給与所得者の扶養控除等申告書とは? 必要な人、どこでもらう?

扶養控除等申告書とは、所得税に関わる書類のひとつです。ここでは扶養控除等申告書の記入方法や扶養親族の範囲、記入に際しての注意事項などについて解説します。

1.扶養控除等申告書とは?

扶養控除等申告書とは、年末調整の際、勤務先に提出する書類のひとつで、正しくは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。給与の支払いを受ける人つまり給与所得者が、その給与に関する扶養控除などを受ける際に必要となる書類です。

扶養控除等申告書を提出する目的

扶養控除等申告書を提出する目的は、所得税の扶養控除等を受けること。所得税は、個人の生活事情を考慮して課税の対象となる所得から控除分を差し引けます。これを「所得控除」と呼ぶのです。

つまり扶養控除等申告書を提出すると扶養控除を受けられます。その結果、納めるべき税金を軽減できるのです。

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扶養家族がいると申請して所得控除が受けられるようにするための書類を、「扶養控除等申告書」といいます

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2.扶養控除等申告の概要を解説

年末調整の際に必要となる「扶養控除等申告」について、もう少し掘り下げてみましょう。ここでは扶養控除等申告の概要について解説します。

根拠となる法律はあるのか?

給与所得者の扶養控除等の(異動)申告は、次の法律にもとづいて行われます。

  • 所得税法第194条
  • 所得税法施行令第316条の2
  • 所得税法施行規則第73条および73条の2
  • 所得税基本通達194から198共-3
  • 地方税法第45条の3の2および第317条の3の2
  • 地方税法施行規則第2条の3の2および第2条の3の3

また扶養控除等申告書は、個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と統合した様式になっています。

扶養控除等の申告時期とは?

扶養控除等の申告は、その年の最初に給与支払いを受ける日の前日までに提出しなければなりません。中途就職の場合は就職後最初の給与支払いを受ける日の前日までです。

「年度途中に扶養家族が結婚した」「扶養だった配偶者の年収が条件の範囲を超えてしまった」「家族が障がい者に該当することになった」場合など、申告内容に変更があればそれも追加します。

扶養控除等の申告に必要な添付書類を紹介

扶養控除等の申告において以下に該当する場合、別途書類の添付が必要です。

  • 勤労学生控除を受ける
  • 扶養控除や障害者控除、源泉控除対象配偶者の控除を受ける
  • 非居住者である親族にかかる扶養控除あるいは障害者控除の適用を受ける

必要な添付書類について、ひとつずつ見ていきましょう。

勤労学生に該当する旨を証する書類

税者自身が勤労学生である場合、一定金額の所得控除を受けられます。これを「勤労学生控除」と呼び、勤労学生に該当する旨を証する書類が必要になるのです。なお勤労学生控除の対象は、以下すべての要件を満たした人となっています。

  • 給与所得など、勤労による所得がある
  • 合計所得金額が75万円以下かつ1にもとづく所得以外の所得が10万円以下である
  • 学校教育法に規定する小・中・高・大・専門学校などの生徒である

送金関係書類

年末調整において、非居住者である親族にかかる扶養控除もしくは障害者控除の適用を受ける場合、その親族にかかる「送金関係書類」が必要です。

「送金関係書類」とは、申告者(納税者)がその年に、非居住者である親族の生活費または教育費として支払を行ったと証明する書類のこと。クレジットカード会社が発行した家族カードの利用明細書や、金融機関が発行した外国送金依頼書の控えなどが該当します。

親族関係書類

非居住者である親族にかかる扶養控除、もしくは障害者控除または源泉控除対象配偶者の控除適用を受ける場合、その親族にかかる「親族関係書類」が必要になります。「親族関係書類」は、その非居住者が納税義務者の親族であると証明する書類のこと。

下記が該当する書類です。

  • 国外居住親族が日本人の場合:戸籍の附票の写し(原本)もしくはパスポートのコピー
  • 国外居住親族が外国人の場合:外国政府または外国の地方公共団体が発行した出生証明書あるいは婚姻証明書の原本

