人事評価・人事考課のフィードバックとは?【コメント例文】

人事考課(人事評価)における部下へのフィードバックは、本人の成長や企業の業績向上に寄与する重要な要素です。目的やポイントを押さえて、効果の高いフィードバックを実施しましょう。

1.人事考課におけるフィードバックとは?

人事考課のフィードバックとは、上司と部下双方の話し合いで課題や解決策などを共有すること。評価結果をもとに、部下が持つ現状の能力を正しく捉えて成長を促し、個々人の成果を高めて、企業の業績向上につなげます。

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そもそもフィードバックとは?

フィードバックとは、対象者の業務成果、取り組みにおける姿勢や行動などについて評価し、その結果と根拠を対象者に伝えること。たとえば、顧客の声を生産者へ伝えることもフィードバックのひとつです。

フィードバック提供者は事実をもとに、対象者がさらに高いパフォーマンスを発揮できるよう具体的に助言をし、対象者が抱える課題とその原因から今後の行動計画を検討します。

フィードバックとは?【意味・やり方をわかりやすく解説】
フィードバックは、日々の業務において上司と部下の間などで頻繁に行われています。職場で何気なく行われているフィードバックにはどんな目的があるのでしょうか。 フィードバックを効果的に行うポイントや、フィー...

従来型の評価制度との違い

従来のランク付け型評価とフィードバックでは、評価の柔軟性と評価期間に違いがありました。

  • ランク付け型評価:共通の評価基準の枠を用いるため、優秀な社員を適切に評価できず、評価制度の整った競合他社へ流出してしまう可能性があり、一般的に年に数回ほど実施する
  • フィードバック:ランク付けの意図はなく、個々の成長をサポートするのが目的。「1週間に1回」「隔週1回」など実施頻度は高い

人材育成につながる評価

事業推進と人材育成に主軸を置くため、フィードバックではランク付けをしません。短いスパンで繰り返しフィードバックを受けると、それぞれの業務が正しい方向性と方法で進みます。

それにより事業が戦略どおりに進みやすくなるのです。また個々に合わせたフィードバックは、それぞれの強みを生かしたまま成長促進できるため、企業に貢献できる人材も育つでしょう。

人事考課におけるフィードバックは、人材育成と事業推進で大きな意味を持ちます。これまでの評価手法との違いを理解して導入しましょう

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2.人事考課におけるフィードバックの目的とは?

企業が人事考課でフィードバックを取り入れる目的は、4つあります。ここではその4つについて説明しましょう。

  1. 目標の達成
  2. 部下の育成
  3. モチベーション・愛社精神の向上
  4. 業務効率の向上

①目標を達成するため

現状把握に加え、「目標達成に向けて良い影響を与える」「障害となっている行動とその改善策」について話し合うと、つねに軌道修正できます。そのため本人の努力を無駄にせず、最短ルートで目標達成できる可能性が高くなるのです。

部下にフィードバックをする際は、部下のどの目標について実施するかどうかを明確にしておく必要があります。また一方的なフィードバックを避け、部下と協力して進める意識を持ちましょう。

②部下を育成するため

タイムリーな人事考課のフィードバックは、社員が定期的に内省するきっかけを与えます。日々の業務を通じて得た経験や考えは、大きな学びにつながります。しかし現場はつねに慌ただしく、自分の仕事を振り返る時間づくりは難しいでしょう。

普段から上司がこまめにフィードバックすると都度、部下は自分の行動について内省できるようになります。

③モチベーションアップのため

不安を解消し、自己効力感が高まるようにすると、社員は本来の能力が発揮できます。業務の結果だけでなく、プロセスに対してフィードバックを行うと、社員は自信を持って業務を遂行できるでしょう。

「仕事自体にやりがいを感じてやる気や集中力が高まり、成果が出やすくなる」という好循環も生み出せます。

④業務効率を上げるため

人事考課の定期的なフィードバックは、迅速にPDCAサイクルを回すヒントになります。PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を繰り返して業務を継続的に改善していく手法のこと。

自身の業務に上司の視点も取り入れると、「同じミスを繰り返さない」「期待以上のパフォーマンスを出す」などにもつながるため、PDCAサイクルのスピードと精度が上がりやすくなります。

