復職とは? 準備、タイミング、復職時の不安軽減方法について

「出産・育児」「病気」「ケガ」「介護」などで長く休職していると、本当に「復職」できるのか心配になる場合もあるでしょう。本記事では復職を検討する際、気を付けたい点について解説します。

1.復職とは?

復職とは、労働者が個人的理由で長期休業したのち、その理由がなくなったり軽減されたりした結果で、再び勤務に戻ること。主な休業理由として挙げられるのは、「妊娠・育児」「病気」「ケガ」「メンタル疾患」「介護」などです。

復帰と復職の意味の違い

休職前の職場と職務へ戻ることを「復帰」と表現する場合もあります。復職と復帰の意味はおおよそ同じです。いずれも自己都合の長期休業後に、職場に戻って業務を再開することを指します。

一般的には会社の休職制度に呼応して「復職」とする場合が多いでしょう。保育園などに提出する「復職証明書」などの書類もあるため、ビジネス的な表現では「復職」が使われるようです。ただし普段の会話内では「復帰」で問題ありません。

「復職」とは、労働者が自己都合により長期間仕事を離れたあと、同じ職務へ再度就くことです。「復職」はビジネス表記、「復帰」は一般的な表記といえます

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2.産休においての復職率

ここでは、産休からの復職率を見てみましょう。

政府の「第1子出産前後の女性の継続就業率」1985~2004年の比較調査によると、1985~1989年には39.2%だった出産前就業に対する復職者が、2010~2014年には全体の53.1%まで増加し、うち73.8%が育休を経ています。

1985~1989年の育休利用が23.6%だった点を踏まえると、制度利用が出産後の女性の職場復帰に重要な役割を果たしているといえるでしょう。

一方で、従業員30人未満の小規模な組織や自営業、非正規職員は、大企業や正規職員に比べて育休取得率が大幅に下がる傾向にあるのです。

就業形態別、復職の状況

女性の出産後復職率は、雇用形態によっても違いがあります。政府の「第1子出産前後の女性の継続就業率」1985~2004年の比較調査を見ると、正規職員が復職率・育休利用率ともに右肩上がりで順調に伸びているのです。

反面、パートを含む非正規職員の育休利用率は若干増加が見られるものの、復職率はほぼ横ばい。

自営業主の復職率は期間中つねに70%を超えており、圧倒的に高い数値をマークしているものの、育休取得率は非正規職員と同等かそれ以下の場合が多く、10%未満という現状があります。

女性の復職支援が求められる背景

女性の復職が増加している理由として「少子高齢化」も見逃せません。2008年をピークに日本の労働人口は減り続けており、今後も労働人口の減少は避けられないでしょう。そうなると、企業は思うように働き手を確保できず、慢性的な人手不足に陥るのです。

すでに社会人経験がありスキルや知識を持った女性が、出産や育児が落ち着いたのち就業を希望するケースも多く見られます。

このように働きたい女性がスムーズに復職するには、企業では採用条件の緩和や多様な働き方の模索、制度整備などの復職支援が必要となるでしょう。

またこれらの支援は、労働力確保だけでなく女性活躍推進の観点からも非常に重要といえます。

産休後の女性復職率は、改善が見られるもののまだ十分とは言えない状態です。企業は復職希望者の業務内容やサポート体制、勤務時間や日数などを見直す必要があるでしょう

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3.復職のタイミングは誰が判断するのか

復職できるタイミングは原則、主治医の判断にもとづきます。しかし会社の休職制度や主治医の診断が出るまでの期間によっては、復帰が難しい場合もあり、最終的な復職可否の判断は会社が行うことになるでしょう。

医師の診察内容によって変わる

疾病で休職した人が復職する場合、まずは主治医の診断が必要です。症状が治癒または軽減し、通常業務が可能である旨の診断書をもって、はじめて復職が現実的になります。

ただし業務の難易度や作業量は会社により違いがあるため、産業医に実情と照らし合わせたうえでの意見も求めるべきでしょう。症状が軽減されたからといって自己判断で復職を決めるのは避けたほうが賢明です。

企業判断

医師の判断で復職自体は可能となるものの、最終的な復職の可否は会社が決めます。会社それぞれの休職制度の設計により、条件や復帰までの期間が決まっている場合もあるのです。そのため、条件を満たさず復職できない場合もあるとされています。

復職にあたっては、「想定される業務遂行能力や適応力、意欲などが会社の求める水準に達していない」「組織全体にかかる負荷が大きすぎる」場合、復職が難しいと判断され、ときには復職を拒否されるでしょう。

復職できるタイミングは医師の診断で決まりますが、実際に職場へ復帰できるかどうかの最終的な判断は会社にゆだねられています。

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4.復職前に準備することは?