扶養控除等申告書の提出方法

扶養控除等申告書は、該当する事項などを記載し、必要書類をそろえたうえで給与の支払者に提出します。提出を受けた給与の支払者が税務署長および市区町村長へこれを提出すれば完了です。

前述のとおり申告書は本来、給与支払者を経由して税務署長および市区町村長へ提出しなければなりません。しかし税務署長および市区町村長から特に提出を求められなければ、提出する必要はないのです。

扶養控除等申告書は原則、その年の最初に給与支払いを受ける日の前日までに提出します

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3.扶養控除等申告書の記入方法

扶養控除等申告書の概要を理解したところで、申告書の記入方法を見ていきましょう。ここでは扶養控除等申告書の書き方について、具体的な記入例を挙げながら解説します。扶養控除等申告書は、下記10のパートに分かれるのです。

  1. 個人番号欄
  2. 給与の支払者の法人(個人)番号欄
  3. 老人扶養親族欄
  4. 所得の見積額欄
  5. 非居住者である親族欄
  6. 生計を一にする事実欄
  7. 左記の内容欄の記載事項
  8. 住民税に関する事項欄
  9. 主たる給与とは
  10. 従たる給与とは

①個人番号欄

平成28年1月以降に提出する扶養控除等申告書では、従業員本人および控除対象となる配偶者、控除対象扶養親族等の個人番号(マイナンバー)を記載します。

なお給与支払者が従業員等の個人番号を記載した一定の帳簿を備えている場合、この限りではありません。これは会社によって異なるため、一度会社に確認しておくとよいでしょう。

②給与の支払者の法人(個人)番号欄

続いて給与支払者の情報、つまり勤務先の名前や本社住所などを記入します。「給与の支払者の法人(個人)番号」は基本、申告を受理した給与の支払者すなわち会社側が記入するため、納税者本人が記載する必要はありません。

会社は「給与の支払者の法人(個人)番号」および「所轄税務署長等」が記載された状態の申告書を配布しましょう。

③老人扶養親族欄

控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在に70歳以上である人を「老人扶養親族」といいます。控除対象扶養親族が同居する老親等であれば、「老人扶養親族」欄の「同居老親欄」にチェックを付けるのです。

同居老親等とは、「老人扶養親族のうち納税者またはその配偶者の直系の尊属である」「納税者もしくはその配偶者と普段同居している」人のこと。老人扶養親族が同居老親等以外である場合、「その他」の欄にチェックをつけましょう。

④所得の見積額欄

所得の収入額から控除を差し引いた金額の合計額を「所得の見積額」といいます。所得が給与だけの人(パートを含む)を例に見てみましょう。

  • 給与収入が103万円以下:給与所得控除額は55万円。103万円から55万円を差し引いた48万円以下が所得金額となる
  • 給与収入が150万円以下:給与所得控除額は55万円。150万円から55万円を差し引いた95万円以下が所得金額となる

⑤非居住者である親族欄

源泉控除対象配偶者または控除対象扶養親族が非居住者である場合、「非居住者である親族」の欄に○印を付けます。

ここでいう非居住者とは、国内に住所を有し、現在まで引き続き1年以上居所する「居住者」以外の個人を指すのです。直近1年以上海外に住み、海外に住所を持っている人などがこの「非居住者」に当たります。

⑥生計を一にする事実欄

控除対象扶養親族が非居住者である場合、「生計を一にする事実」欄にその親族に送金などをした金額の合計額を記載します。「生計を一にする」とは、日常生活の資を共にすること。

