増えると200万〜500万円高くなるのです。

学歴別による違い

初任給でも学歴によって支給額が変動するように、退職金の支給額も学歴に左右されます。専門卒や短大卒、高卒より大学卒や大学院卒のほうが、全体的に退職金平均額が高い傾向にあるのです。

東京都産業労働局が平成30年に発表したデータによると、高校卒で勤続年数が1年の場合は7万6,000円ですが、大学卒になると勤続年数1年で9万円です。このように学歴が高いと就職時だけでなく退職時にも高い賃金を得られる可能性が高いといえます。

退職金支給額は「勤続年数」や「学歴」によっても変動するのです。もっとも高い退職金を受け取れるのは、大企業で大学卒の人が定年退職した場合と考えられます

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3.企業規模別でみる退職金平均相場とは?

大企業ほど退職一時金だけでなく、企業年金を設けられているようです。一方、中小企業では企業年金を設けずに退職一時金のみを扱っている企業が半数を超えています。続いては、企業規模別に退職金制度がどのように設けられているか、見ていきましょう。

大手企業の場合

大企業においては98.3%以上の企業が退職金制度を設けており、退職一時金制度だけでなく企業年金制度も設けています。大企業の中でも資本金が多く、従業員へ還元できる資本金が高い企業ほど退職金支給額が高い特徴にあるのです。

また資本金5億円以上で従業員1,000人以上の大企業の場合、一般職より総合職のほうが15%〜40%程度多い傾向にあります。

中小企業の場合

従業員100人未満の中小規模の場合、約87%の企業が退職金制度を設けているようです。退職一時金と企業年金を併用している企業も少なくありません。

ただし10年勤務した大学卒の人が定年退職した場合で1,138万円、同条件で大企業の総合職が定年退職した場合の目安は約1,519万円。その差は大きいといえるでしょう。

公務員の退職金相場

公務員が40年勤めて定年退職した場合の退職金平均額は、約2,108万円。この金額から公務員の定年退職金は一般企業よりも高いと分かります。

自己都合退職の場合でも勤続10年以内の公務員の退職平均額が885万円であるのに対し、大学卒・10年勤めた総合職では平均191万円。いずれにしても公務員のほうが民間企業より退職金が高いといえるでしょう。

大企業・中小企業と企業規模問わず、ほとんどの企業で退職金制度が設けられています。退職金支給額は中小企業より大企業のほうが高いものの、公務員はさらにそれを上回るようです

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4.[ケース別]退職金平均相場を紹介

退職金は、定年退職時に支給されるイメージが強いでしょう。しかし中途退職者にも退職金は支給されるのです。

定年退職以外に「会社都合退職」「自己都合退職」などでも退職金が支払われる場合もあります。また早期退職を勧めた社員には「早期優遇退職」などで退職金支給額が高くなるケースもあるようです。

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[大卒]会社都合の場合

大卒で勤続20年以上・45歳以上の人が、リストラなどの会社都合理由で退職した場合の平均額は2,150万円。会社がリストラなどで社員に早期退職を促す「早期優遇退職」の場合は退職金支給額が上乗せされるため、平均額は約2,326万円となっています。

早期優遇退職制度とは、退職金に賃金を上乗せして早期退職を促された社員の負担を軽減する制度です。

[大卒]自己都合の場合

大卒で勤続20年以上・45歳以上の人が、親の介護や結婚に伴う転居、あるいはキャリアアップのための転職など自己都合退職した場合の平均額は約1,520万円です。自己都合退職の場合、会社都合退職より支給される退職金平均額が600万円ほど低くなっています。

なお会社の上司からのあきらかなハラスメントやいじめなど、本人の意思に反して退職を余儀なくされた状況では、自己都合退職ではなく会社都合退職と見なされる場合があるようです。

[大卒]定年退職の場合

大卒で管理職や事務職、技術職などで勤務したあとに定年退職した場合の平均額は、約1,983万円。定年退職では、定年までの勤務年数によって支給額が左右されます。特に10年以上勤務した場合、支給される退職金が高くなる傾向にあるのです。

反対に最低3年は勤続しないと、退職金が出ない会社も少なくありません。

[高卒]会社都合の場合

高卒で勤続20年以上・45歳以下の人が、管理職や事務職、技術職にて勤務し、解雇など会社都合で退職した場合の平均額は約1,983万円

会社都合退職になるため比較的退職金が高くなっているものの、同条件の会社都合退職と比較すると、平均支給額に190万円ほどの差が生まれています。

[高卒]自己都合の場合

高卒で勤続20年以上・45歳以下の人が、親の介護や結婚に伴う転居、キャリアアップのための転職などで自己都合退職したケースです。

管理職・事務職・技術職を担当していた社員の平均支給額は約1,079万円で、現場職の退職金平均支給額は約686万円。同じ高卒の自己都合退職でも管理職や事務職より退職金が低くなっています。

勤めている業種や役職によって支給される退職金が変動するといえるでしょう。

[高卒]定年退職の場合

高卒で、管理職や事務職、技術職などで勤めたあとに定年退職を迎えたケースです。支給される退職金平均額は約1,618万円

高卒で勤続20年以上でも定年退職を迎えず途中で自己退職した場合の平均支給額は約1,079万円となり、600万円もの差が生じているのです。自己都合退職では退職金が大きく下がると分かります。

退職金は退職理由によって支給額が変動するのです。退職金が高い順番は、「会社都合退職」「定年退職」「自己都合退職」。真面目に定年まで勤めて退職金を受け取るのがおすすめです