復職前には、段階を踏んだ準備が必要です。「復職したい旨の意思表明」「会社との面談や相談による復職日の決定」「復職届の提出」「勤務形態によるサポートの活用」などが挙げられます。

当日に向けた体調管理や気持ちの整理もしっかり行い、復職日に備えましょう。

復職に必要なもの

復職申請に必要になものは、休職理由によって違います。また会社によってさまざまですので、事前に確認しておくとよいでしょう。

病気やケガでは、「主治医の診断書」のほか「会社や産業医が復職可否を判断する生活記録表」の提出を求められる場合もあります。また上司や本人が記入する書類が必要となる場合もあるため、まずは会社へ相談しましょう。

育児休業のとき

育児休業から復帰する際は、「育児休業復職届」を会社に提出します。この書類は育休を終了して復職したい旨を記載したものです。会社によっては「出勤届(休暇・欠勤・休職)」を提出するかもしれません。

これらの届を出したのち、会社と復職後の労働条件や業務内容、配置について相談し、認識をすり合わせましょう。

3歳未満の子どもがいて育児休暇前より報酬が下がる場合は「育児休業終了時報酬月額変更届」を提出すると、社会保険料を下げられる可能性があります。

病気やケガのとき

病気・ケガが回復して復職する場合、医師の判断が不可欠です。まずは主治医の診断書を提出し、日常生活への復帰が可能であると証明しましょう。

会社や産業医は、診断書とそこに書かれた意見と、ときには面談や本人の生活記録表をもとに情報を精査し、復職させてもよいか最終判断を下します。

会社側に復職受け入れの意向が固まったら具体的な復職日を相談し、会社規定に従い「復職届」や「出勤届」を提出して復帰当日を迎える、という流れが一般的です。

休職理由によって復職に必要なものは異なるものの、医師や会社との連携は必須です。自社の申請方法や提出書類、活用できる制度などについて事前に調べておきましょう

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5.復職の手続き

休職理由にかかわらず、復職手続きの大まかな流れは同じです。会社に復職希望を伝えたあと、会社側で可否を判断します。会社から同意が得られたら復職届を提出し、復職者の状況に合った制度を申請や活用する流れとなるでしょう。

会社側に復職の意志を伝える

復職の意思が固まったら、会社にその旨を伝えます。その後復帰する日や労働条件を決めるものの、復帰前に現状確認のための面談を設ける会社もあるようです。

面接がある場合は、働く意欲やブランクを埋める努力をアピールし、無理なく働くための要望があるなら合わせて伝えておきましょう。病気やケガで休職していた場合、主治医の診断書を提出したり、産業医と面談をしたりする場合があります。

復職届を提出する

会社側が復職に同意したら、「復職届」や「出勤届」といった会社指定の書類を作成し、多くの場合は医師の診断書とともに提出します。

会社側は休職理由や本人の様子、主治医の診断書、産業医の意見や組織の状態など、さまざまな要素を考慮して復職の可否を決めるのです。

主治医の許可はあくまでも日常生活に問題がないと認めているだけですので、問題なく働けるかどうかという点が重視されるでしょう。ほかにも求職中の食事や外出といった生活リズムを記載した、「生活記録」の提出を求められる場合があります。

短時間勤務制度の活用

出産・育児で休職していた人が復帰する際、条件を満たすと短時間勤務制度が利用可能です。適用対象の条件には「3歳未満の子どもがいる」「継続した雇用が見込まれる」「1日の所定労働時間が6時間以下でない」などの項目があります。

これらは「育児・介護休業法」で定められている労働者の権利で、ほかにも時間外労働や深夜勤務などの制限・免除を申し入れできるのです。復職後の生活を具体的に想定し、必要となる制度や支援があれば申請しましょう。

復職手続きの流れは大体同じですが、提出書類、面談の有無や回数などは会社によって違います。自分の準備が整ったら、会社に復職を希望する旨を伝えましょう

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6.復職への不安を軽減するには?〈会社側〉

復職者を迎え入れる際、復職する人と受け入れる人々の双方に不安が生じます。労働時間や業務内容をはっきりさせるなど、本人の状態に則した対応が求められるのです。

労働時間管理

復職した人への労働管理として、仕事を切り上げやすくなる環境づくりが挙げられます。復職が始まる際は基本、産業医から勤務時間が指示されるのです。しかし復職者は、周囲への気遣いや早く勘を取り戻したいという焦りなどからオーバーワークをしかねません。