「生活費や学資金、療養費などをつねに送金している」「日常の起居を共にしていない親族が余暇にほか親族のもとで起居をともにする場合を「生計を一にする」といいます。

⑦左記の内容欄の記載事項

「先の内容欄」には、下記の事項をそれぞれ記入するのです。

  • 障がい者(特別障がい者):納税者本人もしくは同一生計の配偶者、扶養親族が障害の状態または障がい者手帳などの交付を受けている場合、手帳などの種類と交付年月日、障害の等級を記入する
  • 寡婦または寡夫:死別や離婚、生死不明の別、生計を一にする子の氏名および申請年中の所得見積額等を記載する
  • 勤労学生:学校名と入学年月日、申請年中の所得の種類およびその見積額を記載する

⑧住民税に関する事項欄

扶養控除等申告書は、個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と統合した様式となっているため、この項目は住民税の計算に利用されるのです。

扶養親族に16歳未満がいる場合は、その情報を「16歳未満の扶養親族」欄に記載します。もしその人が控除対象外国外扶養親族である場合は、「控除対象外国外扶養親族」にチェックを付けるのです。

⑨主たる給与とは

扶養控除等申告書における「主たる給与」とは、申告書を提出した給与の支払者から受ける給与のこと。「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人に支払う給与、と置き換えると分かりやすいでしょう。

会社役員には、2か所以上の会社から給与をもらっている人もいます。この場合、その人に支払う給与が「主たる給与」になるのか、後述する「従たる給与」になるのかを確認しなければなりません。

⑩従たる給与とは

「主たる給与」が決まると、主たる給与の支払者以外の給与の支払者が支払う給与、すなわち「従たる給与」が決まります。「従たる給与」は年末調整できません。

各種控除を受けるには、所得者本人が確定申告を行い、所得税および復興特別所得税の精算を行う必要があります。

なお主たる給与の支払者に申告した扶養親族を、年の中途で従たる給与の支払者に申告替えすることは可能です。しかし反対に従たる給与の支払者に申告した扶養親族を、年の中途で主たる給与の支払者に申告替えすることはできません。

令和2年度の税制改正において、寡婦(寡夫)控除の見直しが行われました。令和2年分の年末調整からは、新たな「寡婦控除」および「ひとり親控除」が適用されます

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4.「扶養親族等」の範囲について説明

扶養控除等申告書に記載する「扶養親族等」の範囲について、もう少し詳しく見ていきましょう。その年の12月31日時点で「納税者と生計を一にしている、配偶者以外の親族であること」が扶養親族等の範囲になります。

同一生計配偶者の範囲

「同一生計配偶者」とは、所得者(申告書を提出する納税義務者)と生計を一にする配偶者のうち、申請年中の所得見積額が48万円以下である人のこと。給与所得のみの場合は、給与の収入金額が103万円以下である人が「同一生計配偶者」の範囲となります。

いずれも「青色申告者の事業専従者としてその年一度も給与の支払を受けていない」「白色申告者の事業専従者でない」ことが条件です。

控除対象配偶者の範囲

「同一生計配偶者」と混同しやすいのが「控除対象配偶者」です。「控除対象配偶者」とは、同一生計配偶者のうち、申請年中の所得見積額が1,000万円以下である所得者の配偶者のこと。

給与所得のみの場合、給与の収入金額が1,220万円以下である人が「控除対象配偶者」の範囲となります。平成30年分以降、控除を受ける納税者本人の合計所得が1,000万円を超える場合は、配偶者控除を受けられなくなっています。

扶養親族の範囲

その年の12月31日現在に、下記4つすべて満たす人を「扶養親族」と呼ぶのです。

  • 納税者と生計を一にしている親族である
  • 配偶者以外の親族、里子(各都道府県知事から養育を委託された児童)、市町村長から養護を委託された老人である
  • 申請年中の所得見積額が48万円以下である(給与所得のみの場合は103万円)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年一度も給与の支払を受けていないこと、かつ白色申告者の事業専従者でない