人事考課のフィードバックは部下の成長を加速させ、企業成果に結び付ける効果的な手法です。正しいやり方とポイントを踏まえて、メリットを享受しましょう

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3.人事考課のフィードバック前に行うと有効な「1on1ミーティング」

人事考課でフィードバックをするときは、1on1ミーティングの導入を検討してみましょう。1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う定期ミーティングのこと。部下のための時間を個々に設けると心理的安全性が確保されるため、本音で話し合えます。

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1on1ミーティングの目的

目的は、企業が継続して成果を出し続けるために、部下の意欲と生産性を高めること。企業の業績向上には社員それぞれの成長が欠かせません。

上司は1on1ミーティングでのフィードバックを通じて、部下の能力を高め、自分の力で考え行動して目標達成できる人材に育てる必要があります。所属する企業への愛社精神や自己効力感が高まると、離職率の低下にもつながるでしょう。

1on1ミーティングで得られる効果

1on1ミーティングでは上司と部下が1対1でじっくり話して信頼関係を深め、部下の抱える課題を把握し、問題解決の糸口を見つけていきます。

それにより部下は問題が解決しやすくなるため、パフォーマンスも向上するでしょう。また個人の状況だけでなく、現場やチームの状況も見えてくるため、マネジメントに必要な情報も上司に自然と集まるのです。

信頼関係の構築

定期的な1on1ミーティングは、上司と部下がこまめにコミュニケーションを取る機会となるため、相互の信頼関係を築けます。

上司側も部下の人柄や能力を把握できるため、どのような業務を任せるべきか、といった教育プランを立てるうえで有力な情報となるのです。部下から上司への報告や相談がしやすいほど成果に直結するでしょう。

問題の解決

1on1ミーティングは、対象の部下1人にフォーカスした時間です。ほかの人に聞かれない環境ですので、部下は業務に関する悩みや仕事をするうえでの困りごとなどを打ち明けやすくなります。

そのため問題が表面化する前に手を打てる場合も多く、リスク管理の面でも有効です。話を丁寧に聴き、不安や不満を少しずつ吐き出させると、部下の精神的なケアにもつながるでしょう。

パフォーマンスの向上

1on1ミーティングは信頼関係を強固にして、より良いパフォーマンスを引き出すので
す。

Googleのリサーチチームは」に「社員が本音で話し合える環境を築いている組織、つまり心理的安全性を確保した組織は高いパフォーマンスを発揮する」という研究結果を発表しています。

心理的安全性の実現にはお互いに理解と信頼し合うことが必要です。1on1ミーティングは相互理解と信頼関係を築く場となるため、ミーティングを積み重ねていくと、個人と組織の成果につながるでしょう。

1on1ミーティングを実施する時の注意点

1on1ミーティングをするときの注意点は、下記のとおりです。

  1. 実施頻度を高くする
  2. 相手の話を聴く
  3. 進捗や業務確認にならないようにする
  4. 業績アップにつながる会話をする

①実施頻度を高くする

1回15分から30分程度の時間を、週1回または隔週1回の頻度で設けましょう。こまめにフィードバックを行うと、信頼関係と相互理解に役立つからです。

多くの部下を持つ上司ほど準備も含めて多くの時間が必要となるので、自分のチームに合った時間を設定しましょう。「悩みが大きい」「なかなか解決につながらない」場合は、通常より長く時間を取ったり頻度を多くしたりと特例措置を取ります。

②相手の話を聴く

部下が話す内容をしっかりと傾聴しましょう。途中で上司視点のアドバイスや意見を述べたくなるかもしれません。しかしさえぎらずに最後まで聴きましょう。

また「聴いているとき」「聴いたあと」の否定的なリアクションにも注意が必要です。あくまで1on1ミーティングは部下のための時間。「部下がどう思うか」「部下はどうしたいと考えているか」を引き出すような関与が重要です。

③進捗や業務確認にならないようにする

部下が話す内容を随時メモに残しながら、興味を持って耳を傾け、ときには質問を投げかけて、部下の内省や自発的な行動を促しましょう。

単なる進捗確認や指示確認にならないよう、話すことをあらかじめリストアップしておくとスムーズです。前回の1on1ミーティングメモや部下の様子などを聴くとよいでしょう。また以下のような項目を聴くのも有効です。