復帰者の終業時間や休憩時間になったら周りの人が声を掛け、残業などが発生していないかを確認するとよいでしょう。復職者も就業時間内に作業が終わらないようなら、自分で抱え込まずに上司へ相談します。

仕事内容の明確化

復職者への仕事内容はなるべく具体的に伝えましょう。ブランクがあるため、曖昧な指示では意図が伝わらず業務がはかどらなかったり、逆に不安をあおってしまったりする場合があるためです。

「5W1H」を意識して、「何をするか」「業務量」「締め切り」「進め方」など、明確かつ簡潔に指示しましょう。

メンタル不調で休職していた場合、思考力や判断力が回復しきっていないケースも多いです。たとえ経験のある業務でも細かく指示を出しましょう。

再発防止に努める

メンタル疾患で休職した人が復職する場合、「再発の防止」が重要課題となります。復職者の様子を観察することから始め、「業務調整」「声掛け」「適切な休息を取らせる」など、全員で認識を一致させたうえで対応しましょう。

心の病は治療後も再発を繰り返しやすいうえ、再発が続くと治療が困難になるケースも少なくありません。復職者の業務成果や業務の進め方などに目を向けておき、ミスが多発する場合や不調が見られるときのサポート体制なども、事前に整えておきましょう。

医師からの受診の継続

復職後しばらく、経過観察が必要になる場合もあります。このようなときは、主治医の求めに応じて定期的に通院できるよう、勤務時間に配慮しなければなりません。また服薬や通院について不用意な発言を防ぐため、職場内で周知徹底することも重要です。

復職後も医療機関に安心して通える状態を整えましょう。メンタル疾患からの復職では本人に了解を取り、産業医や上司など会社関係者と主治医が連携して、業務調整や環境改善、本人の心のケアといった完治に向けた支援が必要かもしれません。

職場の方々の配慮

休職中に現場を支えたり、復職時にサポートしたりするのは周囲の社員です。復職者以外の社員へのフォローも忘れないようにしましょう。復職者の状況を理解し業務や対応の調整をすることは大切ですが、行き過ぎはよくありません。

復職者を特別扱いしていると誤解されるような言動は避け、周囲の成果や頑張りにも目を向けます。復職者とほかの社員の評価や処遇が不公平にならないよう配慮し、組織全体の不満や意欲低下が起きないようにしましょう。

社員の復職を万全の準備で迎えるには、復職者と既存社員の両方に働きかける必要があります。主治医や産業医と協働体制を築くことも重要です

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7.復職への不安を軽減するには?〈本人側〉

復職する本人は、久しぶりの仕事や職場環境に不安を感じるでしょう。ブランクを取り戻そうという焦りから、体調や精神的な違和感をないがしろにしてしまう可能性も高いです。意気込みすぎず無理のない範囲で働き、ときには会社の制度を活用しましょう。

無理をせず、規則正しい生活を大事に

復職してしばらくは、規則正しい生活を心掛けます。復職後は周囲との業務調整や、久々の勤務に慣れるためにも気力と体力を使うもの。無理な残業などをせず、睡眠と栄養を充分にとって疲労を溜めないように努めましょう。

通院を継続し、体調の変化を記録しておく

復職後も経過観察などで、しばらく通院しなければならない場合もあります。主治医の指示に従い、通院や服薬は継続しましょう。また復職後すぐは体調が万全でない可能性も高いです。

日々の睡眠時間や食事量、体温などを記録し、変化が見られた場合は速やかに医師へ相談しましょう。

ストレスを感じないように

「復職によってある程度のストレスがかかると認識しておく」ことが重要です。復職後に想像していた以上の負担を感じるケースも少なくありません。

ストレスを溜め込まないよう、状況に応じて解消できるよう自分なりのリラックスやリフレッシュ方法を見つけておきましょう。

会社の制度を利用する

産休や育休後の復職では、子どもとの生活をサポートする制度があれば活用します。たとえば短時間勤務や子どもの看護休暇、1日2回の育児時間の確保といった、子どもが1歳になるまで利用できる制度がいくつかあるのです。

ほかにも、時間外労働や休日労働、深夜勤務の制限などを会社に請求できます。子育てと仕事の両立をサポートする制度については、厚生労働省のホームページで確認しましょう。

会社によっては独自の支援制度を設けているところも。国の制度より待遇が良い場合もあるため、担当部署や上司に確認してみましょう。

休職理由にかかわらず、復職には多少のストレスや体への負担が伴います。体調の維持やストレス緩和に努め、利用できる社内制度があれば活用しましょう