源泉控除対象配偶者の範囲

「源泉控除対象配偶者」とは、平成30年の改正によって新しくできた考え方です。以下すべての要件を満たした人が、源泉控除対象配偶者の範囲となります。

  • 申請年中の納税者本人の所得見積額が900万円以下である(給与所得のみの場合は1,120万円以下)
  • 納税者本人と生計を一にする配偶者の所得見積金額が95万円以下(給与所得のみの場合は150万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年一度も給与の支払を受けていない、かつ白色申告者の事業専従者でない

寡婦・寡夫の範囲

寡婦の対象となるのは、以下いずれかの要件にあてはまり、尚且ついわゆる「ひとり親」に該当しない人です。

  • 夫と離婚したあと婚姻をしていない、かつ扶養親族がいる人で、申請年中の所得見積額が500万円以下の人
  • 夫と死別したあと婚姻をしていない、または夫の生死が明らかでない人で、申請年中の所得見積額が500万円以下の人

寡夫の範囲となるのは、その年の12月31日の現況で以下3つすべての要件に当てはまる人です。

  • 申請年中の所得見積額が500万円以下の人
  • 妻と死別、もしくは離婚したあとに婚姻していない、または妻の生死が明らかでない人
  • 生計を一にする子がいる人

勤労学生

勤労学生とは、働きながら学ぶ学生のこと。その年の12月31日の現況で、所得者本人が以下すべての要件を満たす場合に、勤労学生控除の対象となります。

  • 給与所得など、勤労による所得がある
  • 合計所得金額が75万円以下かつ1の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下である
  • 学校教育法に規定する「小学校」「中学校」「高等学校」「大学」「高等専門学校」などの学生である(「国や地方公共団体の規定に基づいて設置された専修学校」や「職業能力開発促進法の規定による職業訓練法人」などを含む)

障がい者(特別障がい者)

納税者本人、あるいは同一生計配偶者や扶養親族が所得税法上の障がい者に当てはまる場合は「障がい者控除」を受けられます。障がい者控除の対象となるのは、以下いずれかの要件に当てはまる人です。

  • 精神上の障がいにより、心神喪失の常況にある人
  • 精神障がい者保健福祉手帳の交付を受けている人
  • 身体障がい者手帳の交付を受けている人
  • 児童相談所や精神保健指定医の判定によって知的障がい者と判定された人
  • 戦傷病者手帳の交付を受けている人
  • 市町村長や福祉事務所長などに精神または身体に障がいのあると認定された65歳以上の人
  • 厚生労働大臣の認定を受けている原子爆弾被爆者
  • 6か月以上にわたって寝たきりの状態にあり、複雑な介護を必要とする人

「扶養親族等」の範囲については、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の裏面にも詳細が記載されています

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5.扶養控除申告書に関して注意しておきたい2つのポイントとは?

扶養控除等申告書を提出すると、所得税の金額が正確になります。しかし同一生計内に所得者が2人以上いる場合、注意が必要なのです。ここでは所得者が2人以上いる場合の注意点や申告を行わなかった場合などについて、解説します。

同一生計内に所得者が2人以上いる場合

同一生計内に2人以上の所得者がいる場合、どのような扱いになるのでしょうか。この場合、扶養親族等が重複しない限り、どちらの扶養親族としても問題ありません。

長男と長女(どちらも16歳未満)、共働きの妻を持つ従業員Aさんを例に見てみましょう。

この場合、「給与所得者の扶養控除等申告書」に長男を従業員Aの扶養親族にすること、長女を妻の扶養親族とすることを記載してそれぞれの勤務先に提出すれば、それぞれ控除を受けられます。

申告を行わなかった場合

給与の支給を受けるすべての居住者は原則、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず、申告を行わなければなりません。

扶養控除等申告書を提出しなかった場合、勤務先に年末調整をしてもらえないため、源泉徴収の際に受けられる諸控除が受けられなくなるのです。結果として納税額が増え、手取りが減ってしまうでしょう。

扶養控除等申告書が提出されないと、税務署は扶養控除を把握できません。納税者は納税金額が必要以上に上がったまま、手取りが減少してしまうのです