  • 最近仕事でうまくいったと感じること、悩んでいること
  • 企業やチームについて気になること
  • やってみたい・興味のある仕事
  • 個人的な困りごと

④業績アップにつながる会話をする

1on1ミーティングのあいだは、部下の業績向上に関係する話に多くの時間を費やしましょう。部下の成長に重きを置いて話題を提供するのです。

アイスブレイクもときには必要ですが、雑談の割合が多すぎると本題に入る前に時間が切れる可能性もあります。せっかく時間をつくって実施するのですから、お互いが有意義だと感じられるような1on1ミーティングにしましょう。

1on1ミーティングは、人事考課におけるフィードバック前に行うと効果的です。日々のこまめなフィードバックに触れると、評価に対する納得感や信頼性が生まれます

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4.人事考課におけるフィードバックの7つのポイント

人事考課におけるフィードバックを充実したものにするためには、何に気を付ければよいのでしょうか。ここでは人事考課におけるフィードバックのポイント6つについて、お伝えします。

  1. 目的や課題を共有する
  2. 良好な関係性をつくっておく
  3. 感情を含めない
  4. 実行できる内容を伝える
  5. 目標と連動した内容にする
  6. 面談シートの活用

①目的や課題を共有する

人事考課のフィードバックは、部下が自分の課題を認識して、自主的な改善行動につなげることが重要です。部下には評価の結果だけでなく、目標に対する達成度や、現状の課題を認識させて、今後どのように目標達成していくかを具体的に共有しましょう。

論点がはっきりしないと、単なる評価面談や愚痴や雑談を話すだけの場になってしまう可能性が高いです。

②良好な関係性をつくっておく

上司のフィードバックがどのように受け止められるかは、部下との関係性の質に左右されます。信頼関係が築けている場合、ネガティブなフィードバックも素直に耳を傾ける可能性が高いため、上司もフィードバックしやすいでしょう。

「日常から密にコミュニケーションを取る」「一方的なアドバイスではなく、部下の意見や考え方を聴く姿勢」が重要です。

③感情を含めない

あくまでも事実をもとに、上司が考えたり感じたりしたことを、論理的に話します。

そのためにも事前に、部下の取り組み内容やその結果、言動を注意深く観察し、部下がより成果を生み出すためには「何を伝え、どんなことを考えてもらえばいいか」吟味しておきましょう。

決して決めつけたり意見を押しつけたりせず、上司の目に映る見え方と実際のすり合わせや数値による客観的評価などから、丁寧に認識を合わせていくのです。

④実行できる内容を伝える

人事考課のフィードバックから導く行動計画は、部下がすぐ行動に移せるものにします。具体的な例や課題箇所を明示して、何が良くないのか、どのようにするとより良いアウトプットにつながるかを踏まえ、具体的かつ細かい行動計画に落とし込みましょう。

理想は、フィードバックを受けた部下が迷いなく行動できることです。

⑤目標と連動した内容にする

人事考課におけるフィードバックは、目標と結び付けます。方法として挙げられるのは「OKR(目標と主要な結果)と連動させて目標達成まで定期的にPDCAを回していく」「フィードバックをもとに目標設定をして達成に向けた取り組みを促す」などです。

いずれの場合にも部下の納得感や理解が得られるため、主体的に業務に向かってもらえる、そして上司や企業から部下に期待している成果をイメージさせられる、などのメリットがあるでしょう。

⑥面談シートの活用

面談シートを作成してアジェンダとして利用すれば、限られた時間で話すべきポイントを漏らす心配がありません。「話した内容を残す」「認識の齟齬(そご)を防ぐ」「次回のフィードバックに活用する」といった目的でも役立ちます。

フィードバックにかかる時間を短縮して濃い内容とするためにも、かんたんでよいので面談シートを用意しておきましょう。

人事考課のフィードバックでは、貴重な時間を有効活用するためにも準備をして臨みます。ポイントを踏まえて、上司と部下の両方にとって満足度の高い時間にしましょう

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5.人事考課のフィードバックで活かせるスキル

人事考課に関するフィードバックをする際、特に必要とされるスキルは3つです。1on1ミーティングや普段の業務においても非常に有効なスキルですので、それぞれの特徴と効果を生かして、適切な場面で使い分けましょう。

  1. 傾聴力
  2. コーチング
  3. ティーチング

①傾聴力

傾聴とは、話し手である部下の話に注意深く耳を傾けること。言動で否定せず、アイコンタクトや相槌、復唱などをしながら、じっくりと部下の気持ちや意見に寄り添う姿勢で臨みましょう。