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5.退職金の仕組みを知っておこう

退職金には法律が無いため、退職金を必ず支払わなければならないといった義務はないものの、多くの企業が退職金制度を設けているのです。その退職金制度を大きく分けると、3つ。ここではそれぞれについて解説します。

  1. 退職一時金制度
  2. 前払い制度
  3. 企業年金制度

①退職一時金制度

一般的に退職金のイメージが強いとされる、退職時に一括して賃金を支給される退職金制度が「退職一時金制度」。

退職時に数百万円、数千万円支給された場合、その支給された賃金は退職一時金です。退職金規定に従って支給されるため、規定が変更されない限り、会社の経営状況に左右されずに規定額を受け取れます。

②前払い制度

退職金「前払い制度」とは、名称のとおり、通常は退職時に支給される退職金を就業中の毎月の給与やボーナスに上乗せして支給する制度のこと。たとえば、本来退職時に1,000万円支給されるはずの退職金が、毎月の給与に分配かつ上乗せして支給されるのです。

近年、キャリアアップのための転職が一般的になっており、定年まで勤める社員が減少しています。勤続年数に応じて退職金が支給されるため、現代の労働環境に適した制度といえるでしょう。

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③企業年金制度

「企業年金制度」とは、退職するときに一括して退職金を支給するのではなく、退職金を一生涯や一定期間にかけて分配して支給する制度のこと。大企業ほどこの制度を取り入れている場合が多いです。

企業が一度にまとめて高額な賃金を支払わなくて済むだけでなく、その利息分を上乗せして退職者に支給するため、近年問題となっている老後2,000万円問題や年金制度だけでは対応しきれない、老後の資金を援助する制度となっています。

また「退職一時金制度」と併用している企業が多いです。退職時に退職金の一部を支給し、残りの退職金を一定期間にかけて支給するケースがほとんどとされています。

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退職金制度は、「一般的にイメージされる退職時に一括して支給される退職一時金制度」、「利息とともに期間をかけて支給する企業年金制度」、「近年ベンチャー企業などで増加傾向にある前払い制度」の3つに分かれます。自分の勤める企業がどの退職金制度を設けているか確認しておきましょう

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6.退職金の種類

退職金制度は、下記の3つに分かれます。自分の勤める会社の退職金制度がどれなのか、就業規則の「退職金規定」で確認しておきましょう。

  1. 年功型
  2. 成果報酬型
  3. ポイント型

①年功型とは?

年功型とは、勤続年数に比例して退職金が上がっていくタイプです。長く勤めている社員ほど会社への貢献度が高いと見なされ、退職金が増えていきます。公務員も年功型の計算方法を取り入れており、基本給も年数に応じて高くなっているのです。

以前は終身雇用を前提として「年功型」を取り入れている企業がほとんどでした。しかし近年、「年功型」から「成果報酬型」に移行した企業が増えているようです。

新卒から定年まで1つの企業に勤める労働者も減ってきた点も、年功型が減っている要因のひとつでしょう。

②成果報酬型とは?

成果報酬型は、会社への貢献度に応じて退職金額を決定するタイプです。役職や目標達成率などで退職金額を決定するため、「高い目標を達成した」「売上を伸ばした」「重要な役職に就いた」社員に高額な退職金が支払われます。

インセンティブ制度など、基本給を基準としない企業に取り入れられている場合が多いようです。近年、年功序列式の社会から実力主義の社会へと移行してきており、ベンチャー企業や営業職などでは成功報酬型が見られます。

③ポイント型とは?

ポイント型とは、従業員にポイントを付与し、そのポイントによって退職金金額を決定するタイプです。勤続年数や資格等級、役職など会社貢献度が評価されるポイントを設定し、その基準をクリアした従業員へポイントが付与されます。

算出方法は「蓄積されたポイント」×「単価」となっており、同期でも退職金に大きな差が生まれやすいです。「年功型」と「成果報酬型」を組み合わせた退職金制度で個々の貢献度を正当に評価する制度として、近年取り入れる企業が増えています。

退職金制度は「年功型」「成果報酬型」「ポイント型」の3つに分類されます。ポイント型は、年功型と成果報酬型を組み合わせた退職金算出方法です

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7.退職金の計算方法について

退職金は、どのように計算するのでしょうか。主な退職金制度の確認や計算方法についてご紹介します。自身の退職金額を計算してみてはいかがでしょうか。

年功型の計算

年功型は、勤続年数によって退職金支給額が上がっていきます。基本給や会社貢献度、役職とは関係なく、勤続年数や年齢で計算を行うため、長く勤めている者ほど退職金が高くなる傾向にあるのです。

「定額規定」とも呼ばれ、退職金規定に記載されている勤続年数毎の金額が支給額となります。勤続年数何年ごとに何万円を加算、あるいは勤続年数5年では何万円、6年では何万円、などと決められているでしょう。

成果報酬型の計算

成果報酬型の退職金は「別テーブル型」ともよばれ、基本給などの賃金テーブルとは関係なく計算されます。就業中の役職や会社で設けられた目標に対する達成率などをもとに、計算される場合が多いようです。

会社への貢献度や目標達成率によって決定するという特徴があり、実績を生み出せる従業員ほど、退職金支給額は高くなる傾向にあります。

ポイント制の計算

ポイント制は、「蓄積されたポイント」と「ポイントの単価」を掛け、退職理由を考慮に加えて計算します。勤続年数や役職、資格など人事課の定めた基準に達するとポイントが付与されるのです。

どのようなポイントを設定するか、どのポイントを重視するかは企業によって異なるでしょう。

退職金制度は、制度によって計算方法が異なります。退職金制度を今一度確認し、自分がいくら受給できるのか確認してみましょう