一貫した傾聴の姿勢を取れば部下は上司に心を開くため、上司のフィードバックを素直に受け入れやすくなります。部下との強固な信頼関係を築く土台となるスキルのひとつです。

②コーチング

コーチングとは、質問や対話をとおして、部下が問題解決にたどり着く手助けをする方法のこと。あくまで部下の自由な発想を尊重して、自分の力で答えを導き出せるようにするのです。

時間がかかる可能性は高いものの、納得感と課題に関する深い理解が得られるため、次の行動に結び付きやすくなります。ただしコーチングで引き出せるものは、部下の経験や知識の範囲内です。部下が知らない内容に関するコーチングは避けましょう。

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③ティーチング

ティーチングとは、教える側が持つ答えを伝える方法のこと。新しい知識や技術を教えたり、指導したりする際はティーチングを活用しましょう。具体的な答えを与えられるため、早期に改善へ向かって動けるようになります。

ただし一度に多くの部下を対象にして方法や知識を体系立てて教えられるものの、自主性の育成や、個性を尊重したかかわり方には向いていません。

人事考課におけるフィードバックを支えるスキルには、「傾聴」「コーチング」「ティーチング」があります。部下の状態や話す内容に応じて使い分けましょう

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6.人事考課におけるフィードバックの型

フィードバックの型は3つです。それぞれの特徴とメリットについて解説しましょう。

  1. サンドイッチ型
  2. ペンドルトン型
  3. SBI型

①サンドイッチ型

サンドイッチ型とは、課題や改善点を指摘する前後で、優れた点や肯定的意見を述べて、否定的意見を挟む方法のこと。メリットは4つです。

  • 特別な訓練が不要で取り入れやすい
  • ポジティブな話題から始めるため、部下が否定的意見も受け入れやすくする
  • 明るい空気を最初につくるため、課題や改善点について上司が切り出しやすくなる
  • 前向きな雰囲気で終わるため、部下のモチベーション低下を防げる

②ペンドルトン型

ペンドルトン型は、上司と部下が交互に意見を出し合って進める方法のこと。上司が事実や評価を共有したあと、「評価点」「改善点」「行動計画」という一連の流れを進めます。

それぞれのテーマごとにまずは部下が自分の意見や考察を述べ、上司は補足や反応を返す、という部下が主軸になった形態です。メリットは3つあります。

  • 部下の主体性を引き出せる
  • 部下にとって納得感のある評価、行動計画が実現できる
  • 密なコミュニケーションを取るため、信頼関係の構築に役立つ

③SBI型

SBI型は、「Situation(状況)」「Behavior(行動)」「Impact(影響)」の順にフィードバックする手法のこと。

状況を整理しながらストーリーを追う形で、自分の起こした行動とその影響を論理的に説明できます。特徴は、結果と原因の因果関係を部下に理解してもらいやすい点です。メリットは3つあります。

  • フィードバック内容を理解してもらいやすい
  • 公平かつ論理的な評価と受け取ってもらいやすい
  • 影響について考える癖がつき、日頃の行動に結び付きやすい

フィードバックは伝えるべき内容、部下の性格や状態を考慮に入れながら、適した方法を選んで行いましょう

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7.人事考課のフィードバックの部下に対するコメント例文

例文を2つご紹介します。今回はサンドイッチ型を取り入れています。

例文①営業職の場合

営業成績の目標達成率が115%であったことは大きな評価に値する。
常に行動量を高い水準で維持し続けたこと、成果を定量的に分析して改善を積み重ねたことが良い結果につながったと考えられる。

一方で、チーム内の動きについてキャッチアップが遅れてしまうことや、ミーティング中に周囲メンバーへの発言を遠慮してしまうことがある。今後はチーム全体の営業成績達成に貢献することを期待する。

例文②技術職の場合

チーム内外と誠実なコミュニケーションを取り、不要なコンフリクトを生まずにスムーズに案件を推進できたことを評価する。
営業・マーケ部門や管理部門など、他部門からの信頼の声も多い。

一方で、工程管理の甘さから自身とチームメンバーに大きな負荷を強いるシーンも垣間見えた。
コミュニケーション能力と技術力は優れているため、より安心安全に案件をこなせるようになることを期待する。